すみません。次回の投稿は遅れそうです。
その後、レムが涼しい顔でバカでかい酒樽を持ち帰還した直後にガーフィールという地名か人物の名前か分からないが、とにかくロズワールが外出した。
何でも少し厄介な連絡が入ったらしく、すぐに行かなければならないんだとか。
だが士とスバルが不自然に思っているのはそこではない。
それはロズワールが屋敷を出るときに二人に耳打ちしてきた言葉の意味だ。
『――きな臭いものを感じる。私のことは構わないから……エミリア様のことだけはしぃっかり頼むよぉ?』
と、何故かメイドの双子にはそんなことを言わずに行ってしまったのだ。
「どう思う?」
「うーん。分かんねぇ」
ロズワールに対しての不信感は既にマックスを極めているが、それが今回の件でさらに高まったのは事実だ。
「でもさ、こんなことは今までなかっただろ?ってことは俺たちの行動が何か意味を成したってことだ」
「確かにそうかもしれないが……。油断はできないぞ。まだ呪術師の正体が分かってないんだからな」
スバルの言う通りこのループは士たちが通ってきたループと何一つ該当するところがない。
つまりこのループは全く想像できない方向に進んでいるという事だ。
それが吉と出るか、凶と出るかは分からない。
「二人共。無駄話ばかりしてないで仕事に集中してください」
そんな二人の会話をレムが中断しその場を仕切り始める。
「はいはい。しっかりやるよ……って。おいレム。その手の傷どうしたんだ?」
箒を持っているレムの手の甲に大きい傷があるのが見えた。何かに噛まれたような跡がある。
「これですか。先ほど村へ出かけた時に犬に噛まれまして。何も問題はありません」
「そうか。ならいいんだが」
真相が分かり安堵する士。が、それに対してスバルの表情は曇っていた。
「おーいベアトリス。いるかー?」
「……また来たのかしら」
仕事を終え風呂に入った後に、スバルはベアトリスの元を訪ねていた。
「何ですかスバル君。無理やりこんなところに……。ベアトリス様?」
「……何でここにそのメイドを連れてきたのかしら?」
「こいつが呪いに掛かってないか、調べてくれ」
話の脈を完全に無視して言うスバルの頼みごとに、一瞬驚きの表情を見せるが、
「……そんなことの為にレムは連れてこられたのですか?」
明らかに不機嫌そうな顔をするレムに、渋々読んでいた本をたたんだベアトリスが近づくとその顔が段々と疑惑の色に染まり、そして確信。
「術式の気配がある……本当に呪われているのよ」
「え?」
「おい!術式とか言う奴があるのはどこだ!」
その言葉を聞いた途端、スバルの態度が豹変する。
「ここ。右手の甲よ」
「……ッチ!レム!お前はラムと一緒に広間に居てくれ!」
その言葉を聞いた途端、入ってきたドアから跳ねるように飛び出し風呂場へと大急ぎで走る。
「あ、待つのよー!」
思えば、一度目や二度目のループもそうだった。
一度目にはスバルに傷が。二度目のループではレムに傷が。
そしてその傷がある場所はどこも――!
「士!」
「うぉ!どうしたスバル。」
士のいる使用人室へとほとんど転ぶようになりながら入る。
「急な話で悪いけど今から村へ行くぞ!呪術師の正体が分かった!」
「何だって!?本当か?」
「犬だ!」
「は?」
「犬が原因だったんだよ!」
士と共に廊下を駆け抜けながら事の事情を説明し、ラムとレムがいる広間の前へと到着。
「お前ら!話がある!」
屋敷中に聞こえるような声で言いながらドアを激しく開ける
血気逸る、そんな二人の表情になにを見たのか、ラムはその端正な表情にわずかな驚きを差し挟みつつ、
「どうしたの、バルス。ツサカ。そんなに焦って……」
「悪いがこれから村に行く。止めても無駄だし、止められても行くが、伝えないで行くのも混乱させると思ったんでな」
「村へ……? なにをしに……いえ、それ以前に、ロズワール様の言いつけを聞いていなかったの? 今夜、ラムたちは屋敷を任されているわ。その意味がわかっていないというの?」
「――レムに呪いが掛けられてた」
「え……どういうことなの、レム」
「レムにも詳しいことは分かりません。ですが……ベアトリス様が言うにはレムの手に呪術を発動させる術式があるらしいです」
話の突飛さについていけないのか、ラムが困惑したような表情を向ける。
が、その表所は瞬く間に鋭くなっていく。
「何故バルスたちはレムに呪いが掛けられていると分かったの?ろくに魔法の知識もないのに」
「信じ難い話なのは認めるし、現状で急に動き出す俺たちを信じろって言われても難しいってのもわかってる。だから無条件で見送れとは言わない」
ここからが、二人にとっても重要な分かれ道になる。
唇を舌で湿らせて、押し黙る二人に対して提案する。指を突きつけ、
「俺たちはこれから村に行く。怪しむならついてきて構わない。俺たちを見極めろ。ただし、エミリア。彼女をひとり残しては行けない。ついてくるなら片方だけだ」
「勝手な仕切りを……そもそも、ロズワール様のご命令を守るなら、スバル君たちにレムや姉様がついていく理由は……」
「ああ、ないとも。夕方のロズワールの命令を守るってだけならな。けど、ロズワールから出てる俺たちへの命令はそれだけか?」
「――――」
痛いところを突かれたかのように言葉を見失うレム。
このメイドたちは基本的にロズワールの命令に忠実だ。
そしてこの二人がロズワールから、二人の立ち位置に関して監視するよう命令を受けている。あの夜の密会の内容を士が教えてくれて分かっていた。
なおもレムは反論の言葉を探すように視線をさまよわせるが、それより先に吐息で話の流れを割ったのはラムの方だった。
彼女は小さく手を上げ、
「分かったわ。あなたたち二人に外出の許可を与える」
「姉様!?」
あっさりと白旗を上げてみせる姉の態度にレムは愕然。が、そんな妹の方にも上げた掌を向けて、ラムは「ただし」と言葉を続ける。
「監視役として、レムがついていく。それでいいわよね?」
「ああ。大丈夫だ」
同意の言葉でラムの
さくため息をこぼすラムは、話に置いていかれ気味の妹に振り返り、
「レム、そういうことだからお願い。ベアトリス様への確認と、エミリア様の方はラムが守るわ。――そっちのことも、ちゃんと視てるから」
「……分かりました」
「よし、行くぞ。事態は刻一刻を争うからな」
それからまだ納得していない風なレムを引き連れ、スバルたちの足は玄関ドアを開け、村へと走り出した。
「スバル君。詳しい事情を聴きたいのですが」
「呪術師が村にいる。ベアトリスに解呪してもらったけど、村に立ち寄ったレムでさえ呪いをかけられてたぐらいだ。――下手すると、村が壊滅するかもわからねぇ」
「本当ですか?」
「それに犯人は動物だ。理性のある人間とかならともかく、動物は見境なく人を襲う。つまり――」
「どこまで被害が広がっているか分からない。と」
「そういう事だ」
ここでいつもなら士が軽口を叩く場面だが、今ばかりはそうも行っていられない。
本当に今回は多数の人の命がかかっていることを理解していたからだ。
そしてレムも事の重大さを飲み込んだのか無言でついてくる。
「それにしてもスバル。お前何で呪術師の正体に気づいた?」
「手の傷だよ。一回目の時に俺の手に傷があったの覚えてるだろ?」
「……確かにそうだな」
あまり気にしてはいなかったが、確かにスバルの手に傷があったのは記憶の片隅にある。
「そして二回目もレムの手に傷があったんだと思う。そして今回も。だから分かった。そんだけ」
いつものスバルからは考えられないような推理を見せ、そこからは三人共終始無言で遠く、木々の向こうにある村を目指し、夜闇を切り裂いていった。
かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?
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