詐欺師さとりは騙したい   作:センゾー

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たとえ明日、世界が滅亡しようとも、
今日私はリンゴの木を植える。
                 マルティン・ルター


鮟貞ケ輔?驕句多【螟峨∴繧九?縺ァ縺ッ縺ェ縺冗オゅo繧峨○繧】

「春の日差し、風の音、鳥の囀り、囲う花の香り、焼きたてのスコーン、桜のお茶」

 

 淡々と告げられる情景。少女の周りには、言葉の全てがあった。

 そして、それに微笑む口元もあった。

 

「フフ、とてもいいシチュエーションでしょう?」

「あなたには、とても似合っているでしょうね。絵になります。これほど色とりどりの花が咲く中で、一番華があるのはあなたなのですから」

「華々しさが必ずしも肯定的なニュアンスを持つとは限らないけれど」

「けれど、花が似合わないほどに華がないことは全く良い意味を持たない」

「卑屈ね」

 

 対照的な二人の存外に似たような口振り。

 

「そんな華がなく花がない場所から来た私に、あなたはどんな用事があるのでしょうか」

「別に用事なんてないわよ。こうしてあなたとお茶をするのが目的。疑うのなら、心を読めばいいじゃない」

「……嘘はついていないようですね」

「ね。心配しなくてもあなたに戦えと強要したのはもう過去の話よ。いかにここが停滞の都であろうとも、何事も移ろいゆくのが道理だと知らぬあなたではないでしょう」

「そうですね、しかし、そうですか。意外と少し寂しいかもしれません」

 

 思わず目を見開いた。

 

「寂しい! あなたがそんな言葉を口にする日が来るとは思わなかったわ。それに、私は疎まれているものだと思っていたけれど」

「はっきり言って迷惑でしたね。戦わないと何度言っても戦えと言ってくることのストレスといったら、面倒な神の訪問にも匹敵しました」

「でも、あなたは結局一度だけ戦ってくれたわね」

「五度は応じた覚えがありますが」

「ちゃんとやったのは一度だけよ。わからないと思ったのかしら」

 

 渋い顔をした。

 

「期待外れだったでしょう」

 

 嘲笑うように言った。

 

「期待外れだったわね。あれだけ戦えるのに、弱いふりをしているなんて」

「あなたには勝てなかったでしょう」

「私に食い下がる程度あることは誇るべきよ」

「たとえあなたを追い込んだ事実があろうとも、勝てなかったことも事実です。強いことが有益になるとは限らないので私はきっと弱いのです。それこそが真実であるべきなのです」

「また嘘をつくのね」

「嘘ではありませんよ。あなたにも、レミリア・スカーレットにも、星熊勇儀にも、八雲紫にも、博麗霊夢にも、私は決して勝てはしないでしょう。少なくとも、その程度の強さではあるのです」

「狡い場所にいるわよね。それなりに強いのに、本当に強い人に勝てない位置。強きも弱きも、嘘と真に織り交ぜて花の香りのように消えていく」

「結局、幻想郷のバランスに関与し得ない強さですから、私には大した意味がありません」

「あら、それは私のことは気にしてくれているということかしら」

「えぇ、要注意人物です。あなたは気ままですから」

 

 風がそよぐ。まだ天を仰がない向日葵のありもしない香りが抜けた気がした。

 

「これはあり得ない話だろうけど、あなたが幻想郷に反旗を翻す事があれば、どんな異変になるのかしら」

「あまりにもあり得ない事ですから、話す必要もないでしょう」

「あり得ない事だから話すのでしょう。起きる事ならいつかの楽しみに取っておくわ」

「成程。では、お茶請け代わりに少しだけ」

「有難いことね」

「私が異変を起こすとしたら、そうですね、まず暴れるような異変はないでしょう。私の持ち得る戦力では武力での解決は困難でしょうから」

「星熊勇儀を手駒にもできるあなたなのに?」

「一人二人いてどうこうなるものでもありません。だから、私はいつも通り、狡い手を使います」

「詳細は伏せます。私の手法が漏れて誰かが実行にでも移すと面倒ですから」

「誰かが真似てもあなたが解決できるでしょう」

「……こんな事を言いたくはありませんが、私でなければ解決できないでしょう」

「珍しく傲慢じゃない」

「私はいつだって傲慢ですよ。そうじゃなければ、無理難題に二つ返事で応じませんよ」

「傲慢じゃなくても応じるから、あなたは強いのよ」

「お褒めいただきありがとうございます」

「あら、じゃあお礼に、異変に関して詳細は伏せると言ったけれど、ヒントくらいはくれてもいいんじゃないかしら」

 

 また、渋い顔をした。しかし、少しの沈黙の後、答えた。

 

「…………博麗の巫女に干渉するでしょうね」

「へぇ、解決する本人に」

「私も博麗の巫女のシステムに関して詳しい事は知りません。その辺りは賢者しか知らない領域、どこまでいっても賢者ではない私には知り得ない事。だから、これはあくまで私の予想です」

「それを前提にしてほしいということね。いいわよ」

「博麗の巫女は、人間ではない」

「霊夢も? 彼女はどう見ても人間よ」

「あぁ、正確に表現しましょう。巫女は『人間ではない』という性質を持った人間です。あの子の能力はご存知ですか?」

「『空を飛べる程度の能力』ね」

「私が考える博麗の巫女に関して大きな考察のヒントです。妖怪や神は空を飛べます。人間ではありませんから。十六夜咲夜のような特殊な力を持った人間は空を飛べます。普通ではない力がありますから。しかし、ただの人間は空を飛べないのです」

「真意を量りかねるわね」

「ただの人間は空を飛べないし、空を飛べるのは人間ではないということです。『空を飛べる程度の能力』というのは、ある種自由の証であり、そしてパワーバランスから逃れる道標なのだと私は考えます。博麗霊夢は人間ですが、人間は空を飛べない。空を飛べるのは人ならざるものと、人の域を外れたもの。だけど、霊夢は特殊な力なんて持っていない。人間であって、しかし空を飛べるから人間でない。この世界において、それは大きな意味を持つ。恐怖に怯える側ではなく、恐怖を与える側でもない。それは均衡の中心にいる、あらゆる存在に対して正しくニュートラルでいられる力。博麗の巫女というのは、そういう存在なのだと私は考えています」

「それなら、巫女はあなたにはどうしようもない事なのではないかしら」

「はい、きっと私は勝てないでしょう。きっとどんな策略を講じたとしても、それは存在そのもので私を否定するでしょうね。それでいいのです」

 

 穏やかな笑み。少なくとも、諦観ではなかった。

 

「相互関係の外にいるから敵がいないのならば、そこに誰かが行けばいいのです。何を当てても落ちない鳥を撃ち落とす事なんてできないのだから、一瞬でも飛ぶその横にいる事でその孤高が揺らげば十分」

「あなたはそれを成し得る手段を持っているということかしら」

「さぁ、どうでしょう。人と人外、そのどちらでもないか、或いはどちらでもある。それが簡単な答えですけれど」

「……ハッタリだと思って、これ以上は聞かないであげる」

「ありがとうございます」

「あなたって、どんな妖怪なのかしら」

「いたって平凡な覚妖怪ですよ」

「何歳くらい?」

「秘密です」

「そう」

 

 呆気なく少し重々しく感じられた会話が終わって、アフターヌーンティーは続く。

 平凡な覚妖怪は、日傘の下でさえ太陽の熱に額を拭った。それはまるで平凡な少女のように。











今日はエイプリルフールらしいですよ。

この作品を読んでいて良いと思う部分

  • シナリオ
  • キャラクター(性格など)
  • 台詞回し
  • 地の文
  • 表現
  • 考察できる点
  • 謎の多さ
  • キャラクターへの解釈
  • 世界観への解釈
  • シリアスな点
  • ギャグ要素
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