「単刀直入に言うとねぇ、この国には王がいないんだぁよね」
そんな事をサラリというロズワール。その言葉を吟味し、意味を理解してスバルは静かに息を呑んだ。
「あはぁーそんなに緊張しなくていいよぉー。既に国に行き渡っている事実だからねぇ」
「あぶねー。これが知られちゃいけない秘密だったら俺殺されてたかもだったしな」
「こっちから言っておいてそれはスバルが可哀そう……」
「戒厳令もその一環だねぇ。王不在のこの状況で、他国に火種を持ち込むことも、あるいはその逆も望ましくないってぇこぉと」
なるほどな。
どんな原因かは知らんが病没かそれ以外か、とにかく突然の王の『死』に国が揺れている。
「だがそれなら国王とやらの息子が後を継げば解決だろ?」
「ふむ、二人ともついてくるねこの会話に。ともあれ、通例ならその通りになるよね。だぁけど、事の起こりは半年前までさかのぼっちゃう。王が御隠れになった同時期に、城内で蔓延した流行病の話にねぇ」
その話によると、特定の血族のみに感染する病によって王家は全滅。しかし王がいない国などあってはならない。そうなると新たな王を選ぶ必要がある。
「へぇー。でもこの話とエミリアたんを様付で呼ぶのと何の関係があんだ?」
全く接点の無さそうな話に疑問を覚え、元の話題に戻す。
「当たり前でしょぉー。自分より、地位の高い方を敬称で呼ぶのはねぇ」
「え?」
スバルの首がガギゴギ、というような音でもなるかのように、ぎこちなく曲がる。
「騙そうとか、そういうこと考えてたわけじゃないからね」
「えーとつまりエミリアたんって……」
まだ懲りずに「たん付け」するスバル。
そんな現実を否定したがる彼にトドメを刺すように、
「今の私の肩書きは、ルグニカ王国第四十二代目の『王候補』のひとり。そこのロズワール辺境伯の後ろ盾でね」
「すいませんでしたァァァァァァァァァァ!!!!!」
その言葉を言い終わるより速く、スバルは頭を地につけ、最大限の謝罪をしていた。
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――好きになった人は、女王様でした。
どんな底辺ラノベの謳い文句だよ。と思うかもしれないが、今自分はその状況に直面してしまっている。
正確には女王様候補、だが。
「なんかいいなそれ。ちょっと俺のMっ気が覚醒しそうだぜ」
「よくわからないけど、マジメに話してるわよ」
「くっ、その冷たい眼差しもちょっとゾクゾクする……さすがだぜ、女王様。下賤な豚を見るように俺を見ないで」
「目つきの事でスバルには言われたくないわ!!」
「確かに」ボソッ
何か士の方から聞こえてきたが気にしない。
「というのは一旦おいておいてだねぇ、ここまでは全部前座なんだぁ。
「え?」
突如放たれたその言葉に唖然としていると、
「これの事ね。ロズワール」
「そうそう。それそれ。よーく分かったぁねぇ」
そういったエミリアの手に握られていたのは、
「あんときの徽章じゃねえか」
スバルが一度命を落としてまで手に入れた徽章だった。
赤い宝玉は持ち主の手の中で光り輝いていて、その眩さは不思議とスバルにすら畏敬の念を思わせるほどに深く澄み切っている。
「竜はルグニカの紋章を示しているんだ。『親竜王国ルグニカ』なぁんて大仰に呼ばれていてねぇ。城壁や武具なんかも含めて、あちこちに使われているシンボルなんだよ。とりわけ、その徽章はとびきり大事だ。なぁにせ」
そこで少し間をおいて、ロズワールは、
「王選参加者の資格だからぁね」
力なく言い切られた事実にスバルは目を剥き、それから再びテーブルの上の赤い輝きに目を走らせる。両翼を広げた竜の徽章――中央の宝玉のきらめきがその話を裏付けていて、今の情報を統合すると、
「……まさかお前王選の資格を無くしてたのか……?」
士が恐る恐るそんなことを聞くと、エミリアは何故か胸を張り、
「なくしたなんて人聞き悪い! 手癖の悪い子に盗られたの!」
「一緒だ――っ!!」
大声で叫び、食卓を叩きながらスバルは立ち上がる。
危うく食器がテーブルから落ちかけるが、そこは控えていたレムが見事にフォロー。が、そんなフォローに目もくれず、スバルは顔を赤くして屈辱を瞳にたたえるエミリアを見下ろし、
「それって大問題だろ!!それって無くした場合再発行とかできんの!?」
「それはぁもちろんできないだぁろうね」
その事実に二人は唖然とするしかできなかった。
「つまり俺ってばメッチャすごいことしてたじゃん!!徽章も取り返してエミリアたんも守った俺カッコいい!!」
「バカは黙ってろ」
「なぁんで士はそんなに辛辣なんだよ!!」
雰囲気をぶち壊し、士と話しているとエミリアが真剣な表情でこちらを見つめ、
「……そうよ。スバルは私にとって、もうすごい恩人。命を救ってもらっただけじゃ済まないくらい。だから、なんでも言って」
と言ってきた。
その真っ直ぐな瞳を見ていると、とてつもない罪悪感が押し寄せてくる。
「な、なんでもするとか女の子が簡単に言っちゃいけねぇよ? それこそ、悪ーい俺みたいな奴にゲヘヘでムフフな目に遭わされるかも」
「……それでもいいわ。スバルがそうしたいなら従う。ゲヘヘでもムフフでも、アヒンアヒンでもチョメチョメでも私は……っ」
「女の子がそんな卑猥なこと言わないの! しかも後半泣きそうじゃねぇか!」
何とか慌ててフォローしたと思ったが、逆効果だったようだ。
こんな風に空気の読めない発言をするからスバルはボッチだったのだろう。
そんな二人のやり取りをそれこそ心底楽しげに見ていたロズワールは、スバルの視線に気付くと「おや」とでもいうように眉を上げて、
「私たちがぁ邪魔だって言うんだったらおいとまするけぇど?」
「おいおい流石にこんなとこで初めてはやんねえよ」
「そぉこまで私は言ってないつもりなんだけどねぇ」
「おっと墓穴を掘ったーー!!」
自分の思わぬ失言に、今更ながら頭を抱えるスバル。
「しかーし!!俺は願いをこんなことに使うつもりは毛頭ない!!」
「おやぁ?じゃあ何に使うんだい?」
「ズバリ!俺の交渉相手はただ一人!!」
大声で他の皆に聞こえるように言い放った後、スバルが指を差した相手はー
「私かぁい?」
「そのとぉーり!!」
この屋敷の主人、ロズワールだった。
切り悪くてすみません(三回目)
細かく書くとこうなっちゃうんです……。許してください。
かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?
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YES
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NO