Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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タイトルがイタ過ぎますかね


第二十話 まだ見ぬ(六日目)を手に取るために

「……しょうが……ねえだろ!俺に何が……何ができるってんだ!!」

 スバルが逃げてからどれくらいの時が経ったのだろうか。

 数時間、いや数分、はたまた数秒なのかもしれない。

 だがそんなことはスバルの頭には残っていなかった。

 逃げろ。ニゲろ。ニゲツヅケロ。

 そんな本能だけで、スバルはこの時を過ごしていた。

「あんなに……楽しかった……のに!!」

 思い出されるのは、一周目と二周目の記憶だ。

 厳しくされながらも姉妹の優しさを受けていた。今となっては嘘偽りのそれすらがスバルには届かなかった。届くことはなかった。

 なぜならラムはスバルを殺す気だし、姉妹の妹の方は、もうこの世には居ないのだから。

 ――もういやだ。

 スバルがいくら繰り返したところで世界はナツキ・スバルに牙を向け続けたままだ。

 ――これ以上頑張る理由がどこにあるというのか。

 そんな考えに、浸って浸って、首元まで浸ったときに、スバルは気がついた。

「……崖」

 なんておあつらえ向きなのだろうか。

 こんな時にだけ粋な計らいをする神に感謝を。

 ナツキ・スバルには安らぎを。

「……あ……あ……あ」

 その崖を見下ろした瞬間に、自分が死ぬビジョンがはっきりとこの眼に映った。

 その時を境として、スバルの膝が震えてきた。

 最初は長い間隔で少しの揺れが。

 しかし数秒経った今は尋常でないほど膝が笑っていた。

 いや。一歩進めば全てから解放されるというのに、その一歩すら踏み出せないスバルをケタケタと、ケタケタとあざ笑っているようだった。

「おい……動けよ。……動いてくれよ!!」

 しかし膝は笑うのを止めない。

 すると次の瞬間にスバルは尻餅をつき、無駄に青く、広い空を見上げていた。

「……チクショウ!!」

 スバルは地面を叩きつけた。何度も何度も、叩きつけた。

 皮膚が破れ血が吹き出す。骨にヒビが入り始めているのが分かる。

「くそくそくそくそくそ……!!あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 情けなくて、見苦しくて、うめき声を上げながら、

 スバルは怒りをまき散らし、泣くことしかできなかった。

=================================

「……ずいぶんと無様なのよ」

 その一言で、スバルは正気を取り戻した。

「ベアト……リス」

 どうして、と言おうとしたが、それよりも速くスバルは手の痛みが無いことに気がついた。

「これ……お前が?」

「……お前があまりにも惨めで情けなかったから直しておいてやったわ」

「そうか……。ところで……どうして来てくれたんだ?俺みたいな奴のために」

「契約を守っただけよ。それ以上でも、それ以下でもないわ」

「……」

 スバルが思い出していたのは、士に半ば強引にベアトリスと契約させられた時のことだ。

 あの時確かに士は、今日の夜明けまで俺たちを守ってくれと言っていた。

 つまり契約の期間はもうすでに切れているのだ。

「……ありがとな」

「礼なら、このベティー様をこんなところまで歩かせたディケイドに言うかしら」

 その言葉を聞いたとたん、スバルの頭にある大事な人の姿が浮かんだ。

「おい!士は、士はどうなったんだ!?」

「……お前まさか気づいてないのかしら?この音に」

「え……」

 その時だった。先ほどまで働きを停止していた耳が活動を再会した。

 それと同時に耳が破壊されるほどの爆音が鳴り響いた。

「なっ……!」

 音がした方向を振り向くと、火山が噴火した時のように黒い煙が上がっていた。

「ま……さか」

「そのまさかよ。今ディケイドが戦ってるわ」

 聞きたくなかった事実を突きつけられ、ようやく立ち上がれたスバルの体が膝から崩れ落ちた。

 士は今、一人で戦っているのだ。この既に終わった世界で、一人戦っているのだ。

 何のために?

 もちろんスバルを逃がすために、だ。

「あ……ああ……」

 不意にスバルの目から大粒の涙が溢れでてきた。

 ――オレハ、ナニヲ、シテイルンダ?

 その疑問がスバルの頭をよぎる。

「俺は……逃げてきたときにあいつが無事かどうか考えたか……?」

 その答えは、たった一文字で片づく。否だ。

 スバルがあの惨劇から逃げていたときに、士のことなどこれっぽっちも頭に入ってなどいなかった。

 本当に、スバルはあの場から逃げただけ。逃げただけなのだ。

 怖かった。恐ろしかった。何が?死ぬのが、だ。

 その気持ちは士だって持っている。だけど自分だけ逃げた。逃げた逃げた逃げた。士の安否などどうでもよかった。ただ自分だけが生き残るために逃げた。

 でも士は、そんな屑のために戦っている。血を流している。死ぬほど痛い思いをしている。

 俺を、助けてくれている。

「……決まった」

「何が、とは聞いかないでおいてあげるわ。……もっとももう遅いようだけれども」

 土を踏む音。風が森を揺らす音。葉の擦れ合う音。

 その三つが重なり、反射的に振り返る。

 そこにはピンクの髪色をし、顔に憎悪を滲ませた少女が立っていた。

「見つけた。……今度は逃がさない!」

 冷静とは言えないラムの言動。彼女を突き動かすのはもうこの世にいない自分の片割れだ。

 着付けも、髪の手入れも、そんな細かいところまで全て二人でやっていたことをスバルは知っている。

「下がるかしら。契約が生きている以上、こいつを守る義務が私にはあるのよ。手加減はできないわ」

「冗談はほどほどにしてください。ベアトリス様。たとえ貴方が相手でも、手加減はしかねます」

 後一歩でも下手に進めば即戦闘になるような、緊迫した状況下で、スバルのとった行動は、

「びよーんびろーんびよーん」

 ベアトリスの豪華な二本のロールを、両手でつかみ思いっきり伸ばす。

「うーん。中々に快感ですな」

「な、な、な、」

「な?」

「何してやがるのかしら!?お前!死にたいのかしら!」

「ぶうわぁーか。死にたくなんてミジンコほどもねえよ」

 わなわなと震える少女の肩をポンポン、と叩き、憤然としているもう一人の少女の前にそびえ立つ。

「どうしたの?ようやく観念したのかしら?」

「観念とはちとちげえな。覚悟、かね。まあどっちかって言うとそんな感じだ」

「――何を」

 スバルの意図が読めずに顔をしかめるラム。

 そんなラムに、スバルは深々と頭を下げ、

「なんか、ワリィな。俺のせいでこんなことになっちまって」

「っ!やっぱり何かレムのことを!」

「いいや。俺は何も知らない。士もだ。でも――」

 言葉をそこで切り、いったんの間をおいて、

「知らない、分からないだらけのままで、俺は進んでいくよ。士を、レムを、エミリアを。皆守れるように」

「……意味が分からない!何を言っているの!レムはもういないの!もう何も、できないのよ!!」

 スバルの言葉を妄言としか受け取れないラムは、地面を蹴りつけ、スバルを先ほどよりも鋭い眼光で捕らえていた。

「それに私たちを知ったように言うのは止めて!あんたに私たちの何が分かるって言うの!」

「じゃあお前らに俺の何が分かるんだ!!」

 スバルの怒声が、森じゅうに響き、鳥たちが次々に飛び立っていく。

 その迫力にベアトリスが、そしてラムすらもが一瞬ひるんだ。

「俺は!お前らが!大好きなんだよ!!」

 面倒臭いクセに無駄に優しい姉。

 毒舌だがスバルのことを気遣ってくれる妹。

 そんな二人が大好きだった。嫌いになれるはずがなかった。

 たとえそれが、嘘偽りだったとしても。

 だから――

 ナツキ・スバルは、崖へと走り出していた。

 こんなことをしても無駄だ。あいつらは俺を信じたりしない。

 そういう気持ちもあった。いや、そういう気持ちの方が勝っていた。

 でもスバルは足を止めない。全力疾走で、死への道を、駆け抜けていく。

「ベアトリス」

「ま、待っ」

「ありがとうな!!」

 その言葉が先だったか、後だったかは分からない。

 スバルは頭から崖へと落ちていた。

「待ってー!!」

 背後、少女の甲高い悲鳴のような声が響いた。

「……んだよ。結構イイ奴じゃねえか」

 不意にスバルの目から、今日何度目か分からない涙がこぼれていた。

 覚悟を決めたつもりでも、思考は既にグチャグチャだ。

「ワリィな。士」

 それを恩人への謝罪をすることで、気を紛らわした。

 折角士が救ってくれた命だというのに、今スバルはこうしている。

「今度は俺が、救う番だ!」

 スバルが死ねば、日付と共に時間もリセットされる。

 つまり必然的に士が助かるのだ。

 その結論が出たときから、既にこうすることは決まっていた。

「ったく。とんだ運命作ってくれたもんだぜ。まさか自殺するとはな」

 しかし、これがスバルの運命だとするならば、

「とことん、抗ってやるよ!!」

 瞬間、スバルの頭が岩に打ち付けられて、砕け散った。

=================================

 ロズワール邸の庭に並んでいる二つの死体。

 その内の一つに、ある変化が生じた。

 その死体を囲うようにして、灰色の「何か」。オーロラカーテンが出現したのだ。

『――している』

 声にもう動かなくなったはずの士の耳が、ピクリと動いたのである。

『――いしている』

 次第に目、腕、足、ついには体全体が動き出し、完全に意識を取り戻したのであった。

「……ここ、は?」

 その声は、声にならなかった。

 口は、喉は、動いているというのに、声にだけはならなかった。

 それだけではなく、体全体を動かすこともできないのだ。

 まるで、体だけ時を止められているかのように。

「だ……れだ」

 目の前に立っていたのは、少女だった。

 銀髪で身長は160cmくらいだろうか。とても可愛い少女だった。

 まるでエミリアのように。

『――して、いるわ。この子と、同じ――に』

「なっ……スバル!」

 そこには、少女に膝枕され、とても安らかに眠っているスバルの姿があった。

『――たと私は――じ、よ』

 その声と同時に士の体が引き寄せられ、熱い抱擁をしてきてくれる。

 不思議にそれが嬉しかった。心地よかった。

「な……んだ?頭……が」

 突如急激な眠気が士を襲う。

 必死で抗うが、その体の内側からわき上がる睡魔には、勝つことができず、スバル同様に、眠りこけてしまった。

「――すみ。ディケ――ド」

 そのワードが士の耳に入ることは、無かった。




十点評価ありがとうございます!!

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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