天使なヒーロー!   作:寧太

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体力テスト、原作では全員が一種目ずつ進行している形だったんですが、ロボもあってさらに合理性を取る相澤先生がなぜ全員で一種目ずつなんて方法をとったのかちょっと謎です。おのおのバラけて空いてるところからやってこーいじゃダメだったのかな?
という考えから本作ではこんな形に。だって二次創作だから!(魔法の言葉)


05 個性把握テスト

「「「「個性把握テストォ?!」」」」

 

各々準備が終わってグラウンドに集合した私達。皆が集まったのを確認した相澤先生から告げられたのは「これから個性把握テストを行う」という一言だった。

 

「ええ?!入学式は?!ガイダンスは?!」

 

お茶子ちゃんが困惑したように言うその言葉に、相澤先生はまるで何を言っているんだというような顔で答える。

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ」

 

覇気のない声でさらに続く。

 

「雄英は`自由な校風`が売り文句。そしてそれは`先生側`もまた然り。…お前たちも中学の頃からやってるだろう?個性使用禁止の体力テスト」

 

そうして端末で見せられたのは、ボール投げ・立ち幅跳び・50m走・持久走・握力・反復横跳び・上体起こし・長座体前屈の8種目だった。

 

「…が、国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だな」

 

なんて合理主義な先生だろうかと驚く。確かに初めて顔合わせをしたときから片鱗はあったけれど、ここまで合理的だとは…無駄が嫌いな方なんだろうか。確かに個性を解禁してしまえばもう平均なんてあってないようなものだものね、と一人納得する。

 

「実技試験成績1位の天使(アマツカ)

「!はい」

「案内ご苦労だったな。…で、中学の時のボール投げの記録、何mだった?」

「ええと、42mです」

「じゃあこれ、個性使って全力で投げてみろ」

「わ、わかりました!」

 

私の個性は物を投げるというのにあまり使わないのだけれど…。いきなりの指示で戸惑うも、まずは翼を出してからと上着のチャックに手をかけてその場で脱ぐ。

 

「おおー?!」

「キャー藤乃ちゃんセクシー!背中ガラ空きー!」

 

なんだか興奮するように声をあげた小さい男の子と透ちゃんに苦笑いを返しながら、上着を片手に先生からボールを受け取ってサークルまで歩き出す。

 

「藤乃ちゃん、良ければ上着預かるわよ」

「あら、梅雨ちゃんありがとう。お願いね」

 

梅雨ちゃんの提案を有り難く受けて上着を渡してサークルの中央に立つ。

そしていつものように翼を出した。

 

「うわぁ…白い羽!」

「藤乃ちゃんの羽ってやっぱり綺麗!」

「天使の個性って翼だったのか!」

「わぁ…綺麗やねぇ!」

 

 

同級生たちの声を背に受けつつ、翼にぐっと力を込めてボールを構える。

 

「円から出なきゃ何しても良い。思いっきりな」

「はいっ」

 

一呼吸置いた後、翼で風を起こすのと同時に腕を振り下ろしてボールを投げた。

 

「っはぁあッ!」

 

翼からの強風でグラウンドが埃立つも、空を見ればちゃんと風に押されてボールが流れていく。翼で風を起こすだけだから、最初に後押しはできるけど持続力は然程無いので徐々に高度が落ち、そしてポトリとボールが落ちた。

 

「はい、これが天使の記録な」

 

見せられた端末には602m。個性無しで投げたときのおよそ14倍。個性を使うとこうも伸びるのかと素直に驚く。

 

「まずは自分の最大値を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

「うおー!すげー!」

「602mってマジかよ…?」

「何これー!面白そうー!」

「個性思いっきり使えんだー!流石ヒーロー科!」

 

皆が興奮したように口々に言う言葉に、ふいに相澤先生が「面白そう、か……」と呟いた。

梅雨ちゃんから上着を受け取って皆の方に近寄れば、先生が続けて言う。

 

「ヒーローになる3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

その言葉に浮足立っていた空気がまたもや困惑に変わる。

 

「…よし、8種目トータル成績最下位のものは`見込み無し`と判断し、除籍処分としよう」

 

まるで楽しいおもちゃを見つけたかのように口元に弧を描いて先生が言った途端、まさかの発言にいたる所から「ええ?!」「そんな?!」などの悲鳴が聞こえた。

 

「生徒の如何は俺達の自由!……ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ!」

 

手厚い歓迎を受けて思わず苦笑いが零れた。【チヨ教室】の2年の先輩に聞いたけれど、現在2年のヒーロー科は()()()()しかないらしい。つまり、これは脅しでも何でもなく()()()()ことなんだろう。

 

「最下位除籍って…入学初日ですよ?!いや…初日じゃなくても理不尽過ぎるっ!」

「自然災害・大事故、そして身勝手な(ヴィラン)達……いつ何処から来るかわからない厄災、日本は理不尽に塗れている。そういうピンチを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったのならお生憎。これから3年間、雄英は君たちに苦難を与え続ける。…更に向こうへ《Plus Ultra》さ!」

 

そして挑発するように人差し指をクイクイと揺らす。

 

「全力で乗り越えてこい!」

 

その一言で、皆の闘志に火が着いたように空気が変わった。

流石日本最高峰のヒーロー科……苦難を超えてPlus ultra(更に向こうへ)、か。その言葉を胸に刻むように心の中で反芻する。

 

「さてデモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

その言葉を合図に、雄英入学初日の苦難が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ピッ……反復横跳び 天使藤乃 記録 56点》

 

競技を終えて記録ロボットが私の成績を読み上げた。

自分のデータはもちろんわかるけれど、他の方のデータは目立つようなものしか知らないので自分が現在どのような順位にいるか全くわからないのが少し不安だけれど、でも個性を全開に使ってのテストだからさほど悪い成績ではないだろうと冷静に自己分析する。…なんて、他の人の個性がどのようなものか全くわからないからただの空元気でしかないけれど。

 

人力ではなくロボットが記録を測ってくれるので空いているところから順々に回っていき、気づけば残りは50m走の1種目のみ。今終わった反復横跳びや握力、上体起こしなど、私の個性とは相性が悪い種目を除けば成績は悪い方ではないはず。立ち幅跳びでは、お茶子ちゃんのボール投げに続いて∞の記録も出したし、あまりにもあんまりな成績を取ってチヨ先生に怒られるなんてこともないだろうと安心していれば、なんだかボール投げのブースが騒がしい気がして少し近寄ってみた。

 

「先生ッ……まだ、動けますッ!!」

 

凄まじい形相と脂汗、そして抱えるように右手を押さえる緑谷くんの姿に、いったい何があったのだろうかと不思議に思っていたら、漏れ聞く話を聞く限り、彼の個性ですごい記録を出したけれど、個性の反動で怪我をしてしまったらしい。

怪我と聞いて思わず先生に近寄った。

 

「あの、相澤先生」

「どうした天使」

「あの、競技が終わってからでいいので、彼の怪我を治しても…?」

「……競技が終わったらな」

「!はいっ!」

 

先生からの許可も取れたので、まずは自分の競技を終わらそうと急いで50m走のブースに走った。

 

 

 

 

 

「全員競技は終わったな?じゃあパパっと結果発表。トータルは単純に、各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは時間の無駄なんで一括開示する」

 

そう言って手元の端末から順位表が投影された。

 

1位 八百万百

2位 轟焦凍

3位 爆豪勝己

4位 天使藤乃

 

自分の名前が4位にあってほっと息をつく。自分の名前のすぐ上に目を滑らせてから、当の本人の背中をちらりと盗み見れば、むすりとした顔で画面を睨みつけていた。

そして最下位の名前は…緑谷出久くん。その彼を見ると、やはり除籍の言葉を気にしているのか暗い表情で俯いていて顔は見えない。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

ふいに言った相澤先生の言葉に呆気にとられた。

 

「君らの個性を最大限引き出す`合理的虚偽`ってやつさ」

 

人の悪そうな笑顔でそう話す相澤先生。たちまち最下位の緑谷くんや他のひとからもちらほらと「えええ?!」という悲鳴が聞こえた。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ」

 

緑谷くんたちの様子に百ちゃんがそう零すけれど、先輩の話を聞いていた身としてはとても嘘とは思えない。余計な混乱を招くだけだから口にはしないが、きっと合理的虚偽に()()()のだろうと察した。

 

「これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから、戻ったら目を通しておけ。…あ、天使」

「!はい?」

「この後呼び出しだ」

「わかりました」

 

きっと【チヨ教室】のことだろうと返事を返せば、戻ろうとした相澤先生の背中に「待ってください!」と飯田くんの声がかかった。

 

「…どうした?」

「カリキュラム等については書類を確認すればいいとのことでわかりました。ですが、天使くんのことはどういうことでしょうか?彼女の一週間前から学校に来ているという発言や、同じ新入生であるのに校内について詳しかったり…正直腑に落ちない点がたくさんあります」

「なんだ天使…話してなかったのか」

「ええと、言って良いものかがわからなくて…」

 

そういえば後で話すと言ったきりそのままだった。後で先生に確認しようとしていたのをすっかりと忘れていて、呆れたような視線を投げかける先生に苦笑いを返す。背を向けたままだった先生が再び私達の方へ向いてひとつため息をついた。

 

「天使のことを説明する前に……緑谷」

「!はっはい!」

「ちょっとこっち来い」

「ははははい!」

 

オドオドびくびくとまるで何か悪い子としたのかと言いたげな顔で相澤先生の近くに寄る緑谷くん。他の皆も何故いきなり緑谷くんが呼ばれたのかわからず不思議そうにことの成り行きを見守っていた。

 

「ええと……な、なんでしょうか?なにかしましたか…?あ!やっぱり除籍だとか…?!」

「違う。…天使」

「はい。……ああ、そういうことですね」

「早くしろ」

「わかりました」

 

先生の言わんとする事、皆に見せたいものや意図がわかったので、緑谷くんに近づく。

 

「あ、まつかさん?」

「そういえば自己紹介がまだだったわね。天使藤乃です。よろしくね、緑谷くん」

「!はははははい!よ、よろしくお願いします!!」

「それじゃあちょっと手を見せていただける?」

「手……?こっちですか?」

「ああ、違うの、ごめんなさい。怪我している方よ」

 

不思議そうな顔をしながら緑谷くんが手を差し出したので、怪我に触らないようにその手を握って具合を見る。

 

「ひぇ?!」

「…うん、これなら大丈夫そうね」

 

怪我の具合を見てこれなら私でも治せそうだと確認できたら、上着を脱いで本日何度目かの翼を出した。いきなり目の前に白い翼が出てきた緑谷くんはなんだかとても驚いていたけれど、気にせず彼の掌を下から支えるように持ち上げ、空いてる片方の手を怪我の上に翳す。

何をするのかわからないなりに私が何をしようとしているのか想像がついたのだろう。先程までは驚いたり慌てふためいていた緑谷くんが、真剣な表情で重なっている自分の手と私の手を見ていた。

程なく光が集まって緑谷くんの手を覆う。

 

「すご……あたたかい…!」

 

数秒後、もういいかなと光を収めて手をどければ、そこには傷なんて無かったかのように綺麗になった緑谷くんの手。

 

「!!治ってる……!!すごい!あんなに痛かったのに!!」

「「「「「おおおおおお!!」」」」」

 

怪我をしていた右手を翳して凄い凄いと連呼する緑谷くんと、つられたように歓声を上げるクラスメートをそのままに、まるで光の粒子が溶けるように翼を消して上着を着込む。

 

「どう?もう痛くない?」

「うん!!凄いや!天使さんの個性って治癒もできるんだね!さっきまで痛かったのにもう何ともない!翼も綺麗だしなにより飛行能力もあるしこれってもしかしなくても凄いんじゃ?まだ体力テストで能力を見ただけだしそう言えば入試1位だったって相澤先生が言ってたっけなら敵ポイントとレスキューポイントが高かったってことだよねそれならなんらかの攻撃手段もあるということで」

「あの、緑谷くん?」

「緑谷、そこまでにしろ」

「はっ!すすすすいません!!」

 

いきなり虚空を見つめて手を口に当てながらブツブツと呟く緑谷くんにストップをかけて皆の方へ向き直る。と、ここで相澤先生から説明が始まった。

 

「見てもらった通り、天使の個性は治癒もできる。で、お前ら治癒に使える個性が他の個性に比べて極端に少ないって知ってるな?希少だと言ってもいい。雄英では毎年治癒系の個性持ちが入ると、リカバリーガールの下`特別教室`で勉強するんだ。昔はただの弟子育成だったんだが、今じゃ通称【チヨ教室】なんて名前がついてるな。で、天使はそこに在籍してて入学1週間前から登校してリカバリーガールに師事してる。だからお前らより少し校内やなんかについては詳しい」

「特別教室?」

「そんなの聞いたこともないぞ?」

 

ざわざわと漏れ聞こえてくる声に答えるように先生が続ける。

 

「別に公にはしてないが昔からあるぞ。ただ、個性の希少性からして在籍者は少ないからな。確か今は……」

「3年の普通科が2名、2年のサポート科が1名、そして私の計4人です」

「ま、そういうことだ。いかに治癒系の個性が少ないかわかるだろ。学校側としても治癒系の個性は積極的に伸ばしたいって方針でな。まあ自分が在籍してる科の勉強と並行して勉強するんだ。在籍している本人たちは大変なわけだが…」

「あはは……」

 

まだ師事して一週間あまりだが、たしかに大変は大変だと思う。明言はせずとも苦笑いで察してくれたのか、幾人かから同情を含んだ視線を頂いた。

 

「ま、そんなわけで、別に贔屓しているわけじゃないが事情が事情なんでな。飯田、これでいいか」

「はい!説明していただきありがとうございます!」

「じゃ、そういうことで。今度こそ教室にもどれー」

 

そう言って今度こそ去っていく相澤先生の背中を見送り、さて私も着替えなきゃと歩き出そうとしたところで「あの!」と緑谷くんから声がかかった。

 

「?どうかした?緑谷くん?」

「怪我、治してくれてありがとう!それで、天使さんの個性なんだけど…Dr.ライトに似てる気がして…」

「あら、父を知ってるのね」

「ち、父ぃ?!」

 

目をまんまるにして驚いた顔をしている緑谷くんに思わずくすりと笑いが零れる。

 

「ふふ、そんな驚かなくても!」

「えっあっごごごごめん!……でも親子なら納得がいくよ。じゃあその翼はやっぱり…」

「ええ。母のエル・レディからの遺伝なの。私の個性は父と母の複合個性《天使》」

「てんし……」

「ちょっと恥ずかしいけどね。でも父のような医療系ヒーローになりたいって思ってるから、この個性は気に入ってるの」

「!うっうん!すごい個性だと思うよ!本当に!」

 

興奮したように目を輝かせる緑谷くんの顔が、なんだか好物を目の前にしたあーちゃんを思い出させて少しだけ可愛いなぁとほっこりしていれば、いつの間にか他のクラスメートも近くに来ていた。

 

「藤乃ちゃーん!いやもうフジノンだ!超絶美少女天使フジノンの個性って、やっぱり凄いよねー!」

「なんだよ超絶美少女天使って。でも、確かにすごい個性だよね」

「けろっ…透ちゃんは知ってたの?藤乃ちゃんの個性」

「うん!入試の会場一緒だった!それに、私も怪我治してもらったし、抱っこしてもらって空も一緒に翔んだし!」

「へえーやっぱ空飛べるのっていいよなあ!あ、天使さん!俺上鳴電気!よろしくな!治癒系の個性持ちってすげーな!」

「オイラは峰田実!なあなあもう一回羽だしてくんないか?!上着脱いで!!」

「俺は瀬呂範太!天使って入試のときに目立ってた子だよな?聖女の制服着てたし!」

「天使くん!贔屓を疑うような言動をしてすまない!だが先生に説明して頂いて納得したよ!ヒーロー科と特別教室の両立、ぜひ頑張ってくれたまえ!僕にできる事があれば微力ながら協力しよう!」

 

矢継ぎ早に話しかけられてなんと返したものかと困りながらも、せっかくのクラスメートとの交流。一人一人の話を聞きながらゆっくりと更衣室に戻る私達だった。

 

 




どうでもいいメモ

特別教室 通称【チヨ教室】
毎年治癒系の個性を持ってる人が入ったら在籍を推奨している。
現在は3年普通科2名、2年サポート科1名、1年ヒーロー科1名の計4名が在籍。
授業自体は基本火曜木曜の週二日。これはリカバリーガール自体が多忙な為。授業は週二日だがその分課題をよく出されるし、なんなら実地訓練も割と頻繁にある。そして、リカバリーガールがよくお菓子をくれる。

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