魔法科高校の第三魔法使い   作:揖蒜 亜衣

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第2話:姉なるもの

「それじゃあ、雫と幾年くんは生まれたときからずっと一緒だったんですね」

「うん。お母さん同士が親友で、産まれた病院も一緒」

 楽しそうに話す雫を見て少し驚いた。こいつ、こんなに明るかったか?いや、まだ他と比べれば無表情だけど昔よりかは大分明るくなっている。

「雫、明るくなったな」

「やっぱり長く付き合ってるとそういうのわかるんだ」

 俺の二つ隣に座っている女子から茶々が入る。確か千葉だったか?

「まあ、慣れればわかるな。よく見れば昔とあまり変わってなかったし。もっと変わっているものと思ってた」

 どことは言わないがな。

「身長も伸びたよ」

「それでも小さいのに変わりはないだろ」

「何時日こそ性格がまるで成長してない」

「はっ。帰国子女を舐めるなよ。これでもUSNA帰りだ。昔とは違う」

「まじかよ。幾年って海外留学してたのか」

 これは西城か。大げさに驚いているが俺は簡単に種明かしをする。

「叔父がハーフなんだ。あっちに住んでいて家の都合であっちに引き取られることになったんだが、俺の意思で日本に帰ってきた」

「自分の意思でか?USNAの教育機関も悪くはないと思うが」

 これは司波。確かに司波の言う通り悪くはないところだったが、俺は中2から第一高校を目標に勉強してきた。

 その過程でUSNAへ行ったが、別に留学や定住の意思はない。

 それを話すと今度は千葉が食いついてきた。

「ふーん。第一高校によっぽど思い入れがあるみたいだけど何か理由でもあるの?例えば...憧れの先輩とか?」

「...そうなの?」

「違う!あれは先輩とか言うよりは姉みたいなものだ」

 再び不機嫌になった雫の視線から逃れようとしてつい口が滑ってしまった。

 千葉が明らかに面白がっている。ついでに光井も興味ありげな様子でこちらを見ている。

「俺のことはいいだろう。それより雫が今まで何をしていたかを...」

「それ、誰?」

 強引な話題転換に失敗してさらに冷たい視線を浴びる。こうなるとテコでも動かないからな...

 恨みがましい目線で千葉を見るがそっぽを向いて口笛を吹いている。いつか絶対し返してやる...

 周囲を見渡すが司波を除く皆が興味津々と見つめている。

「司波、悪いが用事ができた。席を外す」

「私たちも食べ終わっていることですしそろそろ席を外しましょう」

 強引な離脱をすかさず司波さんが封殺してきた。司波に目で抗議するが諦めろと返された。薄情者しかいねぇ...

「言っておくが、本人には言いに行くなよ。多分忘れられてるからな」

「そうなのですか?」

「あら。片思い?健気じゃない」

「片思いでもチャンスはありますよ!」

 司波さん、千葉、光井の台詞に頭を抱える。こいつら何か勘違いしていないか?

「いいか。あの人は片思いとかそんな大層なものじゃない。しょっちゅうイタズラを仕掛けてくる横暴でどこか抜けてる姉みたいなもんだ」

「随分と仲良かったんだな。それならあっちが気付いてないだけじゃないのか?」

 西城の言う可能性も考えてはいるが、あっちから話しかけられたら何言われるかわかったものじゃない。

「それで、結局誰?」

 雫の最後通牒に俺は観念して白状する。

 

「七草真由美。俺が小6から中1までの2年間勉強を教わった相手だ」

 

 途端に皆が沈黙する。俺が慌てていると雫がガシッと腕を掴んだ。

「何時日。話したいことがあるから放課後私の家に来て」

「いや、もともとそのつもりだったけど...。腕放してくれ」

 ギリギリと締め上げられる腕を見て当分無理だと諦める。

「いや、驚いた。まさか七草会長とはな」

「私も驚きました。ですが、言われてみれば七草会長の特徴と一致しますね」

 そういえば司波さんは主席入学だから生徒会入りしたんだったか。

「深雪、幾年くんに紹介してあげなよ。幾年くんから行くなら問題ないでしょ?」

「それもそうだな!ほら、善は急げだぜ。今から行けば十分話せるだろ」

「そうね。今ならまだ生徒会室にいるはずだわ。幾年君、こっちよ」

「司波兄!こいつらを止めろ!」

「すまないが諦めてくれ」

 この時の司波の顔を見て確信した。こいつは真由美ねぇのオモチャにされている。恐らくは道連れにしようとしている...!

 煽った主犯格の西城と千葉はニヤニヤしながら俺を見送った。雫は不承不承腕を放し、光井と何か話し込んでいた。

 

 

「ここが生徒会室です。少し待っていてくださいね」

 司波さんが部屋の中に入った隙にひっそりと逃げ出す。

 足音が聞こえるとは思わないが癖でゆっくりと扉から離れていく。

ジリジリ後退していると部屋の中から慌てた声と足音がした。

「司波さん!彼が逃げようとしてるわ!」

「えっ!?」

「クソッ!バレた!」

 ダッシュに切り替えて逃げようとすると目の前を巌のような人に塞がれた。

「す、すみません!」

「あまり廊下は走るな」

「あっ!十文字くん。捕まえてくれたのね。ありがとう」

 十文字⁉︎これがあの十文字克人か⁉︎

「少し注意をしただけだ。彼は何かトラブルを起こしたのか?」

「いえ。昔の知り合いよ」

「知らない。散々俺をオモチャにしてきた姉なるものなんで知らない」

「........お前も被害者か」

 この妙に実感のこもった台詞で十文字先輩も被害者と理解した。

「失礼ね。私はただスキンシップの一つとしてからかってただけよ」

「マルチスコープ使って追跡するのもスキンシップ?」

「何時日くんが逃げようとするからでしょ。コホン。...それじゃあ改めて、入学おめでとう。何時日くん」

「ありがと。真由美ねぇ」

 真由美ねぇが昔みたいに俺の髪をワシャワシャと撫でると俺の目の位置が真由美ねぇより高くなっていた。

 それで少しだけ気が晴れた。

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