第一話
世界という物は無限であり有限だ。
何かが起きれば生まれ、何かが起きれば消滅する。脆く、儚く、弱い。だからこそ美しく、見るもの全てを感動させ続ける。
だからこそ、男は旅を続け、世界を切り取り、運命を変える。そのための旅、そのための力。
いくら破壊者や悪魔などと呼ばれ続けようと、男はその運命すらを破壊し、乗り越え、いくつもの世界を守ってきた。
だから「ここ」にも彼は呼ばれたのかもしれない。
本来ならば交わるべきではない世界。交わることなど許されない世界。
だからこそ、救わなければならない。
そういう確信などない。ただ男はその世界を通りすがっただけ。
そのたった一回の通りすがりが、全世界消滅の危機を招くなど、男は知らない。
知らないからこそ、旅という物は面白いのだ。
男は灰色のカーテンをくぐって、禁断の地へと足を踏み入れた。
「さて、この世界はどんな世界だ?」
そういって男は小さくあくびをする。
数々の旅を共にしてきた首にぶら下げてある二眼レフカメラを手に取って、なんてことない街の風景を一枚きままに切り取った。
「ほう……。なかなか面白そうな世界だ」
大通りを歩いている人々の服装はコスプレにしてはできすぎているほど巧妙な作りだ。
そして黒髪の人間などはおらず、金髪や白髪、男のように茶髪の人しかいない。
「要するにここは、日本をベースとした世界ではなく」
思考している士の目の前を巨大なトカゲのようなものが勢いよく走り去ってゆく。その後ろには、見たこともないような文字の看板が立てかけられていた。
「地球とは全く異なる生態系が存在する世界、か」
これまで男が訪れてきた世界は、ほとんどが日本語が通じる、日本を基点としていた世界がほとんどだった。
故にこのような世界は初めてであり、この世界に対する男の期待は、今まで以上に膨らんでいた。
もっとも、その気分も自分が着ている格好の悪い服装のせいで、かなりダダ下がりになっているのだが。
「おいお前。ちょっとこれ持ってくれないか?」
隣から男を呼ぶ声が聞こえゆっくりと振り向くと、男とどこどなく似ている服を着たいかつい顔のオッサンの姿が見えた。
オッサンの指さしている樽を担いで、指定された位置に持っていく。
「で?俺は他にどんなことをすればいい。店主」
「……偉そうな奴だな、ったく。こんな一目で分かるような仕事なんだから果物を客に売ってくれ」
ぶっきらぼうにそれだけ言い、店主と思われる人物は会計を行う場所に戻っていった。
少しなら働いてやるか。そう思い辺りを見回すと、客どころか店の周囲には人っ子一人いなかった。
「誰もいないじゃないか?繁盛してないのか?」
「なめてんのかガキ!」
「あいにく俺は20歳だ。ガキじゃない」
「俺からみりゃガキだ!あ、おい客が来たぞ。速く行け!」
「はいはい」
そういって男はその客とやらに向けて足を運ぶ。
目つきの悪い子供だ。ツンツンと尖っている黒髪に、手に提げているのはプラスチック製の袋。そして白色がベースで所々にオレンジや黒色の線や模様が刻まれているジャージ。
「はい、らっしゃい。何を買う」
「えーっとそのリンゴを1個くれ」
「これか?これはリンガっていうらしいぞ。百円だ」
「え?百円?……この世界でも単位は一緒なのか……?」
……この世界?
多少そのワードに反応したが話を戻す。
「どうした?買うのか?買わないのか?」
「おう、買うぜ。えーっと、ほい百円」
そういって子供は、ポケットから金を弾いて雑に出してくる。宙に浮いているコインを掴み、
「まいどあり」
そう言い商品を投げて渡した瞬間、店主が店の中から飛び出てきた。
「おいちょっと待て兄ちゃん!!」
「うお、何だよ」
「何だよじゃねえ!!この金は何だ!!これ偽金だろ!!」
「え?ってことはこの世界じゃやっぱり俺の金は使えねぇのか……」
またこの世界……?それに金が使えない……?
ふと気になり今さっきもらった金をチラリと見てみる。
するとそこには、
(日本国、百円)
と書いてあった。
「だとしたら、俺は不俱戴天の一文無し!!」
「冷やかしなら出てけー!!」
そういって男は、トボトボと頭をかきながら渋々店から出ていった。
これが世界の破壊者、門矢士とナツキ・スバルとの出会いだった。
この出会いがキッカケとなり、世界はどんどん違う方向に進んでいくとは、ナツキ・スバルは考えることも思うこともできなかった。
かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?
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YES
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NO