天才実力派美少女デュエリスト新宮月乃(真顔)   作:ヤギー

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第3話 久しぶりのデュエル

 部室にくるまでの道中、ライヒちゃんは言っていた。うちの部は実力主義だと。学年ではなく実力によって上下関係が成るのだと。

 

「おい、今なんつった。俺らが雑魚だと?」

 

 一人の男子生徒が肩を怒らせ前に出た。他の生徒もデュエルを中断してこちらに向かってくる。

 靴の柄を見る限り、彼は二年生だ。ここにいる大半が二年生。三年生はいなさそうだ。きっと主要メンバーとやらだからここにはいないんだろう。

 

「ここにいるってことはそういうことでしょう? いいからさっさとデュエルの準備をして下さいよ。で、さっさと負けろ?」

 

 おお。強い口調のライヒちゃんというのも新鮮だ。

 

「舐めてんじゃねえぞ、一年がよお!?」

「ハリーハリー。テーブルに着いて、早く」

「ぶっ殺すぞ、コラァ!?」

「そーいうのいいから。貴方たちただの踏み台だから」

 

 ライヒちゃんは怯まない。完全アウェイな状況なのによくやるよ。私はちょっとビビってるのに。

 

「ライヒちゃん、やり方が強引すぎない?」

 

 この場から離れたい気持ちを追いやって、ライヒちゃんの制服の袖を引っ張る。

 

「最初だからね。インパクトが大事なんだよ」

 

 インパクトか。でも、一向に二年の先輩はテーブルに着こうとはしてない。怒るだけだ。さらに煽っても、デュエルをする流れにはならなさそうだし、うん、仕切り直そう。

 

「あの、新宮月乃といいます。私とデュエルしませんか?」

「ああ!?」

 

 睨まれる。怖い。

 

「視た感じ、この中で一番強いのはあなたですよね。私は手っ取り早く全国大会に出たいんです。皆さん、煽るようなことをしてすみません。でも私は訂正はしません。事実、あなた方は雑魚だから。なので否定したければ、デュエルを受けて下さい」

「⋯⋯⋯⋯んだと?」

 落ち着いて、理路整然と物申す。なるべく柔らかく、ただし引くことはしない。

 

「ごめん、月乃っち。先走っちゃった」

 

 ペロリと舌を出して謝るライヒちゃん。

 

「ううん、良かったと思うよ。本気なのはわかったから」

 

 と言うと、照れたように笑った。

 同じく、場が冷静になって行く。

 

「本気なのはいいけどよ。てめえら、ただでデュエルしようってんじゃねえだろうな?」

 

 男がデュエルテーブルに回り込み口を開く。

 

「というと?」

「てめえら、俺に負けたらこの部から出て行け。強くもねえ大口野郎は邪魔でしかねえからな」

 

 なるほど、実力主義というやつか。そういうのが根付いてる。

 

「いいですよ、それで。いいよね、ライヒちゃん」

「うん。覚悟の上だよ」

「良し、決まりだな。俺を侮辱したこと、後悔させてやる!」

 

 私もテーブルの前に着く。そうしてデュエルが始まった。

 

新宮月乃 LP4000

多田豪 LP4000

 

「先行はもらいます。ドロー」

「ち、まあいい」

 

 ふう。公式じゃないから多少の強引は許される。この手札は先行向きだ。

 

「私は手札から5枚セットして《メタモルポット》を攻撃表示で召喚」

 

《メタモルポット》攻撃力700

 

「はあ!?」

「な、なんだそれは!?」

「意味がわからない⋯⋯!」

 

 口々に周りから反応が上がる。思わずニヤリと口角が上がった。

 

「ターンエンド。どうぞ?」

 

新宮月乃LP4000 手札0枚

《メタモルポット》攻撃力700

セットカード5枚

 

「⋯⋯舐めてやがるな。そうか、てめえら冷やかしできたな?」

「ううん。ちゃんと私は勝つ気でいますよ」

 

 けどそう思うのも無理はない。《メタモルポット》はリバースモンスターだ。裏側から表側になって初めて効果を発揮するモンスター。その効果は強力だけど、普通に召喚してはただの攻撃力700。弱小モンスターといって差し支えない。

 私の狙いなんてわかるわけもないだろう。

 

「ちっ。俺のターン、ドロー! 《神獣王バルバロス》を妥協召喚!」

 

《神獣王バルバロス》攻撃力1900

 

「バトルだ! 《バルバロス》で《メタモルポット》に攻撃だ!」

「いいですよ」

「なんもねえのかよ、そんなに伏せてんのによ。だったらダメージ計算前に《禁じられた聖杯》を発動! 対象は勿論《バルバロス》だ!」

 

《神獣王バルバロス》攻撃力1900→3400

 

「そういうデッキか」

 

 《バルバロス》はレベル8のモンスターだけど、攻撃力を1900にするかわりに生贄なしで召喚することができる。そして《禁じられた聖杯》はそのターンの間だけ対象のモンスターの効果を無効化して、攻撃力を400上げる速攻魔法だ。効果を無効化された《バルバロス》は素のステータス、つまり攻撃力3000に戻り、ターンを終えても1900になることはない。効果がなくなったことで、妥協召喚したという事実もなくなるからだ。

 要するに《神獣王バルバロス》は脳筋ってこと。おそらくはパワー任せがこの人の戦い方だろう。

 

「月乃っち、大丈夫なの?」

「うーん、まずいかも。でもまあ何とか。⋯⋯じゃあダメージ計算時《プライドの咆哮》を発動する! 戦闘を行うモンスターの攻撃力の差分のライフを支払い、支払った分プラス300の攻撃力をこの時だけ《メタモルポット》に加算する!」

 

新宮月乃LP4000→1300

《メタモルポット》攻撃力700→3700

 

「返り討ちです」

「ちっ」

 

多田豪LP4000→3700

《メタモルポット》攻撃力3700→700

 

「《プライドの咆哮》って⋯⋯」

「あんだけ伏せがあってそれかよ」

「大したことないな」

 

 まあ、汎用的ではないよね。攻撃力だけの破壊耐性がないモンスターなら、他の汎用罠を使った方がいい。ライフを削らずに済むし。

 けど、

 

「《禁じられた聖杯》の後に発動できたからね。良いカードだよ」

 

 ダメージ計算前に発動されたカードを、見てから使用できる数少ないカードが《プライドの咆哮》だ。そういう理由で私はこのカードをデッキに入れている。今回も1:2交換できたしね。

 

「なるほどな。ただのバカじゃねえってことだ」

 

 さっきまで怒っていた対戦相手は、冷静な評価を述べていた。

 

「だが悪手には変わりねえ。カードを3枚伏せターンエンドだ」

 

 悪手ね。《メタモルポット》のことかな。

 

「何で3枚もセットしたんですか?」

「あ? 話しかけてんじゃねえ。さっさと始めろ」

「予想したんじゃないですか、《メタモルポット》が裏側になるのを。セットカード《心鎮壷》を2枚発動。あなたの3枚のセットカードを封じます」

「なにっ!?」

 

多田豪LP3700 手札1枚

セットカード3枚

 

「エンド宣言したので私のターンです。ドロー」

「てめえ、やりやがったな⋯⋯!」

 

《メタモルポット》は互いに手札を全て捨て、5枚になるようにドローするリバース効果を持っている。多分彼は私の5伏せを見て《メタモルポット》に警戒心を持ったんだろう。

 《メタモルポット》を使うプレイヤーは大抵そのカードと一緒に伏せられるカードは伏せてしまうのが常だ。効果で手札として捨ててしまうより、セットできるカードはセットして取っておいた方がいいからである。

 

「いくら表側でもあからさまに怪しいよね」

「月乃っちそういうセコイの好きだよねー」

「まあね。じゃ、行きますよ。罠カード発動《徴兵令》」

「んだと!?」

「あなたのデッキトップをめくり、通常召喚可能なら私のフィールドに特殊召喚、それ以外ならあなたの手札に加えます。さあどうぞ、めくって下さい」

 

 私に促されるまま、デッキトップを裏返す。そのカードは、

 

「ち、《ガンナードラゴン》だ」

「ハズレですね。まあいいや」

 

《可変機獣ガンナードラゴン》攻撃力2800

 

「いや、どこがよ。アタリでしょ」

「ううん。アタリなら《バルバロス》が来るよ」

「ふざけてやがんな⋯⋯!」

 

 ま、悪くはないけど。

 

「バトル。《メタモルポット》で攻撃」

 

多田豪LP3700→3000

 

「⋯⋯戦闘ダメージを受けたことで、手札から《トラゴエディア》の効果発動、特殊召喚だ!」

 

《トラゴエディア》守備力0

 

「ん⋯⋯?」

 

 それか。⋯⋯ああ、そういう。

 

「どうかした?」

「んー、やっぱり危なかったなって。負けるとこだった」

「あ? まだ勝負は決まってねえだろ」

「どうかな。《ガンナードラゴン》で《トラゴエディア》に攻撃」

「それで終わりだろうが。俺のターンがまだ残ってんだよ!」

「いや、まだですよ。もう1枚、セットカード《徴兵令》を発動します」

「またかよ!」

 

 めくって下さいと促す。

 

「な、何だと⋯⋯、あり得ねえだろ⋯⋯っ」

 

《神獣王バルバロス》攻撃力3000

 

「だと思いました。それがアタリです。それで攻撃して終わりです」

 

 ジャスト3000。手札なし、フィールドにも墓地にも防げるカードはない。

 ライフはゼロ。これで私の勝ちが決まった。あっさり3ターンで勝敗がつき、しん、と静まり居た堪れない空気が流れる。

 

「⋯⋯クソみてえなデッキ組みやがって。やっぱてめえ冷やかしできたんだろ」

「勝ちは勝ちですよ」

「くそが」

 

 多田先輩は捨て台詞を残し足早にこの場を去っていった。後に残ったのは、私とライヒちゃん、そして私を冷ややかな目で見る部員の人たち。

 まあ、気持ちはわかる。原因は《徴兵令》というカードだ。もっと言うならその使い方。事前に相手のデッキトップをピーピングするならまだしも、さっきの使い方は傍目から見れば完全に運任せだ。ギャンブルにも満たない。

 きっとたまたま上手くいったに過ぎないと思ってるんだろう。不誠実な戦い方だと。

 でも気にしない。これが私の戦い方だと胸を張って言える。

 

「あ」

 

 ふと気づいた。多田先輩は去ったがデッキはそのままだったことに。気になったのは《心鎮壷》で封じた3枚のセットカード。一目視ただけでヤバいと予感できた。

 自然と手が伸びていた。3枚のカードを手繰り寄せ裏返す。3枚とも同じカードだった。

 

「《デーモンとの駆け引き》⋯⋯」

 

 次にデッキトップをめくると《強欲な壺》。さらにその奥の2枚は《ハーピィの羽箒》と《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》。

 うん、デュエルが始まったときから負けの気配は感じてた。だからそうならないように仕向けたし、それで勝てたけど、でもやっぱりこういうのが勝負だよね。

 

「ライヒちゃん」

「ん、なに?」

「私、久しぶりにデュエルしたけど、ちょっと再燃しちゃったかもしれない」

「ほう?」

「プロ、本気で目指すよ」

「なら、私も私のやることをやらないとね」

 

 ライヒちゃんはそこで言葉を区切り、観客となっていた部員たちを見渡す。

 

「ねえ、見てるだけ? そうやって、勝てないからって目線だけで非難するのって、ホントお前ら雑魚って感じ! さっきの先輩の負けがまぐれだって思う奴は、どんどん月乃っちに勝負を挑んできてよ。全部返り討ちにしてあげるから! はい、月乃っちからも一言」

 

 んー、実に悪目立ちって感じ。でもライヒちゃんがいなければ、私は何もやれずにいただろう。デュエルをすることだってなかった。だから、一緒に乗っかっていこう。

 

「皆さん。私の実力を疑っているのなら、デュエルして下さい。まずはあなた方に、全勝することで認めてもらいます」

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