Re:ゼロから始める世界の破壊者   作:muryoku

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サブタイここだけしかないの許してください


第六話 変身!

「……フェルト。備えておけ。いつまでもこうしちゃおけん」

「オーケー。ロム爺」

 最初のエルザの恫喝からここまで、一言も口を利いていなかったフェルト。

 棍棒を構えているロム爺の隣に立つと、不意にスバルの方を見て、

「さっきは……あんがとな」

「あ?」

「ちょっとだけだけどな。っつか、ガキとか言うんじゃねーよ。アタシはこれでも十五だ。兄ちゃんとほとんど変わんねーだろ」

「……俺はもう18だ。結婚もできんだぞ」

「見えねー!もうちょっと顔に人生刻んどけよ」

 覚悟を決めた二人が戦局を見守るのを、スバルはただ見ているしかない。

 おそらく、この場でもっとも戦闘力がないのが自分なのだ。欠けているのが戦闘力だけならまだしも、

「ハハ……。足が震えて動けねぇなんて……なっさけねぇな」

 それ云々ではなくスバルはこの戦闘に参加資格すら与えられていない。ほとんど部外者のようなものだ。

 ロム爺は腕力で、フェルトは脚力で、士はあの武器で、そしてサテラはその魔法力で戦いに臨むことができる。だが、殺人鬼の異常性はそれら全てを凌駕して余りあるものだ。

「……スバル!」

「あ?」

 士が突如、殺人鬼との戦闘を中断し、スバルの方へと一直線へと向かい――その勢いのまま、スバルの顔面を拳で殴る。

 余りにも唐突すぎる出来事に、スバルの思考の時が止まる。が、頬に走った痛みにより、すぐさま意識は現実へと戻される。

「ってぇ……。な、何すんだ!」

 その行為に対し抗議しようとするスバルの胸倉を掴み、士は怒りの形相で言葉を紡ぐ。

「お前、ここに来る前に言った事、忘れたとは言わせないぞ。あんな光景、もう見たくないから、引き起こしたくないからここに来たんだろ!」

 そう。それはここに来るまでにスバルが放った、無謀すぎる一言だ。

「……そうだよ。でも、現実なんてこんなもんさ。俺が居たっていなくたって……何も変わらねぇ。何もできねぇんだよ!」

「そうだよな。そうやって自分を否定して後ろで黙って全部見てたら、言い訳をして逃げられるもんな!」

「……ッツ、好き放題言いやがって!俺だって悔しいよ!指を咥えて見てることしかできないことが!アイツと戦う力がない事が!」

「そんなことは関係ない。お前に足りないのは勇気だ。アイツと戦う覚悟だ!」

 その一言を言われ、スバルの口がピタリと止まる。

「しっかりしろ!お前が助けたかったものが、今消えかかっているんだぞ!今一番血だらけになっているのは誰だ!今この場の皆のために一番戦っているのは誰だ!今お前が一番助けたい!守りたい人は、誰なんだ!」

 その言葉でハッとした表情でスバルがサテラの方を見る。

 その目に映っているのは、ナイフで美しいその容姿に傷を無数に付けているサテラの姿。

「そう、だよな……。俺はこの場に居る皆を守るために来たんだ……。自分に言い訳して逃げるのは、違うよな……」

 俯きながらブツブツと少しの間喋っていたが、突然、スバルの何かが吹っ切れたように、勢いよく顔をあげる。

 その表情は、決意を固めたようなものだった。

 「アッハハハ!精霊がいなくたってなかなかできるじゃない。あなた!でも、まだまだね!まだまだ!!」

「くっ……!」

 二人がこんな会話をしている間に今、サテラは押され始めていた。

 氷の弾幕が途切れることなく撃ち続けられているが、それら全てがエルザの剣舞の前に打ち砕かれて届かない。

 飛びかかるエルザの斬撃は攻撃を中断して氷の盾を作り出して身を守る。

 距離が離れれば再び弾幕によって攻防が入れ換わるが、そんな手が何度も通じるような相手ではないことは明白だ。

「行くぞ――!」

 これ以上の傍観はマズイと思ったのか、ロム爺が棍棒を手に取り戦闘へと参加する。

「あら、ダンスに横入りなんて無粋じゃないのかしら」

「そんなに踊りたければ躍らせてやるわ!」

「あら、ダンスに横入りなんて、無粋なのではなくて?」 

「そんなに踊りたいなら最高のダンスを踊らせてやるわ!! そら、きりきり舞え!」

 直撃は愚か、かすっただけでも大ダメージに繋がるだろう攻撃も当たらなければ意味がない。

 右へ左へと振られる棍棒をエルザは完璧に避け続ける。

 そこで線から点への攻撃転換。突きによる攻撃を放つ。その直後見えたのは、

「なんっじゃそりゃぁーー!?」

「あなたが力持ちだからこんなこともできたのよ」

 ロム爺が突き出した棍棒につま先で立つ殺人鬼。

 そしてロム爺の首真っ二つのコースに振られるククリナイフ。

「させっかー!」

 それを阻止するために床に落ちていた瓦礫をフェルトが投擲。

 何とか首真っ二つは防ぐことができたが、それでもナイフは勢いを緩めずにロム爺の右肩を切り裂いた。おびただしい量の血が吹き出し、その場に崩れ落ちる。

「あぅ……」 

 着地した殺人鬼はすぐさま視線をフェルトに移す。再び蛇に睨まれたフェルトはその場で足を震わせた。

「あなた、邪魔ね」

 そして地を這うような動きでフェルトへと近づく。

 最早抗う気も力も残ってないフェルトは近づくナイフを受け入れるかのようにゆっくり目を閉じた。

「おるぁー!」

 そんなフェルトを救ったのは、直前まで固まっていたビビりだった。

 

 咄嗟に小柄なフェルトの体を抱いて横っ飛び。

 スバルの行動は間一髪、ヤツの攻撃からフェルトを守った。

 膝をつき、驚いた表情の殺人鬼はそのまま追い討ちをかけようとするも背後からの氷柱の攻撃に防御へと移行した。

 口に出さないがサテラに感謝しつつ、自分と共に倒れてるフェルトを見る。

「おい。大丈夫か!?こんだけ頑張って無事じゃなかったら俺泣いちゃうけどね!」

「ッツ!余計なことしやがって!何で助けた!?」

「何で、か……士の言葉で分かったんだよ。助ける覚悟がないやつには、ビビってるやつには、守りたい人たちを守ることも、何をすることもできないって。だから俺は弱音吐くのを止めた。そしてこの場に居る奴らを全員守ることを決意した。それをやったらたまたまお前が死にそうだったから助けてやった。それだけじゃ不十分か?」

 押し黙るフェルトにさらにスバルは言葉を続ける。

「いいか、俺たちが時間をなんとかして稼ぐ。お前はその間に全力で逃げろ」

「なっ。あたしに無様に逃げろってのか!?」

「そうだ。とっとと無様に逃げちまえ。本当は俺が一番にやりたい役目なんだぜ?それを譲ってやってんだからな?ほら、早く逃げろ」

「だったら!!」

「俺はもう18だ。酒も飲めるし、選挙にも行ける。もう大人だ。つまりこん中じゃお前が一番年下だ。だからお前を助ける義務が、この場にいる奴全員にあるんだ。ほら、行くぞ」

 足元に落ちている、先ほどまでロム爺が使っていた棍棒を拾う。

「お、結構重いなこれ。体鍛えといてよかったぜ」

 試しに棍棒をその場で振るってみる。なかなかに重いが振れないことはなさそうだ。

 ここで諦める、引き返す。そんなこともできただろう。

 そんな考えはもうなかった。

 迷いはもう無い。どうすればいいか分かっている。それをすぐに実行することができるのが、強い人間なのだろう。

 スバルは弱い人間だ。だからこそ、スバルにはある絶対の自信があった。

「カミサマはそういう奴には、優しくしてくれるもんだろ。信じてるぜ」

「ん……だよ。さっきまであんなに隅でプルプル震えてやがったクセに」

「今は今!過去は過去!今プルプルしてねーからそれでいいだろ!……よし……行くぞ!!」

 サテラと士の攻撃により殺人鬼の視界が一瞬死角になったのを確認し、エルザに全速力で突撃する。

 身を任せ全力で棍棒を振るう。考えていた以上の加速度に、自分でも驚く。

 当たれば人間の頭を豆腐のように砕く一撃。しかし、

「狙いは上々。だけど殺気が見え見えね。残念だわ。」

「殺気、か。その消し方は習ってないんでね!!」

 真後ろからの打撃に対しエルザは刃の峰で棍棒を叩き、軌道をそらして回避を実行。奇襲失敗の負け惜しみを口にしながら、しかしスバルは牙を剥き、

「今だぁぁぁぁぁ!行け!フェルトぉぉぉぉぉぉぉ!」

「――――ッ!!」

 スバルの渾身の叫びと共に、フェルトの体が出口に向かって弾かれた。

「行かせると思う?」

 それを拒むのはエルザが投げたナイフ。しかしそれは、

「俺が行かせてやるよ!」

 寸分違わぬライドブッカーの銃撃により、それがフェルトに届くことは永遠になくなった。

「よっしゃー!やったぶらぁぁぁぁぁ!?」

 長い足に側頭部を蹴り飛ばされて、自己賛美の言葉が中断、スバルが壁に激突させられる。

「珍しく、少しだけ腹立たしいと思ったわ」

「へっへっへ、だろう?」

 とてもお粗末でテキトーな煽り。しかしそれが逆に殺人鬼の神経を逆なでした。

「いいわ、そんなにダンスがしたいのなら躍らせてあげる。もちろん、踊り果てて死ぬまでね?」

「いいぜ、やってみろよ。言っとくけど何回も転ばせてやるからな?」

 自分の手の中にある棍棒と、覚悟をもう一度しっかりと握る。

「ちょっと。大丈夫なのあなた?」

「ああ、お茶の子さいさいだ」

 そういって俺の顔を覗き込んでくるサテラ。そしてなぜ俺がこんなにも必死になっているのかが分かった。

 一目見た時からこの純粋な瞳に、美しい銀髪に、優しい性格に、全てに惚れていたのだ。

 だからこそ、もう一度、何度でも気合を入れ直す。

「よっしゃー!何とも不純な動機だと我ながら引くが頑張るぞい!!」

「ぞいって......。あなたホント不思議ね」

「それは誉め言葉って受け取っておくぜ。じゃあ後ろから全力の援護、よろしくな!!」

「はいはい!」

 その言葉を皮切りに、最後の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

「ぬおーー!!せい!ほっ!!はっ!!」

 回避や攻撃、その他の行動を行うたびに声を上げるスバル。

 サテラがサポートしてくれているのでエルザも思い切った行動ができないようだ。

 射線を切らねば氷の槍が飛んできて、スバルへの攻撃も氷の盾のせいでできないでいた。

「ナイスサポーーーット!!」

「コントロールはあまり得意じゃないの。おかげで氷の像ができるところだったわ」

「頼むから俺のじゃないって言ってくれ!?」

 棍棒の攻撃は全て軌道が読まれてしまっているので、棍棒を振り下ろした瞬間に回し蹴りを全力で放つ。

 だがこれが裏目に出ることになってしまった。

 まるで未来を読んでいるかのようにスバルの足を鷲掴みにし、自分の手にあるナイフへと近づけていく。

「じゃあね、ボウヤ」

(マズイ、死――――)

 何かを悟ったスバル。

「悪いがダンスパーティーの邪魔をさせてもらうぜ」

 しかし、スバルの心臓部にナイフが刺さる直前に、ライドブッカーによる銃撃で手に持っているナイフを根元から叩き折る。

「さっきのお爺さんと言い小娘といい……この場所には無粋な人しかいないわねぇ……!」

 そういって殺人鬼が獲物を見る目で見つめているのは、士。

 瞬間、標的を変えたのか、殺人鬼の体がスバルから離れ士へと一直線に向かってゆく。

「士!逃げ」

「遅いわよ!!」

 奴のナイフが士の腹を切り裂き、体が真っ二つになる。

「そんな想像でもしてたか?」

「なっ……。なあに?それ」

 士の腹に巻かれ斬撃を防いでいたのは、ピンク?いや、厳密にいえばマゼンタ色の四角い箱のようなもの。その物体をエルザは珍妙な目つきで見ていた。

「悪いが、ここからは全力で行く。……スバル!」

「お、おう。何だ?」

「お前の覚悟。見せてもらったぞ」

 スバルの方から視線を殺人鬼の方へと移すと、蛇のような目つきでこちらを見ている殺人鬼と目が合った。

「あなたが私を倒す?馬鹿言わないで頂戴。さっきまで防戦一方だったあなたに、私を倒すことなんて」

「できるさ」

「……何を根拠にそう言うの?」

 士は自信満々で言葉を続ける。

「悪いが、お前は俺の戦ってきた奴らの足元にも及ばないからな」

 そう言ってライドブッカーを腰に取り付け、そこから何かを取り出す。

 それはライダーたちの記憶が記録されている、(ライダーカード)だ。

 士が取り出したカードに描かれていたのは、マゼンタ色の何かだった。

「そんな紙切れで私を倒すっていうの?」

「そうだ」

「……ップ。アハハハハハハ!!」

 エルザが士に対する警戒すらをも緩めて爆笑している。

「そ、そうだぞ!士!そんなもんで何ができるんだ!」

「なーに、今に分かるさ」

 そう冷静に言い放つと、士はそのカードを腹にある四角い物体に差し込む。

(ピーロロリー……ピーロロリー……ピーロロリー)

「……何だ?この音」

 突如として、盗品蔵の中に鳴り響いた電子音。

「行くぞ」

 そういうと士は四角い物に手をあてこう叫んだ。

「変身!」

(KAMEN RIDE DECADE!)

 その音と共に士の体が急激に変化した。

 左肩から右の脇腹にかけてバーコードのような縞模様のものが出現。体全体がマゼンタ色に染まり、アーマーのようなものが装着される。

 空中に何枚かのカードが出現し、士の顔に突き刺さると、大きい目が色を変え、鮮やかな緑色になった。

「な、何だ?こいつ」

 思わずスバルの口から疑問符が飛びでてくる。

 それも当然だ。先ほどまで居た人間の士の姿はそこになく、ピンクの色をした大男が立っていたのだから。

「あ、あなた一体何者?」

 一息ついた後士はこの場に聞こえるようにこう言った。

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 

 

かなーり説明回に時間を割いたため、王選候補者一人ずつの自己紹介はダイジェストみたいな感じでよろしいでしょうか?

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