いつも閲覧いただきありがとうございます!感想もものっそい励みになります!これからチマチマと返信、していけたらいいなー(願望
というかどうなんですかね、他の方って返すんですかね?文章書くだけでも結構時間かかるのに、良く返信する時間あるなぁ、羨ましい。
怒涛の個性把握テストがあった日の翌日。
この日からスケジュール通りのカリキュラムに沿って、午前は必修科目の普通教科、お昼を挟んで午後からはヒーロー学の勉強が始まる。
なんと雄英ではプロヒーローがヒーロー科目だけでなく普通教科も教えてくれるので最初は驚いた。
現在は4限目の英語で、担当教諭はなんとあのボイスヒーロー《プレゼント・マイク》。
「はい、じゃあこの例文のうち間違っているのは?」
あのハイテンションな話し方が特徴的なプレゼント・マイク先生の授業風景は驚くほど普通で、逆にたまに出る例の話し方に少しびっくりするほどだった。
「エヴィバディヘンズアップ!!盛り上がれェ!!」
その号令に教室内で幾人かの手が上がり、当てられた人が回答していく。
「正解だッ!!…じゃあ次は教書10ページの英文を読んでもらうぞー。…じゃあ、エンジェル
「(エンジェル天使…?)はい」
その場で立ち上がって指定ページを開くと、息を吸い込んで読み上げてく。
「I wander'd lonely as a cloud That floats on high o'er vales and hills,
When all at once I saw a crowd, A host of golden daffodils,
Beside the lake, beneath the trees Fluttering and dancing in the breeze.
(まるで谷や丘の上を浮かぶ雲のように 僕は彷徨っていた。そうしたら突然、金色に輝く水仙の花を見つけたんだ。それは湖の側で、木々の下で、そよ風に吹かれながら揺れたり、踊ったりしていた。)」
「グレイトだぜエンジェル天使ァ!」
と、ここでチャイムが鳴る。
「おっともうこんな時間か。じゃあ今日の授業はここまで。問題集の2~7ページまでを宿題にしとくからやっておくように。……それじゃッスィーユーネクスタイッ!」
先生が教室を出たことによって一気に教室内の空気が緩くなる。
「んあー!やっと午前の授業終わったー!」
私の二つ前の席に三奈ちゃんが大きく伸びをして言う。
さて入試の時を除いてこの学校で初めてのお昼だ。先輩の情報で雄英の学食はプロヒーロー《ランチラッシュ》が腕をふるっていると聞いていたからせっかくなのでと週の半分は学食、もう半分はお弁当にしようと決めていた。今日は学食のつもりで来たので、早速個人ロッカーからお財布を取り出してさあ大食堂に向かおうとした所で後ろから声がかかる。
「フジノンー!ご飯一緒に行こう!」
「私もご一緒してもいいかしら?けろっ」
「透ちゃん、梅雨ちゃん!ええ、喜んで!」
そうして3人連れ立ってやって来た大食堂は、流石にお昼時、既に混んでいて多くの人で賑わっていた。注文カウンターの列に並びながら何を食べようか話し合っていると、前の人がランチラッシュの「白米に落ち着くよね!最終的に!」の言葉に定食にしたようで、定食も美味しそうだわぁと少しだけ心惹かれる。
「はいいらっしゃい。何にする?」
「?あの、メニューは無いんですか?」
「無いよ!なんでも作るよ!」
「ええと、では焼き魚を中心に和定食をお願いします」
「焼き魚だと今日は鰆か鯖かな!どっちにする?」
「では鯖で」
「了解!じゃあ横の機械で会計をして、その隣が受け取り口だよ!」
「ありがとうございます」
言われたとおり受付カウンターのすぐ右隣に自動精算機のような機械が置いてありそこで会計を済ませる。そしてさらに右にずれて待つこと5分少々、「焼き魚の和定食、あがりー!」と声が響いたのでお盆ごと料理を受け取り、さて空いてる席はと見渡せば運良くテーブルが一つ空いていたので、先に座って席を取ることにした。
「おまたせー!」
テーブル一番端に腰掛けた私のすぐ隣に梅雨ちゃん、お向かいには透ちゃんがそれぞれお盆を置いて席に着く。
「フジノンはお魚定食?渋いねー!」
「白米がいいなあと思って定食にしたの。透ちゃんはミートスパ?梅雨ちゃんは?」
「私は親子丼にしたわ」
「どちらも美味しそうねぇ」
冷めないうちにと3人で手を合わせていただきますを合唱する。
お箸を取ってまずはお味噌汁から。お椀に口をつければ、お出汁と合わせ味噌の味がふんわりと広がって文句なしに美味しい。
「うん!流石ランチラッシュ!めっちゃ美味しいー!」
「ええ、本当ねぇ」
「プロって凄いのね。親子丼はよく作るけれど、ここまでの味が出せるようになるかしら?」
「そうね、和食ってやっぱり難しいわよねぇ」
「おおー!フジノンも梅雨ちゃんもお料理するんだね!」
「私はまだ小さい弟と妹がいるし、両親が共働きだから必然的によくするわ」
「私も弟がいるからそういう意味では梅雨ちゃんと似たような形だけれど、そうじゃなくてもお料理は好きよ。趣味みたいなものかしらね」
お互いのことや今日の授業のことなどを話しながら食事を楽しんでいると、「おーい!」と少し遠くから声がした。
「流石昼時、人がいっぱいだな!此処良いか?」
「あら切島くん。ええ、どうぞ」
「サンキュ!……おーい、此処空いてんぞー!」
「でかした切島!…はいはい、お邪魔しますよーっと!」
「俺もお邪魔しまーす!」
そうしてそれぞれ開いてる席にお盆を置いたのは上鳴くんと瀬呂くんだった。
「はーい!いらっしゃいいらっしゃーい!」
「ええと、葉隠さんだよな?」
「うん!葉隠透だよ!」
「んで、天使さんはわかるとして、そっちの君は?」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんて呼んで」
「おお!よろしくな!梅雨ちゃん!」
人が増えて更に賑やかになったテーブル。まだ入学二日目でお互いの名前があやふやなので、軽く自己紹介をしながら食事の続きを取る。ちなみに切島くんはステーキ定食、上鳴くんがハンバーガーセット、瀬呂くんが生姜焼き定食をそれぞれ頼んでいて、流石男子と言って良いのか私達が食べている量とは明らかに違うのに少し驚く。
「ずいぶん食べるのねえ」
「そうか?いつもこんくらいだぞ?なあ?」
「俺はわりと食細いほうだけどなー」
「まあ高校生男子ならこんなモンだろ?それになにより、この後はヒーロー基礎学だろ?きっと体動かすヤツだって!」
ご飯を頬張りながらそういう瀬呂くんの言葉に、そういえばカリキュラムでは午後はヒーロー基礎学の予定だったかしら、と脳内で思い出していれば、初のヒーロー科ならではの授業に皆ワクワクとした雰囲気で話し出す。
「どんなことやるのかしら?」
「最初の授業だしねー!体作りでトレーニングとか?」
「まあ順当に行くと最初は基礎訓練だよなー!」
「いや相澤先生の例もあるしな…意外とアレかもよ?」
「アレってなんだよ?」
「アレはアレだろ!」
何をするのか、誰が担当する授業なのかと話題は尽きないまま賑やかな食事の時間は過ぎていき、そしていよいよ待望の授業の時間になった。
「わぁたぁしぃがァァァアア!!!……普通にドアから来たッ!!」
「オールマイトだ…!」
「すげえや…!本当に先生やってるんだな!」
「あれ、
「画風違いすぎて鳥肌が…!」
思わぬ人物の登場に一気に教室内が浮足立つ。そして教壇にゆっくりとあがったオールマイトが口を開いた。
「私の担当は`ヒーロー基礎学`!ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ。単位数ももっとも多いぞ!…早速だが、今日はコレッ!!」
そして掲げられたプレートには《BATTLE》の文字が。
「そう!戦闘訓練!」
いきなりな授業内容に少し驚く。相澤先生といい、雄英の先生方というのは本当に`自由`なのね…と内心苦笑いを浮かべていれば、更にオールマイトが続ける。
「そしてそいつに伴ってェ……こちらッ!」
オールマイトが指さした窓側の壁から、ウィーンという機械音とともに壁が飛び出してきて、そこにはそれぞれ番号が振られているトランクがずらり。
「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って作られたコスチュームッ!!」
途端教室内に歓声が上がる。
なるほど、確かに入学前に被服控除という事でコスチュームの要望や身体情報、個性届を提出したことを思い出した。翼人としてすぐ身近にいる母や、一目で医療系ヒーローだとわかる父を参考に散々頭を悩ませて提出したものがどんな形になったのかとても気になるところ。
「さて、それぞれ着替えたらグラウンドβに集合だ!」
「「「「「はい!」」」」」
「じゃあ私は先に行ってるから、遅れて来るんじゃあないぞッ!」
そう言って教室から去っていくオールマイトを尻目に、我先にと皆がトランクを取りに行く。パッと見た限りだと少し混雑していそうだったので、先にロッカーに貴重品を預けて自分のコスチュームを取りに行く。自分だけのヒーローコスチューム、そして初めての戦闘訓練!いろんなワクワクで胸を高鳴らせながらしっかりとトランクを持って更衣室に移動し始めた。
「格好から入るってのも大切なことなんだぜ、少年少女!自覚するんだ……今日から自分は、ヒーローなんだとッ!」
ずらりと総勢20名がコスチュームに身を包んだ姿は圧巻の一言だった。ボディスーツや道着のようなものから、既に補助アイテムを依頼していたのか様々な装備品をつけているコスチュームまで多種多様で、格好だけ見れば皆本物のヒーローとなんら遜色ない出来。サポート会社というのは凄いお仕事をするのねぇと一人感動する。
「いろんなコスチュームがいるのねえ…」
「ね!フジノンのはあれだね!白いね!」
「ふふ、医療に携わるものとしては白は欠かせないから」
「うーん!衣装も白だし羽も白いしますます
「そうかしら?」
ここで私のコスチュームの説明を軽く。透ちゃんの言う通り、すべてを白と銀で統一している私のコスチュームは上から、翼のために背中が開いたノースリーブハイネック、首元にはマイクつきの音を増幅する指向性スピーカー小型版(首輪型)、腕には二の腕まである白い指ぬきロング手袋に西洋の騎士がつけているような銀の篭手。下は白い短パンに普段から愛用しているガーターベルトでニーハイソックスを吊って、走りやすいようにローヒールのショートブーツ、膝にも銀の膝当てをつけている。そして腰にはふわりと広がる腰マント、さらには簡易の治療道具などを入れてあるヒップバッグだ。…ちなみに要望には出していないけれど、何故かマントには銀糸で十字架がワンポイント刺繍してある。
「なんかもう綺麗とセクシーとカッコイイが同居してる感じ!」
「ふふふ、ありがとう。そういう透ちゃんのは……何か特殊な生地なのかしら?こう、個性に合わせて透明になるような……?」
「ううん?違うよ?」
「え」
「私のはグローブと靴だけ!」
「……ええと、寒くないの?風邪引かないかしら……?」
「今は大丈夫かな!」
グローブと靴だけ?つまりほとんど裸?羞恥心が…慎みを…でも本人の個性的には最善…?でもでも女の子がみだりに肌を晒すのは……けれど透ちゃんの個性は透明化だから見えないし……。
ものすごく葛藤があったけれど、「体調崩さないように、ね」と一言添えるのが限界だった。
「いいじゃないか、皆。かっこいいゼ…!さあ始めようか!有精卵共ッ!」
オールマイトのその言葉に、授業の説明が始まる。
初の戦闘訓練の内容はなんとヒーロー組2名と
流れとしては、敵組が今回の舞台であるビル型のアジトでヒーロー組を待ち構えていて、ヒーロー側はハリボテの核兵器を確保するか適役を確保する。敵側は制限時間15分以内に核兵器を守るかヒーロー側を捕まえることが勝敗条件となる。ちなみに確保は白い確保テープを用いて行われ、さらに建物の見取り図の配布、そして敵側はペアと連絡がとれるイヤホン型の小型無線を使用できる。
組み合わせは厳正なるくじ引きで対戦相手もまた然り。…説明の最中飯田くんが「組分けは適当なんですか?!」と声を上げたけれど、緑谷くんの「プロは他事務所の人と急造チームアップする場合もあるから!」という一言で納得して矛を収めた。
「さて組み合わせを発表するよ!」
そしてくじにより分けられたペアが発表される。
Aチーム 緑谷・麗日ペア
Bチーム 障子・轟ペア
Cチーム 八百万・峰田ペア
Dチーム 爆豪・飯田ペア
Eチーム 芦戸・天使ペア
Fチーム 口田・砂藤ペア
Gチーム 耳郎・上鳴ペア
Hチーム 常闇・蛙吹ペア
Iチーム 尾白・葉隠ペア
Jチーム 切島・瀬呂ペア
「おおー藤乃っちとペアだ!藤乃っち!よろしくね!」
「ええ、三奈ちゃん。こちらこそよろしくね」
ペア相手である三奈ちゃんと互いに挨拶していれば、どうやら最初の対戦相手が発表されたようだ。対戦カードは敵側がDチーム、ヒーロー側がAチーム。つまり、爆豪くん飯田くんのペアと緑谷くんとお茶子ちゃんのペアの対戦だった。
「(確か二人は幼馴染だったはず……なら互いの手は知り尽くしてるのかしら?)」
顎に手を当ててどういう試合運びになるか想像していると、オールマイトから移動の指示が出る。これから対戦する2組と別れて、私達はモニタールームへと向かうのだった。
「なんつー試合だよ……」
誰かの言葉が耳に響く。
モニタールームで観戦していた第一試合。終始ハラハラするような試合運びで、幼馴染ということで何やら確執があるらしい二人は、純粋に勝利を狙った緑谷くんの機転とお茶子ちゃんのチームワークでヒーロー側の勝利という形で幕を閉じた、が敗者が無傷で勝者が双方行動不能という、訓練でなければあまり褒められたものでない終わり方に、試合後の講評もどちらのチームにとっても散々なものだっただろう。唯一飯田くんは褒められていたけれど。
私の彼に対してのイメージは6歳のあの時で止まっているけれど、今日一日の様子を見て自信家なところやそれを裏付ける実力の高さ等は健在のようで、当時から多少あった物言いのキツさは輪をかけていたけれどそれでも強く逞しい男の子に成長したんだと思っていた。
……なのに、その男の子は今、勝敗が決まってからひたすらに俯いていて顔が見えない。けれど、硬く握りしめられた拳が彼が今抱える感情を物語っているようで、なんだか少し胸の奥が粟立つような感覚がした。と、そういえば緑谷くんがまた個性の反動で怪我をしたのを思い出した。
「オールマイト先生」
「なんだい、天使少女?」
「あの、緑谷くんの治療をしても…?」
「うーん、君の能力などのことは聞いているし、その気持ちはとても尊いものだと思うがね、君もこの後訓練があるだろう?今は許可できないかな!大丈夫!リカバリーガールが対応してくれるさ!」
「そうですか……すみません、わかりました」
一応申し出たものの、オールマイトの言い分に納得して引き下がる。授業が終わったら様子を見に行けばいいかと頭の隅で考えて、続いて始まるヒーロー側Bチーム障子・轟ペアと敵側Iチーム尾白・葉隠ペアがフィールドに向かうのを何となしに眺めながら、そういえば何でさっきは胸が粟立つような感覚を感じたんだろうと内心一人首をひねった。
何故だろう、私にとって彼は特別な男の子だ。これは間違いない。なにせ自分の恩人であるし、ヒーローになりたいと初めて思わせてくれた存在だ。強くて、優しくて、ぶっきらぼうで口が悪くて、性格も決して穏やかとは言えないけれど、でも、それでも彼はすごい人なのだと、彼は彼のまますごい人になったのだと私の直感が告げている。現に体力テストでも私より上に名前があったり、ちらりと盗み見たテスト風景も、爆破という一見すると派手だがしっかりコントロールしないと下手したら大惨事になり得る強い個性を駆使して記録を出していた。
何故なんだろう…と疑問が浮かびつつも、オールマイトの「さあて、配置についたかな?では第2回戦、始めるよ!」の声に思考の海から帰ってきて、今は授業!とモニターに集中した。
第2回戦は驚くほどの速さで決着が着いた。まさかビル一つを凍らせるなんてとその勝利方法やあまりに強い個性に驚き、さて自分ならどうするかというのを脳内シュミレートを繰り返す。
ふと、ちらりと横目でまた彼の様子を伺えば、今度は目を見開いて食い入るようにモニターを見つめながらぎりりと音がしそうなほど唇をかみしめていた。なんだか表情自体が愕然としているようにも見えて、さらに胸の奥がざわざわとする。
第3回戦、ヒーロー側Hチーム常闇・蛙吹ペアと敵側Cチーム峰田・八百万ペアの試合は、カメラの死角になっていてよく見えなかったけれど、Cチーム二人が隙きを突かれる形でヒーロー側の勝利で終わる。試合を見ながら私は、さっきの胸の奥の感覚が苛立ちや怒りに似たもの……いやそのものだということに気づいた。
第4回戦、ヒーロー側Fチーム口田・砂藤ペアと敵側Jチーム瀬呂・切島ペアの試合は、せっかく貼った瀬呂くんの罠が切島くんのうっかりで無駄になってしまったりとアクシデントがあったものの砂藤くんを確保。しかし砂藤くんは囮で気づかぬ間に忍び寄ってた口田くんが核兵器を確保してヒーロー側の勝利。途中、罠で確保など男らしくないから再戦を!と詰め寄る切島くんの様子に少し苦笑しながら、頭の中では何故苛立つのかと考えていた。相変わらず彼の様子は顔をうつむかせていたり歯を食いしばっていたりとあまり様子は変わっていない。
どうしてこんな感情が…と答えが出ないまま迎えた第5試合。ヒーロー側がGチーム上鳴・耳郎ペアと敵側Eチーム私・芦戸ペアの対戦が始まる。
試合を行うビルの前に着き、先生からインカム型無線機を渡され耳に装着しながら三奈ちゃんとビル内部に入る。そしてビル内の核を設置してある部屋につくなり作戦会議を始めた。
「藤乃っち頑張ろうね!入試1位とペアなんてラッキー!」
「ふふふ、成績に恥じない成果を出せるように頑張るわ。それで、三奈ちゃんの個性について教えてもらえる?」
「オッケー!私の個性は`酸`!粘度も溶解度も調節できるよ!ただ、使いすぎると服も溶けちゃうかなー。あ、あと調節はできるんだけど、それって身体の中での話だから外に出しちゃったらもう調節はできない!」
「ありがとう。ちなみに、溶解度って最高だとどれくらいなのかしら?例えば、この部屋の床などは溶かせる?」
「うーん、厚さによって時間かかっちゃうと思うけど、たぶんイける!」
三奈ちゃんの個性の話を聞いて、改めて部屋を見回す。今いる部屋は明るいけれど、通路は結構狭かった上に暗かったので私には不利な場所だ。だから、どうせならこの部屋で迎え撃ったほうが良い。確かちらりと聞いた話と体力テストでの成績を考えれば、上鳴くんは電気系の能力、響香ちゃんはたぶん耳たぶから考えて音による索敵はできると考えたほうが良いだろう。響香ちゃんが私みたいに音によるなんらかの攻撃を手段を持ってると仮定して、それでもやっかいなのは多分上鳴くんの能力。同程度なのか、どのくらいの範囲なのか、電気と言っても使いようはいろいろある。もしかしたら電波まで対象範囲だったなら無線もつ使えなくなるかもしれないから私と三奈ちゃんを分断して、という手も出来れば取りたくない。
「上鳴くんの能力がわからないのが不安ねぇ…」
「え?上鳴?なんで?」
「電気系というのは聞いたことがあるんだけど、どの程度なのか全然わからないから、最悪二人共放電されてという可能性も捨てきれなくて…」
「あーなるほど?」
「とりあえず罠を設置して迎え撃つしか無いわね。作戦があるんだけど聞いてくれる?」
「おー!さすが藤乃っち!聞かせて!」
そして作戦を手早く説明して制限時間ギリギリまで工作の準備をする。ギリギリ間に合ったところで、オールマイトの声がスピーカーから聞こえてきた。
《さあ時間だ!ではこれより第5回戦を開始するよ!ヒーローチーム、スタート!》
いよいよだ。さて、うまく罠にかかって貰えるといいんだけれど。緊張と少しの不安で高鳴る心臓を深呼吸で抑えつつ、ヒーローチームがこの部屋に到着するのを待つ。
《これはまた……!敵チームWIN!!》
「やったー!勝ったー!」
「よかった……三奈ちゃん、お疲れ様」
「藤乃っちすごーい!お疲れ様!!」
「あちゃー負けちゃったか」
「あの個性本当にズルいでしょ…」
呆然としたように呟く宙吊りにされ拘束された上鳴くんと、その横で同じく拘束されながら座り込む響香ちゃん。二人を拘束していた光を解いて、宙吊りにされていた上鳴くんがふわりと落ちていくのを翔んで彼の両脇に手を差し入れて持ち上げゆっくりと床に下ろす。
はしゃいでいる三奈ちゃんの隣に着地して、皆を伴ってモニタールームに戻る。
「いやはやお見事だEチーム!では講評の前に今回の作戦を皆にご説明願えるかな?」
「わかりました」
まず、Gチームお二人の能力が未知数でしたので不安はありましたが、今回のヒーロー側の勝利条件が核の確保か敵の捕縛だったので、他の皆さんもとってたように核部屋での籠城戦を選択しました。周囲には自分の個性の光球を浮かせて、核も万が一を考えて光を紐状にし宙吊りに固定。そして、入口付近の範囲の床を、タイルの目に沿って三奈ちゃんに脆くしてもらって、ついでに保険として天井にも何箇所か脆くしてもらったところを用意して、そうこうしているうちにまず上鳴くんが突貫してきたので浮かせていた光を輪に形成して足を拘束。そのまま体制を崩して地面に倒れた所をさらに身体の何箇所かを同じように拘束。直感でなんとなくこのままだと危ないと思ったので、上鳴くんが寝転がっている地面がちょうど脆くしたところだったのでさらに矢を放って床を抜けさせ、落ちる間際の上鳴くんを確保テープと光で再度宙吊りで固定、確保。あとは響香ちゃんだけ、ということで、三奈ちゃんだけに響香ちゃんを追って頂きました。これで、三奈ちゃんが響香ちゃんを確保できればよし、私達の打倒ではなく核の確保優先に動いていても、部屋には私がいましたし、万が一三奈ちゃんが確保されてしまった場合でも、一対一なら勝算はあったので。結果は三奈ちゃんが響香ちゃんを確保して終了、という形ですね。
「…以上になります」
「なるほど、保険をかけての罠の配置や立ち回り、実にお見事!」
「いえとんでもない!穴だらけの作戦で、正直運が良かったのもありますわぁ」
「確かに、改善の余地はまだまだある作戦だったけれども、運も実力の内、というだろう?ナイスファイトだ!ちなみに、もし芦戸少女がやられていた場合はどうしてたんだい?」
「ええと、三奈ちゃんに響香ちゃんを追っていただく時に、インカムのスイッチは入れっぱなしにしてもらっていたんです。それで、戦いながらこんなことしてきた!というのを報告していただいて、三奈ちゃんに戦ってもらいながら響香ちゃんの情報収集をしてもらってたので、集めた情報を整理すると私の個性で対応可能かな、と」
「なるほど、戦いながら味方に情報収集させる!これは敵でもヒーローでも通じるやり方だね!」
「恐れ入ります」
「あーそれで芦戸がやたら喋りながら攻撃してきてたのか…なるほど、上鳴のジャミングで最初には使えなかった作戦だけど、上鳴をまっさきに確保したからこその作戦だね」
「悪かったなー真っ先に捕まっちまって。俺なんか何もできずに拘束、そのまま確保だぜ?地面に寝転びながらでも電撃放とうとしたらそれさえも読んでたように床崩されてさらに宙吊りだし……爆豪も轟もやばかったけど、天使も十分やべえわ」
講評を聞き終えて、いえーい!とハイテンションで片掌を上げてくる三奈ちゃんに、再度お疲れ様と言いながらハイタッチする。
講評も終わったし私達の組で試合は最後だから、これにて初めてのヒーロー基礎学は終了だ。
ちらりと様子を伺った彼は、やはり表情暗く俯いていた。試合中は試合に集中していた為考えないようにしていたけれど、何故こんなにも彼の様子に苛立つのか再び考え始めたところでオールマイトから終了の挨拶が。
「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我もなし、皆真剣に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!さて私は、緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻りッ!」
そう言い放って、まるで急ぐように走っていってしまった。
あまりの速さに一瞬ぽかんと呆けてしまうも、私も慌てて後を追う。
「あれ?フジノンどこいくのー?」
「緑谷くんの怪我が気になるから保健室に!先に戻っててー!」
そうしてオールマイトを追うように駆け出した。
学食っていいですよね。作者の母校は売店はあったけれど学食は無かったので願望と憧憬を混ぜ込みながら設定を作っております。
あ、作中の英文はネットから適当に詩を拾って来ました。文法等高校生レベルじゃないかもしれないけど、雄英は名門校だから!(困った時の魔法の言葉)