「なぁ。一ついいか士」
「ん?どうしたスバル」
あの後ベアトリスに二人まとめて部屋の外に吹き飛ばされてから数時間後。
辺りがすっかり暗くなったころにスバルは士の部屋を訪ねていた。
「前王都で会った時にお前、自分で破壊者って言ってたよな。あれってどういう意味なんだ?」
「……今はまだ話せないな」
んだよ。ケチ臭い
とでも言おうとしたがそんなことは言えなかった。
そう話す士の目はどこか遠く、まるで別の世界でも見つめているようだった。
「で。今のところはどうだ?何か収穫はあったか?」
この空気に耐えられなくなり、自分で振った話題を無理やり変える。
「今のところはまだ何もないな。だがじきに分かる」
「そんなもんかなぁ……。そうだ!お前のドライバーとかいうやつ見せてくれよ!」
「別にいいが……壊すなよ?」
「へーきへーき」
「ったく……。ほらよ」
士の手から放出されるものをキャッチ。すぐさまその物体の観察へ移る。
「おほー。見れば見るほど奇麗なピンク色だな」
「ピンクじゃなくてマゼンタだ」
「へいへい。にしてもカッケー。そうだ!俺にもつけてみよ!」
「え。おいバカ!やめ……」
「えーっとこうかな?」
士の忠告を軽く受け流し、ドライバーを腰に当てる。
「うぉ!これスゲェ!自動で腰に巻き付いた!!で。ここにカードを挿すんだよな」
「やめろ!」
(ガシャン)
「よーしっ!変身!」
スバルがドライバーの両側に手を当て、変身――
「が!?ああああぁぁぁぁぁ!!!」
することは無かった。
突如スバルの体に電流のようなものが流れ、激痛が走る。
そしてその痛みと共に、頭の中に何かが流れ込んできた。
(な……んだ?これ……)
数え切れないほどの映像が流れる。
(あれは……つか……さ。と……誰……だ?)
その映像に流れているのは、士と恐らくその仲間と思われる人たち。
(いいや。違うな。あんたがこの世界を救ったんだ)(ディケイド、トモダチ)(行くなと言っているだろう!!僕は君というお宝を失いたくないんだ!!)(士君ったら。笑いのツボ!)(士君。随分写真の腕を上げたね)
その他にもたくさんの人たちが移っていた。その人たちは皆笑顔だった。
しかし中には、
(士。お前は自分の帰る世界がないからそんなことが言えるんだ)
(あなたが居るから僕たちの世界が滅びるんだ。出て行ってください)
(ディケイド!お前は破壊することしかできない存在なのだ!!)
(士……。俺がお前を倒す)
数々の誹謗中傷の言葉もあった。
(つ……かさ。お前は一体……何なんだ?)
そう考えた瞬間に、
「「大丈夫ですか?お客様」」
「ッ!!」
意識が現実世界に引き戻された。
「こ、こは……。……今何時だ?俺が気を失ってから何時間たった?」
「「お客様が寝込んで三日が経ちました」」
「何!?」
そんな長い間寝込んでいたのか……。
「看病してくれたのか。ありがとな」
「「では失礼します」」
ペコリと一礼をし、その場を後にする姉妹を見ながら、スバルは考えることに没頭していた。
にしてもあれは何だったんだ?……士に帰る世界がないだとか……それに破壊することしかできない存在だとか……。
分からないことだらけのまま、スバルはあの映像を反芻することしかできなかった。
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一方そのころ士は書庫に居た。
本来ならばベアトリスが居るのでできるだけ来たくないが、今はこいつしか頼れないのが現状だ。
スバルの死因が分かったのはよかったが、呪いと言われると流石の士もお手上げだ。
だから渋々この場に来たのだが……さっきからベアトリスが一向にこっちを向いてくれない。
「おーい。おーい。おーいロリ。聞いてんのか?」
「うっさいわね!何かしら!」
すでに半ギレ状態だが気にせずに話を進めよう。
「こんなこと言うのもなんだが、お前に頼みがあるんだ」
「何かしら。屋敷のニンゲンどもにあなたの正体をばらさないで、ってお願いかしら?」
「いいや違う。実はな……スバルに掛かった呪いを何とかしてほしいんだ」
「あいつの呪いを解く?何でベティーがそんなことをしなくちゃならないのかしら」
その通りである。そんな義理はこいつは持ち合わせていない。
「お前……俺たちに悪いと思ってるか?」
「は?」
「だから。俺たちを出会った時にいきなり吹き飛ばしたの、悪いと思ってるか?ハイかイイエで答えろ」
「……すこぉぉぉしだけ思ってやらないこともないわ」
「じゃあ俺の頼みを聞いてくれるよな?」
ほとんど脅迫に近い形だが、このルートでしかうまくいく未来が見えなかったので致し方あるまい。
「……はぁ。仕方ないわね」
「ありがとな。で、俺から提示するのは二つだ。一つ、スバルを守ってやってくれ。明日の朝まで。でもう一つはスバルに呪いがかかってないか調べてやってくれ」
「……何で二つあるのかしら」
「俺とスバル。二人合わせて二回以上痛い目にあわされてるんだ。こんくらい別にいいだろ?」
「……やれやれ。言ってしまったものは仕方がないわね。じゃああのバカをここに連れてきなさい」
「はいはい」
そう言って士は書庫から退出した。
これでスバルが死ぬことはまずないだろう。後は五日目になるのを待つだけだ。
そう。それだけのはずだったのだ。そのはずなのに――
この三回目は士の予想していなかった方へと進んでいく。
かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?
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