Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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第十七話ロズワール邸での戦闘直前

 そうして、禁書庫での静寂は緩やかに過ぎていく。

 互いに言葉を発せず、ただゆっくりとした間隔でページをめくる音だけが交互に書庫の中を流れていた。

 ベアトリスが選んでくれた本は、やはり前回までと同様に童話のような子ども向けの作品が多い。『イ文字』だけということは、つまり平仮名だけの内容と似たような要求なのだから、子ども向けに偏ってしまうのも仕方ない話だが。

 そのせっかくの読書の時間も、スバルの目は同じページを行ったり来たりを繰り返すだけのものとなり果てていた。

 ――閉め切られた禁書庫から、外の様子をうかがうことはできない。

 その場所は文字通り「時間の凍結したような場所」だった。

 実際にそんなことは起きていないが、スバルにはそう感じることができた。

 表は今、何時なのだろうか。

 スバルが禁書庫に招き入れられた時点で、すでに太陽は空に沈みきっていた。

 つまり夜明けまでは8時間近くとすると計算が合う。

 だが、この停滞した場所に身を置いていると、そのたった半日の感覚を己で計ることがまったくできない。

 自分の意思などにも全く興味を示すことがない時間にただただ流され続けていた。

 緊張が体の中を駆け巡り、指先に、舌に、耳に、目に、全ての場所がこわばっていた。

 そんな緊張感を、どれだけの時間強いられたのだろう。

 始まりが理不尽だったとすれば、その終わりもまた前触れはなかった。

「呼んでる」

 ふいに、そんな呟きが書庫内に静かに響いた。

 弾かれたように顔を上げるスバルの眼前、本を畳んで脇に置くベアトリスがいる。彼女は椅子から軽やかに下りると、

「呼ばれているかしら」

 それだけ告げると、ベアトリスはスバルの隣を抜けて扉の方へ。

 当たり前のように外へ出ようとする彼女の背に手を伸ばし、スバルは焦燥感を隠せないままに、

「お、おい、待てよ! 今、外に出たら……」

「引っ込んでいても構わないのよ。ここにいれば安全かしら」

 侮蔑を隠さない言い方に血が上り、スバルは椅子を蹴るように立つとその背中を追う。扉の取っ手に手をかけ、ほんの数秒の躊躇。

 だが、

「ああ、クソ。なんだってんだよ、こんぐらい!」

 暴言を吐き、不安を奥底に封じ込めドアを勢いよく開けて外に飛び出す。

 すると――

「あ……朝日だ……まさ、か……越えた、のか? 四日目の夜を……!?」

 目の前の結果が信じられず、窓を割りかねない勢いで手をぶつけて押し開く。涼風が流れ込み、前髪を風に撫ぜられながら、スバルは朝の匂いを鮮烈に感じ取った。

「どうやらうまくいったようだな」

「つ……かさ……。――は、はは。ひひ、ははは。なん、だよ。おい、なんだよ。こんな、おい、はは……」

 今の気持ちをまともに言葉にする方法が思いつかない。

 膝を抱えて、スバルは通路に蹲ったまま、正気を失ったような笑いを吐き出し続ける。

「なぁ。生きてるよな?俺、生きてるよな?」

「……ああ」

 言葉にできない。言葉にならない。ようやくスバルたちは四日目を超えることに成功したのだ。

 成功したはずだった――

「――スバル?……それにツカサ?」

「エミリア……?」

「スバルたち……どこに、行ってたの?」

「いや、俺たちは……」

「だって……ううん、それはいい。いいから……一緒にきて」

 手を引かれ、スバルはその強引さに驚かされながらも立ち上がる。

 そのままエミリアはスバルの返事も聞かず、強引にこちらを引きずりながら廊下を走り出した。

「エミリア。一体――」

 何だ。と言おうとしたところでスバルの喉が止まった。

 彼女の横顔に、隠し切れない動揺と焦燥感が浮かんでいるのだ。

「おい。どうしたん」

 スバルに変わって士が質問をしたが、その言葉を言いきることはできなかった。

 ――それは、絶叫であったと思う。あるいは、悲鳴なのかもしれない。

 所々掠れるその声は、悲しみや苦しみといった負の感情に満ちており、聞くものの心にまでその感情を植え付ける。

 階段をかけあがり、直ぐの廊下はたしか空き部屋、そしてラムとレムの個室があったはずだ。

 その中に一つ。扉が全開になっており、やたら目立つ長身の男、ロズワールが目の前に立つ部屋があった。

「中へ」

 と声だけで促した。

 奇麗な、部屋だった。

 レムとラムの几帳面な性格が反映され、少ない調度品がセンス良く配置された個室は、スペースを無駄なく機能的に利用されているのがわかる。

 それらを眺めることで、スバルは一瞬だけ目の前の光景を忘れることができた。

 だが、そんな現実逃避もむなしく、世界はスバルに結論を押し付ける。

「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 聞くものの鼓膜を切り裂くような悲痛な叫びと、とめどない涙を流すラム。

 そしてそんな彼女に縋りつかれるように、

 ──レムが息を引き取って横たわっていた。

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「……は?」

 キツく締まった喉からなんとか絞り出した一言には、動揺を意味するありとあらゆる感情がこもっていた。

 その声の掠れ、震え。

 二度目の世界を繰り返し、様々な事情を知るスバルにとってそれは当然であり、その瞬間それだけで済んだのはむしろ奇跡だろう。

「どうして……レムが?」

 重い足取りでレムに近づき、その体に触れようとする。 

 だが、それは叶わなかった。

 スバルが震えながら伸ばした手を、横からラムがはたき落としたからだ。

「やめてッ! レムに、ラムの妹に触らないでッ!」

 それは一切入り込む余地のない拒絶の言葉だ。

 叩きつけるようにそれだけ言って、ラムは再びレムの体に取り縋り、静々と泣きながら囁きかける。まるで、眠る我が子にお伽噺でも語り聞かせる母親のような、献身的で痛々しい姿だった。

「魔法というより呪術よりの物で殺されてるねぇ。衰弱死だ」

 それを聞いてスバルの頭にある考えが浮かんだ。

「……まさか、協力関係も×して完璧に別件なのか……?」

 レムと呪術師が違う人物ということは分かっていた。

 だがスバルも士も完全に関係がないというのは予想していなかった。

 レムと呪術師の間に、なんら関係性がないとすればどうだろうか。

 一回目はスバルが呪術師の標的にされ、そのまま死亡。二回目は呪術師の術中にかかったスバルを、レムがなんらかの理由で殺害。

 そして三回目の今回は、

「俺がなにもしなかったから、レムが呪術師の標的になった……?」

 考えられるのはそれ一つだけだ。

 そして呪術には必ず体に触れなければいけないという絶対のルールがある。

 素性が不明な上に、来て一週間も立たない人間がいれば、疑われるのは必然。

 即ち、

「お客人たち。何か心当たりはないかぁね?」

「え……」

「いやいや。私も可愛がっていた使用人がこんなことになってしまって少々苛ついているようだ」

 それはおふざけ一切無しの、純粋な怒りの声だった。

「そ……んなこと……俺知らねぇよ……」

「……そぉかい。ではそちらの方は?」

「……知らないな」

 どうするどうするどうする!

 考えろ。どうやったらこの最悪な状況下を抜け出せる!?

 だがそんな努力はスバルの行動で無意味なこととなる。

 スバルがドアに向けて走り出したのだ。

 しかしスバルが走り出した刹那、それよりも速く走った一筋の風が、スバルの右の頬をかすめた。

「痛ッた……!」

 いきなりの出来事により、スバルは逃走を断念。尻もちをついて座り込む。

「逃がさない……何か知っているのなら絶対に絶対に逃がさない!!」

 寝台に横たわる妹を優しく撫で、その手とは反対の手をこちらに向けながら、桃髪の少女が憤怒を宿した目でスバルを睨んでいた。

「なにか知っているなら、洗いざらいぶちまけなさい」

「スバル……」

 エミリアの冷たい視線がスバルの心を抉り、さらに追い詰めていく。

「知らねぇ……知らねぇ!!」

 スバルは必死に言い訳をするが、それを信じられるものは、士以外この場に居ないだろう。

 ……もう俺たちの信用度はマイナスを極めてしまっている。ここからどう弁論しても俺たちが信じられることはまずない。

 こうなったら取れる行動は――!

「オラッ!」

「なっ……!」

 ライドブッカーをガンモードにし、横一線に銃撃を放つ。

 それはスバルをこの部屋から逃げ出させるのに十分な隙を作ってくれた。

「スバル行け!」

「――!」

 脇目も振らず耳を塞ぎ、ドアを駆け抜け廊下に飛び出る。

 が、そんなこと許されるはずもなく、

「行かせなぁいよ!!」

 ロズワールの手のひらから巨大な火の玉が二つ射出され、スバルへ一直線に向かいそのまま――

「――約束は、守る主義なのよ」

 呟き、スバルの前に立ったのはクリーム色の髪をした少女だった。

 ベアトリスは掲げた掌を軽く振り、その火の玉を簡単にかき消した。

「まさかお前が本当に約束を守ってくれるとはな」

「約束を守っただけよ」

「どいて!ラムの……レムの仇絶対に殺してやる!!!」

 烈火のごとく怒り狂うラムの視線はスバルが逃げたドアの方に常に向いている。

「こいつは昨晩書庫に居たのよ。この一件とは関係ないわ」

「事態に重きを置くべきは既にそこにはない。ベアトリス、君もそれくらいのことは承知しているはずじゃぁないかな?」

「ごちゃごちゃうるさい」

 その一言でスバルに注意を向けていたラムでさえそれを中断しこの場に居る皆が士に視線を集める。

「とっととかかってこい。全員俺が相手してやる」

「……随分と大口を叩くねぇ。この状況が分かっているのかい?」

「ああ。分かっているさ。……だがお前が相手でも俺は引くつもりは一歩もない!!」

「……この私を誰と分かっていてそんなことを言えるなんてぇね。君は一体何者なぁんだい?」

「通りすがりの仮面ライダーだ!覚えておけ」

(ガシャン)

「変身!」

(KAMENRIDE DECADE!)

「「なっ……!」」

 士がディケイドに変身し、ライドブッカーをケンモードに戻し、ロズワールたちに向かって襲い掛かる。

 ――戦いの火蓋が切って落とされた。




やべぇ戦闘描写むず過ぎてワロエナイ。
自分感想乞食イイですか

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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