アカメが斬る!〜闇のキバが裁きを下す〜 作:マスティ魔
標的である富裕層の一家へと到着すると、シェーレは誰よりも早く屋敷へ潜入を開始する。そして、ハドー達ナイトレイド一行は屋敷の庭に生えている木々の間に、ラバックのクローステールが張り巡らされて作った足場に妖しく光る月を背にし佇む。
「標的を確認。葬る」
屋敷からぞろぞろ出てきた護衛の警備兵達を確認したアカメはインクルシオの鎧を身に纏ったブラートとともに降り立ち、レオーネは屋敷へ潜入する。
「ハドーは行かなくていいのか?」
「いや、行くさ。ちょうど、あの“人が腐る匂い”を出す離れに逃げようとしている標的がいるからな」
「了ー解。んじゃ、そっちはよろしく〜」
「しっかりとヤンなさいよ」
「問題ない」
イヤな………人が腐っていく匂いを出す離れの倉庫へ向かうためダークキバとなったハドーはクローステールの糸を器用に使い、空中を飛び回りながら地上へ降り立つ。
「何処へ行く気だ」
「ヒッ!?」
短く悲鳴をあげたのは今回の標的に含まれている一家の一人娘であるアリア。そのアリアの護衛の警備兵は恐怖に震えた瞳をしながら銃口をハドーへ向ける。
「く、来るなぁぁぁ!!」
半狂乱で銃を乱射するが、ハドーはその銃弾全てを見切っているため掠りもしない。
「儚く散れ」
「ふざけェ———」
ジャコーダーを細剣状のジャコーダーロードへと変えながら、銃弾の雨を全て避け切り、警備兵の心臓へその刃を突き立て絶命させる。警備兵からジャコーダーロードの刃を引き抜きながら付着した血を払い、近くで腰を抜かしているアリアへと近づく。恐怖に染まった瞳でハドーを見上げ命乞いをする。
「い、いや!死にたくないッ!!」
「貴様に殺された奴らも同じことを思っていたはずだ」
しかし、彼女の悪行を知っているためそんな命乞いを聞き分けることもなくアリアの首を絞め上げる。
「散れ。外道が」
「その子を離しやがれぇぇぇぇぇぇ‼︎」
より強くアリアの首を絞め上げようとした所で背後から来る奇襲に気付き、ジャコーダーロードで防いだ。
剣を上段から凄まじい勢いに乗せて打ち込んで来た剣をジャコーダーロードで防ぎながら、その相手の顔を確認する。
「標的ではないとなると地方の者か」
栗色の髪で外見から察するに歳は十代くらいで瞳にはアリアを救うという事しか視えない。加えて剣筋は中々なモノであるため油断すれば危ないためアリアを離し、バックステップで奇襲してきた少年から離れる。
「大丈夫ですか、アリアさん?」
「あ、ありがとう!タツミ!」
「面倒な事になった」
一々説明していては時間がかかり過ぎるためさっさと標的であるアリアを抹殺するため切っ先を向け本気の殺気を放つ。
「おい!ナイトレイド、どうしてこの人を狙う! この人は金髪の女に騙されて有り金全部取られた俺を助けてくれた心優しい恩人なんだぞ!」
「……なるほど(………金髪…有り金………地方…マジか!?………すまない…………その犯人は身内だぁぁ……)」
「だが恩人だからと言ってその女が本当に善人である確証はない」
「何ッ!?」
「何をしている。キバ?」
今、ここにいないレオーネに対して呆れと僅かな怒りを感じていると、木々の間からアカメが合流してきた。ちなみにハドーは任務中はナイトレイドのみんなに『キバ』と呼ばさせている。名前バレを防ぐためである。
「レオーネに騙された少年だ」
「なるほど。標的ではないのだな」
アカメにタツミと呼ばれている少年の対処を任せ、アリアに狙いを定めようとした所で、さらなる乱入者が来た。
「よーアカメ〜キバ〜そっちはどうだぁ〜ん?」
タツミが無一文となる元凶を作った犯人であるレオーネが標的であるアリアの父親を始末し終えたため、2人の様子を見に来たのだ。
「あー‼︎アンタ、あの時のおっぱ————!!」
こんな状況でもおっぱいって言おうとしたよこの少年。まぁそれも無理はないと思う。レオーネは乳はデカイからな。仕方ない。
「ソダヨー、あの時の美人のお姉さんだヨー」
「…………………………」
そんな事を密かに思っていると、突然妙な視線を感じるとそこには何故かブスッとした表情のアカメがいた。
「どうしたんだ、アカメ?」
「…………………………別に」
プイッとするアカメの態度の真意を今ひとつ把握できていないハドーは首を傾げる。そんなハドーたちを面白そうに見ながらヒラヒラと手を振りながら全く悪びれた様子もないレオーネ。
「おいレオーネ。少年には後で謝っておくとして、この少年にこの女の本当のツラを見せてやれ」
アカメの心中を察しきれないハドーは改めて悪びれもないレオーネにタツミにアリア達の本性を言うように言い放つ。
「ほいほーい……いいか少年、よく見とけよ。これがその女の本性だ」
離れの重厚な扉を、ライオネルで強化した拳で破ると、それと同時に強烈な腐臭と血臭がその場にいた全員を襲った。
離れの中はまるで正に地獄だった。天井からは数人の人間が逆さ吊りにされ、手術台のような上には腕と脚を拘束された状態の男性の遺体が転がっており、その腹からは内臓がこぼれ出ていた。更には首や赤ん坊と思しきものが容器の中に収められていたり、水牢のようなものの中には既に事切れていた者の姿もある。また壁際を見ると、手足をもがれた死体が飾ってあったりもしたが、まだ息のある者も数人見て取れた。しかし、この腐臭と外観から察しても全員長くはない。ワザと生かされている者達だ。そして、密かに逃げようとするアリアをジャコーダービュートで拘束し、逃げなくする。
「何故同じ人間をあんな玩具の様に出来るのか理解不能だ」
「な、何だよ………コレ?」
「これがこの女……この家の裏の顔ってわけだ。地方出身者を甘言で惑わして家にいれ、その後薬を盛ってから死ぬまで拷問し続け自分達の快楽を満たす……とんだサド家族ってわけだ。護衛の者達も黙っていたから同罪だ。そうだろ嬢ちゃん」
ジャコーダービュートの拘束を逃れようともがくが全く解ける気配もなく、アリアは憤怒の瞳をするレオーネに詰め寄られる。
「し、知らないわ! 私こんな場所があったなんて知らなかったものっ!」
「まだシラを切るか……その図太さだけは尊敬してやる」
ここまで真実を突きつけられても今だに猫を被り続けるアリアに侮蔑の視線と言葉を浴びせる。
「た……つみ…?タツミなの……か?」
「!?」
そして、恩人を信じたいと願うタツミに聞き覚えのある声がする方へ顔を向ける。
「イエヤス!!」
「知り合いもいたのか」
兄弟同然とも言える親友の変わり果てた姿を見つけてしまう。その少年にもそこいらに転がされている亡骸たち同様に赤黒い斑点が浮き出ていた。
「おい!大丈夫か!?」
「タツミ………その女が、その女がサヨを………
……いじめ殺しやがったんだ!!!!!」
「!?」
そして、イエヤスの指差す方向には………
「さ……サヨ…………?」
無残にも、足を根元から切り取られ、凄まじい程の拷問傷を付けられた少女サヨの姿があった。
「…………」
2人の変わり果てた姿に絶句するタツミ。
「ハドー、無理なのか?」
「あぁ、あの少年はもう末期だ。俺の調合した薬でも死を数日引き延ばす事しかできない」
タツミの友の容態を見ながら、アカメはハドーにまだ希望は残っていないのか尋ねる。しかし、そんな淡い期待は打ち砕かれる。ハドーはナイトレイドのメンバーの中で一番人体に詳しく、薬物の取り扱いにおいて誰よりも詳しいため戦医を務めている。そのためイエヤスの身体を蝕むルボラ病の侵攻状態が手遅れなレベルである事を察してしまった。彼はもうすでに気力のみ生きている状態であった。
「………何が悪いって言うのよ!」
そして、追い詰められたアリアの表情が激変する。
「お前達はなんの役にも立てない地方の田舎者でしょ!?家畜と同じ!!それをどう扱おうが私の勝手じゃない!!だいたいその女、家畜のクセに髪がサラサラで生意気すぎ!!私がこんなにクセっ毛で悩んでるのに!!だから念入りに責めてあげたのよ!!むしろこんなに目をかけてもらって感謝すべきだわ!!」
人の皮に隠していた人外の本性を滲み出した。
「クズめ」
「葬る」
「待て」
これ以上生かしおく必要がないためハドーとアカメはアリアの命を奪おうとするが、タツミが2人を止める。
「なんだ?まだかばうつもりか?」
「いや………」
瞳を黒い炎を揺らめかせるタツミを見たハドーはジャコーダービュートの拘束を解いた。そして自由になったアリアに近付き、
「……俺が斬る!!」
一瞬の躊躇もなくアリアを斬り捨てた。
「躊躇いもなしに……か」
そんなタツミを見た檻の中のイエヤスが心から笑う。
「へへ、流石タツミ。スカッとした…ぜ……ゴフ!?」
「!イエヤス!!」
「待っていろ」
イエヤスの容態が急変したのを見てしまったハドーが檻を破壊する。
「イエヤス!!しっかりしろ!」
「ルボラ病の末期だ。ここの夫人は人間を薬漬けにして日記に書いて楽しむ習慣があった。そいつはもう助からない」
アカメが残酷な一言をタツミに告げる。
「そ、そんな!?」
「タツ……ミ…」
イエヤスが僅かな力を振り絞りタツミに最後の言葉を届ける。
「サヨはさぁ……あのクソ女に最後まで屈しなかった…かっこよかったぜ…………だ…か、ら……このイエヤス様も…最期は……かっこよく………」
静かに力尽きるイエヤスにハドーが脈を測る。
「……死亡を確認した。もう気力しか持っていなかった状態だった。よく頑張ったよ彼は」
「……どうなってんだよ……帝都は……」
声を震わせるタツミ。
「行こう」
「んー、なあ二人とも、あの少年もって帰らないか?」
「ん?」
「は?」
「ほら、アジトはいつだって人手不足。運や度胸、才能もあると思わないか?」
「実力、才能面は俺はあるとは思う」
「よし!決まりだ!」
当本人のタツミを置いて話を進めていくハドーとレオーネ。
「離せ!俺は二人の墓を!」
「心配するな。2人は俺が運んでおく」
「はあ!?」
「諦めろ、レオーネは一度言い出したな撤回しない」
「うんうん♪流石は親友〜分かってくれるねぇ〜」
「ハアァァァァァァ!?」
そのまま連れていかれるタツミ。
そして、残ったハドーは静かなにサヨを下ろし、イエヤスとともに近くにあった布でくくりつけると2人を丁重に担ぎ、待っていてくれていたアカメと一緒にブラートたちの元へ向かう。
「おー待たせー♪」
「遅いわよ三人とも! なにやってた……って、それなに?」
戻ると同時に開口一番マインが若干怒りながら言って来たが、レオーネの胸元で暴れるタツミを見て首をかしげる。
「新しい仲間だ!」
「ファッ!?」
レオーネの言葉に誰よりもビックリしていたのはタツミだった。まぁ無理もない。いきなり殺し屋の仲間だといわれても驚くのは当たり前だ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は別に仲間には」
「あきらめろ少年。レオーネはそういうのはまったく聞き入れないほど頑固だ」
肩を竦めつつタツミの肩に手を置いていたハドーだが、レオーネをキロリと睨む。
「レオーネ、あとで少年に残った金返しとけよ」
「……はーい」
しょぼんと、ワザとらしく落ち込んだ様子を見せるレオーネだが、それを尻目にハドーはアカメに視線を送る。彼女もその意図が理解できたのかコクンと頷き、皆に告げる。
「では任務終了だ。アジトに帰還するぞ!」
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
号令と共に皆同時に駆け出し、タツミはブラートに抱えられて行くこととなった。途中、市街地を駆けながらアカメはハドーにある事を問いかける。
「そういえばハドー、今晩は血は要らないのか?」
「大丈夫だ。今回は魔皇力を使っていないから吸血衝動は起きていないぞ」
「………………そうか…(´_ _`)シュン」
「(なんで……心なしかちょっと残念そうなんだ)」
ついに原作主人公年上キラーのタツミの登場です。
この辺りは原作と全く変わりはありません。
しばらくは原作と大差ない展開が続きます。
ちなみにアカメが斬る1.5の短編集からもいくつか出しますので、楽しみにしていてください。私は特にラバックが主役の回が好きです。同士がいてくれたら嬉しいです。
では、次回も楽しみにしていて下さい!!