Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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第五話

 エルザに放たれたそれらは盗品蔵の床に突き刺さり、黒い煙を上げる。

 氷の射出速度はスバルに当たった速度をゆうに超え、スバルの常識からすればメジャー級を上回ってゲームでしか見れない球速を叩き出していたように思う。

 本来ならば人体を易々と貫通し、絶命は免れない攻撃。

「やりおったか!?」

「何で今そのフラグを建てたーー!?」

 ここまで沈黙を守っていたくせに、肝心なタイミングで口を挟んだ禿頭。

 それに対するスバルの叫びに呼応するように、

「あら、危ないわねぇ。おかげで私の周りに張っていた魔力防御壁が消し飛んじゃったわ。」

「ッチ。死亡フラグってホントにあるもんなんだな!」

 すぐさまライドブッカーから次々と弾を放つが、全てナイフによりはじかれ、殺人鬼に当たる前に消滅してしまう。

「凄いね君。あの攻撃を耐えるなんて。女の子にしては常人の域を超えてるよ」

「あーら、私を女の子扱いしてくれるの。とっても嬉しいわ!!」

 再びナイフを投擲。サテラの首へと一直線に飛んでいく。

「そんなことしてもナイフがなくなっていくだけだよ」

 また乾いた音が響き、ナイフが上に飛ぶ。

「……本命はそっちじゃないの!!」

 それを読んでいたのか、殺人鬼は地面に落ちる寸前のナイフを掴み、異様に低い姿勢でサテラに斬りかかる。

 しかし、サテラの腹を突き刺す前にその動きが静止した。

「な……?」

「僕は砕けた氷も操れるんだ。足元をごらんよ」

 見るとエルザの足は氷によってボロボロの床とくっついており、一歩も動けない状況になっていた。

 しかしそれも一瞬の出来事。瞬時にエルザは氷を砕きサテラに突っ込む。

「その隙があれば十分だよ!!」

 氷の槍が一本作られ、勢いよく射出。その勢いで殺人鬼を壁に叩きつける。

 それを見逃さず、士もその場所に次々と弾を撃ち込むが、手ごたえはない。

「……凄すぎるだろ、全員」

 その戦いを呆然と見るしかないスバル。

「おいスバル!どっかに隠れておけ!お前が死んだら困る」

「お、おう!」

「……お主何をしとるんじゃ?」

「隠れろって言われたから隠れてるだけだよ。……しかしこのままだとMP切れで負けちまうんじゃねーか?」

 攻守が入れ替わる展開を思い描き、スバルは長期戦になる不利を訴える。

 しかし、そんな不安に首を横に振るのはロム爺だ。

「えむぴーとやらがなにかはわからんが、精霊使いの戦いでマナが切れる心配はいらん」

「マナが切れる心配がないっつーのは……」

「魔法使いと違って、精霊使いが使うのは己の中でなく、外にあるマナじゃからな。世界が枯渇しない限り、精霊使いに弾切れは存在せん」

「何それチートじゃん」

 余りにも規格外すぎるサテラのスペックに、呆然とするしかないスバル。

「ただし精霊がいつまで顕現できるか、はまた話が別じゃ。精霊抜きじゃと、一気に形勢が傾くかもしれんぞ」

「そうか……。って、それヤバいじゃねえか!」

 体感にして恐らくそろそろパックが消えてしまう時間だ。戦闘開始からそれほど時間は経過していないが、これだけ魔法戦をやらかせば溜め込んでいたマナとやらも盛大に使っているのではあるまいか。

 そんなスバルの不安は、

「あ。マズイ。眠くなってきちゃった」

「ちょっとパック!しっかりしてよ!」

「……ハッ!寝てないよ。うん、全然寝てない」

「何かヤバい話してない!?」

 的中してしまったらしい。

 パックがだいぶうつらうつらとしてきたのか、小猫を肩に乗せる少女の表情からも焦りの色がうかがえる。

「あら?消えちゃうの?残念」

「よそ見すんな!」

 ライドブッカーをソードモードに切り替え、殺人鬼の背中を切り裂こうとするが、腹に回し蹴りをくらい尻もちをついて倒れてしまう。

「ッツ……」

「邪魔」

 士の首筋から5cm程の至近距離に、銀色に輝くナイフが突きつけられている。

 それが振り上げられ――。

「……あら。まだこんなことができたの」

 士に振り上げられていたナイフを持っている手は盗品蔵の壁と氷で繋がっており、身動きが取れなくなっている。

「これで、さっきの借りは返したからね?後、離れないと危ないよ?」

「……言われなくてもわかってるよ!」

 床を勢いよく蹴って殺人鬼から十分な距離を取る。

 胸を張り、少女の肩の上でパックの小さな体が小刻みに揺れる。

 まるで必殺技でも放つかのようなポージング、両手が前に突き出され、そこからこれまでで最大級の魔力が集中――照射される。

 直撃を受ければ人間すらも氷像となるのは免れない。

 だが――

「……おいおい」

「嘘……だろ?」

「嘘じゃないわよ。ああ、素敵。死んじゃうかと思ったわ」

 その攻撃が直撃していれば、の話だ。

「……そういうのはボク感心しないなぁ」

 奥の手をかわされた形になったパックだが、その言葉には言葉面以上の怒りなどは含まれていない。純粋に、行為自体に不満を抱いている口調だ。

 凍った床の上に滴っている血が見えた。

 血の発生源はエルザの右手だ。氷結魔法の射線上からわずかに離れている彼女からはおびただしい出血が見られる。

 それは当然だろう。なにせ彼女の右手の指先は、ばっさり削がれているのだから。

「早まって全て切り落とすところだったのだけれど、危ういところだったわ」

「パック、いける?」

「ごめん、スゴイ眠い。ちょっと舐めてかかってた。マナ切れで消えちゃう」

 パックの体が淡く光りはじめる。

 それはもう少しで消滅してしまう、という前兆だ。

「あとはこっちでどうにかするから、今は休んで。ありがとね」

「君になにかあれば、ボクは盟約に従う。――いざとなったら、オドを絞り出してでもボクを呼び出すんだよ」

 慈しむ偽サテラの声に押されるように、パックの体がふいに霧状と化して消える。

「あらぁ。精霊さん消えちゃったの、残念ね。まぁ後何人かいるし、それで我慢しますか」

 絶望の第二ラウンドの幕が切って落とされた。

 

 

 

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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