イナズマイレブン ~Hungry Heart~   作:巻波 彩灯

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 どうも、巻波です。思いの外、たくさんの方が企画に参加してくださって、めちゃくちゃ驚いています。
 青天中のメンバーが確定した今、ライバル校のメンバーを募集しています。後書きの方に色々と話すので募集の件はここまで。

 先に忠告しておきます。試合というかミニゲームっぽい感じでサッカーをしている描写がありますが、サッカーガチ素人なのでサッカーの描写はド下手です。
 温かい目で読んでくださると嬉しい限りです。


 では、後書きの方でまたお会いしましょう。


第一話:小さすぎるぜ、新入りィ!

「聞いて驚け、てめえら!!」

 部活勧誘を終えた強志が部室のドアを蹴飛ばしながら開ける。蝶番が悲鳴を上げていたが、何とか持ちこたえていた。

「部長、もう少し静かに開けてくれよ。いきなり部費が修理代に飛んじまったら、大変なんだぜ?」

「ああ? んな事より、これを見ろ!」

 強志は獰猛な笑みを浮かべて、テーブルの上に仮入部届を叩き付ける。枚数は四枚。

「おお! マジか!? 今年は四人も来たのか!?」

「ほう、意外だな」

「……こんなに集まるものなのか……」

「ケケ、それでも去年と比べたらナ」

 部員達は各々率直な感想を言う。それらを聞いて強志は勝ち誇ったかのように、胸を張った。

 しかし、目元が前髪で隠れている不気味な男の一言が現実に呼び戻す事となる。

「デモ、これじゃあサッカーはできないナ。まだ九人しかいないダロ?」

 強志はその発言をした男を睨つけ、ただただ押し黙るしかなかった。

 ――その沈黙を破るかのようにある一人の男性が部室へと入ってくる。男性に遅れて有希も入室。これで現サッカー部のメンバーは勢揃いとなった。

「やあ、勧誘ご苦労様。結果は樋口さんから聞いているよ」

 男性の顔立ちは強志達よりも年を重ねていながらも柔和。服装は彼らと違い、カッターシャツとスーツパンツでまとめている。

「おっ、生久良センセ! おはようございます!」

 白髪をツーブロックで整え、サングラスを掛けている少年が礼儀正しく男性――生久良(なまくら)大悟(だいご)に挨拶をする。他のメンバーも一様に挨拶した。

 そう、生久良はサッカー部の顧問を務めている教師だ。ちなみに強志と有希の担任の教師でもある。

「ああ、おはよう。今年は四人も集まっているって聞いて、びっくりしちゃったよ」

「それでも足りないんですけどね」

「それはこれからなんじゃないかな? まだ仮入部期間だし、他の部活に行っていた子もこっちに流れる事だってあり得るよ?」

「逆を言うと、最初からこっちに仮入部してきた奴らが流れる可能性もあるって事ダロ?」

 またもや的確な一言に発言者は口を閉じてしまう。微妙に暗い雰囲気になった場を盛り上げたのは、この男だった。

「だああああ! 面倒くせぇ! そんでも諦めずに勧誘すれば、良いって事だろうが!」

 先程の白髪の少年――(くろがね)閃理(せんり)は少し重い空気を吹き飛ばすかように大声を張り上げる。

 周りは目が覚めたかのように気が付くが、同時にその大声に眉を顰めたり、耳を塞いだりしてしまった。

「うるせええんだよ! このオリハルコン!!」

「うおおおお!? 危ねええええええ!!」

 一番癇に障った強志が閃理に向かって回し蹴り。閃理は殺意が込められた鋭い回し蹴りを何とか躱す。

「少しはその大声どうにしかしろ! やかましいんだよ!」

「部長、それはないぜ!? ってか、殺意込めて睨んでくるのやめろって!!」

「そうだよ、荒木君。まだ話は終わっていないから、遊ぶのはその後にしてね」

 有希の一言で強志は閃理と戯れるのを止めた。若干不満気ではあるが有希には逆らえない故に、しぶしぶ元の立ち位置に戻る。

「勧誘するとしても情報はないとな……流石に手探りでは限度がある」

 何事もなかったかのようにボサボサとした蒼髪と眠そうな目つきが印象的な少年――空賀(くが)鈴司(れいじ)が話を本筋に戻す。それに続いて、輪から一歩離れた位置にいる銀髪の男子生徒、夜華(よるか)藤四郎(とうしろう)が口を開く。

「確かにな……でも、今年の一年は凄い特技の持ち主がいるんだろう?」

「うーん、何か一年生を担当している先生方の話を聞いているとそうらしいね。僕はあまり話が聞けていないから、今度それとなく聞いてみるよ」

「ケケケ、とんだイロモノが勢揃いしてなきゃ良いけどナ」

 先程からズブリズブリと一言を突き刺す人物――蛇崎(へびさき)利一(りいち)はどこか他人事のように笑っていた。

「今年の一年生は個性豊かと言っているけど、先生達の顔を見れば、どれだけ苦労しているか分かるよ……」

 生久良は今朝の朝会を思い出す。今年はかなり賑やかな子供達が入学してきたから、先生達もまた協力し合って事に臨むようにと言っていた一年の学年主任の目がかなり死んでいた事を。

 しかし、これが他人事でなくなる日はそう遠くはない。着々とその足音は近づいていた――。

 

 一方、その頃大地は入学式を終え、自分がこれから在籍するクラスの教室にいた。

 周りには見知った顔もいたが、知らない顔の方が多い。ほとんどのクラスメートとは初対面だ。

 自分の席で配られた教材に目を通していると何やら磯の匂いが右隣から漂ってくる。匂いの元が気になった為、横を向く。

 すると、隣席の椅子の下にクーラーボックスが置かれてあった。恐らく原因はこれではないだろうかと大地は察する。

「おっ、何か気になるのか?」

「ああ、ちょっと磯の匂いがしたからよ。それ、お前の?」

 持ち主らしき人物に声をかけられ、大地は視線を上げて目を合わせる。

 目の前にいた少年は黒のミドルヘアで顔も体つきも特に目立った特徴はない。しかし、その瞳の奥は大海を思わせる程に穏やかながらも激しい光を放っていた。

「そうだぜ。丁度、実家から届いたもんだからよ、これからお世話になるところに持っていこうと思ってな」

「へぇ、そうなのか。お前、名前は? 部活はどこだよ?」

「俺は南波(なんば)海人(かいと)! 南波でも海人とでも良いぜ。ちなみにサッカー部だ! お前は?」

「俺は巽大地! 俺もサッカー部だ! よろしくな」

 握手を交わす。すると、海人は気付いた。大地の手の大きさに。元から背があるとは認識していたが、それに見合うだけの大きい手をしている。

 だからこそ、同じポジションだったら、かなりの好敵手になると感じていた。

 大地も大地の方で海人の握力に少し驚いていた。軽く握っているつもりだろうが、ガッチリと大地の手を掴んで離さない。

 もし、彼がキーパーなのであれば、これほど頼りになる奴はいないと直感した。

 

 それから、担任の教師が来て、これからの話や自己紹介などで時間が経過。ホームルームの時間が終わると部活に仮入部している生徒達は一斉に飛び出して行った。

 もちろん大地や海人も例外ではなく校内地図で場所を確認しながら部活棟にあるサッカー部の部室へと向かう。

「サッカー部の部室はどこだ! まっ、このまま道のままに進めば、いつしか辿り着けるかっ!」

 唐突に後ろから大きな声が聞こえた。二人は振り返るとその先には赤い髪の少年がこちらに向かって来ている。

 二人は難なく少年を躱す。少年は勢いそのままに階段を駆け上っていく。

「おい、そっちにサッカー部はねえぞ!」

 大地はその背に呼びかける。少年は駆け上がる足をピタリと止め、大地の方へ顔を向ける。

「お前もサッカー部なんだろ? 俺達もサッカー部で今行くとこなんだ。一緒に行こうぜ!」

「お前らもか! じゃ、一緒に行こうぜ!」

 赤髪の少年はすぐさま階段を駆け下り、大地達に付いて行く。その道のすがわら、互いの自己紹介を含めて会話を交わす。

「あ、そうそうオレの名前は日ノ丸(ひのまる)(のぼる)! サッカーはまだ始めたばっかだけど、これからもよろしくな!」

「俺は南波海人! 俺もリトルの経験がねえから、気にすんな」

「え? 二人ともリトル入った事ねえの?」

 この中で唯一リトルに所属していた大地が聞き返す。サッカーを始めたばっかと言った日ノ丸はともかくとして、海人はリトル経験者だと思っていた為に経歴を聞いた瞬間、驚きを隠せなかった。

「大地はリトル入ってたのか?」

「ああ、そうだぜ。何てたって俺は県内一最強の矛だからな! あ、俺は巽大地。よろしくな、日ノ丸!」

「おうよ、こっちこそよろしくな! それにしても大地って、体でけえよな。リトルに入っていたからなのか?」

「それは俺には分からねえ話だな」

 日ノ丸の言う通り、大地は少し前までランドセルを背負っていた年頃には見えない程に背は高く、ガタイも良い。

 しかし、隣で海産物が入ったクーラーボックスを持っている海人も背や体格は大地に劣るもののかなり筋肉質と見てとれる。

 それに比べ日ノ丸は小柄だ。二人がいなくともそうだと言われるぐらいに背が低い。それでもめげていないのは、彼が元来から常にポジティブすぎるだからだろうか。

「そんでも大地がリトル出身って言うのは心強いな! ……っで、県内一最強の矛って、どういう意味だよ?」

 海人は先程大地が言っていた単語に純粋な疑問を浮かべていた。言わんとしている事は何となく分かるが、好奇心が湧いてより詳しく聞いてみたいと思ったのだ。

「意味は簡単だ! 県内で一番強えストライカーって事だよ!」

「なるほどな! 大地はストライカーだったのか! へへっ、こりゃ期待しているぜ!」

「オレもフォワード希望だけどさ、初心者だから右も左も分からねえから、色々と教えてくれよ!」

「ったり前だ! とことん特訓に付き合うぜ!」

 三人は気質が似ているせいか意気投合し、騒がしくしながら部室へと向かう。そして、また途中で騒々しい人物が目の前を横切った。

「早くサッカーしたい! と言うか、ここどこ?!」

 随分と小柄な少女。どうも迷子らしいが、動きは忙しなく落ち着くという事を知らないかのようにずっと動き続けている。

「お前もサッカー部なのか?」

 困っていると思われる少女にいち早く声をかける海人。少女は天真爛漫な笑みでこう返した。

「うん、そうだよ! 私はフェリシー・アニエス・アルヴィナ!」

 フェリシーの名前を聞いて海人は驚く。いや、後続の二人にも聞こえ、彼らもまた驚いて互いの顔を見合わせた。

 どう聞いても日本人ではない外国人らしい名前だ。

 それに彼女と目を合わせた海人はその相貌に息を呑む。日本人離れしている、ヨーロッパ系の外国人らしい目鼻立ちをしているからだ。

 まさか、この学校で純外国人に出会う事なんて思ってもいなかったのだから、それには驚愕するばかり。

「どうしたの?」

「……お前って、外国人?」

「うん、そうだよ! それがどうしたの?」

「いや、悪い。外国人の子がいるなんて思わなかったから、びっくりしちまったよ」

 海人はありのままに言葉を告げた。フェリシーは特段気を悪くする事なく、そのまま明るい調子で言う。

「そっかー! そうだったんだ! あ、あなたの名前は? それと後ろの二人は?」

「俺は南波海人! 後ろのデカいが巽大地でちっさいのが日ノ丸昇だ!」

 海人は自己紹介も含め、後ろにいる二人を指差して彼らの事も紹介する。大地も日ノ丸も明るい笑みで各々口を開く。

「よろしく頼むぜ! フェリシー!」

「よろしくな!」

「うん、よろしく!」

 こうして、強志が持っていた仮入部届を提出したメンバーが揃った。彼らは明るい気質なせいか、賑やかな雰囲気のままサッカー部の部室へと向かって行った。

 

 一年生全員が部室に入ると部員全員が総勢で出迎えた。たった六人しかいないサッカー部に待望の新入部員、これは手厚く歓迎しない訳がない。

「よく来たな、新入り共ォ! 歓迎するぜ!」

 閃理が代表して挨拶をする。何故、サングラスを掛けているのだろうかと疑問に思う大地達。

 その疑問が伝わったのか、閃理は理由を答える。

「コイツは俺の師匠からもらったもんで、お守りなんだ。俺の誇りそのものだぜ」

 答えを聞いて理解する新入生達。「そんな事より」と閃理は言い、話を切り換える。

「お前ら、自己紹介してくれ! 名前は知っててもまだ顔は知らねえからな!」

 そう言うと亥の一番にフェリシーが手を上げ、名乗りを上げた。

「私はフェリシー・アニエス・アルヴィナ! よろしく!」

「おう! お前が例の外国人か。俺もディフェンダーだから、お互いよろしく頼むな!」

「C'est」

 フランス語が飛び出るとその場にいたほとんどの人間が頭に疑問符を浮かべてしまった。

 恐らく、「こちらこそ」とか「ええ、もちろん」という類で言ったのだろう。しかし、突然言われたのだから、頭が追い付かない。

「おい、てめえ。次からは日本語だけで喋れ。じゃねえとぶっ飛ばすぞ」

 一番理解できない強志がレンズ越しにフェリシーを睨み付ける。完全に脅していたが、それに屈するお転婆娘でもない。

「Je comprends! 次からは気を付けるね」

「だから、日本語だけっつてんだろ!」

「ああ、待て部長! 落ち着けって!」

「荒木君、今はそんな事している場合じゃないから。とりあえず、椅子に座って一年生達の話を聞こうよ」

 一触即発かと思われたが、有希が強志をたしなめた事により危機は過ぎ去った。そして強志は言われた通り、椅子に座っては彼なりの聞く体勢になる。

「んじゃ、次!」

「じゃ、オレ! オレは日ノ丸昇! よろしくお願いします!」

 日ノ丸は閃理に負けないぐらい大きい声で名乗る。強志は今にも殴りかかりそうになったが、有希に制され大人しくしていた。

「……お前は初心者と聞いているが、それは本当か?」

「本当ですよ! オレ、本格的にサッカーやるのは初めてですけど、どんな特訓でも喰らいついていくんで!」

「まぁ、練習次第で部長より上手くなるかもしれないしナ、ケケケ」

 と、蛇崎は強志の方に目を向ける。相変わらず鋭い目つきを保ったままだが、特に何かを言う気配はない。

「次は俺から言うぜ! 俺は南波海人! 俺もリトルの経験はないですけど、ゴールは任せてください!」

「ほう、南波はゴールキーパーなのか?」

「そうです! イナズマジャパンの活躍見てから俺もサッカーしたくて、特に円堂さんがカッコよくてさ!」

「キャプテン、これは結構大きいと思うぞ?」

 鈴司は閃理に話を振る。閃理は首を縦に振り、海人に顔を合わせた。

 ここに来て正ゴールキーパーが獲得できるのは、チームとして大きな一歩だ。期待もそれなりにかかる。

「ウチにはゴールキーパーがいなかったんだ。期待してるぜ、海人!」

「うっす!」

 そして、二年生の視線は最後の一人に集中する。その人物は不敵で強気な笑みを浮かべ、自分の名前を言う。

「俺は巽大地! 県内一最強の矛だ! これからもよろしく頼むぜ!」

 随分と自信に満ち溢れた肩書き、そう思わせるような確かな説得力に富んだ調子。それが巽大地。

 しかし、この自己紹介に異を唱える男がいた。そのエメラルドグリーンは熱く炎のように燃えている。

「……県内一最強か……随分と大きく出たな、新入りと言いてえところだが……」

 二年生のメンバーは「あ、これマズイやつだな」と推測し、全員耳をあらかじめ塞いだ。そして彼らの予想通り、閃理は声を張り上げる。

「小せえ! 俺からすりゃあ小さすぎるぜ、新入りィ! 県内一最強だあ? どうせ目指すならその先、その上! ストライカーのてっぺんを目指してこそだろうが!」

「っ!?」

 大地は閃理の大きい声よりも予想外な返しに驚いた。彼のは名乗った肩書きは自称、人によっては勝手に彼を尊大で傲慢な人物だと決めつけ、冷たい言葉を浴びせてきた。

 だが、閃理はとても熱い言葉で返してきた。だからこそ、大地の闘志はさらに火が付き、茶色の瞳の光は強くなる。

「……アンタ、面白いな! もちろん、てっぺんは取るに決まってんだろ!」

 場の空気が熱くなり出した。海人や日ノ丸も「俺だって、負けねえぞ!」、「オレも練習しまくって、追い抜くぞ!」と各々負けじと闘志を全面に出す。

 が、丁度良いところで鈴司が軽く手拍子を鳴らした。続けて、「そこまでだ。話が進まなくなるぞ、キャプテン」と、たしなめるように言う。

 その言葉に閃理は落ち着きを取り戻し、咳払いを一つして自分の名前を名乗る。

「今度は俺達の番だな。俺は鉄閃理! このチームのキャプテンでディフェンダーをやっている! 歓迎するぜ、新入り!」

 その後、閃理は不機嫌そうにしている強志に視線を向ける。どうも自己紹介できなさそうな雰囲気なので、彼の分も担当する。

「んで、そこに怖い目つきをしたのが部長の荒木強志。まぁ、ちとばかし怖えというか容赦ねえところがあるが、根は良い奴なんだ。よろしく頼むな」

「あれ? 何で、キャプテンと部長って違うんですか?」

 日ノ丸が疑問を口にする。部長とチームキャプテンを同時に担っているのが一般的だろう。

 しかし、青天中のサッカー部は珍しく両者の役割が分担されている。理由は何となく分かる気がするが。

「ああ、部長はこの部の創設者だからな。でも、俺にチームキャプテンを任せてくれたんだ」

「ふーん、そういう事だったんだ! 信頼してもらっているんだね!」

「ああ!」

 他者を寄せ付けなさそうな強志が彼にチームキャプテンを任せていたのだから、信頼はかなり厚いと見て良いだろう。

 ただし、真相は少し違う。それは強志だが知る話だが。

「次は私から言うね。私は樋口有希です。マネージャーをやっています。これからよろしくお願いします」

話に一旦の区切りが見えた為、有希が続いて自己紹介をし、丁寧にお辞儀する。生来の真面目さは滲み出ている。

「次は夜華君かな?」

「っ!? ああ、分かった。俺は夜華藤四郎。ポジションはミッドフィルダーだ。よろしく」

 有希に話を振られて一瞬体を強張らせた藤四郎。実は彼、女性が苦手であまり話す事ができないのだ。

 しかし、それだとサッカーでも影響が出る為、連携が取れるぐらいには努力している。

「ケケ、次は俺かナ。俺は蛇崎利一、ディフェンダーをやっている」

 目元が前髪で隠れている為、その表情は読み取れない。しかし、声の調子からして一応歓迎しているのだろう。

「最後は俺だな。俺は空賀鈴司、このチームの司令塔を任されている」

 大地は眠そうな目つきをしている彼がどんな『眼』を持っているのかとても気になった。チームの頭脳である故に、何を見据えているのかを。

「んで、全員自己紹介終わったな! っじゃ、十分後にグランドに集合! とっと着替えろよ、新入り!」

「女の子は下の方に女子更衣室があるから、案内するね」

 男女に分かれて、各々練習着や体育着に着替える。そして、時間通りに全員がサッカーグラウンドに集結した。

 

「これからミニゲームをやる! チーム分けは簡単に攻撃側と守備側に分かれる……以上!」

 閃理のざっくりとした説明でも一年生達は戸惑う事なく二手に分かれた。

 まず、守備陣はゴールキーパーである海人がゴールに立ち、その前に閃理を中心に右が蛇崎、左がフェシリーとディフェンダー陣が固める。

 そして藤四郎が先頭に立ち、牽制する役割を受け持つ。彼はミッドフィルダーだが、守備に活躍するタイプの選手の為、あえてこちら側にいる。

 攻撃陣は先頭に強志と大地、実力が未知数な日ノ丸が並び、その後ろに鈴司がいるというかなり攻撃的な配置となっている。

 合図は有希がホイッスルで鳴らす。甲高い笛の音が鳴ったら、大地が軽く触り、強志が後ろにいる鈴司にパス。

 受け取った鈴司は全員の動きを見る。強志はゴールへ真っ先に向かっているし、大地も同じように走っている。日ノ丸は大声を上げて呼びかけているが、蛇崎がきっちりとマークしていた。

 そして、目の前に迫ってきた藤四郎のブロックを難なく躱し、大地にボールを送る。大地は閃理に背を向けてトラップ。

 すかさず、フェリシーと閃理でプレスをかけるが、それに負ける大地ではない。

 恵まれた体躯と高いボールキープ力で二人のプレスを崩し、ゴール前に迫る。そして、ボールを蹴り上げ左足に炎を纏わせては、跳躍し回転する。

 まさしくそれは日本が誇る爆熱ストライカー・豪炎寺修也の代名詞――、

「ファイアァァァ、トルネェェェェード!!」

 が放たれ、海人は驚きのあまり反応が遅れてしまう。生でそのシュートを見たのは初めてだからだ。

 ボールは何の障害もなくゴールに突き刺さった。

「すげえ! 大地、あんな必殺技持ってたのか!」

 近くに駆け寄る日ノ丸。興奮が抑えらないといった様子で話しかける。

「ああ! こいつで得点を稼いでいたんだよ!」

「マジか! やっぱり県内一最強名乗っているだけあるな!」

 その陰で一人、鋭い視線で大地の背を睨む。しかし、その眼光は今まで違うように思えた。

「おう、部長。今ので何かあったのか?」

 その視線に気づいた閃理が声をかける。

「……あいつ、結構強えな。足は遅せぇが、その分フィジカルもあるし、ボールもキープできる」

「そうだな。一年生にしてあんなパワーはすげえわ。今回は止めきれんかった」

「てめえを一回でも吹っ飛ばせるなら、大したもんだぜ。まあ、次は俺に回して欲しいけどな」

「部長、今日は変に落ち着いてんな。有希に何か言われたのか?」

 その一言にいつも強志の眼光が戻り、閃理は謝罪した後、足早に彼から離れた。また回し蹴りを飛ばされてしまうのは、流石に勘弁して欲しいからだ。

 

 ゲームは再開し、攻撃陣は攻め方を少し変えた。強志がドリブルし、相手陣地に切り込む。その間に大地がディフェンダーを引き付け日ノ丸がフリーになる。

 しかし、強志のドリブルはキレがなくただスピードに身を任せているだけ。フェシリーが難なくブロックし、クリアした。

「やっぱり部長に任せるとこうなったな」

「お前、分かっててやったのか」

「夜華だって、あえて抜かされているんじゃないのか?」

「別に……ただ今回は新入生の実力を測るのが目的だからな」

 藤四郎は元の位置に戻る。鈴司も「それもそうだな」と言い、スタート時にいたポジションへと戻っていた。

 

 またゲームが始まると今度は大地を主軸として攻める事となった。しかし、先程よりも強い圧が来た為、大地はどうにかプレスを崩して日ノ丸にパスする。

 日ノ丸はそのままタイミング良く足を振り抜き、ボレーシュートを放つ。この事から日ノ丸はかなり運動神経は良い事が分かった。

 海人はそのシュートをガッチリと両手で掴み、受け止める。小柄な体格から放たれたシュートとは思えない程の威力が手に伝わってきた。

「おお、日ノ丸! お前、すげえ威力のシュート持ってんな!」

「そうか? オレにはよく分かんねえけど、海人がそう言うならそうなんだな!」

 初心者である日ノ丸はイマイチ自分のポテンシャルを把握していない。それどころか、先程の大地のシュートを見てしまったものだから、そこまで凄くは感じていないだろう。

 

 こうして何度かゲームを繰り返しながら、互いの実力を確かめ合う青天中メンバー。彼らの様子を影で見つめる少女が一人。

「へえ、あたしチャン以外にもあんなに巧みにボールを操る人達がいるなんて……エンターテイナー魂が燃えてきちゃいましたのんっ」

 青天を覆う雲はすぐ傍までやって来ていた――。




 こんな感じで書いてきますが、如何だったでしょうか?
 序盤なんであんまりキャラを動かすとあらぬ方向へ突き進んでしまうので、少し抑え目に書きました。

 それと前書きの方で触れたライバル校のメンバーの募集は下記のリンク先の活動報告で行っています。もしよろしければ、気軽に一案を投げていってください。

ライバル校メンバー募集→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=220281&uid=201775

 では、この辺りで筆を休めようと思います。感想の方もお待ちしております。

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