天使なヒーロー!   作:寧太

3 / 15
今更ながら入試試験のスケジュールなどなど捏造しておりまーす!


01 雄英入学試験 後編

説明会を終え指定の更衣室で動きやすい服装に着替えて今立つココは、雄英高校演習場C。

ぞくぞくと着替え終えた受験者達が会場入りしてきて、各々精神統一なり準備運動をしている様子がそこかしこで見える。

かく言う私も、いつもトレーニングで着ている背中の上半分に布がないハイネックの白いインナーに下はジャージという出で立ちでぐぐっと背中を伸ばす。仮想(ヴィラン)という名のロボット相手の戦闘試験、おそらくほぼほぼ翔んでいることになるだろうから念入りに背中を解しておく。

 

準備運動を初めて数分、物見台のような高いところから姿を表したのはプロヒーロー《13号》さん。彼が現れたということはそろそろ始まるのかなと、いつでもスタートしていいように翼を出す。背中に翼が生えるいつもの感覚と視界の端に見える白い羽。羽を出した途端周囲からなんだか「おお」だとか「うわぁ」だとか声が聞こえたような気がしたけれど、変形型の中でも翼なんて珍しくないし多分違う誰かのことでしょうと気にせずに合図を待つ。

 

「演習場Cの受験者の皆さんは全員集まってますね?では、これより試験を開始します。制限時間は10分。はいでは、スタート!」

 

スタートの合図に翼と足に力を込めて空に舞い上がる。あっという間に20mほど飛び上がって、飛行しながら敵ロボットを探し始めればすぐに見つかった。強度がわからなかったのでとりあえず試し打ち、と空の手で弓矢を構えれば、光が収束してあっという間に光の弓矢になる。そのままロボ目掛けて矢を射れば、ずぶりと矢が刺さりその後ボンッと派手な音を立てて頭部にショートしたように小爆発を起こした。やはり機械なのか、ショートしたらそのまま動きが止まる。

 

「そんなに硬くないみたいね…」

 

思ったほど硬くないみたいなので、そのまま空を飛びながら次々と地上を闊歩するロボ目掛けて矢を射ってゆく。5、10、15…と順調に数を重ねていきもう少しで20といったところで、ロボが壊した瓦礫の影に片膝を抱えて蹲る人を見つける。

 

「!どうしました?怪我ですか?」

 

思わず地上に降りて駆け寄れば、俯いていた視線をあげて女の子が「足が…」と呟いた。

 

「足?こっちの伸ばしてる方の足かしら?」

「捻ったみたいで…折角の試験なのに……っ」

 

悔しげにまたうつむく女の子。捻った方の足を見てみれば見かけではわからないけれど、相当痛いのか少しだけ震えている。

 

「足以外は?怪我はない?」

「足以外は大丈夫だけど……でもこの足じゃもう…っ」

「捻挫よね?ちょっと触るわね」

 

一言断って患部であろうところを触れば「いっ…!」と小さく悲鳴があがったけれど、どうやら骨や腱は無事で本当にただの捻挫のようで安心する。

 

「これくらいなら大丈夫よ」

「え?」

 

女の子当人を安心させるように微笑み、次いで患部に視線を戻して両手を翳す。すると、先程弓矢を形成したように手のひらに光が集まってポウっと彼女の患部を光が覆う。時間にして数秒、そろそろかと光を収めれば、当の女の子がきょとんとしたような驚いたような顔をしていた。

 

「どう?まだ痛い?」

「!え?痛くない?!なんで?!」

「大丈夫そうね。じゃあまだ時間はあるから、お互い試験頑張りましょうね」

 

平気そうな様子を見てもう大丈夫かとその場を離れる。後ろから女の子の声が聞こえたけれど、時間は有限だものね、と振り返らずにまた大空へ舞い戻ってロボ探しに戻る私だった。

 

 

 

 

 

道中で怪我人を見つけたら安全地帯に退避させたり怪我を治したりしながら他の受験者の取りこぼしを射抜いて順調にポイントを重ねていったら、説明会にあった0Pロボがとうとう出てきた。空の上から遠目でだけれどその異様な大きさを目にして思わず言葉をなくす。地上を見れば、どうやらみんな退避しているようで一斉にスタート地点方面へ駆け出している。

空中にいる分余裕がある私は、逃げ遅れている人や怪我している人がいないか見回しながら飛行していれば、どこからか小さく「たすけて」の声が聞こえた。慌てて声が聞こえた方を低空飛行で探していれば、瓦礫の下で藻掻いている……ジャージの上下とグローブ?を見つける。

 

「たーすーけーてー!」

「えっと…?」

「!おお天使っぽい人!お願い手伝って!足がハマって抜け出せないのー!」

「ええっと、透明?なのね?あの、えっと、瓦礫はこれ?」

「そう!アイアム透明人間!その瓦礫だよー!お願い手伝ってー!」

 

ちらりと後方を伺えば、例の巨大ロボとの距離はだいたい2、300mくらいだけれど、あの大きさからして然程時間に余裕はないだろうと急いで瓦礫を退かすために動き出す。

 

まずは素手で持ち上がるか試したけれど、瓦礫の塊が大きくて私の力では持ち上がらない。ならばと瓦礫の出っ張り何箇所かに光を紐状にしてくくりつけて暇で瓦礫を吊るように持ちながら思いっきり翔ぶ!

 

「おお!今ゴトって音したよ!もう少し!」

「ううっ…うううう!!」

 

すぐ背後から今までに無いくらいバッサバッサと羽ばたきが聞こえるけれどそんなものに意識を向けちゃうとせっかくなんとなく持ち上がってきた瓦礫を落としてしまいそうになるので必死に目の前に集中する。

 

「もうちょっと!あと1センチ!」

「うううう……ッはぁああ!!!」

「抜けたー!」

 

(声音からして)彼女が無事に這い出てきたのを確認してゆっくりと瓦礫を吊り上げる光の紐から力を抜く。流石に少し疲れた…と小さく息を吐きながら彼女の元へ降り立つと、ペタンと地面に座ったまま激しい身振り手振りで「ありがとう!」と言われた。

 

「間に合ってよかった……さ、0Pロボが近づいていますよ。退避しましょう?」

「ええっと……足ヤっちゃって……」

「それは…」

 

言いかけたところでドーンと大きな音が。ハっと顔を上げればもう残り数十mの距離に例のロボがいて、急いで退避を!と彼女の様子を見る。

 

「うわぁぁあ巨大ロボ!!」

「足は?!走れる?!」

「無理!!」

「わかりました。高所恐怖症だったら……ごめんなさいね!!」

 

言いながらジャージからだいたいのあたりをつけて膝裏と背中に手を回して抱き上げ、一気に空へ駆け上がる。

 

「うひゃあぁあああ?!」

「しっかり捕まっててね!」

 

ほんの数瞬でいつの間にか肉薄してた巨大ロボの腕をくぐり抜ければ、空に到達するまではあっと言う間で。気づけば首に回っていた透明な腕の温もりに、透明でもやっぱり体温はあるんだなあなんて考えながらロボから距離を取るべく翔ぶ。

 

「すごいすごい!私空飛んでる!!」

「良かった、高所恐怖症は無いみたいね」

「大丈夫だよー!むしろ好き!ジェットコースターとかめっちゃ好き!」

 

キャッキャッとはしゃぎながら空の逃避行を楽しんでる彼女。ちらりと後ろを振り返ればロボからはだいぶ距離を取れたみたいでもう大丈夫だろうと息をつく。

 

「ふふふ、ジェットコースターとか好きなのね。じゃあ……こんなのは、どう?」

 

言い終わるやいなや、長年の飛行訓練の成果を見せるかのように宙返りやら逆さま飛行やらアクロバティックな飛行をすれば、嬉しげに「キャー!なにこれ楽しいー!」と悲鳴混じりに声をあげてくれる。

他の受験者が退避していたスタート地点に私達が着いたところで、ちょうど13号さんからの終了の合図が響き渡る。他の受験生の視線を浴びながら、ゆっくりと地上に降り立ち、手頃な瓦礫の上に彼女を座らせる。

 

「あー楽しかった!」

「ふふふ、楽しんでもらえて良かったわあ。…さて、怪我した足はどちら?」

「?右足だよ?」

「右足ね。捻挫かしら?」

「たぶん!血は出てないし!」

「ちょっと失礼するわね」

 

彼女のジャージを慎重に捲りあげておそらく患部であろう足を晒す。やはり靴とジャージの間は透明で地面がそのまま見えるけれど、多分ココだろうというところに手をかざして光を集めれば、「おおお?!あったかい!すごい!」と治癒されてる本人から歓声があがった。

 

「……よし。どう?まだ痛い?」

「うわぁ!痛くない!えっえっすごい!天使?!天使サマ?!」

「あはは、確かに私の個性は『天使』っていうけれど、天使サマって呼ばれたのは初めてだわぁ、ふふっ」

「でもホントにすごいよ?!あっという間に治っちゃったもん!あっえっと、助けてくれてありがとう!私葉隠透!」

「天使藤乃です。よろしくね」

 

座っていた瓦礫から立ち上がって、本当に足が治っているのが不思議なのかその場でピョンピョンと飛び跳ねながら興奮を顕にする彼女、葉隠さんと和やかに自己紹介を交わす。と、そこで別のところから声がかかった。

 

「あの!」

 

不思議に思いながら声の方へ顔を向ければ、そこには最初に怪我を治したあの女の子が。

 

「あら、貴女……」

「あの!私も助けてくれてありがとう!あの後もなんとか試験続けることができて、受かってるかはわからないけど、全力は出せたから悔いはないよ!」

「そう……良かった!もう怪我はない?」

「うん!大丈夫!本当にありがとう!」

「どういたしまして!」

 

にこやかにその女の子と話していれば、「俺もあの時は…!」とか「あたしも!避難させてくれてありがとう!」とか「天使サマ!」とか「付き合ってください!」などと続々と試験中に手を貸した方たちから矢継ぎ早に声を掛けられて気づけば人の群れに囲まれていた。各々にそれぞれ返事を返しながら、その群れを抜けるのが叶ったのはおよそ15分後のことだった。

 

人の群れから脱出して更衣室で着替え、無事に迎えに来てくれた癒手さんと合流。帰路につく。

疲れた体を車のシートに預けながら、全力は出し切って後悔は無いので、後は結果を待つだけだなぁなんて考えていたら、車の揺れと暖房の暖かな空気でだんだん瞼が重くなってきた。

さざ波のようにゆっくりと迫ってくる睡魔に抵抗せず身を委ねながら、頭の遠くで彼はどうだったのかな…と独り言ちた。

 

 




主人公のプロフィール②

個性『天使』

1 光エネルギーを操り、輪にして拘束に使ったり紐状にしてムチのように使ったり玉状にして打ち出したり、エネルギーを弓矢状に形成して射ることもできる。デメリットとしては、暗いところでは光量そのものが減るためできることが必然的に減る。ただ、光源に関しては割となんでもアリ。炎でも電灯でも日光でも月光でも光であればOK。

2 任意で背中に白い翼を生やし飛行できる。しかし、翼を生やすと衣服を着ている場合破れる。羽を飛ばしたり翼で風を起こすことも可能。雄英入学当初は最大積載量は大人約二人分。(自分は抜きで)

3 光エネルギーによって外傷の治癒ができる。病気の治癒は不可能。しかし、傷の重症度に比例して体力を使うので、複雑な傷の治療や過度な治療はキャパオーバーを起こして倒れる。また、より高度な治療を行う場合は翼を出していないとできない。

4 治癒に比べれば微々たるものではあるが、歌唱によってある程度ヒーリング効果(リラックス効果、疲労回復促進効果、安眠促進効果等)がある。勿論聞こえないと効果はない。よく歌うのは賛美歌のAmazing Graceと子守唄キラキラ星の英語歌詞版。

結論 天使っぽいことはだいたいできる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。