FALL OUT GIRLS   作:WarBoss

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グリースガン? そんなことほざいている奴は戦場でグリースガンとM3が落ちてたらどうするんだ?

俺? 俺ならグリースガン拾って敵の口に油差し込んでやるね。


Little Dolls

「こ、こんにちは、M3と言います……よ、よろしくお願いしま……す」

 

「今はただのパイロットだが、まぁ銃器の整備なんかもやってる。 ラウルだ、よろしくな。 さっそくだが出発の準備はいいか?」

 

「は、はい……大丈夫です」

 

 M3はベルチバードの中で操縦席の作業着とフルフェイスヘルメットを被った人物、ラウルに挨拶した。

 そして、ラウルは後ろのM3に少し振り向き挨拶を返し、操縦桿を握りながら周りの機器やスイッチを操作するとベルチバードが離陸し始める。

 

「まさか人形を雇うことになるとは、長生きしてると本当に色々起こるもんだ」

 

「わ、私なんかでよかったんでしょうか……」

 

「銃の知識はともかく戦術人形の違いなんて俺にはわからんよ。 だがボスが他の人形に目もくれずにお前さんを指名したんだ、期待はされてるんじゃないか?」

 

「が、頑張ります……」

 

 不安な顔をしているM3を乗せ、ベルチバードは空へ運んで行く。

 

 

 

 なぜM3がモハビ・エクスプレスに雇われることになったのか、それはペルシカから依頼された件で、運び屋は報酬として一体の戦術人形を要求したことから始まる。

 しかもそれは、G&K社での多く見られる人形のようなI.O.P社からの貸出の扱いではない、モハビ・エクスプレスに完全な所有権がある戦術人形を……

 そして、そのI.O.P社製の戦術人形の中から運び屋が選び抜いたのがM3であった。

 

 16Labからの特別製だとか電脳ランクが高い人形、希少性の高い人形なんかを要求されるのかと思っていたペルシカは拍子抜けした。

 何せ、どのタイプの人形だろうと関係なしに無条件で一体譲渡するという要件を飲まされたのだ、身構えもする。

 さすがにM4A1のような特殊な人形は無理だが、それでもそれなりの人形を用意する準備はしていた。

 それがなぜM3だったのかペルシカには分からなかったが、あの時の運び屋は迷いなく彼女を選んだことは確かだった。

 

 

 

 ベルチバードを操縦しながらラウルは背後席に座るM3に話しかける。

 

「これからお嬢さんはモハビ・エクスプレスの拠点となる場所へ向かうわけだが、前はグリフィンとかPMCにいたのか?」

 

「い、いえ……私は製造されたばかりでそういった経験は……」

 

「そりゃよかった、ウチはグリフィンに比べて様相が大分異なるからな、変に先入観があると苦労する」

 

 そう言いながらラウルはヘルメットのフェイスガードを開ける。

 M3の方向へ顔を向け、ラウルの顔が露わになる。

 

 ラウルの見せた素顔は鼻や耳が削げ落ちて酷く爛れていたが、しっかりと意思を持った人の眼をしていた。

 

「っ!? や、火傷で……すか?」

 

「そうさ、どでかい光の炎を浴びて全身この様さ。 この面見てE.L.I.Dだとか騒がないあたり本当らしいな」

 

 ラウルが開いたフェイスガードを再び閉じて顔を隠すと更に続ける。

 

「俺以外にもE.L.I.Dと勘違いされかねん奴がいるんだが、見かけたらあまり刺激しないでやってくれ……まぁどう違うのかっていうとあまり変わらん気がしなくもないがな」

 

「は、はい……気を付けます」

 

「あと雇われて所属するのは嬢ちゃんが初めてだが、もう一人だけ戦術人形がいる」

 

「と、ということは私と違いI.O.P社に所有権がある人形……ということでしょうか?」

 

 戦術人形は自分一人だけと聞かされていたM3は内心不安で寂しくあったが、その言葉を聞き少し安堵する。

 だが、次のラウルの言葉でそんな心情も吹き飛ぶことになった。

 

「いや、鉄血製の人形だ。 しかも鹵獲したとかでもなくそのまま居ついてやがるだけだ」

 

「え!? そ、そんな!?」

 

 更なるラウルのカミングアウトに流石にM3も驚愕した。

 人間を問答無用で殺しに来る鉄血の人形を放置したまま居つかせているとなると当たり前の反応である。

 

「きっ、危険じゃないんですか!?」

 

「お優しいことにボスや俺みたいな奴は人間のカテゴリから外れているんだとよ、まったく嬉しくて涙が出るね」

 

 皮肉を言うラウル、ちなみにその理由を聞かされた運び屋は若干凹んだ。

 

「さて、そろそろ着くぞ……さっき言ったみたいにグリフィンと同じと思ってると痛い目をみるから注意しろよ」

 

「……は、はい、頑張ります!」

 

 M3が緊張しながら上空にいるベルチバードの窓から外を覗くと、見えたのは小さな複合レジャー施設の跡地だった。

 子供を含めた家族客を想定した施設だったのか、お土産屋から動物園や水族館のような雑多な施設がいくつか見えたがどれも小規模で中途半端なもののようだ。

 そして周囲には奇妙な形をした青いボディーのロボットと警備犬……セキュリトロンやサイバードッグがうろついているのも見える。

 いや、それだけではない……一部の施設の近くには蠍を思わせるロボットがいるのも確認できた。

 

 着陸準備をし始めたベルチバードが元々は施設内のアウトドア用のスペースであったであろう広場に近づきそのまま着陸した。

 

 

 

「さて、到着だ。 嬢ちゃん……いやM3、これから施設内を案内するが慣れないうちは余計な探索はするなよ。 見えてたかもしれんが後で伝える()()()()()にはロボ・スコルピオンがうろついている、今は絶対近づくな」

 

「は、はいぃ……わかりましたぁ」

 

 不安で若干涙目になりながらM3は頷く、いやそうするしかなかった。

 話に聞いていたグリフィンのような、人形の同僚たちもいない、ここモハビ・エクスプレスで一人で役目を果たさねばならないという不安と義務感に内心は圧し潰されそうだった。




クエスト追加

□運び屋に会う

□(オプション)鉄血人形と会う

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