イナズマイレブン ~Hungry Heart~ 作:巻波 彩灯
今回もお知らせがあります。後書きの方にまとめましたので、そちらも確認していただけると嬉しいです。
後、今回の話はちょっと展開が雑かもしれません。また相変わらずサッカー描写は下手です。
では、後書きにてまたお会いしましょう。
一人の少女が階段の踊り場を陣取り、その周辺を行き交う一年生の視線を釘付けにしていた。
彼女が行っているのは何の変哲もないマジック。しかし、大小あらゆるボールが変幻自在に形や色を変え、見る者を飽きさせず魅了し続ける。
これだけでも少女がエンターテイナーとして如何に優れているのかが分かるだろう。それでも彼女はもっと人々を驚かせる為に、曲芸を取り入れ場を盛り上げる。
「さあさあ! これがフィナーレよんっ! その目にたっぷりと焼き付けておいてねん!」
どこか芝居かがった口調。だが、それが彼女の芸をより引き立たせている。そして小柄な身丈で披露された派手な芸は成功を収め、人々から盛大な拍手が上がった。
少女は猫目を細め、仰々しくお辞儀する。まるで一つのサーカスを見ているかのようだ。
「玉林! またお前かぁー!!」
「あっヤバ……それでは皆さん、チャオ!」
野太い中年男性の声が響く。少女は大急ぎで自分の芸に使用した道具を回収し、速やかに撤退した。
少女――
天科は追手からどうにかして逃げ切った。彼女が出た場所は校庭。そこであるものを目撃する。
つい先日も見たサッカー部の練習だ。相変わらず部員が揃っていない中、九人のままミニゲーム方式で練習を行っている。
「やっぱりあたしチャン以外にあんなに巧みにボールを操る人が……負けてられないですのんっ!」
数々の部員の中で彼女の赤褐色の双眸は一人を捉えていた。チームの中でも大柄な部類に入り、それでいてその恵まれた体格を持て余すことなく使いこなしてボールをキープしている少年。
彼の瞳は状況を冷静に分析しながらもゴールを何としてでも奪わんとする情熱で強く煌めいていた。――天科はその少年の情熱に心惹かれ釘付けにされた事を自覚する。
少年は天科の視線が集中している事も知らず、目の前にチャンスが生まれた瞬間、ボールを上に蹴り上げては自身も跳躍して炎を纏う。そして、空中で回転したエネルギーをボールに蹴り込んでシュートを放つ。
鋭利で的確なコースにゴールキーパーの手は届かない。ゴールネットが揺れる。
包み隠さず大きくガッツポーズを決める少年。仲間達が各々彼を賞賛したり、先程の動きに対するアドバイスを送ったりとしている。
「ふふっ、決めましたのんっ! あたしチャンはあなたに挑戦状を送りますのんっ」
天科は不敵に笑う。彼女の視線を奪った少年――巽大地に対する強いライバル心と自身のエンターテイナーとしての矜持を剥き出しにして。
それから翌日の事、大地と海人は頭を悩ませていた。仮入部中だというのに部員を勧誘しろという伝令が下ったのだ。
主に部長である強志からの命令だが、これから自分達が入部しても人数が足りないからまともに大会に出れないと言われてしまい、こうして自分達も協力する事になっている。
自分のクラスメートを勧誘してみたは良いものの誰一人もサッカー部に仮入部すらしようという気がなかった。
ここ静岡はサッカー王国とイメージが付いているだけあり、強豪がひしめき合っている都道府県の一つである。
そんな激戦区にわざわざ首を突っ込んでも自分が活躍できる場なんてないし、そもそもサッカー初心者がやっても……と思う者が多い。日ノ丸のようなタイプは稀有なのだ。
「思ったほど、人集まんねえな」
「後は日ノ丸達か……何か良い情報持ってきてくんねえかな」
男二人で昼食をつついていると、噂をすれば騒がしいコンビが彼らの教室に突撃してくる。
「よぉー! 大地と海人いるかー!?」
「面白い情報持ってきたよー!」
日ノ丸とフェリシーの声が教室内に響き渡る。生徒達は驚いて物を落としたり、慌てて耳を塞いだりして日ノ丸達の方を睨む。もちろん、大地と海人も例外なく彼らに厳しい視線を送る。
「そんな大声出さなくても俺も大地もいるよ! っで、どんな情報だよ?」
海人は箸を止め、弁当の縁に置くと出入り口にいる二人に近づく。大地も海人同様に途中で止め、話の詳細を聞く為に近寄った。
「何かこの学校にマジックしたり、ボールとか何やら使ったりしてパフォーマンスするヤツがいるんだってよ! この後、一緒に見に行こうぜ!」
「ボールやマジック? それって、あれか? 玉林天科とかいう変人の事か?」
大地はは日ノ丸の話からある人物の名を口にする。玉林天科――入学してから早々休み時間になれば、学校中至る所で芸を披露し、人々を驚かせては教師に怒鳴られ足早に逃げるという事でもう既にちょっとした有名人と化している人物だ。
「Ouais! 絶対面白いと思うよ!」
「面白いかどうかってな……でも、誘う価値はありそうだな」
「まっ、それでもまだ昼食の時間だし、お前ら飯は?」
日ノ丸とフェリシーは声を合わせて「もう食べた!」と声を張る。再び周囲の目が厳しくなった。
その目を感じ取った大地と海人は待ち合わせの時間と場所を確認して、それぞれが在籍しているクラスに二人を送り返す。そして、その後は自分達のクラスに戻り、大急ぎで昼食に食らいつくのであった。
それから午後休み、日ノ丸達と約束した場所に向かう大地達。その場所に辿り着くと人だかりができていた。
「うわー、これどうすんだよ?」
海人がギャラリーの多さに辟易する。この中に小柄な日ノ丸やフェリシーを探すのは流石に骨が折れる。
「俺がじっと待っとけば、アイツら分かるんじゃねえの?」
「あー確かにな」
大地の一言に納得した海人。大地は一年生の中でもかなり身長は高い方だ。それどころか先輩達よりも高い可能性がある。
だから、あえて待つ事にしたのだろう。すると、日ノ丸やフェリシーがこちらにやってくる姿が見えた。
「やっぱ大地デカイから見つけやすいや!」
「うんうん! 隣に海人がいたからもっと分かりやすかったよ!」
「俺達がお前らを探すより確実だと思ったからな」
「大地の言う通りだな。俺も目印になって何よりだぜ」
四人は合流する。そして、人混みの中をかき分けて、これからパフォーマンスする芸人の姿を全員が視認できる位置まで何とか辿り着いた。
ステージの中央にいる少女はフェリシーと変わらないぐらいに小柄で、頭に小さなハット帽のアクセサリーを付けている。
赤褐色の猫目が周りを見渡し、ギャラリーの多さを確認する。その最中に大地と目が合うと少女は不敵に微笑んだ。
大地はその微笑みの意味が分からず、眉を顰める。少女はそんな大地の様子も露知らず、他の人々に目を合わせていく。
「Mesdames et messieurs! とびっきりのスペクタクルをこの玉林天科がお見せするよん!」
一通り、確認を済ませると天科は仰々しくお辞儀とともに挨拶をする。口調もどこか芝居臭さを感じる。
「今なんて言ったんだ?」
海人が小声で疑問を口にする。彼女が言っていた全体の意味が分からないというよりか、ところどころで使われた外国語の意味が分からないというニュアンスだ。
「うんとね、最初に言っていたのは英語でいうレディース&ジェントルマンの意味で、スペクタクルはショーって言う意味だよ」
「なるほどな、ありがとう。流石、本場の人間だな」
フェリシーと海人が小声で会話している間に天科はボールを次々と取り出し、華麗にそれらを捌いていく。しかも、大きさも形も違うボール達をだ。
そのボールコントロール力に大地は直感した。コイツは使えるぞと。
「さあさあ、最初はあたしチャンのお得意のボールジャグリングよん! 盛り上がっていってネン!」
手だけではなく足も器用に利用してボールは地を着く事なく一周する。時には天科自身が動きを加えて、自由自在にボールが動き回る。
そして、その芸のフィナーレでボールを落とさず全てキャッチし、歓声を沸かせた。
「まだまだですのん! お次はボールが瞬間移動してしまうマジックよん!」
と言って、野球ボールと同じサイズのカラーボールを取り出し、手元から姿を消させた。周りは大いに驚き、ボールの行方を探す。
「タネも仕掛けもありませんのよんっ! ……そこの大きなムッシュー! ちょっと前に出てきて欲しいのです!」
「え? 俺?」
天科は大地を指差す。指名された大地は彼女の隣に立った。身長差は物凄くまるで大人と子供が並び立っているような感覚を覚える。
「ボールはこのムッシューのポケットに移動していますのよんっ!」
そんな訳がないと大地は思ったが、ズボンのポケットに違和感を覚える。その違和感の正体を探ると野球ボールぐらいの大きさのものが手に当たった。
まさかと思い取り出すと彼の手には天科が先程消したカラーボールが握られていた。また再びギャラリーは盛り上がる。
「メルシー、ムッシュー。協力してくれた彼にも盛大な拍手をお願いしますのんっ!」
「俺、何にもやっていねえけどな……」
拍手が大地にも向けられる。そして天科の指示で大地は元の場所に戻った。何が起きたのか、分からないまま。
「おお、皆サマ! 残念な事にお時間がやってきてしまいましたのんっ! 誠に心苦しいですが、次が最後になるのです」
腕時計を見ている素振りをして芝居がかった調子で告げる。「えー」と残念がる人々の声がところどころに聞こえてきた。
「では、あたしチャンの最大のアンテルプレタシオンをその目で焼き付けて欲しいのよんっ!」
天科はどこからかそれなりの大きさのあるボールを取り出し、玉乗りしながら一番最初に行ったボールジャグリングを加えた。
そして、彼女の身丈からド派手な芸が繰り返され、フィナーレにボールに乗ったまま全てのボールをキャッチし、そのままお辞儀する。
その瞬間、今日一番の歓声が上がり、拍手や指笛があちらこちらに鳴る。天科も今日一番の笑顔で応え、ボールから降りていく。
「皆サマ、今日はありがとうございましたのです! では、次の」
「よぉ、玉林。終わったか?」
パフォーマンスが終わったところを見計らったのか、ガタイの良い中年男性が天科の後ろに現れる。
男性はカッターシャツとスーツパンツにジャージの上着を羽織っており、首元のタグや雰囲気から教師だと判断できる。
「ご、ごきげんよう、メートル。あたしチャンのスペクタクルは如何だったですのん?」
「おう、素晴らしいものだったな……だけど、それを免罪符にはできねえな」
「……チャオ!」
「逃がす訳ねえだろ、この無許可魔術師! 今日こそは反省文を書いてもらうぞ!」
いつも通りの天科と教師の追いかけっこが始まり、ショーは終わりを告げる。ギャラリーも次の授業の為に散っていく。
「ちょっと大地! うらやましいぞ! 指名が入るなんてな!」
「いや、そう言われてもな……」
日ノ丸に羨ましがられている事を余所に大地は先程の天科の事を振り返る。
ショーが始まる前、自分に対して不敵な笑顔を浮かべた事。ボールマジックの際に自分を指名した事。気にしすぎだと思うが、どうも彼女に気をかけられていると直感していた。
「何か、あったのか?」
海人が大地が何かしらの事に引っかかりを覚えている事を察し、声をかける。
「ああ、ちょっとアイツに……あれ?」
大地はふと詰襟の胸ポケットを見る。いつの間にか紙が入っていた。その紙を取り出すとそこには文字が書かれていた。
文末には天科特有の語尾が書かれてあり、彼女が書いたと思われる。内容は果たし状や挑戦状と見てとれるものだった。
「どうやら、向こうから出向いてくれるみたいだぜ」
スカウトするのには丁度良いと思った大地。彼もまた天科に負けないぐらいの不敵な笑みを浮かべ、彼女が走り去った方向を見つめた。
同時刻、有希は部室にいた。今日の放課後に買い足しておくべき、備品のチェックを行っているのだ。
これからの事を考えると備品は早い内に買い足しておく必要がある。どれだけ入部してくれるかは分からないが。
そんな彼女の背後に一人の少女が忍び寄る。そして有希に声を掛けた。
「あの……何か、お困りでしょうか?」
有希は驚き、慌てて振り返ると緑がかった銀髪におさげを二つ作っている小柄な少女が立っていた。幽霊やお化けのように足がないという事はなく、ちゃんと地に足が着いている事も確認し、有希は安堵する。
「ご、ごめんなさい! 驚かせるつもりはなかったんですよっ!」
「だ、大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたけど……あなたはどんな用でサッカー部に?」
「えっ? ここサッカー部の部室なんですか?」
少女は現在いる位置について自覚がなかったらしく、有希に言われて初めて気づいたようだ。
もしかして彼女は背後霊なのではないかと思うと有希は背筋に悪寒が走る。先程の確認も意味を為している気もしなくなった。
「うん、そうだよ。あなた、名前は?」
とりあえず、気を取り直して有希は少女の名前を訊ねる。少女は舌足らずな話し方で答えた。
「私は
放課後、有希を除いた青天中メンバーがグラウンドに集まっていたが、いつものように練習はしていない。
サッカーグラウンドのセンターサークルには二人が対峙していた。
「よぉ、待っていたぜ。玉林!」
「あらぁ、私の名前を覚えてくれたのねん。これは、エンターテイナーとして嬉しいですのんっ!」
大地と天科は言葉を交わす。互いに熱い視線をぶつけ合いながら。
「そういえば、あたしチャンはあなたの名前を知らないのです」
「俺か? 俺は巽大地、県内一最強の矛だ! よく覚えとけ!」
名乗りを上げる大地。その自信に溢れた調子から天科はとても好ましく思った。エンターテイナーでもそうだが、自分に自信がないものは良い芸はできない。
だから、大地のその強気な姿勢は自分が惹かれた理由の一つだと分かり、さらに彼に闘争心を燃やす。
「アイツ、いつもあんな名乗りしてんのかよ……」
一方、外野に徹している強志はグラウンドの端で座って、呆れ気味に大地の名乗りにツッコミを入れる。恥ずかしくないのかと思うのだが、そこまで突き抜けられるのはある意味才能かもしれない。
「むしろ、アイツの代名詞みたいなモンだから良いんじゃねえのか? 俺としてはもう少し上げても良いと思うがな」
閃理がフォローに入る。彼からすれば、まだまだ小さい自称だ。どうせなら日本一と名乗ってくれても問題ないだろうし、頼りがいもあると思っている。
「……それで、彼女はどれぐらい実力があるんだ?」
今まで静かに見守っていた藤四郎が口を開く。
「まだ分からないですけど、ボールの扱いは結構なものだと思いますよ」
「だって、色んなボール扱っていたもんな!」
「うんうん! サッカー経験はあるかどうかは分からないけど、すごく器用な人だと思うよ!」
一年生が各々答える。その返答に藤四郎は「なるほど、見てからのお楽しみって事だな」と言い、再び大地達の方に視線を戻す。
ボールはまず天科が保持している。曲芸的なボールの扱い方をしているみたいだが、サッカーで考えるとあまり実用的ではないように見える。
「お前の実力見せてもらうぜ! 先輩、タイムお願いします!」
大地はそう指示すると閃理がタイマーを手に持ち「じゃ、準備は良いな! よーい、スタート!」と大声で合図した。
天科はサッカーボールを器用に扱うが、空中にボールを放った瞬間、大地がダッシュし高さとフィジカルの強さを利用して空中戦でボール奪取。最初の勝負は大地が制した。
ボールを扱う事に関しては誰よりも上手いと自負していた彼女だが、身体能力の差は埋めきれなかった。これは自分の凡ミスだと考え、切り換える事に。
「次は俺からボールを奪ってみやがれ!」
「言われなくても! エンターテイナーとして負けられないですのんっ!」
再び閃理の合図で勝負がスタートする。大地は真正面から奪いに来た天科を軽々と捌く。
天科は大地の次の動きを予測しながら動くが、彼の大きな体が壁となりボールに近づく事ができない。
ボールキープは大地の得意分野の一つ。そう簡単に彼が譲る訳もなく、天科は少しづつ体力を消耗させらていく。
大地の方はというとボールに神経を尖らせながらも天科の動きを視界の端で捉え、彼女の動きに合わせて自分の体を壁にしているという慣れた運動からそこまでのスタミナ消費はない。
試合なら彼よりも屈強な選手が相手となるのだから、天科のような小柄な選手のチャージは痛くも痒くもないのだろう。
タイマーが鳴る音と閃理の声により勝負は終わりを告げる。大地の圧勝だった。
その結果に天科はショックを受ける。まさかこうもあっさりと自分が負けるとは思わなかったのだ。
ボールの扱いなら誰にも負けないと自負している。けれど、こうも簡単にへし折れる日が来るとは……。
だが、そう簡単に引き下がらないのが玉林天科。大地を指差し、高らかに告げる。
「もう一度勝負ですのん、大地チャン!」
その言葉に大地は口の端を獰猛に吊り上げ、了承した。
「ありがとうね、椈月さん」
「いえいえ、どういたしまして。お役に立てて何よりです!」
大地と天科が勝負を繰り広げている間、有希とまのんは校外を出ていた。そして、買い足すべきものを買った為、ただ今その帰路を歩いている途中だ。
「ところで、椈月さんはどこで私を見かけて追いかけたの?」
「それは……階段で先輩とすれ違った時、何か困っているというか難しい顔をしていたので……」
「ああ、多分チェックリストを考えていた時だね」
「それに……」
まのんは少し言い止め、今日一日の事を思い出す。日ノ丸と同じクラスの彼女は朝から元気に勧誘する彼の姿を見かけ、困っているのだなと思った。
だから、自分にできる事なら手伝おうかなと考えていたのだ。しかし、日ノ丸はフェリシーと合流すると風のように場所を次々と移転してまったので、何も聞く事ができなかった。
サッカー部……日ノ丸とフェリシーがそう大声で勧誘していた部活名だから耳に残り、たまたますれ違った有希を追いかけては彼女からサッカー部の部室だと聞かされた時はここだと思ったのだ。
私はこの人達を手伝いたい。いつものお人好し精神だが、やはり気になる。だから、付いてきてしまったのかもしれない。
「一年生の方々が熱心に勧誘しているところを見て、私も何か手伝いたいなって思ったんです」
「そっか……そうだ! 椈月さんさえ良ければ、マネージャーやってみる?」
「良いですよ! むしろ、お手伝いさせてください!」
まのんは二つ返事で了承し、サッカー部へ入部する事を決めた。
一方のグラウンドでは大地と天科の勝負をずっと続いていた。
「これで何戦目だよ? もう十戦以上はしてんじゃねえのか?」
強志が呆れたかのような目で天科を見る。あれから天科は大地のフィジカルと高さを利用したプレーの前に敗北を重ねていた。
普通なら心が折れると思うのだが、折れずに何度でもチャレンジしているのは彼女の負けず嫌いが所以しているだからだろうか。
大地によく喰らいついていけるなと感心はしているが、流石に諦めなさすぎだろうとも思う。そういうところも嫌いではないが。
「ハハハハ、確かに十戦以上しているかもな! でも、アイツ、結構ガッツがあって良いと思うぜ!」
「ふむ、キャプテンの言う通りだな。それに彼女のしなやかな動きはこのチームに必要なものかもしれん」
閃理が豪快に笑い飛ばし、鈴司は冷静に分析する。二人とも何度も立ち上がる天科にとても好感を持てた。
サッカー部に招き入れたいとも考えている程、彼女の加入はチームとして良い影響を与えるだろう。もちろん、選手としてのスペックも認めている。
ボールをたくさん扱ってきただけあり、触ることへの順応力の高さとコントロール力は目を見張るがある。またそのしなやかな体使いを得意としている人物は現メンバー内に少ない為、バランスも取れるだろうと思っていた。
「大地の方もよく集中力持つよな。伊達に県内一最強なんて名乗っていないって事か」
未だに負けない大地に海人は感嘆の言葉を吐く。
普通ならば集中力が切れてもおかしくない程の数の勝負をしているのだが、大地の集中力は途切れる事なく高い精度を保ったままボールを保持したり、奪ったりしているのだから彼の実力も相当なものだと窺える。
だからこそ、キーパーたる自分も負けていられないなと心の内で闘志を燃やしていた。今はまだ彼のシュートを止めることができていないが、いつかは必ずはと。
「ケケッ、どっちも負けず嫌いだろうから終わらない可能性もあるよナ?」
「かもな。まっ、今は静かに見守るしかないだろう」
「えー!? もう私我慢できないよー!! 早く動きたーい!!」
「まぁまぁ、これでも食べて見ていろっテ」
どこからもなく蛇崎は飴玉を取り出し、フェリシーにあげた。フェシリーは口の中に飴玉を放り込む、舐めながら静かに対決を見守る。
「お前、そんなもの持っていたのか」
「まぁナ、ケケ」
と、彼らが言葉を交わしている間に事態は動きを見せる。大地の集中力が切れたのかボールが彼の足元から少し離れる。その一瞬の隙を逃さず、天科が彼から奪い取ってみせたのだ。
「おお! アイツ、スゲー! 大地からボールを取ったぞ!!」
「ケケッ、とりあえずは一幕目が終わったって事だナ」
一気に外野は盛り上がる。しかし、冷静なメンバーは大地がもう一度勝負を挑まないかとヒヤヒヤしている。要はエンドレスバトルが始まるのではないかと心配しているのだ。
そんな心配を余所に大地は大喜びしている天科の元へ近づいて声をかける。
「流石、魔術師ってところだな! いや、負けず嫌いなだけかもしれねえけど」
「ウッフフ、そういう大地チャンも中々勝ちを譲ってくれなかったじゃない……負けず嫌いはお互い様じゃないかしらん?」
「ったりまえだろ! そう簡単に負けちまったら、勝負にならねえし、失礼だろ?」
「あたしチャン、大地チャンのそういうところ好きよんっ!」
二人は固い握手を交わした。そして天科は密かに思う。
舞台でパフォーマンスする事を除いて、ここまで熱くなったのは初めてだ。この熱をエンターテイメント以外に打ち込んでみるのも良いのかもしれないと……。
彼女の熱情は確実にサッカーへと向けられていたのであった。
ちょっと急展開()
今のところ中心は1年生に向けられていますが、安心してください。
ちゃんと2年生にも振りますので今しばらくお待ちくだされば幸いです。
前書きにて書いたお知らせの事ですが、実はちょっと困った事がありまして……青天中メンバー一人のデータが消えてしまったんです。(それが原因であるキャラクターだけ今回喋らせていません)
別個で私がデータを保管しているので書けなくはないのですが、細かい点も聞けないし、私が好き勝手やった結果、キャラクターが崩れたら申し訳ないな……と思っています。
そこで急遽、青天中メンバーの追加メンバーの募集を行いたいと思います。
活動報告はもう投稿されているかもしれませんが、どんな選手を募集したいのかと先にお伝えしますね。
募集したい選手タイプは「パワー型ゲームメイカー」です。
幸い、まだ書き直しが利く段階ですのでメンバーが決まったら、書き直します。
また青天中の監督も募集しております。リンクは下記に張りますので気が向いたら、一案投げてくださると嬉しいです。
監督募集→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=222187&uid=201775
ライバル校のメンバーも募集中ですが、近い内に締め切って選考に入ろうかなと思っています。
ライバル校メンバー→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=220281&uid=201775
では、お知らせもそこそに筆を休めたいと思います。感想の方もお待ちしております。