アルベール・カミュ
「神様、あなたはどうしてここにいるの?」
「それはね、私がここを気に入ったからよ」
「神様、あなたはどうして私が見えているの?」
「どうしてかしらね。特に理由はないのかもしれない。ただすごいってだけで見えるのも素敵じゃない?」
「不思議な神様。お姉ちゃんが嫌いそう」
「ふーん。あなたのお姉ちゃんはどんな人? 存分に自慢してくれちゃっていいわよん」
「ううん、秘密。お姉ちゃんにとってその方が都合がいいもの」
「あら、スパイか何かなのかしら」
「地底の管理者だよ。お姉ちゃんに会いたいなら地底に行けば普通に会える」
「それは喋っていいのかしら?」
「うん、今ならそれなりの妖怪に聞けばわかるし、神様、多分霊夢達のことも知ってるでしょ? 普通に教えてくれるよ」
「そんな皆に知られているのに、自慢は都合が悪いのね」
「皆お姉ちゃんのことは知っているけど、お姉ちゃんについては知らないからね」
「また遊びに行ってみようかしらね」
茶屋の軒下、人里の中心。そして、眼前の閃光。
街中で発生した霧雨魔理沙とクラウンピースの弾幕ごっこを眺めている最中の出来事であった。
やたらと目立つ神様の、酷く会話じみて理知的な独り言。
「神様は多分遠いところから来たんでしょう? ここは過ごしづらくないの?」
「別にそうでもないわよん。ここは全てを受け入れるらしいし」
「神様のいた場所に地獄はあったとして、黄泉平坂はないとしても?」
神様の顔が少しだけ驚いて目を見開いた。すぐに戻ったけれど、いくらか彼女の心が動いたのは事実であった。
「聡い子ね」
「覚、だからね」
「心が読めるっていうあの?」
「私はもう読めないよ。やめちゃった。ぜーんぶ嫌になって、投げ出したの。私達アンバランスな姉妹だから」
「ふーん、お姉ちゃんは人の心が分かっても全然問題ないんだ」
「お姉ちゃんは凄いから。どんな人でもお姉ちゃんには勝てないんだよ」
「最強、ってやつかしらん」
「ううん、お姉ちゃんが強いかどうか知ってる人は多分誰もいない」
「じゃあ、なんで勝てないのかしら?」
「勝敗の前提がないから。必要なことをするだけで、勝ちたいなんて微塵も思っていない。だから、形だけの勝利は相手にあげちゃうの。そんなの貰っても誰も勝ったって思わないでしょう?」
「そうね。それは厄介なもの。で、結局、自慢してしまっているけれど大丈夫なのかしらん」
「あっ。……お姉ちゃんには秘密にしてね」
「多分、そのお姉ちゃんはこの程度の事を知られただけではきっと何ともないけれど、秘密にしておいてあげる」
小さく笑って、独り言は30秒ほどおさまった。
「地獄というのは、別に一つの形しか持たない訳ではないのよ。私がいた所には黄泉平坂はなかったけれど、どっちも私の地獄。違う地獄があるとするならば、それは生き地獄というやつね」
「生き地獄?」
「生きてる事で地獄みたいに辛い人もいるのよ」
あなたのお姉ちゃんもそうかもねと独り言を言いかけて、やっぱりやめて言葉を続けた。
「あなたのお姉ちゃんは誰にも理解されていない。だから、あなたが寄り添ってあげなさいね」
「うん、お姉ちゃんとはずっと一緒にいるよ」
「良い子ね。やっぱりここは面白いわ。復讐だなんだと言ってきたけれど、思わぬ収穫」
「復讐?」
「私のお友達に復讐したい相手がいてね、その人の家族に恨みがあったから私も来たの」
「何をされたの?」
「昔、太陽がいっぱいあったの。光があったら影ができるでしょう? だから良かったのだけど、その人が太陽をいっぱい射落としたから私まで損しちゃったの」
「結構どうでも良さそうだね」
「まぁ、向こうにも道理があったし、そうなったところで私は今も最強だもの」
「ふーん」
「全てが自分の都合の良いように進む訳じゃない。正直、可哀想と思う気持ちもあるし。その人は必要であったから英雄になり、その後もその道を進んで、結局死んでしまった。それで英雄として名を刻んだ。人々を救う尊い人だってね」
「嫌な人生。私もお姉ちゃんも選ばない道。ただの偶像だもの」
「そうね。でも、滅びが待っているとしてもそういう栄光の道を選んでしまうのが普通なのよ。目の前に輝くものがあれば手を伸ばすのが心というもの」
「神様はなんでもわかってるんだね」
「あなたのお姉ちゃんの事は知らないけれどね。でも、そうね、きっとその子は同じ事をしても栄光の道なんて進まず、こんな事を言うのでしょうね」
さようならを言う前の、最後の独り言。
「太陽が眩しかったから」
『異邦人』
短めの話。
深く考える必要はないです。
この作品を読んでいて良いと思う部分
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シナリオ
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キャラクター(性格など)
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台詞回し
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地の文
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表現
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考察できる点
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謎の多さ
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キャラクターへの解釈
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世界観への解釈
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シリアスな点
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ギャグ要素