Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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物語の展開上スバルがかなり強いです。すみません


第三十話 決着。

 そんなくだらないスバルの覚悟に耳を傾けているほど魔獣は優しくはない。

 右爪が突如として振りかざされ、スバルの脳天へと落とされる。

 それを剣を使い全力で横殴りにし、軌道をギリギリのところでずらすことに成功。

 しかし力の差があり過ぎるため衝撃が体全体を走り、剣を持つ手が尋常じゃないほど痺れる。

 が些細なことと割り切って魔獣の頭部へと攻撃を仕掛けようと試みるが、

「――――!」

 魔獣が出した咆哮によって体がすくみ、一瞬だけ身動きが止まる。

 マズイ、そう判断した時にはもう遅く、体は横へと左の前足で虫のように飛ばされていた。

「がぁっ!」

 地面にバウンドしながら何度も回転し、木に背中から衝突。パキリと胸の辺りから嫌な音が鳴ったのと鈍い痛みを感じて、あばら骨が何本かイカれたのが分かった。

「あぁっ……いてぇ……」

 今までの人生経験の中で一番と言える痛みを浴び体が小刻みに震えはじめ、手から剣が力なくぽとりと落ちた。

 もちろん痛みが引くのを魔獣が待ってくれるはずもなく、無残にもスバルへと大きな口が近づけられ、月に反射して怪しく輝いている大きな二つの牙がスバルの体に――。

「おるぁ!」

「――!?」

 そうはさせるか、と地面の砂を一握りし口と一緒に近づいてきた目玉に撒いてから鉄拳をそのまま魔獣の眼球に打ち込む。

 声にならない叫び声が森中に木霊し、身をよじらせながら絶叫する魔獣。

その隙を逃さぬようにすぐさま立ち上がり、剣を最短時間で構え魔獣の前足を力いっぱいに剣を横に振って切り裂く。

 が、しかし、

「手ごたえが……ねぇ!」

 魔獣の固すぎる筋肉の前には鋼の剣とスバルの筋力では皮一枚を切るだけが精一杯。絶好のチャンスを逃すことになってしまうが、リスクの方が高いため泣く泣く魔獣の爪が当たらない所まで距離をとる。

 大きく、血で一部分染まっている黄色い目がギロリとスバルを睨んでいた。スバルが与えた生半可なダメージが魔獣の逆鱗に触れたのだろう。荒い息をたてて威圧感を強め、怒りをあらわにしている。だがそれに怯えて立ち止まるわけには行かない。

「――――!」

「おおおおおおおお!!」

 こけおどしとは分かっているが、魔獣の放つプレッシャーに気圧されないためにスバルも魔獣と一緒に叫び、一心不乱に突進。

 当然、自分に危害を加えようとしてくる害虫を間合いにみすみす入れてくれるはずもなく、爪をスバルへ向け一閃。

 先ほどよりも素早く、力強い一撃。もし少しでもカスってしまえば、スバル程度なら軽々と絶命してしまうだろう。

 だがスバルは慌てずに、万が一爪が頭に当たらないように剣を頭に当てすぐさまスライディング。昨日の士の要領で魔獣の下へと潜り込んだ。

 丁度、下腹の真ん中まで来たところで剣を縦に直し、地面に滑る勢いに乗ったまま全力で突き立てる。

 手から剣がもぎ取られそうになるがそれをこらえ、魔獣の後ろへと飛び出す。

 スバルが通った場所は肉が引き裂けており、血液が地面に滴りその水面に痛々しい傷口を映していた。

「今度は、手ごたえありだ……!」

 もしかしたらあの策を使わずともイケるのでは。そう思った矢先に、

「は――」

 突如としてスバルを襲った衝撃。朦朧な意識を全力で魔獣の方へと傾けると、スバルを空中へ弾き飛ばしたものの正体が分かった。

 地面から何の脈絡もなく生えてきた巨大な岩がスバルを空へと飛ばしたのだ。

 それが魔獣の魔法だと言うことを理解する前に地面へと墜落。さいわい地盤が他と比べて緩く左腕を下にして落下したため、頭蓋が砕けるということにはならなかったが、代わりに左手が使い物にならなくなってしまった。

「がぁぁぁぁぁぁ!!」

 さらに折れていたあばら骨に振動が伝わり、腕の痛みと合わせて二乗ほどの痛みが電撃のように体中を駆け抜ける。

 痛みにのたうち回って絶叫するスバル。それを怒りの形相で見下しているウルガルム。

 だがその痛みを何とか腹の中へと押し込み、落としてしまっていた剣を右手だけで握り締める。

 苦痛の吐息を漏らしながらも、立ち上がり、しっかりと魔獣を見据え、

「やっぱ……あれしかねぇよな」

 本当に一か八かのギャンブル。失敗すれば百%死に、成功したとしても助かる確率は低くよくて五分五分程度。さらには成功する確率は五分五分以下だとスバルは考える。

「って言ってビビってられっかよ……!」

 ポケットに手を突っ込み、あるものを取り出し、それを口腔内へと入れる。 

 奥歯を噛みしめ、全身の力と全ての集中力をへその少し下へと向かわせる。

 心臓の鼓動。血管を通る血液の感覚。へその下に門のようなものを強くイメージ。

 流せ、流せ、自身の全てをそこへと集めろ!

 魔獣が叫ぶ。凶器がスバルの体を八つ裂きにしようと飛んでくる。

 まだだ、もっと近くに来い!

 本当にそれは一秒にも満たない時間。スバルの四肢へと鋭い爪が触れる直前。

「シャマアァァァァァァク!!」

 負け犬は、そう吠えた。

 魔獣の視界は一瞬で闇に覆われ、包まれ、手負いの獣の姿が魔獣の眼球の中から消え去る。

 だが先ほど振った自身の前足は、確かにスバルを捉え、直撃した。

 そんな思考をしていると、突然目の中へと月の明かりが飛び込んできて、視界が晴れる。

 目の前を見やるとその場にはもうスバルはおらず、ただスバルのものと思われる左手がことりと落ちていた。

 断面からは血が弱々しく流れ地面を伝い、ひくひくと少しだけ疼いている。

 獲物の左手を刈り取った。その事実が魔獣の頭を巡った時、魔獣は勝利を確信し咆哮を森中へ轟かせた。

 

 

 

「すば、るくん……」

 その戦いを外から傍観しているレム。動かない体とは逆に、その視線はスバルの勇姿を一秒たりとも逃すまいと食い入るように動いている。

 これほど何かに必死になっている妹を始めてみたラムは、それを邪魔することはなく、もしもの場合すぐに逃げ出せるよう周囲の警戒をしている。

 だがラムにもほとんどマナが残っておらず、スバルの加勢に行くことは難しい。

 加えて魔獣の残党はまだいるかもしれないという状況。

 それほどの危機だというのにレムはスバルをじっと見つめている。

 レムをこれほどまでに引きつけるものは何なのか。それはスバルにも分からないし、レムにもよく分かっていない。

 だが、レムはこの戦いを見届ける義務がある。

 その異常ともとれる思考がどこから湧いてきたのか、はたまた本能的なものなのか。それすらも理解できていない。

 しかし、そんなことが分からなくてもどんな些細な問題にすらなりはしない。

 今必要な事実は、スバルが二人を守るために奮闘している。それだけでいいのだから。

 そんな考えに浸って一瞬目を離した隙に、状況は一変していた。

 魔獣に一撃を入れ、股下から飛び出てきたスバルに、容赦のない前足での横殴りが炸裂。貧弱な体が横へ横へと飛ばされる。

「がぁぁぁぁぁぁ!」

 スバルの悲愴な叫び声が、レムの耳に木霊する。

 それを目に入れた瞬間、自分の体が傷だらけだということも忘れて、走りだそうとして、体がギシギシと音を立てて痛みが体を走る。

 しかしこの程度スバルの感じている痛みなどと比べものにならないと頭では考えるのだが、体はそんな無茶無謀には付き合ってはくれずに、動いてくれない。そして自分の不甲斐なさを実感する。

 そして数秒後に、自分の不甲斐なさが最悪の結末を招いたのかを痛感することになる。

「シャマアァァァァァァク!!」

 捨て身の覚悟で魔法を唱えるスバル。

 残り少ないマナで絞り出した魔法は、魔獣の頭部とスバルの姿を包み、闇の世界へと引きずり込んだ。

 しかし、マナの量が少なかったのか、はたまた魔法が効力を成さなかったのか。

 スバルの体は、宙に打ち上げられていた。

「あ」

 そんな言葉がレムから漏れ出し、絶望の感情に飲み込まれていく。

 目からは光が失われ無機質に月の明かりに照らされ、左腕を失ったスバルを写し、表情は呆然としたようなものへと変化。

 小刻みに震えている手を無意識の内に前へと突き出し、ただ彼の名前を壊れたおもちゃのように何回も呟く。

「す、ば……スバル君!!」

 涙を滝のように流しながらレムは、自分の無力さを悔やみ、嘆き、絶叫した。

 だが、レムはうっすらとだが、視界の隅に確かにとらえた。

 スバルの口元が、二ヤリと不適に笑う形になったのを。

 その瞬間、魔獣の頭部から鮮血が噴き出し、巨大な体躯を揺らし、地面に伏した。

 

 

 

 真っ黒な世界の中には、理解など存在していない。

 ただ自分が地面にも天にもつくことはなく、中間地点でふわふわと浮遊している事実だけがそこにはあった。

 どちらが右左で、上下さえも分からない世界。不気味なほどに軽い左半身。左腕の付け根の部分から、自分の体液が漏れ出しているような感覚。それが体外へと出て行く度に、自分の体から熱が奪われていく。

 熱が奪われていく度に、何だか体の芯が心地よくなってくる。

 体の芯が心地よくなっていく度に、自分の体がだんだん軽くなってゆく。

 もう、いい、のか?

 ああ、もう、いいんだ。

 それを拒むことを拒み、それに身を委ね、どんどん上り詰めて行こうとしたその時、

『スバル君!!』

 どこからともなく声が聞こえたと思ったら、先ほどまで開かなかった目が開き、体の自由が戻ってくる。

「がっ!?」

 何ともなかった左腕の付け根が急激に痛み始め、急いで視線をそこへと向けると、そこに左腕は存在していなかった。

 その痛みが、スバルを現実世界へと引き戻すトリガーとなり、次の瞬間には意識が完全に覚醒し、瞳に月の光を映した。

 そして自分が自由落下していることに気が付き、ふと落下点を見やると、こちらを全く警戒せずに勝ちを確信しているであろうウルガルムがいた。

 その確信が満身へとつながり、ボロ雑巾のようなスバルが生きていると、思ってもいない。

 さらにそんな隙だらけの魔獣が、頭部をさらけ出して真下に来ている。

 これ以上のチャンスもなければ、これ以降のチャンスを迎える体力もすでにありはしない。

 苦虫を噛みきるように奥歯を噛みしめると、魔法を使った反動で動かない体にほんの少しだけ活力がみなぎる。

 士から貰った、ボッコの実だ。

 ただ体が動くようになったからといって、激痛が引くわけではないが、そんなことを言ってられる状況でもない。

 振りかぶり、剣を渾身の力を加えて構える。

「見ろよ、レム」

 スバルの視界はレムを映してはいなかったが、なぜかレムがスバルの姿を見ているのが、不思議と理解できる。

 魔獣の脳天まで後3秒ほどで着く所で、スバルは口元をにやけさせ、

「今日の俺、サイコーに鬼がかってやがるぜ」

 そのまま剣を横一線に振るい、長いようで短い戦いに、終止符を打った。

 

 

 

 

「フッ!ハアッ!」

「ガァッ!」

 ディケイドゴーストとアナザーゴーストのぶつかり合いは、最終局面へと向かっていた。

 先ほど士がアナザーゴーストへと放った一撃から、流れを完全に士が制していた。

 アナザーゴーストがパンチを繰り出すのなら、それを受け止めてキックをかまし、ガンガンセイバーで切り裂いてこようものならば、それをガンガンセイバーとライドブッカーで受け止めて、その二本で横に斬る。

(ナゼダ、ナゼダナゼダナゼダ!)

 なぜ奴はこうも強いのだ。マナを常時吸われ、体もすでに満身創痍。

(ナノニナノニナノニ!)

「ガァァァァッ!」

「っく!」

 ディケイドゴーストの体に強い蹴りを入れ、距離が空いた瞬間眼魂を装着。

(カイガン、ムサシ)

 アナザーゴースト、ムサシ魂に変化したことにより、メインのカラーが赤色に変化するのと同時に、その形態に適した形にガンガンセイバーが変化。

 それに加え、肩に装着された(ハガネノタスキ)により、肩の動きが最適化される。スピードが上乗せされ剣筋がさらに鋭くなり、今までよりも素早い斬撃が繰り出される。

 いきなりスピードが変化したことにより対応が一瞬だが遅れ、攻撃をくらってしまうが、二回目に振られた剣を掴み、その握力で握りつぶす。

「ナッ……」

「オラァ!」

 アナザーゴーストが動揺した隙を逃さずに、すかさず鉄拳を士が打ち込み、よろけたところへ二本の剣を槍のように突き出して、アナザーゴーストの胴体に突き立てる。

「ギャアァァァァァァ!」

 その剣は体に深々と突き刺さり、痛みと苦しみの入り交じった叫びをあげ、口から黒い血を吐き出し、地面に頭をつける。

 ここで決める。そう思いライドブッカーからカードを取り出した時だった。

「かっ……あ」

 体の悪寒と頭痛が急激に加速し、立っていられないほどの激痛が走る。

 指先からだんだんと熱が失われていき、最終的には四肢から体温が消え失せた感覚が士を襲い、その場に倒れ伏してしまった。

「この……大事なときに……!」

 恐らく体中のマナが全て吸収されてしまったのだろう。

 先ほどのように気合いで立ち上がることも、本当に腕を動かすことすらもできない。

「ハァ、ハァ、フフフ……ハァ!」

 いつの間にか立ち上がっていたアナザーゴーストが体に刺さっていた剣を抜き、士に剣先を向けていた。

「ザンネンダッタナ。ヤハリアノガキハワタシノイヌヲタオセナカッタヨウダ、ナ!」

 士の頭部を左の腕で鷲掴みにし、ぶらりと垂れ下がりになった士の体をライドブッカーで切り裂き、殴り、ズタズタにしていく。

 頭部の複眼の部分が砕け、士の今にも気を失いそうな虚ろな瞳が夜空の月に照らされている。

 手の先からはスーツから漏れた血液が地面にピチョンと、その残酷な見た目に合わない風流な音を出している。

 ドライバーへと手を当て、レバーの部分を引き、それを押し戻す。

(ダイカイガン)

「ワタシノカチダ!」

 ドライバーから、勝利を宣言する低い音声が流れ、アナザーゴーストの背後に大きな黒い目玉のエンブレムが浮かび、そこから出てくる黒の光がアナザーゴーストの右手にそれがまとわりつく。

 後ろに右手を引き、それが勢いよく前に射出され、士の命が刈り取られる寸前――。

「ガァ……ッ、ガァァァァァ!!」

 士に命中する前にアナザーゴーストの体内を電流のような何かが走り、人魂のようなものが二つ体内より湧き出てくる。スバルと士から奪ったマナの塊だ。

 その内の一つは森の奥へと飛び、もう一個は士の体内へと潜り込んでいった。

 すると先ほどまで死体のように冷たかった四肢に熱が戻り、自由に体を動かせるようになる。

 自分の頭部を力強く掴んでいる手をそれ以上の力で握りしめ、アナザーゴーストの腹部へと拳を打ち込む。

「いい加減……この手を放せ!」

 ライドブッカーをその手から乱暴に奪い取り、先ほど剣を突き立てた所にもう一度剣を挿入し、体内をぐちゃぐちゃにかき回す。

 声にならない悲鳴を出して悶絶するアナザーゴーストを両足で蹴り、後ろの大木まで勢いよく吹き飛ばす。

「フザ、ケルナ……フザケルナァァァ!」

 頭を振って必死に魔獣たちが全て殲滅された事実を頑なに認めないアナザーゴースト。

「ナゼダ!ナゼアンナゴミドモニ、イヌタチガヤラレタ!アリエナイ、アリエナイィィィィ!!」

 あのガキは雑魚だ。いや、雑魚だったはずだ。犬一匹すら殺せないような雑魚だった!なのにどうして!

 ふざけるなふざけるなふざけるな!

「そうだろうな」

 怒りに震えているアナザーゴーストを突き放すような士の一言。

「お前には分からない。いや、分かるはずがない」

「ナニガダ!!」

「お前は、仲間と呼べる存在はいない。あの魔獣共だって、お前はただの道具としてしか扱ってない。だが俺は信じた。あの大バカを……ナツキ・スバルという可能性を!」

(FINALATTACKRIDE GOGOGOGOSHT!)

「人の可能性は……無限大だ!」

「ダマレェェェェェ!!」

(ダイカイガン。オメガ、ドライブ!)

 オレンジ色の大目玉と、黒色の大目玉が二人の幽霊の背後に生み出される。

 皆を照らす明るい色と皆を絶望へと叩き落とす色。

 相反する二つの存在が二人の足にまとわりつき、それらが全て足に吸い込まれたときにふわりと宙へと浮かび上がる。

 最大高度に到達したところで、両者は足の裏側を相手へと向け、そして、中心地でぶつかり合う。

 すさまじいエネルギーのぶつかり合い。それにより生み出される激しい閃光。それが闇に溶けて消えた時。二人はお互い反対の場所に立っていた。

「……コレガ、『ヒト』ノカノウセイカ……」

 今度は士ではなく偽物の影が横に倒れ、その身が爆発四散した。

 その爆発の後には、クリスタルのような黒い結晶の破片ととおさげの少女の遺体が力なく転がっていた。

 こうして、この事件は二人の英雄によって完全に終結したのである。




後一話で二章終了です。後日これも書き直します。番外編は四月一日投稿予定です。お楽しみに。

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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