黒子のバスケifショートストーリー   作:和泉春

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帝光中学二年の大晦日。

レギュラーメンバーは練習の為に集まった。


いつもより遅れて来た赤司の考え事から、

黒子と黄瀬がレギュラー入りする前の、

七不思議の起源となった

大晦日での出来事の話をすることに…。


今年もお疲れ

僕は授業を終えて、

一軍の第一体育館のロッカールームの扉を開いた。

 

するとそこには、

赤司くんを除いたレギュラーメンバーが自分のロッカーと向き合っていた。

 

 

「おう、テツ。」

 

「どうも。」

 

 

青峰くんと挨拶を交わして、

荷物を置いて僕もロッカーへ向かった。

 

 

「黒子っち〜!はいこれ、

この前貸りてたDVD!チョー面白かったッス‼」

 

「気に入って貰えて良かったです。」

 

 

僕と黄瀬くんが話しで盛り上がっていると、

紫原くんが僕の頭に手を乗せて来た。

 

 

「黒ち〜ん、なんの話〜?」

 

 

僕は紫原くんに振り返った。

 

 

「黄瀬くんに貸してたバスケのDVDの話です。

紫原くんも見ますか?面白いですよ。」

 

僕がそう言うと、

紫原くんは顔を顰めてポケットからまいう棒を取り出した。

 

 

「別にいい〜…。めんどくさいし。」

 

「紫原くん…。」

 

 

その時緑間くんは着替えを終えて、

紫原くんに声をかけた。

 

 

「紫原、

着替えを終えたらここで待機していろと

赤司が言っていたのだよ。」

 

 

紫原くんは僕の頭を掴んだまま緑間くんに返事をする。

 

 

「え〜?また〜?」

 

「今度は何をやらかしたのだよ。

この前も学食で激怒して、

騒ぎになった事を叱られていただろう。」

 

 

紫原くんは声のトーンを落とした。

 

 

「あれは相手が悪いんだし。

俺の昼食をつまみ食いするからああなるんだし。

食べ物の恨みは恐ろしいからね。」

 

 

緑間くんはため息をついた。

 

 

「…くだらん。」

 

 

そこに赤司くんが入って来た。

 

 

「黒子、来ていたのか。」

 

「はい、こんにちは。

珍しいですね、赤司くんが遅れてくるなんて…。」

 

 

赤司くんはふっと微笑むとおもむろに答えた。

 

 

「あぁ…ちょっと考え事をしていてね。

この時期になると思い出す…。」

 

 

赤司くんは窓の外を見た。

 

外には雪が降っている。

 

静寂としていて、

今年ももうすぐ終わりだと言う事を

実感させられる様だった。

 

 

着替え終わった青峰くんが

バックの中を荒らしながら言った。

 

 

「考え事って、何かあったのか?」

 

 

赤司くんは僕の顔をチラッと見ると、全員へと視線を戻した。

 

 

「黒子と黄瀬は知らないだろうが、

お前達は覚えているか?

去年の練習最終日の夜の事を。」

 

「それは確か…大晦日の夜なのだよ。」

 

 

緑間くんがそう言うと、

黄瀬くんは仰天した。

 

 

「大晦日の!?そんな時間帯まで練習してたんスか!?」

 

「あぁ、レギュラーメンバーは必須なのだよ。

毎年な。」

 

「って事は…今日!?マジッスか!?」

 

 

黄瀬くんは赤司くんに詰め寄る。

 

赤司くんは腕組みをして

黄瀬くんの質問に平然と答えた。

 

 

「無論だ。

監督にはもう許可を得ている。」

 

 

話を戻す様に

紫原くんが赤司くんに問う。

 

「で〜?それがどうかしたの〜?

赤ち〜ん。」

 

「大晦日の夜、

俺たちが使っている第一体育館の他にも明かりが付いている体育館があっただろう。」

 

 

赤司くんがそう言うと、

青峰くんが思い出すように呟いた。

 

 

「あぁ…そういや……。」

 

 

___________________________

 

去年の大晦日。

帝光中学バスケットボール部

一年レギュラーメンバーである

赤司、青峰、緑間、紫原は

監督の特別許可を得て、

日付けが変わる直前まで練習をしていた。

 

赤司達が使う第一体育館以外に

学校内の明かりはない……はずだった。

 

 

第四体育館の明かりがついている。

 

 

それに気がついたのは緑間だった。

 

 

「…ん?」

 

 

緑間が動きを止めると、

青峰もつられて動きを止めた。

 

 

「どうした?緑間。」

 

 

緑間は開けられた体育館のドアの外を指さした。

 

 

「あれを見るのだよ。

第四体育館が…明るいのだよ。」

 

「あぁ?あ、ホントだ。

誰かいんのか?」

 

 

そこに赤司と紫原が向かってくる。

 

 

「いや、許可を貰っているのはここだけだ。

他は残っているはずがない。」

 

「電気消し忘れたんじゃな〜い?

俺消してくるよ〜。」

 

「あぁ、頼む。」

 

「じゃあ行ってくるね〜。」

 

 

赤司はすぐそこに落ちている紫原の上着を取り、

紫原に渡した。

 

 

「着て行け。

距離もあるし、外は冷えるぞ。」

 

「ん〜。ありがとう〜。」

 

 

外には雪が降っている。

 

 

紫原は白くなる息を吐きながら大きな体を震わせて出て行った。

 

 

しばらくして紫原が帰って来た。

 

そこに青峰が声をかける。

 

 

「おう紫原〜、電気消して来たか?」

 

 

紫原は着ていた上着を脱いで床に放った。

 

赤司と緑間も紫原に視線を注いだ。

 

 

「う〜ん、消して来たよ〜。」

 

 

ところが、

まだ第四体育館には明かりがついている。

 

そのことに気づいたのはまた緑間だった。

 

 

「おい紫原、消えてないのだよ。

お前は一体何処の電気を消して来たのだよ。」

 

「あれれ〜?何で〜?

俺第四体育館の電気消しに行ったのに〜…。」

 

自分の苦労が水の泡だと、

紫原は大きな体を丸めてションボリしたようだった。

 

 

赤司は第四体育館に視線を注ぐ。

 

 

何かある、そんな気がしてならなかった。

 

 

「仕方ない…次は俺が行って来るのだよ。」

 

「ちょっと待て緑間。

ずっと気になっていた事がある。」

 

 

緑間と紫原は赤司に注目する。

 

 

その時青峰は、

ゴールにダンクを決めているところだった。

 

 

「んだよ赤司、

気になっていた事って。」

 

 

赤司は真剣な顔つきで眈々と話だした。

 

 

「…この冬期練習中、

俺たちが夜遅くまで練習をしている時間帯まで、

いつも第四体育館には明かりがついていたんだ。

誰か部員が残っているのかと思ったのだが、

姿が見当たらない。」

 

 

緑間はげっそりした顔でメガネをあげた。

 

 

「…不気味なのだよ。」

 

 

ボールを操る青峰が気まぐれに意見を出す。

 

 

「隠れてるんじゃね?」

 

 

それを批判したのは紫原だ。

 

 

「え〜?そんな感じしなかったけど〜。

…誰も居ないって感じ〜?」

 

 

赤司は紫原の意見に情報を上乗せする。

 

 

「昨日電気を消しに行った先輩方も

同じ事を言っていた。」

 

 

青峰は興味無さそうにドリブルを始めた。

そしてゴールへ向かって走りだし、

また力強いダンクを決めた。

 

 

「ま、いーんじゃねえの、何だってよ。」

 

 

時刻はもうすぐ0時を回ろうとしていた。

 

 

 

0時を過ぎた瞬間、

第四体育館の明かりが消えた。

 

 

赤司はその様子を見届けて、

緑間と紫原と青峰を自分の元へと集まらせた。

 

 

「明けましておめでとう。

去年はご苦労だった。

今年もよろしく頼むぞ。

緑間、紫原、青峰。」

 

 

赤司は自分の右手を三人へ差し出す。

 

 

緑間はその手を取りふっと微笑んだ。

 

 

「当然なのだよ。」

 

 

硬く握手をした後に、

紫原は赤司の右手をじっと見つめて、

自分のポケットからまいう僕を取り出して握手をする様に渡した。

 

 

「うん、よろしく〜。」

 

 

最後に青峰は拳を突き出してニカッと笑った。

 

 

「おう‼」

 

 

赤司は少し驚いた様な顔をしたが、

また少し微笑んで、

右手で拳を作り、青峰へ突き出した。

 

 

 

結局、あの第四体育館の明かりが何故ついていたのかどうかは不明なまま、

帝光中学七不思議としてバスケ部員に広まったのだった。

 

 

___________________________

 

 

 

「そんな事があったんスか〜。

なんか聞いたことあるッス、その七不思議。」

 

 

黄瀬は深く頭を頷かせた。

 

 

「あの頃はまだ黒子も黄瀬も

まだレギュラー入りしていなかったな。」

 

 

緑間が確認するように言う。

 

黄瀬は茶化すように笑った。

 

 

「俺なんか入部すらしてなかったッスからね。

でも噂はよく聞いてたッスよ。」

 

「第四体育館はよく噂されるからな。

第四体育館にお化けが出るだの、

夜な夜なボールをつく音が聞こえるだの、

よくやるよな〜。」

 

 

僕はその時ドキッとした。

 

 

何故ならその第四体育館で大晦日勝手に忍び込んで練習をしていたのは、

他ならぬ僕だったからだ。

 

レギュラーメンバーが冬期練習の間、第一体育館で夜まで居残って練習している事を聞いて、

僕も練習していいものだと思っていたからだ。

 

でも一応ばれてはいけないと思い、

誰かが来るたびロッカールームに隠れた。

 

 

 

 

もっと強くなりたかった。

 

 

 

バスケを続けていたかった。

 

 

 

頑張る事しか知らなかった。

 

 

 

心の何処かで気づいていながらも、

諦めたくなかった。

 

 

 

 

僕が固まっていると、

赤司くんが見透かしたように僕を見て笑った。

 

 

「まぁ、今年はでないだろう。」

 

「赤ちん、

何でそんな事分かるの〜?」

 

 

紫原は赤司の顔を覗き込む。

 

 

「いや、そう思っただけだよ。」

 

 

 

赤司くんは気づいている。

 

 

去年の大晦日、

僕が勝手に忍び込んで

第四体育館を使っていた事を…。

 

 

「話はここまでにして、さっさと行くぞ。

今日が冬期練習最終日なのだからな。」

 

 

緑間の指摘に、赤司は悪戯に微笑んだ。

 

 

「あぁ、すまない。

僕としたことが話し込んでしまったね。

皆、部活に行ってくれ。

紫原、お前はここに残れ。

話したい事がある。」

 

 

赤司は紫原の話のところから声のトーンを下げた。

 

 

お説教タイムが近い…。

 

 

「…え〜。分かった〜。」

 

 

紫原は渋々了解すると、

中央のベンチに座った。

 

 

「うっし‼んじゃ行くか、テツ‼」

 

「はい。」

 

「俺も置いて行かないでほしいッス‼」

 

「黄瀬、ドタバタとうるさいのだよ。」

 

 

ロッカールームを出て行こうとするメンバーに、

赤司は声をかけた。

 

 

「緑間、黄瀬、青峰、黒子、紫原。

今年もお疲れ。

ご苦労だった。

日付けが変わったらまた言うが、

来年もよろしく頼む。」

 

 

赤司の穏やかな微笑みに、

僕らは一斉に返事をした。

 

 

「分かっているのだよ。」

 

「ラジャー‼」

 

「おう。」

 

「はい。」

 

「よろしく〜。」

 

 

 

二年の十二月三十一日の大晦日。

 

今日も彼らはバスケに夢中である。

 

 

 

 

これから彼等が別々の道を歩む事になろうとは、

 

誰も予想しなかった……。

 




今年もお疲れ を読んで頂きありがとうございました‼

シーズンにあわせて投稿して行こうと思っています‼

気に入って頂けると嬉しいです‼

よろしくお願いします^ ^
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