「ギャオンッ!?」
銃声の後に獣の悲鳴が聞こえたかと思うと、その撃ち抜かれたて死んだ獣が転がる。
奇妙で犬か狼の胴体に蛇の頭を付けたような姿をしている獣は、体を横たえて口から血を吐きながら二つに割れた細長い舌を痙攣させていた。
「何匹いるのよこいつら!?」
7匹目の見えない獣を撃ち殺した416は叫びながら更に自らの半身でもある銃を撃ち続ける。
G11も同じように8匹目を撃ち殺したが、レックスと見えない獣がもうすぐそこまでの距離に近づいていた。
「かなり数は減ったと思うけど…… もう間に合わないかもっ!?」
そう言い終わる前にG11が横転した。
あの見えない獣に横から襲い掛かられたのだ。
「G11!? 離れなさいこのケダモノがっ!」
「ギャンッ!?」
すぐにG11に駆け寄り倒れている真上を銃床で殴りつける。
殴りつけられた獣はそのまま悲鳴を上げて逃げたようだった。
「G11、大丈夫!?」
「咬まれたけどへーき……あれ?」
416の声に無事だと答えようとしたG11だったが違和感を感じると、電子脳が身体の異常を検知し、自身の体調変化に気が付く。
「ちょっと……やばいかも、なんか毒もってたみた……い」
戦術人形に毒物はあまり効果はないのだが、人工血液や生体組織が使われてるが故に一部の毒物はどうしても効果を防ぐことができない。
「出血毒みたいだよ ……気を付けて416」
「気を付けてってアンタねぇ!」
G11のいつもだらしなく開けていた肩首に、真っ赤に染まったの咬み傷があるのを見た416は顔を険しくして肩を抱いて庇う。
「……大丈夫、寝たら治るから、だから寝ちゃだめ?」
「ほんとブレないわね……」
「咬まれ続けてたら危なかったけど、まだ大丈夫いけるよ」
顔色が悪いG11を支えながら416は周りを見渡す。
既に周囲をレックスと見えない獣に囲まれ、周囲からは犬と蛇の入り混じった威嚇する唸り声が聞こえてくる。
レックスと共に現れたこの見えない獣達は、知る人からはナイトストーカーと呼ばれている。
コヨーテとガラガラヘビを遺伝子操作により掛け合わせたという狂気の産物で、もし咬まれればガラガラヘビがコヨーテと同サイズになったも同然の毒量を流し込まれるのだ、人形ではなかったら即死であっただろう。
「連中、囲んでいたぶる気かしらね、これだから獣は……」
「かなりの数を減らしたから…… 多分もうほとんどいないと思う」
「ふん、かかってきた順から殺してやるわ」
だが一向に周囲の獣たちは唸るだけで襲い掛かってこなかった。
むしろ、レックスが他のナイトストーカー達を牽制して抑え込んでいるように見えた。
その時だ、ずっと後方で待機して監視していたロボット、ED-Eが短く音楽を鳴らし始めた。
<~~~♪>
「ワフッ! アオーン!」
その瞬間、それをまるで合図だったかのように遠吠えをして応えたレックス。
するとどうしたことか、ナイトストーカー達が離れていく足音が聞こえ、周囲にレックス以外の気配が無くなる。
「なによ、あんた一匹で十分ってわけ? 舐めてくれるわね!」
「ゥゥ……ワンッ!」
「なっ!?」
416は銃口をレックスに向けて狙いをつける。
が、同時にレックスは416に向かって吠えた瞬間、鳴き声を浴びた416が後方へ吹き飛び、地面に叩きつけられた。
至近距離からの攻撃しか警戒していなかった416は、レックスに内蔵された
「うぐぁっ!?」
「416!」
レックスはそのまま倒れ伏した416を飛び越え、そのままビルの内部へ入っていく。
「と、とまれっ!」
銃を構えて、ビルの奥へ入っていこうとするレックスを撃とうとするG11だが、その時レックスが振り向きお互いの視線が交わる。
G11とレックスは互いの視線を外さず見つめ合うこと数秒間……
やがてG11は銃を下した。
それを見たレックスはそのままビルの奥へ走っていく。
「ぐっ、何で撃たなかったのよ!」
「無駄だと思ったから、弾代高いから無駄撃ちするなっていったじゃん……」
なんとか立ち上がった416がG11に苛立ちながら言うが、どうでもいいといった風に言葉を返す。
「くっ、獣ごときに私がしてやられるなんて!」
「完璧に、してやられたね」
「……あんたホント殴るわよ」
416が一発入れてやろうと構えたが、その前にG11が仰向けになって倒れる。
「……というか、毒のせいでもうふらふらだよ……もう寝る、ぐぅ」
「まだそこらにあの見えないケダモノがいるかもしれないわよ、それでまた咬まれてもいいっていうなら勝手にしなさい」
「……やっぱ、もうちょっと頑張る。 抱っこして」
416は仰向け寝ているG11の横に座り込んだ。
「私もG11の毒以上に強烈なのもらったのよ、アクチュエーターの一部がダメになってるし、通信機能もちょっと使えたもんじゃないわね」
「……45に連絡しろってこと? ……いやだなぁ、絶対怒るよ」
「そうね、……これはもう今の基地にはいられないかもね」
416見渡す周りとその先の大きな十字路には、交戦前にいたはずの運び屋はおらず、ついさきほどまでいたはずのED-Eの姿も見えなかった。
逃げられた、つまり任務失敗。
404小隊全員が今いる基地の司令官には好意的だったが、UMP45は特にそうだった。
彼女はそうは見えないように装ってるつもりだっただろうが、付き合いの長い404小隊の皆からしたらバレバレだ。
「うぅ……ほんとにやだなぁ」
UMP45は取り乱すだろうか、平然を装ったとしても冷静を保っていられるのだろうか?
罵倒されるんじゃないだろうか、それとも冷たい口調で返されるだろうか?
そんなことを考えながらG11は通信を躊躇する。
「ビル内に9を襲った未知の敵がいる上に、あの犬が入り込んだのよ早く伝えなきゃまずいわ」
「……多分、あの犬は9を襲わないと思う」
「何を言うかと思えば、犬ごときに見逃されたと腑抜けたの?」
「……ちがう」
レックスと視線を合わせたときのことを思い出す。
G11はあの目を見たことがある。
自分たち戦術人形が負傷して戦場から帰還してきたときに指揮官がするのと同じだった。
すまない、申し訳ないと指揮官として至らなかったと謝るときの目だ。
あの御人好し指揮官と犬を一緒に並べるなんて自分でもどうかしてるとは思ったが、やはり同じだったように思えて仕方がない。
「とにかく、早く連絡をしなさい。 ……ちょっと待って、何か音が聞こえない?」
G11を急かそうとする416だったが、かすかに聞こえ始めた音に怪訝な顔をした。
「……これは……プロペラ音?」
二人が音のする方角をみると、その空には二対の回転翼で航空するヘリコプターがこちらに向かいつつあるのが見えるのだった。
その回転翼のヘリコプター、ベルチバードは徐々にビルに近づき屋上スペースに着陸する為に下腹部に格納されていた降着装置を展開しはじめる。
操縦士はフルフェイスのヘルメットを被り顔は見えなかったが、袖から見える肌は醜くただれているのが見えた。
そして掠れ嗄れた声で無線機に通信を入れる。
「もうすぐ着陸できる距離まで近づいたぞ。 戦術人形は大丈夫なんだろうな? 老体としてはこのまま穏やかに着陸させてくれるとありがたいんだがな、ボス?」
レックスの音波発生装置についてはビックエンプティのDr.8とDr.ボロスが嬉々として改造してくれました。
【ナイトストーカー】
コヨーテとガラガラヘビを遺伝子操作で掛け合わせた生物。
毒を持っており、毒には持続的なダメージの他にも耐久能力を下げる効果がある。
一応はミュータント等ではなく動物に分類される。
かなり食い意地が張っているらしく、光学迷彩装置のステルスボーイすら食おうとする。
そして何故かその影響でステルス状態になることができる。
【音波発生装置】
元々は運び屋が持っていたハンドガン型の音響兵器であったが、製作者とその協力者によりレックスの喉に埋め込まれた。
電子機器系に大きなダメージを与えるほか、音のチューニングを変えることにより様々な追加効果を発生させることができる。
また、フォースフィールド等を打ち消して無効化させる効果もある。
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ドルフロ知ってるけどFallout知らん
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両方とも知ってるぞ
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