今回もめっちゃ大変でした。そして原作の大きな出来事があるたびに難産難産言う気がしてます(笑
主人公の性格や原作の出来事などの調整がめっちゃ大変ですね…!完全オリジナルにしちゃうとその後の展開を考えるのも大変なので、原作沿いはまだまだ考えなきゃいけないところがたくさんありますねー。
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」
そんな相澤先生の一言から始まった午後一番の授業。
本来担当教諭はオールマイト一人なんだけれど、おそらく先日の警報事件が多少なりとも関係しているのだろうと考察する。マスコミとはいえ雄英のセキュリティーが破られたのは事実。2度3度を許す雄英側ではないけれど、保険は何重にも掛けたほうがいいに決まっている。
そして、オールマイトからまだ連絡がないことがふと頭に浮かんだ。まだ何の話も聞いていないのに推理や憶測で父に話を聞くわけにもいかないあの日の話。まあオールマイトは教員で何かとお忙しいそうだし、私も週に2日は特別教室があるから、きっと近々連絡があるわよね、と頭を切り替える。
「はい!何するんですか?」
手を上げて発言する瀬呂くんの言葉に、相澤先生が懐から《RESCUE》と書かれたプレートを掲げた。
「災害水難何でもござれ、レスキュー訓練だ」
「「「「おおー!!!」」」」
途端あちこちで興奮したような声があがる。
救助訓練、ね。医療系ヒーローを目指す私にとってはまさにうってつけの訓練だ。幼い頃から見ていた父の背中が頭をよぎる。と、ここで「おいまだ途中」という先生の声に周囲の声が止む。
「…今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな」
言いながら先生が手元のリモコンを操作すれば、いつかの戦闘訓練のときのように壁から収納されたコスチュームのトランクが出てくる。
「訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始」
その言葉を合図に一斉に皆が動き出した。
そういえばコスチュームのヒップバックに物資を追加しようとしていたのを思い出して、カバンからあるポーチを取り出す。
「けろ?藤乃ちゃんそれは?」
「簡易医療キットなの。私のコスチュームはヒップバックがあるから、それに入れておこうと思って」
「へえー流石天使。けど、個性で治癒できるのに必要なのか?」
「ありがとう、切島くん。…ええと、個性での治癒ってなにかしらのデメリットが人によってあるのよ。例えばチヨ先生…リカバリーガールの個性は、患者さんの体力を使って自己治癒力を活性化させるから、患者さん本人に体力がないとそもそも治癒できないでしょう?私の個性での治癒は、私自身の体力や精神力、そういったエネルギーを分けることで治しているから、私自身が疲労困憊であったり満身創痍であったり、そもそも光量が少なくて個性の使用が限定的になったりするとキャパオーバーを起こしたりそもそも治癒ができないの。でも、だからと言って怪我人を放っておくことはできないので、これは万が一の保険、ということね」
「なるほどそうだったのか。備えあれば憂い無しということだな!」
「ふふ、ええそんなところよ飯田くん」
話しながらコスチュームトランクを手に取り更衣室に向かう。
今日も有意義な訓練になればいいなとワクワクしながらささっと準備を終えて女子全員で玄関前に集まれば、既にバスが待機していた。そして響くホイッスル。
「1-A集合!バスでの移動がスムーズに行くように皆で2列に並ぼう!」
張り切って集まりだした皆を整列させている声の主は、先日の警報事件の時に生徒のパニックを落ち着けたということで委員長の緑谷くんから直々に指名され委員長に就任した飯田くんだ。
歌による鎮静を行った私は?ということで切島くんらから名前を挙げられたけれど、慌てたように緑谷くんが勉強を理由に副委員長を辞退したことを覚えていたようで、それで実際パニックを収めた飯田くんを推した!と説明。それで切島くんらは納得していた。しかし、飯田くん自身が「あの騒ぎを止めるきっかけをそもそも作ってくれたのは天使くんでは…」と若干渋る様子を見せたが、私自身が「私も飯田くんが適任だと思うわぁ」と発言すれば、ならばと引き受け今に至る。
張り切っている飯田くんに、なにかお手伝いをと思って、高い車体の窓から中の様子を見るように翔べば、前方の席は壁沿い横一列に配置、後方に2席ずつの座席、最後尾の席のみ一列のシートというタイプだった。
「あの、飯田くん」
「どうしたんだい、天使くん?」
「あのね、今少し窓からバスの中を見ていたのだけれど、席の形がなんというか…観光バスのようにずらりとシートが配置されてるタイプじゃなくて…普通のバスのような席で…」
「普通のバス?ということは……ああ、なるほど、そういうことか!」
「ええ、そうなの」
「なーんだ、じゃあ並ばなくても適当に座ればいいんじゃね?」
「そうだねー!」
そうして列を多少崩しつつ各々談笑しながら待っていれば、プシューという音が鳴ってバスの扉が開くと同時に、相澤先生が恐らくバスの運転手であろう方を伴って現れた。
「おら、出発すんぞ。お前ら適当に乗り込めー」
ぞろぞろと皆がバスに乗り込んで、訓練場へ向けてバスが走り出した。
「くっまさかバスがこのようなタイプだったとは…!天使くんのおかげで整列が空回りせずに済んだよ。ありがとう」
バス後方、2席ずつに並んでいる座席の窓側から、前方の壁一列の席でお礼を言ってきた飯田くんにどういたしましてを返して窓の景色を見る。と、ふと背中に視線を感じたので振り返れば、何故か慌てたようにそっぽを向く峰田くんが後ろの席にいた。
「??」
「♪ピューピュー」
口笛を吹いてあらぬ方向を見ながら頭の後ろで手を組んでいる峰田くんの様子に、随分ご機嫌なのね。そんなに訓練が楽しみなのかしらと内心首を傾げつつ再び窓の方を向く。そういえば峰田くんの隣に座っている百ちゃんがなにやらすごい顔で峰田くんを見ていたような…と考えていたところで、隣から舌打ちが。
「お前…そのコスチュームもっと何とかならなかったのかよ」
「??何か変かしら?」
「バカみてえに開いてる背中」
「でも、ここを開けないと翼を出す時に服が破れちゃうから……でもそうね、このままだと冬季に活動しづらいものね、ちょっと考えてみるわ」
「フンッ……」
なんで今コスチュームの話を?と疑問はあるものの、勝くんの言うことも一理あると頭の中でどういったコスチュームがあるか考える。我が家では翼の個性がある私と母のコスチュームから私服に至るまでだいたい背中が開いた服を着ている。まあ出したり消したりは自由なので、その背中が開いている服の上からたいてい何かを羽織っているのだけれど、ヒーロー活動中は頻繁に上着を脱ぎ着するなんてできない。母の冬季コスチュームはどんな構造だったかしらと細部を思い出していれば、前の方の席から梅雨ちゃんの「私、思ったことをなんでも言っちゃうの」という声が聞こえた。
「緑谷ちゃん」
「はっはい!蛙吹さ…」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「つ、ちゅゆさ…ッ」
梅雨ちゃんのことを素直にそう呼べず照れた様子の緑谷くんに小さく笑っていれば、次の瞬間梅雨ちゃんが驚くべきことを口にした。
「貴方の個性、オールマイトに似てる」
その一言に、私と、おそらく緑谷くんがドキリとする。
慌てたように「へ?!そうかな?!」だとか「いやでもっ…!」だとか何か弁解をしようとしている緑谷くん。そのやり取りを私も気が気でない心持ちで見守りながら、ちらりと隣の席の勝くんを見れば、興味のない様子で腕を組みながら目を閉じていた。と、ここで切島くんが「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねえぞ?似て非なるアレだぜ?」と言ったことによって話題が変わり、ほっと安心するように息をつく緑谷くんに、私も同じく内心で安堵する。
そして、脳内にやはり、という言葉が浮かんだ。というか、私は事の片鱗を自分の目で見てしまって、先生たちの会話などからある程度推察してしまったからなんとなく事情を察しているだけであるので、傍から見たら緑谷くんの態度は不自然極まりない。一応、クラス共通認識として、《かなり内気だけれどやる時はやる人》だという印象を抱かれているから、どもったり慌てたりするのはさほど違和感はないけれど、察している身からしては少々隠す気があるのか少し疑問が浮かぶ。
「しっかし、増強型のシンプルな個性は良いよな!派手でできることが多い!俺の《硬化》は対人じゃあ強えけど、如何せん地味なんだよなー」
言いながら個性を発動させて腕を硬化する切島くん。肌の色こそ変わらないものの、角ばって変異した腕は物理攻撃にはうってつけだろうなという感想を抱く。
「僕はすごい個性だと思うよ!プロにも十分通用する個性だよ!」
「プロなー。しかしやっぱヒーローも人気商売みてーなとこあるぜ?……まあ派手でつえーっつったらやっぱ!」
そこで切島くんたちの視線が私達の方へ向いた。
「轟と爆豪…あとは天使だな!」
「え?」
「あ?」
名前を呼ばれて思わず面食らう。後方の席に座っている轟くんの様子はわからないけれど、隣の勝くんは自分の名前が出たことで目を開けていた。
「爆豪ちゃんはキレてばかりだから人気でなさそう」
「なっ?!」
正直過ぎる梅雨ちゃんの言葉に勝くんの額に青筋が浮かんだ。
「ッんだとコラ蛙女!出すわァ!」
「ほら、やっぱりキレた。ねえ緑谷ちゃん」
「はわわわわわッ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげーよ」
「ッ!!テメエのボキャブラリーはなんだコラこのアホ面ァ殺すぞォ!!」
そして飛び交う勝くんの怒号と飯田くんの注意の声。後ろの席から百ちゃんとお茶子ちゃんの「低俗な会話ですこと…」「でもこういうの好きだ私!」という会話が聞こえ苦笑いを零していれば、今度は何故か私に声が。
「…その点、藤乃ちゃんは人気が出そうね」
「あ、わかるー!個性強くて、性格良くて、容姿も良い!女性トップヒーローも夢じゃないよね?!私も頑張らなきゃー!」
「ハッハッハ!フジノンのファン第一号は私なんだからね!あ、今のうちにサインもらっとくべきかな?!」
そういう梅雨ちゃんや三奈ちゃん、透ちゃんの声に、嬉しいやら恥ずかしいやらで再び浮かぶ苦笑い。通路挟んで私達の反対側の席、狭い座席の中で激しい身振り手振りで興奮したように話す透ちゃんに、透ちゃんの隣の席に座っている尾白くんが困ったような様子をしていたので、落ち着くように話していれば、「もう着くぞ、いい加減にしてくれー」と相澤先生の声が車内に響いた。
そうして程なくして到着した訓練場、続々とバスを降りる私達を待ち構えていたのはなんと――
「皆さん、待ってましたよ!」
災害救助で目覚ましい活躍をしているプロヒーロー、スペースヒーロー13号だった。
こうして、史上稀に見る最悪な訓練の幕が上がったのだった。
訓練場の中はまるでテーマパークを詰め込んだような規模の施設で、パッと見ただけでも様々な災害を想定して作られているのがわかる場所だった。
「水難事故・土砂災害・火災・暴風etc.……あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も、嘘の 災害や 事故ルーム…略して、USJ!」
何処かで聞いたことがあるような略称に本日何度目かの苦笑が零れる。他の皆もその略称に呆けているようで、誰かが呟いた「本当にUSJだった…」という呟きに、なるほどそれでポカンとしていたのかと納得した。
そんな私達を尻目に相澤先生が13号先生に近づいていき何やら小声で話しているのと見て、そういえば今日は相澤先生ともう一人の方…そしてオールマイトとの授業ではなかったかと思い出す。13号先生は宇宙服のようなコスチュームで顔が隠れているし、相澤先生はこちらに背を向けているのでお顔は見えないけれど、話している雰囲気は決して楽しそうなものではなく、脳裏にこの間見てしまった痩せこけた姿がよぎる。
まさかお体の様子でも悪いのでは…と心配になったところで、相澤先生が「仕方ない、始めるか」と私達に声を掛けた。
「えー始まる前に、お小言を一つ…二つ…三つ…四つ…」
どんどん数が増えるお小言に、一体何を言われるのかと軽く身構えていれば、13号先生が語ったのは個性の危険性についてだった。
13号先生の個性は《ブラックホール》。あらゆるモノを吸い込んで塵にしてしまうその能力で多くの災害現場で活躍してきた先生は、しかしてこの力は人をも容易く殺せる
体力テストで自身の個性の秘めている可能性を知り、初めての対人戦闘訓練ではそれを人に向けて使う危うさを認識したことを説いて、この授業では、ではその力を如何に救助のために使うかを学ぶというお話だった。授業を通して、私達の持つ力は人を害するものではなく、人を救けるためにあるものだと知って帰ってほしいと結んだ先生のお話に、途端歓声と拍手が聞こえる。
「わああカッコイイー!」
「流石災害救助のプロ!言うことが違うな!」
父とはまた違うやり方で人を助けてきたヒーローの言葉に胸が熱くなる。
「よし、そんじゃまずは……」
指示を出すために相澤先生が口を開いた途端、一瞬悪寒が走った。何故悪寒がと疑問に思ったのも束の間、突然天井のライトが消えて少し薄暗くなる。
「え……」
何事かと周囲を探っていると、私達から見て前方にある階段を降りた先の中央噴水のところに、黒い靄が現れた。最初は小さなものだったのに徐々に大きくなっていくそれにただ事ではないと身構えていれば、相澤先生が黄色いゴーグルをかけながら「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」と叫ぶように指示を出す。
「なになに?何かの余興?」
「さあ?でも臨場感あんなー」
「入試試験の時みたくもう始まってるってヤツかー?」
呑気に話す誰かの声に「違う…」と、黒い靄の中からどんどん人が出てくる目の前の光景から目を離さず呟く。
だって、私は知ってる。あの殺気ともいえる、平気で人を傷つけられる、傷つけることに何も感じない人が持つ特有の雰囲気を……!
「フジノン?」
「どうしたの藤乃っち!怖い顔してるよ?」
「ッ!飯田くん!今すぐ皆を纏めて!あれは……本物の
「なっ?!」
驚いたような他の皆に構わず、背に翼を出して皆の最前列、先生達の後ろに移動し周囲に光球を展開。相澤先生からの指示では待機だったけれど、それでもいつでも攻撃できるようにしていれば、私のただ事でない雰囲気を感じ取ったのか皆もそれぞれ警戒し始めた。
「正解だ天使……あれは
私達生徒を庇うような立ち位置で構えながらちらりと私を振り返ってそう言う相澤先生。いったいどれだけ出てくるのかという程の人数が黒い靄から現れてはこちらにゆっくりと迫ってくる様子に、何故こんなところにという疑問が浮かぶ。
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか…」
そう呟いた相澤先生の言葉に、「先日…まさか、警報事件…?」と思わず口から零れる。
「察しが良いな天使。これがただの授業なら満点やってるよ」
顔は敵に向けたまま軽口を叩くように言う先生に、警戒をしたまま返す。
「あら、褒めていただいて嬉しいですわ、先生」
「いの一番に動けたことといい察しの良さといい…できた生徒だよお前は。流石はあの人達の娘といったところか…」
まるで両親を知っているかのように話す先生の言葉が気になるものの、今はこの状況をどうしようかということに頭を回して眼の前の様子をつぶさに観察する。距離が離れているため声は聞こえないが、
迫ってくる敵とは別に黒い靄の前で動かない男が4人。
左から、見るからにあの黒い靄の発生源といった風で立つ、おそらく転移系かそれに似たような個性を持つだろう人物。その隣には灰色の髪の毛で人の手のようなものをいくつも顔から身体にかけてつけている男。さらに隣には変異型か異形型の個性だろうか、まるで人型の怪物のような見目の黒い大男。そして向かって一番右端に立っているのは、背に蝙蝠のような翼を持つ黒髪の若い男だった。4名のうち顔がはっきり見えているのは黒髪の男だけ。
纏っている雰囲気から、おそらくこの4人が主要人物だと当たりをつける。
ここで様子を伺っていた私と黒髪の男の目が合った。
その瞬間、強烈なまでの悪寒と嫌な予感が背筋を走り、気づいたら指示も聞かずに「先生すみません!」と叫びながら前に飛び出していた。
「!おい天使ッ!」
先生の怒鳴るような声が背に聞こえるが、まるで何かに掻き立てられるように手に弓矢を具現化させ、周囲の光球を矢に形成した後、敵の集団に向かって一斉に放つ。
矢が到達する頃には放った矢を輪に変えて拘束しようとするも、相手も場数を踏んだ
「なんだこりゃッはずれねえ!」
「なんの個性だよこれはッ?!」
少数ながらも捉えた
一斉に放った矢の中で敵の主要陣に向けたものは、何か黒い壁のようなもので防がれていた。
あれは何…?何の能力なのか一瞬考えていれば、すう…と黒い壁が消え、変わらず佇んでいる4人。しかし、右端の黒髪の男だけ手を軽く前に出していたのでおそらくあの男の能力なのだろうと察しがついた。
「天使…お前!」
「!すっすみません先生ッ。でも、恐らくあの黒い靄の前に立っている人物4人が主要人物と思われます。あの…右端の黒髪の男の人……あの人と目が合った途端、なんというか…悪寒が…ッ」
声だけでなく手足も震えてきて、ぎゅっと腕を握り込む。
「……はぁ…後で反省文だからな。13号ッ」
「はいっ先輩!」
「早く生徒の避難を――」
再度相澤先生が13号先生に指示を出そうとしたところで、突如上空から「こらこらぁー」と場違いなほど呑気な雰囲気の声が聞こえた。
慌てて上空を見れば、そこには先程目が合った瞬間に凄まじい悪寒を感じたあの黒髪の
「!!!」
「なッ?!」
いつの間に接近したのかと声もなく驚いていると、ニヤニヤと笑いながら私達を見下ろすその男は楽しげな様子で口を開く。
「せっかく会いに来たのに…帰っちゃダメだよ?
「え……」
「13号!生徒を頼むッ!」
そう言いながら男に向かう先生の背を見て、次いで響いた13号先生の「生徒の皆さんはこちらにッ!」という声に従って背を向けて駆け出した。
「おっと。危ない危ない。ていうかイレイザーヘッドじゃなくて俺が会いに来たのは藤乃チャンなんだけどー」
「ふざけるなよ
背後を伺いながら出入り口まで走っていれば、上空を翔んでいる男に向かって捕縛布を飛ばし牽制している先生の姿が。しかし縦横無尽に翔ぶ男を捕まえることは難しいらしく、いつか見た先生の個性が発動している合図の髪の毛も逆だっているのに男の翼は消えていないことから、あれは発動型ではなく変異型か異形型なのだと察する。確か先生自身の個性《抹消》は発動を消すことはできても、既に発動してしまったモノに関しては消せないはずだ。
「先生、侵入者用の装置は?!」
「ありますが…起動していないの考えると、向こうにそういった個性持ちがいる可能性があります。外部にも連絡がとれるかどうか…!」
走りながら前方から聞こえてくる声に、ハッとして上鳴くんに声を掛けた。
「上鳴くんッ貴方の個性で連絡は?!」
「!や、やってみる!」
「頼んだぞ、上鳴くん!」
「…現れたのはここだけか、それとも学校全体か…」
走りながら静かに呟く轟くんの声にちらりとそちらに視線を向ける。
「校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割、バカだがアホじゃねえ。これは何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」
轟くんの言う通り、用意が
あと十数mで出口に着くというそのタイミングで、「させませんよ」と声が聞こえた。
また
「はじめまして、我々は
亀裂が走ったようなおそらく目だろうそこを黄色く輝かせて話す
「僭越ながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴……オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず。ですが、何か変更があったのでしょうか?まあ何にしても私の役目は――」
質問をしているはずなのにまるで答えを聞く気がないかのように途端またぶわりと靄が広がる。あの
「うらぁぁあああッ!!!」
「おおおおおおッ!!」
勝くんと切島くんが敵に向かって飛び出してしまった。切島くんの打撃と勝くんの爆破が決まって煙が上がる中、誰かの「やったのか…?」という声が響く。主要陣の一人だと睨んだ相手、そんな簡単にやられてくれるかしら…と経過磯ながら煙が晴れるのを待てば、唐突に私の耳元から声がした。
「――危ない危ない。やれやれ話している最中だったのですが、せっかちですね…」
え?と振り向こうとしたその時には私はもう靄の中に囚われていってそのまま視界が黒に染まる。
もう見えない靄の向こう。「藤乃ッ!」という勝くんの声が聞こえた気がした。
数秒の浮遊感の後に放り出されたのは、崩壊した市街地を模した夜のフィールドだった。突然空中に放り出されたので慌てて翼を出してゆっくりと降下する。
私が今立っているのは建物と建物の間にある大きな道路。瓦礫や壊れた建造物の破片で散乱としている。天井を見上げればうっすらと壁のようなもので覆われているのがわかるのでおそらくドーム型の施設なのだろう。
街灯はあるから完全な暗闇ではないものの、夜という圧倒的に不利な状況に焦りが募る。
何故私一人がここに飛ばされたかはわからないが、一刻も早く皆に合流しなければと飛び上がろうと
いた時、声が響いた。
「やっと二人でお話できるね、藤乃チャン」
闇を縫うように上空から現れたのは、先程私の名前を呼んだ
「!あなた……」
「はあーイレイザーヘッドがしつこくてまいっちゃったよ」
「……先生はどうしたの?」
「うん?広場の方に蹴っ飛ばしてやったから、今頃は広場の雑魚たちと戦ってるんじゃない?」
雑魚…仲間じゃないの?あまりの言いように怪訝そうな顔で男を見ていれば、更に男が口を開いた。
「ねえねえ藤乃チャンッ!君の個性、『天使』っていうんでしょ?ふふ、さっきの攻撃といいその背の白い翼といい本当に本物の天使みたいだね!」
「どうして……貴方は何故私の名前を知っているの…?それに個性まで…」
「あはは、知りたい?ボクのお願い聞いてくれるなら教えてもいいよ?」
お願い?いったい何を言うつもりなのかと身構えていれば、「あははっそんな怖い顔しないでよー」とまるで何が楽しいのかわからないが笑いながらそう言う
「あのね、君にボクの子供を産んで欲しいんだ」
「なっ……」
その内容に言葉を失くす。そんな私の様子を他所に悪戯が成功した幼子のようにきゃらきゃらと笑いながら「そうそう自己紹介がまだだったよね!」と明るい声で更に続ける。
「僕の名前は
「あ、くま……?」
「そう悪魔!君の天使と真逆でしょう?君のことを知った時にさ、運命を感じたんだよね!で、これはもう産んでもらうしかないなと思って、今回の作戦についてきたんだー」
「作戦……あなた達の目的って、一体…?」
「んー?ボクの目的は藤乃チャンだけど、他の連中はオールマイトじゃない?」
「え?」
オールマイト?確かに本来のカリキュラムではオールマイト先生も授業に参加していたはずだったが、何の事情か今日は此処には来ていない。
オールマイトが目的…パッと考えられるのは倒すだとかそういうことだと思うけれど、でも世間一般的にオールマイトは平和の象徴と言われるとてもすごいヒーローだ。それは
「なんかね、オールマイトを殺すんだってさー。そのためにあんな気持ち悪いのを生み出すとか、ボクが言えた義理じゃないけど、頭おかしいよね!」
「!それってどういう…」
「あれ、見なかった?あの黒い大きなヤツだよ。《脳無》っていう、まあ改造人間かな」
改造人間…!オールマイトを倒すためにそんなものまで用意したなんて…
「ねえ、紅魔さん、だったかしら?さっきから私にいろいろお話してくれるのは何の為なの?」
「アギトって呼んでよ、藤乃チャン!そりゃあ―――君らに勝てるだなんて思ってないからだよね?」
瞬間、少ない光量の中で弓矢を形成して放つ。
「うわっ」という軽い声とともに避けられたそれをそのままに空に飛び上がって何処かにある出口に向かって翔び続ければ、あっという間に追いついてきたのか背後から声がする。
「こらーおイタはダメだよー?藤乃チャン?」
フィールドは圧倒的に不利、敵の個性の名前は判明しているものの能力は未知数、加えて先程の話の内容を考えればおそらく誘拐目的……このまま此処で叩くのはあまりにも無謀すぎると必死に翔びながら出口を探していれば、ふと後ろから風を切る音が。
「!!ッな…」
ほぼ直感で避ければ、私の足当たりを横切っていく黒い矢。見れば、相手は私のように黒い球から無数に矢を撃ち出していた。
「ほーら避けないと当たっちゃうぞー?あ、安心して!お腹は狙わないし勿論殺さないから!でも、藤乃チャン逃げちゃうし、このままだと連れて帰れないでしょ?だから――」
翔びながら辛うじて攻撃を避けつつ出口を探す。が、やはり夜のフィールドで視界が悪い。出口らしい出口が見つけられないまま翔び続けていれば、ふいに右肩に強烈な熱を感じた。
「ッ!ぁぁああ……ッ」
熱の後にやってきた痛みに思わず口から悲鳴があがる。見れば肩のところが矢を掠めたのか裂傷ができていて白いコスチュームを見る間に赤く染めていく。
突然の痛みにバランスを崩したけれど、辛うじて持ち直してまだ翔べているが、一旦何処かへ身を隠して治療しないとこのままじゃ逃げるどころじゃなくなる!
何処か、何処かに身を隠せるところを…!態勢を建て直さなきゃと必死で翔んでいると、おあつらえ向きなビル群を見つけたので、未だ止まない黒い矢の雨をなんとか避けつつそちらの方に翔ぶ。
「あははっいい悲鳴だったなー。ボク別にそういう趣味じゃないんだけど、もっと聞きたくなっちゃうじゃないか!」
金色の目を爛々と輝かせながら薄気味悪く笑って言う紅魔アギト。
数が少ないからあまり使いたくなかったのだけれど……!とヒップバッグから出したあるモノを振り向きざまに彼の眼前へ投げつけた。途端、ほんの数秒眩い光が発生して夜の街を照らす。すかさず個性を使って光の輪を形成、そのまま身体、太もも、足と拘束していけば、紅魔の動きが止まった。
とりあえず隠れる時間を稼げればとそのまま飛び去って適当なビルの内部に侵入。床に降り立って翼を消し、外から姿も光も見えないような奥の方へ向かって走る私だった。
はい、ここでオリキャラ追加ー。
今回のUSJ事件や今後の展開を考えるとどうしても追加しておきたかったキャラです。
天使あるところに悪魔あり、的なサムシングですね!
彼の人物像や能力詳細に関してはおいおい出していきますー。