アカメが斬る!〜闇のキバが裁きを下す〜   作:マスティ魔

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第2話 ナイトレイド

 

 

互いに自らの腹の内を拳として伝えるため帝具の鎧を装着したブラートとハドー。お互いに鎧から漏れ出るプレッシャーに戦慄していた。ブラートから漏れ出るオーラはまさしく百戦錬磨の戦士。

 

そして、対するハドー………ダークキバから漏れ出るオーラは—————死。眼に映る者総てを絶滅させる光景を幻視させる程の恐ろしいもの。

 

そんなオーラを真正面から受け止めているブラートは内心冷や汗をかいていた。しかし、だからと言って引くような(たま)ではないのが、

 

 

男の中の漢—————ブラートである。

 

 

「……その鎧、随分とヤベェーオーラを出してくれるじゃねぇか? 思わず鳥肌が立っちまったぜ」

 

 

先ほどよりも戦意を高ぶらせながら槍の切っ先をこちらに向けるブラートにハドーも内心冷や汗をかいていた。自分がまだまだ未熟者であることを理解しているハドーは、ダークキバの鎧から漏れ出るオーラを受けても物怖じないブラートの戦士としての気迫に驚愕していた。自らの血と引き換えにキバットから注入された魔皇力と呼ばれる人外の力によって強制的に強化された身体能力でもブラートに勝てるビジョンをイメージ出来ずにいる。

 

 

「ソレは此方も同じだ。闇のキバの鎧を着ていても、貴方を倒せるビジョンが見えない…………だが、此方も負ける気は毛頭ないがなァ!!」

 

 

ジャコーダーを細剣ジャコーダーロッドにし、ブラートへ斬りかかる。対するブラートも、真正面から向かって来るハドーに対して鍛え抜かれた豪腕を使い槍を横一列に斬りはらう。向かって来ていたハドーは、ブラートの攻撃を見切り、体制を低くすることで躱し、低姿勢のままジャコーダーによる刺突でカウンターを狙う——————が、しかし、あらかじめハドーの動きを予期していたブラートは、槍を持っていない方の腕で左手でタイミングよくジャコーダーを掴んだ。心臓を射抜かんとするハドーの鋭い刺突をブラートがいとも容易く止めたことで、ハドーの動きに遅れが生じた。この遅れによって生まれた隙をブラートは逃さない。

 

 

 

 

「中々の刺突だぜ!!」

「恐悦至極だ」

 

 

 

槍を先ほどよりも短く持ち直し、逆手の状態でインクルシオの副武装ノインテーターを振り下ろした。

しかし、ハドーはノールックのまま凄まじい速さで振り下ろされる槍の切っ先を左脚で蹴り飛ばしてみせた。これにより蹴り飛ばされた槍は二人から離れた位置に勢いよく落ちた。

そして、ブラートは蹴り飛ばされた槍を一瞥もせず、

 

「オオオオォォォォォォォォ!!!!」

 

ガラ空きとなったハドーの土手っ腹に強烈な膝蹴りを喰らわせた。

 

 

「ゴハッ!?」

 

 

まるで鈍器な様な物で殴られたかのような錯覚を連想させるほどの蹴りを喰らい息が詰まらせそうになりながら吹き飛ぶが、何とか態勢を整える。

 

「(コレが100人斬りのブラートの剛力……中々エグいな。生身で受けていたら…意識が飛ぶ程の一撃)……この剛力………やはり噂通り将軍クラスの実力か」

「そう言うお前も中々熱い気持ちが入ったハンサムな蹴りだったぜ?」

 

「戦いは常にクールで行かなければならないが、熱い感情は攻撃に乗せることも時としては良いからな」

「ハーハッハハハ‼︎ イイな!イイな! お前にもシドーのヤツとは違うが、熱い魂が伝わってくるぜぇ!!」

 

 

吹き飛ばされる形でジャコーダーを手放してしまい、武器はない。対するブラートも蹴り飛ばされたノインテータはハドーの方に近いため迂闊に武器を回収できない。お互いに武器を回収できないからと言って勝負を放棄するという思考は二人にはない。

 

 

 

よって二人が取った次の一手は、

 

 

 

「互いに武器が回収出来ない以上は……」

 

 

「拳と拳をぶつけて生身にダメージを与えるのがベストだよなっ‼︎」

 

 

漢と漢による拳のガチンコバトル。

いくらダークキバの鎧によって魔皇力で強化された身体でも、ブラートの動きに何とか付いて行き、インクルシオの鎧に何度も強烈な拳と蹴りによる攻撃の雨を降り注ぐが、ブラートもまるでダメージを感じていないかの様に動きに一切の遅れを見せず、ハドーに攻撃の雨を降り注げる。

そして、殴り合いを続けながら、ブラートの一つ一つの攻撃に吹き飛ばされそうになるが、ハドーは何とか踏ん張り、ブラートと同時のタイミングで拳を突き出した。

しかし、筋力の差によって突き出された拳は根気負けし、ハドーは又もや後方へと下がってしまう。

追撃として、駆け出したブラートは蹴り飛ばされた槍を拾い、勝負をつけようとします。

 

 

 

 

「行くぞキバット!!」

 

 

『wake up (two)

 

 

下がったハドーは、先ほどの拳の突き合いに負けることを予期していたため、下がる瞬間にバックステップで衝撃を逃し、自身の切り札とも取れる技を放つ準備をしていたのです。

ブラートも手応えに違和感を感じていたため、ノインテータを拾い上げたことは正解であったと確信し、ハドーを迎え撃つ態勢を整える。

 

 

「……キングスバーストエンド 」

 

 

魔皇力を全て両足に集中し、強力な両足蹴りをブラートへ向けて放った。

 

 

「ウオオオォォォォォォォォ!!!」

 

 

ブラートによる大砲並みの威力を誇る槍

 

ハドーたちによる魔皇の力を付加された蹴り

 

お互いに一撃は数秒もの間拮抗し合うが、二人の力に耐えきれなくなったのは、ブラートの足場……………つまりは地面の方だった。

しかし、ブラートは自分を中心にクレーターを作りながらでも陥没していくが、それでもブラートはハドーに押し負けはしなかった。

凄まじい力の拮抗によって発生した衝撃波は、やがて周りの木々を薙ぎ倒し、土煙りを撒き散らし、二人の姿を隠した。

これにより勝負の勝者を確認することを静観していたアカメたちは出来なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、凄まじい衝撃波だ」

 

「あのブラートとこれほどまでに闘えるのなら即戦力だな、ボス」

 

 

土煙りが立ち込めるが、アカメとナジェンダはブラートとハドーがもうお互いに鎧をしまっていることを気配で察知しており、本格的にハドーをスカウトする形で話を進めていた。

そして、しばらくすると土煙りは無くなり、二人の姿が確認できた。

ハドーは片膝をつきながら、ゼェハァと肩で息をしており、明らかに疲労困憊だった。対するブラートも片膝をつき、イカすリーゼンは崩れてはいたがハドーほど疲労してはいなかった。

 

 

「お前、名前は?」

「オレの名はハドー。ジャコーダーは兄の形見だから、オレが受け取った」

 

 

「……そうか。よし! ハドー、俺たちナイトレイドに入れよ?」

「そんな勝手に決めていいのか?」

 

 

「良いだろうボス?」

 

と、髪をもう一度リーゼンヘアーに戻しながらナジェンダに確認を取る。ナジェンダもハドーをスカウトする気でおり、亡き友であるシドーの弟とともなれば、拒む理由はないとして肯定の意味を持つように首を縦に降る。

 

 

「話はアジトで他のメンバーも交えて話させて貰うが構わないか?」

「こちらとしては願ったりかなったりだ」

 

 

戦闘を終えたハドーはもう隠す必要はないとして、フードとスカーフを取り、素顔をアカメたちに晒した。暗夜の中でも月の光を反射するのようなキレイな金髪と宝石の様な碧眼を持つクールな美青年であるハドーに、今は亡き友であるシドーの面影を連想させられた。

そんなブラートの心情を把握出来ていないハドーとアカメは首を横に傾けてはいたが、勘ぐろうとは思わなかった。そして、ナジェンダは近くで待機している仲間のラバックとレオーネに合図を送り、ハドーを連れてアジトへ帰還することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦♦

 

 

 

 

 

 

アカメたちナイトレイドの隠れアジトへ案内され、アカメたち以外のメンバーであるラバック、レオーネの紹介を終えたハドーは、改めて自己紹介を行なう。

 

「改めて自己紹介をさせていただく、オレの名はハドー。ブドー将軍の実子であり、帝具—————魔皇一身 ダークキバの資格者だ。そして、オレの頭に乗っているのが……」

『誇り高きキバット族の生き残り。キバットバットⅡ世だ』

 

 

キバットと共に自己紹介を行なったが、ナジェンダたちはキバットの存在と物言いに驚いていた。そして、ラバックは額に手を置きながら、ハドーへ質問を投げる。

 

「あー、ブドー将軍の実子ってだけでもかなりヤバいのに、何だよ魔族って? 色々情報がありすぎて、ちょっと追いつけないんだけど」

『こんな事も判らんとは、その頭は飾りか?』

 

「んだとッ!!」

 

 

キバットの不遜な物言いに食ってかかろうとするが、ナジェンダの話しか進まんだろという義手による制裁で撃沈したラバックを置いて、レオーネは興味深そうにキバットを見ながら、キバットに質問する。

 

「さっきキバットはさ、自分のことを魔族って言ったけど生物型の帝具じゃないってことだよな?」

『その通りだ。俺の役目は並の人間では扱い切れない魔皇石に秘められた魔皇力を操作し、契約者の血を対価として、肉体に可能な限り適合させ、帝具である闇のキバを纏わせることだ』

「なるほど、つまりはキバットの役目は帝具を制御係を務めているという事で間違いないな。それにしても始皇帝の時代から生きているのなら魔族は長命ということになるのか」

 

 

ナジェンダの推察通り、魔族は人間と比べて長命かつ頑丈でもある。

 

『正確に言えば俺は700年前から数年前まで眠っていたのだがな。その話は今は置いておこう』

「俺たちを信用してナイトレイドへ入れてくれたことには本当に感謝している。だが、入る上で1つ条件をつけさせて貰えないだろうか?」

 

「内容によるが配慮しよう」

 

 

明らかに真剣な表情を見せながら僅かながら殺気を出すハドーにナジェンダは、怪訝な表情を取りながらハドーの提示する条件に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……では………ブドー大将軍のことに関して可能な限りオレのわがままを通させて貰えないだろうか?」

 

 

そして、ハドーが提示してきたその内容にナイトレイドのメンバー全員が息を呑んだ。

 

コレはつまり………自らの手で実の父を殺す邪魔をするな。

 

そう言っている様にこの場にいる誰もが思ってしまった。

 

 

「本当にいいのか? あの人はお前の父親だろ」

 

先ほど拳をぶつけ合ったブラートは、最も疑問を投げかけるが、

 

「例え父であろうと………俺はブドーを…殺す」

 

瞳に黒い焔を燃やすハドーには迷いを存在せず、家族への情を捨て去る覚悟を決めた暗殺者の眼となっていた。

 

「わかった。こちらで出来る限り手を打とう」

「ちょっ!? ナジェンダさん!? いいんですか!?」

 

「構わん。責任は私が取る……(アカメのこともあるが、コイツの眼には復讐以外も見える……本人がその感情(・・・・)とどう向き合うかでコレからの戦いに関係するからな)……しかし、ある程度チームとしての方針には従って貰うぞ」

「承知した。オレの目的はあくまでも民のための革命だ。ソレを履き違えるつもりは毛頭ない」

 

 

「そうか……では改めてハドー、そしてキバット。ようこそナイトレイドへ私たちはお前達を歓迎するぞ」

 

こうしてハドーは、革命軍所属の殺し屋となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




余談ですが、ハドーの容姿はキグナス氷河をイメージしてください。性格は少々違うので、容姿が同じの別人という認識でお願いします。
そして、cvは宮野真守さんをイメージしてください。
では次回も楽しみにしてください!!

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