SeeDは何故と問うなかれ。しかし候補生は問わず語る。   作:ボブ鈴木

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まだFF8を憶えてくれている人が結構居ることに、正直安心しております。
当時の空気を思い出しながら書けたら良いなと思ってます。


第二話 候補生と候補生

深夜のバラムガーデン校内。

消灯時間後に寮を出ることは原則的に禁止なのだが、候補生に限ってはある程度例外を認められている。

特に今は年度末の試験を控えた時期だから、訓練施設は24時間開放されていると思って良い。

 

「さて、やりますかね」

 

訓練施設内で、僕は学園支給の携帯端末でG.F.のジャンクションを確認していた。

G.F.は試験のため仕方なく取得したイフリート。そして親切な友人から借りたケツァクアトル。

基本的に僕は、記憶喪失のリスクを軽減するために必要以上のG.F.は持たない様にしている。

まあ候補生でも二体以上のG.F.を持ってるのは稀なんだけどね。やっぱ持つべきは優秀な友人である。

先週から借りパク状態なので怒っているだろうが、アビリティの育成は順調なので許してくれる筈だ。多分。

 

「魔法のストックも良し……さあて、大物狩りと行こうか」

 

バラムガーデンの訓練施設は都市外を模っした、モンスターを自棲し放し飼いにした場所だ。

生徒はここで、実戦と全く同じ訓練を何時でも行う事が出来る。出来るのだが……

この施設、学園内では不人気ランキングをぶっちぎりで一位な、ある意味学園の名所でもあるのだ。

理由としては、明らかに生徒の手に余るモンスターがちらほら見受けられる事にある。

 

 

施設内をゆっくりと。しかし足音を殺さず、自己の存在を示す様に歩く。

狙いの獲物は大柄だ。人間が忍び歩きをすれば、後ろを通っても気付かないなんて事もある大雑把な奴でもある。

だから僕は尊大に、不敬に。この施設の主であるソイツを挑発する為に振舞うのだ。

……すると早速来た。大きな地響きと共に、巨体を揺らしながら、牙を剥き出しにした奴が。

 

「――――GYAAAAAAAA!!!」

「つうっ……! この声、相変わらず耳に効くな」

 

アルケオダイノス。それがこのモンスターの名前だ。

10mに届く巨体、鈍く紅色に輝く鱗が特徴の爬虫類型……というか恐竜である。

コイツがまた呆れるほど強い。気狂いじみた膂力に常識外れの生命力。何でこんな奴が訓練の場にいるのやら。

運悪く、知らずにコイツと対峙した生徒は否応なく死闘を繰り広げるハメになる訳だ。

毎年、必ず数件はコイツ絡みの事故が起こるのが常だ。とはいえ、知っていれば色々と有用なのだが。

 

「GOAAAAAA!! GYAAAAAAA!!!」

「ったく、いま相手をしてやるっての……!」

 

突進して来るアルケオダイノスに、僕は自分の武器を抜いた。

腰に吊るした二本の剣。何の変哲もない、何処の国の流通でも類似品も見つけられるオーソドックスな剣である。

堅実かつ応用性に富み、それ故に局地戦に弱い。まあ極めて面白味の無い武器である。

安定志向の僕としては銃器なんかが好みな訳だが、こいつを選んだのには勿論理由がある。

これこそが、僕のインチキじみた前世の記憶を存分に発揮できる武器なのだから。

 

「『魔法剣、ブリザド』」

 

コマンドワードと共に、発動した魔法が剣へと収束していく。

これが僕が独自に生み出した技術、その名も『魔法剣』……スミマセン、独自性なんて欠片も無いです。

"FF8"では存在せず、その過去作で猛威を振るった凶悪なアビリティ。具体的に言うと五作目。

この技法がガーデンに存在しないのは意外だったけど、理由は色々と想像出来る。

 

「――――シィッ!!」

 

迫るアルケオダイノスの胴を、すれ違いに切り付ける。

剣閃が走ると同時に凍てつく傷口に、冷気を弱点とするアルケオダイノスは苦痛に吠える。

見ての通り、この手の属性に弱点を持つ相手には滅法強いのがこの技の利点だ。

僕の今日までの好成績はこれのお陰と言っても過言でないのだが、こいつがまた一向に流行らない。

 

……魔法剣が流行らないのには、G.Fシステムとそれが可能にする魔法に原因がある。

まず、この世界の魔法は厳密には魔法ではない。擬似魔法と呼ばれる魔法をエミュレートした存在なのだ。

擬似魔法を使うにはモンスターからドローで抽出、或いは一部のアイテムから精製しなければならない。

加えて魔法には所持限界数が定められており、それはジャンクションによる身体能力強化にも利用する物なのだ。

攻撃の度に魔法を消費する魔法剣はとにかく燃費が悪い。長期任務で長くガーデンを離れなければならないSeeDの扱う技として、魔法剣は賛否両論と言わざるを得ないだろう。

 

次に、類似効果が得られるアビリティの存在が大きい。属性攻撃ジャンクションだ。

個人の技術である魔法剣に対し、向こうはG.F.システムに含まれる列記としたG.F.アビリティだ。

似たような効果が得られるのに、あっちは実質練習ゼロで使える。何せ端末を弄るだけで、普段の攻撃に魔法を付加してくれるのだ。しかも魔法の消費は無しで剣以外でも使える、これでは誰も進んで僕の真似なんかはしない。

 

「――――つあッ!! クソっ、相変わらずデタラメなライフしやがって!」

「GYAAAAAAAA!!!」

 

やってる事はけっこう命懸けなのだけど、ついメタな発言が出てしまうのは昔の名残か。

本当ならブリザドでなくブリザガを使えればすぐ終わるのだが、そうすると採算が合わないのが悩み所だ。

とはいえ、こんな魔法剣にも利点は有る。

 

と言うのも、属性攻撃ジャンクションは習得の敷居がとにかく高い。

一部の限られたG.F.しか発現させない上に、その習得に要する時間と訓練は膨大な物だ。

それにあっちはジャンクションした以外の魔法を使うには、別の魔法を再度ジャンクションする必要がある。

戦闘中でも任意の属性を扱えるというのは、魔法剣の大きなアドバンテージだ。

 

大体、属性攻撃ジャンクションって強力には強力でも、実際は微妙なんだよ……

変な魔法付けて想定外の相手と出会ったら、とんでもない事になりかねないし。

ゲームだったら攻略本見て楽勝だろうけど、残念ながら人生の攻略本は終ぞ見た試しが無い。

僕は持ってたのかも知れないけど、殆ど失くしちゃった様なものだしなあ。

 

そんな訳で、この魔法剣は手っ取り早く強くなりたかった僕の要望を見事に叶えてくれている。

特にモンスター相手の戦闘では凄まじく有用だ。人間相手の時は正直微妙だけど。

流行らないのも結局はそこが理由か……これ使ったからってサイファーに勝てる訳ないものねえ。

 

 

 

……とまあ、長々と語ったんだけど。まだバトルが終わらない。

一人で来た次点である程度覚悟はしてたけど、余り長引かせると不測の事態になりかねない。

やむを得ず、二本目の剣を抜く。本来は片方を失くした時の予備だが、これは同時に切り札でもある。

魔法剣と二本の剣、となれば当然アレだ。禁じ手だなんて知ったこっちゃない。

ゲームバランスなんてぶっ壊すためにあるのだ、少なくとも僕はまだ死にたくない。

 

「――――おおおおおおッ!!」

 

これぞ絶技、魔法剣二刀流乱れ打ち……要は二本の魔法剣で滅多切りにするだけなのだが。

二刀流の練度が甘く稚拙な剣筋だが、二倍以上の密度で魔法を叩き込んでると思えばえげつない技だ。

例によって、人間の兵士相手では使いどころが無い。そりゃキスティス先生も心配する訳だよな……

もうSeeDとかじゃなくてモンスターハンターでも目指すべきだね。誰も雇ってくれないだろうけど。

 

幾度ものブリザト剣を受けたアルケオダイノスは、とうとうその巨大な膝を地に付けた。

良い塩梅に弱ってくれている。これでようやく目的を果たせるというものだ。

 

「ケツァクアトル、アビリティ『カード』起動」

 

愛すべき友人……もういいか。そうスコールだ。

スコールに強請って無理矢理借りてきたG.F.を、このタイミングで発動させる。

カード。戦闘を生きる為の糧にする諸先輩方には眉を顰められそうなアビリティだが、これがまた有用なのだ。

僕は常日頃、魔法のストックのためにカードを一心不乱に集めている。

スコールやキスティス先生には可哀想な目で見られるし、サイファーに馬鹿にされるし、クラスメイトにも遠巻きにヒソヒソ噂されるが……いや、良いのだ。悲しくなんてない、きっと。

 

その巨体を徐々に薄れさせ、一枚のカードを残してモンスターは消えた。

本当に何でこんなに知名度薄いんだろね、カード変化。ケツァクアトルがこの国のG.F.じゃないからか?

要はこんなの持ってるスコールが、魔法剣なんて目じゃないチートって事なんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか数枚、アルケオダイノスのカードを無事に回収できた。

現在僕は、寮の自室に忍び歩きで侵入している所である。

自分の部屋なのに侵入とはおかしな話だが、学園寮は原則として二人部屋なのだ。

しかも、今の僕には最高に都合の悪い相手がルームメイトなのである。

 

「よし、寝てるな。じゃあ僕も一休みして……」

 

相方がベッドで寝息を立ててるのを確認して、安堵の息を吐く。

今日は流石に疲れているのだ。正直、苦情処理は明日に回したい。

そう思い自分のベッドに潜り込もうとした瞬間であった。

カチリという無機質な音と共に、部屋の明かりが眩しく輝いた。

 

「お早い帰宅じゃないか、ビリー」

「や、やあスコール。寝てたんじゃなかったのかい?」

「お前が戻るのを待っていたんだ。気配が近付けば熟睡していても起きる」

 

とんでもないこと言ってるなコイツ。ニンジャか何かか。

彼こそが我がルームメイトにして、真の学年主席であるスコール・レオンハートだ。

筆記だけは満点の学年主席(笑)な僕とは違い、SeeD合格確実と目される優等生。

成績優秀、スポーツ万能……万能とかって次元じゃないけど。それに超イケメン。漫画のキャラみたいなスペックだ。

 

「まずはG.F.を返して貰おうか。お前が渋ったせいで、まだ炎の洞窟に行けてないんだ」

「わ、悪かったって。ていうかスコールならG.F.なしでも楽勝でしょうに、あんな課題」

「本試験の評価に響く課題で手を抜けるか。お前じゃあるまい」

 

遠慮無しに僕をこき下ろそうとするスコール。

元から動きの少ない表情を僅かに顰めさせると、無駄に美形なのもあって妙な迫力だ。

もう少し愛想よくすればモテまくりそうなにねぇ……これじゃ女の子は怖くて話し掛けれないよ。

そういうストイックな所が良いって子もたまに居るけど。もげろ。

 

「ちゃんと約束通り、良い感じにアビリティは揃ってるって。見なよ」

「当たり前だ。でなきゃ、ただじゃ済まさない所だぞ……おい、何だこれは?」

「凄いだろ? ちょっと僕もやりすぎたんじゃないかと思ってるんだけどさ」

 

端末を操作し、G.F.移譲のあれこれを操作する。

実はこの端末、馬鹿高いんだよねえ。失くしたり壊したりしたら反省文と罰則が確定なくらい。

眉を顰めるスコールが見るのはG.F.のアビリティリスト。いやぁ僕も昔を懐かしんで熱中しちゃったよ。

鉄板のカード、カード変化。雷魔法精製に中クラス魔法精製、おまけで応援も覚えさせた。

必要最低限だけど、試験対策の合間と考えればかなり頑張った結果と言えよう。

 

「何でこんなロクでもないアビリティばかりなんだ! ジャンクション系の一つくらいは覚えてるかと思えば……」

「スコールはシヴァも取ってるじゃないか。ジャンクションはそっちが優秀なんだから、ケツァクアトルのはいらないだろ?」

「そんな訳あるか。よくもまあ、こんな試験とはまるで関係無い物ばかり……」

 

試験、試験って大変だねえ優等生は。なんて他人事に考える。

確かに精製系のアビリティって不人気なんだよね。基本的に魔法の精製なんかは、アイテムさえ調達できればガーデンの方でやってくれてるので、生徒が自分でやるのは滅多に無い事なのだ。

国内G.F.がイフリートだけだから、そうでもしてくれないと魔法の実習なんかとても出来ないからの措置だろうけど。

 

「長期で見れば精製系は最優先課題だよ。魔法を物品に変えて持ち運べると思えば、実質数倍の量になるんだし」

「そこまでして魔法のストックを溜め込む意味が無いだろう。ジャンクションに必要な分だけあれば問題無い筈だ」

「それが模範解答だろうけど、今のガーデンは魔法を軽視し過ぎだよ。集めてぶっ放してるだけじゃ弱いに決まってるだろ?」

「……それがあの、お前の妙ちきりんな技の発想の原点か」

 

妙ちきりんとは心外だ。あれはあれで理屈を詰めた上での魔法行使なんだから。

そもそも、単発で使ってもG.F.によって強化された武器攻撃には勝てないのが魔法の弱点だ。

なら一回で複数の魔法が使えれば良いのだ。有限とはいえ、それだけの数を用意できるのが擬似魔法なんだから。

その思考の元に考案された僕の魔法剣乱れ打ちは、ある種の完成形と言えよう。ぶっちゃけ微妙だけど。

いや、他にもなーんかあった気がするんだよね。魔法の威力が数倍になる、ぶっ壊れアビリティ。

例によって、そういう重要な部分は記憶から抜け落ちてるんだけどさ。

 

「大体、百歩譲って精製系は良しとしてやる。だけどこのカードはなんだ」

「いやカードはカードだよ。もしかしてスコールも知らないの? カードを精製すると、もの凄いレアな素材が出てくるって」

「それは分かっている。俺が疑問なのは何故この試験前の大事な時期に、アビリティを使ってまでカードを集めるのかだ」

「そりゃ、ドローだけじゃ集めるにも限界があるし」

 

カード変化は他の精製系のアビリティと比べても、頭一つ抜けた効率の良さがある。

カード供給のアテさえあれば、それこそ無限に魔法を用意出来るんだからトンでもない。

今日のアルケオダイノスはその素材の筆頭だ。クエイクを学生が使える機会なんて滅多にないんだし。

 

「カードなんて普通に流通しているだろう。賭け試合も公認されてるし、カードは得意なんじゃなかったのか?」

「いや、僕も一時期はそれで稼いでたんだけどね。それを魔法に変えてたら止められちゃったんだよ。『カードゲームのルールの乱れを監視する役目』を自称する人に」

「何だ、その聞くからに怪しげな、お前と同類の匂いがする変人は……」

「あれは間違いなく僕以上の変人だろうね。カードに人生捧げてる感じだったし」

 

カードクイーン。ゲームではお馴染みだけど、実際に目にした僕は唖然としたよ。

何処かの民族風な衣服に身を包んだ、長い黒髪の女性。一回対戦したけど強いのなんの。

何でも僕の行動は世界のカード枚数を致命的に減らし、カードゲームである『トリプルトライアド』そのものを衰退させかねない冒涜的な行為だとかで。厳重注意を貰ってしまった。

シド学園長とも懇意だそうで、改めないなら学園に直訴すると言われては反抗なんて出来る筈もない。

まあ僕もカードゲームは好きだからね。なくなるのは流石に困る。

 

「旅人風だったけど、後から調べたらどうも色んな国のお偉いさんと繋がってるらしくてさ。下手やってたら、今ごろ僕は学園には居られなかったかもね?」

「……冗談と思いたいが、カードゲームの浸透率を考えると現実味があるのが怖い所だな」

「まあ、使うカードをG.F.で自足するのを理由に許して貰えたから良かったけど。話してたらいつの間にか仲良くなっちゃってさ、他の国のルールも沢山教えてくれたよ」

「誰とでも仲良くなるな、お前は。それも変人ほど高確率で」

 

呆れた様に肩を竦めるスコール。

いや、その変人カテゴリーに自分が含まれてるって分かって言ってるのかい?

分かってないんだろうなあ……偏屈屋で、周りと疎遠になってるから自己評価が微妙なとこ在るし。

そんなんだから成績優秀なのに、協調性無しで問題児扱いされてるのだよ。サイファーには負けるけど。

本当に僕たちのクラスって担任泣かせだよなあ。他所じゃ十年に一度の地獄の集団とか、魔窟扱いされてるし。

キスティス先生への尊敬は増すばかりだ。泣かせてる一因の僕が言えた事じゃないけどさ。

 

「……ところでスコール。僕ってばさっきまで訓練施設にいたばっかりでさ。そろそろ寝たいかなーなんて思ってたりするんだけど」

「俺はお前のお陰で目が冴え渡っているぞ。いい機会だからな、アビリティ運用に関して、試験前にお前にもう一度相談したいと思っていた所なんだ」

「げええ……」

 

何処となく目を爛々と輝かせるスコール。こいつ、趣味の話となると長いんだよな。

普段喋らないくせに、G.F.の話となると途端に元気になるんだよ。このバトルキチめ……

 

「良いか、ビリー? 魔法を軽視しているとは言うが、お前は剣術自体を蔑ろにしているからそんな発想に行き着く事になるんだ。そんな妙な魔法の使い方は、変態技術がお家芸のガルバディアにでも任せておけ」

「いや、そんな脳筋理論は遠慮する……というか僕の魔法剣は、あんな変態技術よりずっと高尚な物だからね!?」

「五十歩百歩だ。そもそもG.F.によって身体能力が底上げされる以上、元々の地力こそが重要な事をお前も他の連中も今一つ理解していないんだ」

 

G.F.議論と言いながら、既に僕への説教になってるし。

長くなるなあ、これは……今夜は寝られないかもしれない、冗談抜きで。

案の定、次の朝に遅刻してキスティス先生に大目玉を喰らうのは完全に余談だったりする。

 




やってしまった魔法剣。
いえ、FF8に他シリーズのアビリティ出せたら何が絵になるかと考えた結果、真っ先に浮かんだのがこれなのです。
本当にデタラメですよね、FF5のあれ。
そのままだと強すぎるので、SSでは色々補正掛けてますが。
残念ながらこの主人公ではバッツにはなれないということです(笑)
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