イナズマイレブン ~Hungry Heart~ 作:巻波 彩灯
「ファイアトルネード!」
一人の少年が炎をまとい空中で回転してはシュートを放つ。するとボールは燃え盛りながら少年が狙っていた所へ一直線に向かって行く。
壁に描かれた三重の円の中心を捉え、轟音を響かせる。近くにいた小鳥達が危機を感じて慌ててその場を飛び立つ。
「今日も絶好調だな、俺!」
少年は着地し、跳ね返ってきたボールを右足で受け止めた。ボールは長年使いこまれたのか、激しい汚れや焦げているところがあちらこちらに目立つ。
そしてそのボールを扱う少年は体つきがしっかりとしていて、背は子供にしては高い。短く整えられた茶髪をそよ風が撫で、眼前の壁を見つめる茶瞳は力強い光を放っていた。
「っし、もう一回だ!」
少年はもう一度先程のシュートを打つ。またしても強く壁に当たった鈍い音が響く。
ボールが戻ってきたらシュートを蹴って、また戻ってきたらシュートを打つを繰り返す。そして何度目かのシュートを蹴り終わった後、少年は時計を見る。
すると、少年が予定していた時刻よりも針が動いていた。少年はその事に気付くとボールを小脇に挟み、急いで自宅に戻るのであった。
桜が咲く頃合い、たくさんの新入生が期待や不安で胸を膨らませ新しい生活をスタートさせる。
そして彼らを引き入れる為に在校生達が呼びかけては興味をそそる様な話をする。元から興味のある人物なら即仮入部の行っていたり、未経験だがその先輩の話をきっかけに興味を持った者が一つ一つ確認しながら書類を書いていたりとしていた。
それは新設校である青天中学校でも変わりがなく、様々な部活が新一年生を勧誘していた。その中であまり勧誘に精力的ではない部活が一つ。
人気のない場所で特に装飾もなくサッカー部と書かれた木の板を長机に立てかけ、男女二人がパイプ椅子に座り、時折談笑しながら新入生がやって来るのを待っていた。
「ふーん、円堂とか吹雪とかはすぐに特集組まれているな」
黒の詰襟のボタンを二つほど開け、眼鏡を掛けている少年は手に持っている雑誌の特集ページを見て呟いた。
その言葉を聞いた隣にいるブレザーを着ている少女は特集ページを覗き込む様に見る。ページの見出しには「伝説を再び作った男・円堂守の誕生秘話」や「今は亡き弟に捧ぐ……吹雪士郎、プロ初ゴールに込めた想い!」と書かれている。
「そりゃ、初めて世界大会を優勝した日本代表のメンバーだもの。注目しないはずがないでしょ?」
「それも五年前の話だろ? 未だにそいつらを引っ張ってきやがるって、どんだけ暇しているんだよ」
「あはは、やっぱりサッカーが流行るきっかけを作った人達だからじゃないかな?」
少女の意見に少年はため息をつく。くだらないと言いたげな表情だ。
「でも、ウチには人集まらないからあまり恩恵がないよね……静岡はサッカー王国って呼ばれているってぐらいなのに」
「新設校行っても全国に行く可能性が低いからだろ? 少し前から全国行けるのが二チームになったからっつてもここは強豪がひしめくんだからよ」
「今年はせめて地区予選に行きたいねえ……」
少女は頬杖を付き、嘆く。そう青天中のサッカー部はどういう訳なのか部員が集まらず、彼女と少年を含めて六人しか部員がいないのだ。
円堂達が世界を制してから世の中は空前のサッカーフィーバーだというのに、青天中のサッカー部は恩恵を受ける事ができていない。公式大会に参加する事はおろか、まともにサッカーをする事すらできない部員の少なさ。
去年開校ばかりとはいえども流石に予想外な事態。しかも勧誘する体力は去年に使い果たしてしまったのだから、今年はあまり積極的になれない。
「サッカーがしてぇ……」
少年は天に仰いで思いを口にした。すると、思いが通じたのか一人の少年がやって来た。
「えっと、ここサッカー部ですか?」
「んあ? そうだけど?」
声に気付いた少年は来訪者を鋭い眼光で見る。真新しい詰襟を大柄な体に身を包ませ、茶色の瞳はその眼光に負けじとしっかりと見つめ返していた。
「こら、荒木君! そんな怖い顔しないの! ……ごめんね、怖がらせちゃったよね?」
「いえ、別に。俺は大丈夫ですから!」
大柄な少年はニカッと笑い、少女達に対面している椅子に座る。その様子に少女が逆に驚いた。
「え!? 荒木君の事を怖がってすぐに逃げ出す人が多いからちょっと意外かも」
「こんぐらいでビビってたら、サッカーできないですって。俺はここでてっぺん取りたいですから」
「ほう、言うじゃねえか新入り。お前、名前教えろ」
荒木と呼ばれ続けていた少年は先程と同じ様な眼光で目の前の人物を睨み付ける。大柄な少年は物怖じせず、右手の親指で自身を指しながらはっきりと自分の名前を伝えた。
「俺は
それから数分後、大地がその場から立ち去り、また二人だけになる。
「巽君か……結構面白い子が入ってきたよね」
赤みがかった茶髪をいじりながら少女――
「まあ、今まで声をかけてきた連中に比べたらマシだな」
「しかも、あの風早君と同じリトル出身だから即戦力になるよね」
「さあな、どちらにせよ俺が相手をぶっ潰す。そんだけだ」
「相変わらずだな、荒木君は」
と話している内にまた一人が訪れて来た。二人は宣伝もしていないのにまた人がやって来た事に驚きながらもその人物を招く。
運命は少しずつ動き出していた――。
初めまして、巻波彩灯と申します。この度はご閲覧ありがとうございます。
今回、イナズマイレブンの二次創作作品を書いてみました。読者参加型の企画に参加させていただく内に自分でも書いてみたくなったので、つい筆を執ってしまいました。
そしてこの作品はタグにもある様に読者参加型を企画しております。
サッカーについては詳しい事は知らない素人なので試合展開には目に余るところがちらほらと出てしまうかもしれません。
それに筆の進みもかなり遅いので、結構待たせてしまうかもしれません。
それでも今後も読んでくだされば幸いです。物語は始まったばかりなのでまだまだこれからですが、楽しみに待ってくだされば作者の冥利に尽きます。
最後に活動報告の方にてオリキャラの募集をかけています。もし興味がありましたら、気軽に覗いて一案を置いてくだされば幸いです。