魔法科高校の第三魔法使い   作:揖蒜 亜衣

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第1章:入学編
第1話:再会


 俺は真っ白い世界で目覚めた。

 ああ。死んだのか。不思議とそう自覚した。おそらくは先ほど乗っていた飛行機が墜落でもしたのだろうか。

 なんの感慨もなく淡々と現実を受け入れる。神様がいる場所が実在するのは驚きだったが、つまらない人生の最後の笑い話にはちょうどいい。

 

 不意に目の前に黄金が現れた。いや、違う。

 

 金の杯が現れた。

 

 俺はおもわず手を伸ばした。その指先が杯に触れた瞬間__________

 

 目の前が真っ暗な泥に包まれ悲しみ憎しみ辛い何もかも押し流されて痛い憎い殺す賛美せよ恐怖を何もわからなくなって

 

「ッ!ハァハァッ!」

 目が覚めた。

 

 ここは……?

 見慣れた天井だ。ここは、俺の部屋?/◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 俺の名前はなんだ?_____幾年(いくとせ) 何時日(いつか)/◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 俺は何者だ?_____今年の春から魔法科高校の二科に入学する。/◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 そして思い出した。俺は事故で死んで、あの杯に触れて泥が溢れて___________?

 

 それを思い出した途端、たくさんの情報が流れ込んできた。聖杯とサーヴァントについて、魔法について。

 聖杯については戸惑ったが、あって困る代物じゃないらしい。泥については書かれていなかったが多分大丈夫だろう。

 

 そして何より大事なことだが、俺は死んでいなかった。事故もなかった。

 夢の中で別な自分が事故にあっただけだ。

 別な自分。前世の自分。あの夢以来、記憶がつながった。

 昔の俺は飛行機事故で死んだらしい。その昔の俺の記憶を引き継いだ。人格に異変はない。今の俺は俺だ。ただ、前世の記憶の中に興味深いモノがあり興味は尽きない。

 これらを丸一週間かけてじっくり確認した。

 まだまだ調べたいことはあるがそれらは後でゆっくり確認しよう。今はそれよりも大事なことがある。

 

 今日は、魔法科高校の入学式だ。

 

 

 俺は真新しい制服の袖に腕を通す。その肩に立花はない。

 俺は二科生だ。前世の記憶が戻るのが受験が終わる前なら良かったのだが、それを言っても栓がない。

 

 二科生でも努力次第では魔法大学への道はある。今の目標はそこだ。

 

 

 入学試験以来の第一高校。俺は入学式を前に緊張する。()()()は俺のことを覚えているだろうか?

 

 入学式が始まり、今年の主席が挨拶を行った。彼女が現れた瞬間に皆が息を呑んだ。それぐらいに彼女の見た目は美しかったのだから。

 けれど、生憎と俺の苦手なタイプだったりした。陶磁器の人形ってイマイチ好きになれないんだよな...。作り物感が強すぎて。

 

 入学式が終わると、俺は自分の教室へと向かった。席は自由。早速一番後ろの窓際を陣取る。

 その後はガイダンスが送られてきて、今日はおしまいだ。

 

 結局、その日は()()()に声をかけられなかった。

 

 翌日、授業開始日。

 俺は早速自分の体に起こった異常を自覚した。

 干渉力、キャパシティ、想子総量が軒並み上がっている。

 問題は発動時間ぐらいだが、俺の魔法演算領域は特殊なので仕方ない。

「幾年、だったか?」

「何か用か?えっと...司波だったか」

「司波達也だ。幾年のさっきの魔法について聞きたい事があるんだが」

「ああ。答えられる範囲なら」

「幾年の魔法力なら一科でも十分通用すると思うんだが。確か筆記も上位10位以内だったと思う。それなのに何故二科に?」

 ...つまり俺の手抜きを疑ったと。

 まあ、確かに急成長というには無茶だしな。

「少し事情があって試験当日全力が出せなかったんだ。試験が終わって数週間経ってやっと本調子に戻った。絶賛リハビリ中だよ」

「そうだったのか...。すまない。邪魔をした」

「気にすんな。俺も何か聞かれるのは分かってたからな」

 それで会話は終わり、互いに練習に戻った。

 俺と司波達也はこれだけの関係になる筈だった。

 

 数日後の昼。俺は未だに()()()に話しかけれずにいた。

 さらには友人を作り損ねた。これが致命的だった。

 友人は大事だ。テスト勉強や問題の融通が利く。さらには進学時もアドバイスをし合える。

 ミスったぁ...

 今日も一人寂しく昼食かと思いつつ学食へ向かう。

 トレーを持って適当な席に腰掛ける。隣のテーブルには司波グループが固まっている。

 あの無愛想な司波にグループが出来るのに俺ってやつは...

 一人暗澹たる気持ちになっていると、不意にどこかで聞いた声がした。

 誰だったか...。周りを見渡すと、たまたま司波グループの女子の一人と目があった。彼女は無表情にこちらをじっと見つめてきたので思わず目を逸らした。

 すると彼女はなぜかこちらに向かって歩いてきた。え?何か俺やった⁉︎

 俺が慌てていると司波たちもこちらを向いている。急いで席を外そうとすると服の袖をぎゅっと掴まれた。

「あ、アノー。僕何かやりました...?」

 冷や汗を流しながらぎこちなく振り返ると、無言で彼女が立っていた。

「どちら様で...」

 すると彼女の無表情の中に僅かに苛立ちが混ざった。これ不味い不味い不味い!

「最低」

「すみませんすみません僕が悪かったです」

 食堂中が注目する中俺は完全に絶望していた。

 _____俺の高校生活終わった\(^q^)/

「幼馴染みを忘れるなんて、酷い」

「え?」

 そう言われて彼女を改めてよく見てみる。確かにどこかであったことがある。とても大切な名前だったはずだけど...

「もしかして、雫?」

「久しぶり、何時日」

 いつも無表情な幼馴染みが滅多にない笑顔を見せた。

 

 こうして、俺は幼馴染みと4年ぶりの再会を果たしたのだった。

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