Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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第二十六話 鬼

「アァァァァァ……」

 魔獣を従えている異形の存在。あの少女がどうしてこんな化け物になってしまったのか。先ほどの時計は何なのだ。そんな風に疑問は尽きない。だが、最初にでた言葉は、

「おい士……何なんだよ、あれ!」

 あの存在は何なのだ、という単純で明快な疑問だった。

「見たことがある気はするが……よく分からん。……とにかく逃げるぞ!」

 それを見たとき、士の頭に謎の既視感がよぎったが、今はそんなことを気にしてる場合ではない。

 あの異形を視界に入れたときに、本能が訴えかけたのだ。あいつは危険だ、と。

 それほどまでに怪物が放つオーラのようなものはすさまじかった。

 しかしレムだけは違う。臆することなく鋭い視線で目の前の化け物を見据え、顔に明確な怒りの感情を張り付ける。

「強烈な……魔女の香り!」

 何がそこまでレムを突き動かすのかは分からない。レムは鉄球を振り回し、アナザーゴーストへと一直線に向かっていく。

 その一撃をまともに喰らえば無事ではすまないことは周りに転がっている魔獣の惨殺死体を目にすれば分かる。

 しかし――

「コノテイド、カ」

 その異形は、その場から身じろぎすることも慌てることもなく、ノールックで鉄球を軽々と受け止めた。しかも片手で、だ。

「え」

 直後、レムが鋭利な爪で切り裂かれ、夜空に高くその体を打ち上げていた。

「レムーーッ!!」

 宙を舞うその小さい体をスバルが何とか受け止め、体の状態を確かめる。

 悲惨、そのものだった。

 スバルが目で確認できたものでも、数え切れないほどの裂傷があった。白色で全体的に構成されているメイド服は、元の色が何か識別できないほどに赤く染まっている。それがレムの血なのか、魔獣たちの血なのかすら識別ができない。それほどに返り血も、出血も酷い状態だった。

 意識は完全に途絶え、息も絶え絶えになっている。

「レム、嘘だろ。おい、おい!」

「ッチ!」

 士の正体がバレた時のリスクを考慮して、ここまで変身するのを止めていたが、この状況ではそうも言っていられない。

 すばやくベルトを腰に巻きカードをバックルに入れ、ディケイドへと姿を変える。

「スバル!レムを連れて行け!ここは俺がくい止める!」

「あぁ……分かった!」

 悲観的な表情を浮かべながら、異様に軽いその体を腕に抱え、スバルは村へと戻る道を走り始める。

「イカセル、カァ!」

 それを怪物が見逃すはずもなく、何体か魔獣をスバルが走っていった方向へ向かわせる。

「お前の相手は俺だ!」

(ATTACK RIDE BLAST!)

 丸いエネルギー弾が次々と放たれ魔獣たちの頭を打ち抜く。

 頭から血を噴き出し絶命する魔獣を見て、アナザーゴーストが金切り声で悲鳴をあげる。

「ア、アァァァァァァ!ワタシノ、イヌタチガァァァァ!」

「おら、余所見してんじゃねぇ!」

 ガンモードによる銃撃をアナザーゴーストに何度も繰り返す。

 それにより怯んでいる隙にいっきに距離を詰め、強烈なパンチを体に何発か打ち込む。

「ユルサナイィィィィィィ!コロス!コロス!」

「くっ……。自分が行けって言ってたくせに、勝手な飼い主だな!」

 まけじと怪物も打撃を繰り出すがそれを腕を胸の前でクロスさせることによりガード。

 連撃を受けきりすかさず攻撃に転じる。

「はぁ!」

「ガァ!」

 腹に拳を叩き入れ、体制が崩れるや否や、ソードモードに切り替えたライドブッカーで怪物を上からナナメに切り裂く。もちろん怪物も反撃に転じてくるが、それを冷静にかわし受け止め、逆に蹴りをかます。

「……ハァ。オマエモコンナモノカ。ディケイド」

 少しだけ先ほどの場所から後退したところで飛ばされたその体が止まり、負け惜しみともとれる言葉を放つ。

「そうか。ならこれで一気に終わらせてやる!」

(FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!)

 必殺技(ディメンションキック)を発動。アナザーゴーストは防ぐこともせずにそのキックを身で受ける。

 当然その体は大きく後ろへと飛び、木々を何本もへし折りようやく止まる。

 それを見て奴が倒れたと確信した士は、変身を解こうとベルトに手を当てる。

 が、

「ドウシタァ?」

「なっ……!?」

 肩をならし、何事も無かったかのように立ち上がりこちらにゆっくりと近づくアナザーゴースト。

 それに士は謎の違和感を覚えていた。

 今だけの攻撃だけでもかなりのダメージを与えられているはずだ。現に士の拳は奴に何回もクリーンヒットし、怪物は何度か苦しそうなうめき声を上げている。

 そこへトドメとなるディメンションキックを打ち込んでも、奴は何故か何事も無かったかのように立ち上がった。

 まるでダメージを受けていないかのように。

「ガァァァァ!」

「ッ!?うぉあ!」

 いつの間にか目の前にいたアナザーゴーストに、今度は士が顔を殴られ後ろへ飛ぶ。

 数十mほどまで飛ばされた所で足に力を入れ、踏みとどまり体制を立て直すと同時に、思考を再始動させる。

 どうすればいい?

 仮にダメージが入っていないと言うのらばどうすればダメージを与えられる?

 そうやって思考を張り巡らせている内に、ふと先ほど感じていた既視感の正体について思い出した。

(そう言えば……あいつと戦ったときに、確かこんな感じの奴がいた気が……)

 それはあの時に見た謎の夢。

 鳴滝と雰囲気の似ている男が怪物を引き連れ、士を襲撃してきたあの夢だ。

(それにアナザーライダーは同じライダーの力でしか倒せないって言っていた気もするが……)

 しかしあれは士の見たただの夢だ。そのためその言葉の真偽は分からない。

 ただ、ダメージが通らない以上、

「試さない手はない、か!」

 ライドブッカーからゴーストのカードを取りだそうとした。その時――。

 上から魔獣の死体と一緒に、赤いメイド服を身にまとっているレムが、上から拳を振り下ろ士を襲撃した。

 それが体に触れる直前にその場から飛び退き、ギリギリその一撃を回避する。

「レム!無事だった……」

「ディケイド!ディケイド!ディケイド!」

 が、レムは普通の状態ではなかった。

 前髪の隙間から遠くからでも分かるほど大きな、月に照らされて白く輝く角が見えてる。

 それは鬼、だった。

「レム!落ち着け、俺だ。士だ――!?」

 士の説得が耳に入っていないかのように、レムがとてつもない速さで接近。強烈なボディーブローを入れる。

「っく……!」

 アナザーゴーストに殴られたときの比ではないスピードで飛ばされ、後ろにあった大木に激突し止まった。

 その衝撃はとてつもないもので、それを受け止めた両腕がジンジンと痺れ、ライドブッカーをポトリと落としてしまう。

 骨を砕く一撃なんてレベルじゃない。あれをまともに喰らえば士とて無事ではいられないだろう。

「あは、あははははは。殺す、殺す!」

 笑い声。それはまるで童女のような可愛げを少し残していたが、大部分が残酷で支配されていた。

「正気を失ってんのか……?」

「士!」

 その事実に気がついたとき、後ろから士の名前を呼ぶ声が聞こえた。スバルだ。

「スバル逃げろ!レムがおかしくなった!」

「俺も知ってる!士こそ前見ろ!」

 スバルと会話している隙を今のレムが見逃すはずはなく、士に向かって猪突猛進。

 それを好機と考えたのか、魔獣がレムに向かって走る。

 次に瞬きをした時に、その体はぐちゃぐちゃの挽き肉と化していた。

「キサマ、モ。ユル、サナイ!」

「魔女!魔女!魔女!」

 怪物と鬼の拳がぶつかり合い、衝撃波が風となり森の木々を揺らす。

 そんな勝負にも関係なく魔獣は捨て身の覚悟でレムにダメージを与えにいく。

 死体が一つ増える度にレムの傷も一つ増えていく。

 一見互角に見えるが、実際は魔獣の乱入があるためレムが不利だ。

「どういうことだ。どうしてレムがあんな状態になった!」

「俺にも分かんねえよ!ただ村に戻る道の途中に魔獣にまた襲われて……そこからずっとこんな感じなんだ!」

 狂気に包まれているレムの戦いを、二人は今見守ることしかできない。

 下手に突っ込めば、怪物と鬼を二人とも敵に回し、自分たちがあの魔獣の死体のようになってしまうのが分かっているからだ。

「……段々押され始めてきたぞ……!」

 元より多勢に無勢なのだ。いくら無双モードのレムと言えど、無限に沸いてくる敵にはどうすることもできない。

 そんなときだった。

 レムがアナザーゴーストにトドメをさそうとして鉄球を振りかぶり、一瞬力を貯めるために制止しているのが見えた。

「マズい!」

「お、おい!スバル!」

 レムの判断ミスを見逃さずに、さっきまで息を潜めていた魔獣たちが一斉に飛びかかる。

 それはスバルも同じだった。

 考えるよりも速く、スバルはレムの背中を押した。

 突如として訪れた衝撃に息を呑み、レムの表情が驚きで強張り、光を失っていた目が綺麗な元の青色へと戻っていく。

 直後、スバルの伸ばした腕が魔獣たちに噛み砕かれた。

「がぁ……ッ!」

 次に左のわき腹に、右の足に、背中に、牙が突き刺さる。血がボトボトと落ちる感覚。肉が削がれていく感触。目の前が真っ赤に染まっていく。

「スバル君ーーー!」

「クソッ!」

 悲鳴のような声の後に、銃声がスバルの耳の中に入ってきた。

 その方を見ようとしても体が動かせない。体が地面へと吸い込まれるように倒れる。足の骨が噛み砕かれたからだ。

 先ほどの士の銃撃で倒れている魔獣の死体と目があった。

 真っ赤になっていく視界の隙間から、喉笛に噛みつこうとしてきた魔獣の頭がぐちゃりと潰れたのが見えた。

 その赤色が自分の血なのか返り血なのかすら分からない。

 不意に体が担がれる感触があった。

 触られている部分がとても温かかった。

「死なないで、死なないで、死なないでーー!」

 薄れゆく意識の中でそんな言葉が聞こえて、ぷつりと途絶えた。

 

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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