特典ない系転生の鬼畜人生を謳歌する 作:揚げたて茶飲みのハンバーグ
文字数は少ないけど次から多分多くなるから多少はね?
※修 正 済 み(迫真)
天井から水が滴り落ち、地面から反響する水音で俺は目が覚めた。
…………ここは一体どこであろうか?
先程まで寝ていたはずの自分の部屋でもなければ、俺自身が見たことあるような部屋でもない。結論から言うと全く知らない場所である。
少し痛む頭に、寝起きのようなしぼんだ目をどうにか働かし辺りを見渡す。麻でできた質素な寝床に、酷く汚れたワンセットの机と椅子が収められた石造りの部屋。そして俺の正面にある唯一の出入り口らしき鉄格子。一応、窓らしき枠もあるがそこにも鉄格子がはめられており景色を眺めるためのものでは無いということはわかる。
あぁ、なんだか分かってきたぞ。この部屋、俺の知識が間違いなければこれは俗に言う……そう、牢屋そのものである。
…………え、なんでこんな所に閉じ込められてるの?
そうして心の中に流れてきた感情は『何故』であった。もちろん、突然こんな質素で窮屈で恐ろしい部屋に閉じ込められてるのだ、恐怖もあれば驚きもある。
だがしかしよく考えてみて欲しい。
今この『牢屋に閉じこめられている』という状況で驚きや恐怖を感じる必要があるだろうか? …………嘘です冗談です。
本当は物凄いくらいこの現状に驚いてるしビビってます……。普通気がついたら牢屋にいました、なんてシチュになったら誰でもビビるでしょ!? 俺そんなに肝が据わった冷静男子じゃないからね!?
……ふぅ、一旦落ち着こう。いや落ち着けるわけないのだが落ち着こう。まずは状況の確認が重要である。何事も状況の理解をしなくては始まらないのだ、特にこのような突拍子のない突然のことには。
一呼吸おき辺りをもう一度見渡すが先程と変わらず、質素なベットに使い物にならなそうな机に椅子、それ以外には特にない。
で、あれば次は物色Timeである。
もしかしたら机の中に鍵などが入っていて目の前の鉄格子の扉を開けることが出来るかもしれない。それどころか実は空いてました! みたいな展開もアリ〇ール。
そうして座り込んでいた体を立ち上がらせようと力強く手を地面につこうとしたその時である。ガシャン! という金属音とともに手は壁の方へと引っ張られ鈍い痛みがからだに走った。
あ~うん。なんか知ってた。
そりゃここ牢屋で俺は閉じ込めてるんだもんね。あれの一つや二つぐらい付けられてるよね……。
半ば諦め気分で視線を腕、そして足へと移していく。するとやはりというか、そこには俺が想像してた通りのものがあった。
金属製の輪っかで手首や足首の付け根などに通し、それを鎖などで壁と繋げ動きを制限するもの……いわゆる枷というやつだ。
……はぁ~(クソデカ溜息)。
仕方がない、こうなってしまえば俺に出来ることは一切ない。頑張って枷の拘束を解こうにも両腕、そして両脚とも縛られていたのでは話にならない。
多分、ここに俺を連れてきた誘拐犯くらいいるであろう。そいつが来るのを俺は待つしかないのだ……ものすげぇ怖いけど。
◇
それから何分かののちである。
待つとか豪語してた俺の気持ちは、恐怖とかよりも退屈によって上塗りされていた。なんせ体は完全拘束されてるし、未だに頭痛は消えないし目はぼんやりしてるしで、あまりにも出来ることが限られすぎているのだ。まぁ、まずこんな所でそんなこと考えてる時点で頭おかしい気がするが、そうでもしないとやってけないのだ。精神的に。ほんと。
助けてとは言わないが──いや、普通に助けて欲しいが──頼むからこの退屈をどうにかして欲しい。そうでもなければ死んでしまう……比喩的な意味で。
そうして、あまりの退屈さに手枷をカシャカシャと動かし遊んでいると俺の元に、こつ、こつ、という手枷からの金属音とは違う、足音のような音が聞こえてきた。
その音はゆっくりとこちらへと近づいてきており、人の足音、そしてこんな場所に近づいているのだから俺をここに連れてきた張本人またはその関係者であることは間違いないだろう。つまりは俺に用があり、そして何かをしに来た、そう考えるのが妥当だ。
……おいまて、そうだとしたら俺相当やばくね……?
退屈しのぎに手枷で遊んでいた腕は緊張で止まり、だらーんと壁にもたれ掛けていた俺の体は強ばったように動かなくなった……そう、恐怖でだ。
落ち着け……落ち着け……正直結構内心焦ってるけど一旦落ち着け……
俺の心臓が飛び出しそうな勢いで鼓動してるのをどうにか抑えている間も足音は止まらず、一歩、また一歩こちらに近づき、そして俺の目の前、鉄格子を挟んだ向こう側で足音は止まった。
恐怖で頭がどうにかなりそうなのを感じつつも、どうにか強ばった体を動かし俺はその音の出処の方へと視線を向けた。
そこには、暗闇に溶け込むような姿──黒いローブにフードを被った服装でその人物は立っていた。
そして、
「やぁ、元気かい?」
落ち着いた、まるで友人にでも逢いに来たような口調で、その人物──声的に女性であろうか? ──は暗闇の中から話しかけてきた。その突然の問いかけに、俺の体はビクッと反応し、また手枷の金属音が牢屋へと響き渡る。
「……ふふっ、もしかして怖がってるのかい? 安心したまえ、別に君を取って食ったりはしないさ。ただ研究の手伝いをして欲しいだけだからね」
そんな言葉を聞いても俺の恐怖はマシになるどころか、もっと酷くなっていた。体は小刻みに震えるようになり、彼女にとっては相当滑稽に見えているだろう。
だが、俺にとって今は恐怖はそんなに大したことは無かった。いや大したことがないといえば嘘になるがそれ以上にしなくてはいけないこと、聞かなくてはいけないことがある。
「…………ゅぅ……? …………だ」
研究……? なんの事だ。
そう、聞こうとして気がついた。
いや完全に声が出ない訳では無い。少し掠れた、喘ぎ声のような声しか出ないのである。
……え? なんで? なんで俺変な声しか出ないの?
しばらくの間声を出さなかったからあまり出ていないなどという程度のことでは無い。まるで数年間、全く喋ったことがないかの如く喉がかすれ、上手く喋られないのである。
正直、恐怖とかそれどころじゃ無くなって今は驚きしか残っていない。
「ふむ……見た感じの体の健康状態はよかったがやはりまだその体に慣れていないのか……」
そんな俺の内心の驚きとは逆に、いつの間にか持っていた紙に何かを書いてる彼女はそれを知っていたかのように俺の様子を眺め、そしてまた紙に筆を走らせている。
……いや、ちょい待て、今なんて言ってた? 体に慣れていない、そう言ったのか?
「おや? もしかしてまだ気づいてなかったのかい? ……ふふっ、一度自分の姿を見てご覧? 面白い変化が君の体に……いや、君自身に起こっているからね……」
正直、彼女が言っていることは未だに意味がわからないが、俺の体を見てみろと言われたのだ、自分で見て変化とやらを確認するしかないだろう。
まっすぐと前へと向けていた視線を、ゆっくりと自分の体の方へと移動させ……
──そして俺は、驚愕した。
白く、細い、華奢な腕に、少し物足りなさを感じる胸。そして腕と同じように弱々しく見える脚。極めつけには肩まで伸びきったプラチナブロンドの髪までもが俺の目に映った。
「君はその体に慣れていない……何故ならその体はもう君の知っている体じゃないからだ。わかってくれたかな?」
いやいやいや、待て待て待て。
多分あれだ、そうそう、マジックってやつだろこれ?
いや待て最近のマジックって人の視覚まで変えちゃうのか? そう考えたらすげぇなマジシャン。オレ、ソンケイスル。
「……はぁ。まだわからないのかい……? さすがの私でも呆れてしまうな。……仕方ない、ちょっとそこで待っててくれ」
そう言うと呆れ果てたような仕草をし、彼女は牢屋去っていったと思ったら数分後に鏡を持って戻ってきた。そして鍵のかかっていた牢屋の鍵を開き、鏡を持ったまま入ってきた。
「さっ、鏡に映る自分の姿を見てご覧? これで分からないなんて言ったら脳の認知機能を改造させてもらうからね?」
なんかしれっと物凄く怖いことを言われた気がするけど俺は犯罪者に言われたように鏡を覗き込む。
するとそこには先程自分の目で確認した時と変わらない、腕に脚、薄い胸とプラチナブロンドの髪。
そして鏡を見ることで初めて気がついた傍から見る自分自身の姿。少女のようなあどけなさが少し残る可愛らしい顔に小柄な体をした…………ん?
可愛らしい……顔……? 小柄な……体……ファッ!?
ってよく見たら俺の見た目…………
……ただの金髪ロリじゃねぇか!!?
白猫のガチャ貯めなきゃ…(使命感)