「…本当に食べてしまったのか?(ニヤリ」
L38地区地下での騒動の後、人形達は地上のレジャー施設跡地に顔を出すことが多くなった。
あの後わかったことだが、実の所は地下で労働に従事する限りは自由にしてよかったらしく、外に出ようと別の地区に行こうと運び屋は気にするつもりは無かったらしい。
しかし大佐はそれを意図的に伝えず地下に閉じ込めていたのだった。
結局のところは運び屋の放任主義のせいであったり、外に出ようとしていたとしても攻撃的になっていたロボ・スコルピオンに襲われていただろうから、意図せずとも大佐は人形達を危険から遠ざけていたことになるが……
だが人形達が外へ出入りすることに苦情を訴える者がいた。
地下への出入り口となる展望台内で研究をし続けているDr.モビウスである。
「お前達人形が毎回出入りする度に騒がしくて研究に集中できん!」
「えー、でもここしか出入りするところがないよ」
偶々地下へと続く展望台内の出入り口から外へでようとしていた所を、空中に浮かぶ脳味噌ことモビウスに引っ掛かり苦情を言われるスコーピオン。
こういう時のモビウスは非常にめんどくさい。
ドラッグでハイになりすぎている時もめんどくさいが、研究者として集中している時も神経質な気質になるからだ。
まぁ、M3によって大佐からの締め付けから解放された人形達がそれまでの反動かハメを外し過ぎているというのもあるが……
「そもそもお前達はこの世紀の科学者Dr.モビウスをなんだと思っとるんだ! やれ修理しろだの作ってくれだの、そんなものはED-Eにでも頼めばいいのだ!」
「あ、あはは…… いつもそこにいるから、みんながつい頼んじゃうんだと思うよ」
「ならばそこらにいるMr.オーダリーに直接言ってやらせればいいだろう!」
「あいつらMr.ハンディー型だからねぇ、だから避けてるんじゃないかな……多分だけど」
「ふん、戦術人形とやらが聞いて呆れるわい」
モビウスの言うMr.オーダリーとは大佐のようなMr.ガッツィーと同じMr.ハンディーのバリエーションモデルの内の一種である。
主に地下内の人形やロボット、人間(ロボトミー)の検診や修理治療を行い、またモビウスがしている研究のサポート等もしている。
別に人形に対して攻撃的というわけではないのだが、Mr.ガッツィーである大佐やその周囲にいるMr.ハンディーと同じタイプのロボットである為、彼女達人形は大体は自ら近づこうとしないのだ。
最初はモビウスも見た目のせいもあり避けられていたのだが、人形達の中でのMr.ハンディー型への風評に比べれば宙を浮く脳味噌のほうが断然真面に思えたようだ。
だがモビウスがスコーピオンに対して文句を言い続ける中、床に開いている地下への出入り口から新たな乱入者が唐突に飛び出し現れる。
「あ! いたいた! モビウスさんに相談があるんだけど~!」
現れたのは戦術人形のSPAS-12だった。
地下への出入り口から出てきたかと思うと早々に
「うぎゃあぁ!? やめんか! 残りのモニターまで壊す気か!」
「あっ、ごめんなさ~い! 大丈夫?」
「いきなりどうしたのさ、いったい」
スコーピオンはいきなり現れたSPAS-12に聞くと、返ってきた答えは実に彼女らしいともいえるものだった。
「いい加減にスープパスタ以外のを食べたいのよ!」
「スープパスタ? うどんのこと言ってるの?」
SPAS-12が訴えてきた内容、それは地下内で食事として出されているものが一種類しかないという事情についてだ。
地下内の唯一の食堂で調理をしているプロテクトロンことタカハシが振舞うヌードルは、汁と麺のみのシンプルなもので盛り付け等の他の具材は一切入っていない。
そしてタカハシはそれ以外の料理を作ることは無い、いくら人形が食事をしなくても充電で補えるとはいえ食べることが大好きなSPAS-12は我慢ならなかったらしい。
「せめてもう少し違うメニューとかほしいんだよ!」
「だからなんでそういうことをこっちに言ってくるんだ! 人形なんだからそこらに転がってる核分裂バッテリーで充電でもするか、メンタスふりかけて食べてればいいのだ!」
「いや、いくらなんでもそれはM3さんでもしないよそれは……」
モビウスにさすがにツッコんでしまうスコーピオン。
ちなみにM3の件に関しては風評被害というではなく暇を見てはメンタスをよく口に放り込んでるのをよく目撃されてるせいでもある。
最初は気付け薬のつもりで一粒二粒と服用したりしていたM3だが、気が付けばお菓子感覚で口にするようになっていた。
中毒ではないのだが、完全に依存症のそれである。
「とにかく! せめてなにかトッピングとか付けてほしいんだよ!」
「え、そんな理由で呼ばれたのボクって」
ステルススーツMkⅡことステルはモビウスから呼び出され地下の食堂に来ることになったのだが、食堂内で待っていたのはSPAS-12とスコーピオン。
呼び出した本人であるモビウスはいない、つまりは面倒ごとを押し付けられたのだと悟るステルは呆れながら溜め息をつく。
中身のダミー人形は表情も口も動かないので正確には溜め息のような声を出しているというのが正しいが……
普段からステルは人形達に対して割と親しく接しており、同じような人形の見た目をしている為か相談や頼られることが偶にあったりするのだがそのせいで適任だと思われたのだろう。
ちなみに今日のステルの中のダミー人形は92式であった。
「モビウスさんったら酷いんですよ! こんなもの渡してきただけであとは知らん顔して無視するんです!」
「あれって顔なのかな?」
ぷんすかと怒っているSPAS-12とどうでもいいことに態々つっこむスコーピオン。
そして食堂のテーブルの上にはいくつもの緑色の液体を入れたガラスの瓶容器が散乱しており、それをみたステルは瓶を一つ手に取ると蓋を開けて指を突っ込む。
中は液体というよりはドロドロとした粘度の高いペースト状のものだった。
「うわ、なつかしいもの出してきたね。 ボクは飲食とかには無関係だからサリエント・グリーンなんて久しぶりに見たよ、彼が持ち歩いてた時以来かなぁ」
「こんな緑色のドロドロしたものをトッピングにしろとか食べ物に対しての冒涜です!」
「というか別に人形ならわざわざ食べなくていいんじゃないの?」
そんなの人形権侵害です! と抗議するSPAS-12だが次にステルが言った言葉で態度を一変することになる。
「まぁまぁ、これは熱を加えて少し加工する必要があるんだよ。 そのままでも食べれるけどね。 タカハシ、ちょっと借りるよ」
そう言いながら食堂の奥に控えていたタカハシから持ち運び式のコンロを借りて持ってきたステル、相変わらず「ナニニシマスカ」としかタカハシからは返事はこなかった。
「えっとたしか他に付属してるのがあったはずだけど……あったこれだ。 この薬を入れてから温めると──」
ステルは瓶と一緒にテーブルに散らばっていた錠剤やアンプル薬をいくつか選んで瓶の中に放り込みコンロの火を入れて温める。
するとどうだろうなんと緑色のドロドロでベトベトであったはずの液体が徐々に形を変えていき、ついには植物の実ハラペーニョへと姿を変えたではないか。
突然目の前で起こった手品のような光景に驚くSPAS-12とスコーピオン。
「おー! す、すごい! どうなってんのこれ!」
「他にも入れる薬の種類とか分量を色々変えて試してみるといいよ、色んな野菜や植物になるはずだし」
「やった、ついにこの味気ない食堂のメニューに彩りが増えたよ!」
こうして地下の食堂でタカハシの作る味気ないヌードルにセルフサービスで野菜をトッピングすることができるようになる。
だが食への追求を妥協しないSPAS-12、後にリリーの牧場農園へと足を踏み入れ弟子入りするまでになったのだが……
これにより更に食堂メニューに肉類が増え、人形達ことD班の中でSPAS-12は食の救世を絶えず語り継いだという。
どうやってサリエント・グリーンを他の種類に生成し分けるのだろうって考えたんですが、数種類の何か別の薬品を組み合わせて入れる、ねるねるねるね方法ってことにしときました。
実際にはどうなのかはちょっとよくわかんないです。
【サリエント・グリーン】
ビッグ・マウンテンが造り出したネバネバベタベタした液状の生命の奇跡だ、ベイビ!
緑のドロドロでネバネバなペースト状の液体で火にくべたりして熱して温めると凝固して様々な植物に変容する。
そのままでも食べれるので、固形物が食べれない状況でも重宝される。
名前の元ネタは映画「ソイレント・グリーン」からきているが純正な植物性由来の物質であり、別に原料が奇妙な肉だとかそういうことは一切ない。
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ドルフロ知ってるけどFallout知らん
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両方とも知ってるぞ
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