緑の兄弟どもが行く   作:カロ

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緑の兄弟 in 異世界

「壮観だな……」

 

Vault111からの唯一の生還者は、要塞の司令塔から眼下に蠢く三百体近くいるというスーパーミュータントを見て呟いた。

 

冷凍睡眠から目覚めてからというもの、核爆発前に軍人として従軍したアンカレッジの戦いが可愛く思えてくるほどの地獄を掻い潜ってきた。

 

その為、大抵の事では驚かなくなったと自負している彼ではあるが、まさか自分がスーパーミュータントになる日が来るとまでは予想していなかった。

 

発端は差出人不明のある手紙で、文面にはインスティチュートに関する事柄について重大な話があると書かれていた。

インスティチュートは彼が最高指導者の正体を知らされてからは、協力するべきか、それとも他のスタンスを取るべきかの決断が出来ず、現在は距離を置いている組織ではある。

 

ただ文面から漂うただならぬ雰囲気に興味を惹かれ、書かれた場所まで向かったのが一連の騒動の始まりだった。

 

指定された建物に入った瞬間、全身に強力な電流が走り、次の瞬間には腹部に何かが突き刺さるような痛みを感じた。

そして強烈な頭痛と共に意識を失い、目が覚めた時には彼の体は既にスーパーミュータントに変貌していたのだ。

 

自分の変化に戸惑う中で、すぐ近くで待っていたらしい二体のスーパーミュータントが話しかけてきた時のやりとりは今でも鮮明に思い出せる。

 

 

 

 

太い緑の指、これまでとは明らかに違う鋭敏な感覚、体の内から湧き上がる活力……、そして己の変化に戸惑う恐怖。

 

「これは……、なんだ。 俺はこの建物に呼び出されて……、お前達が俺に何かしたのか?」

 

事態を把握できず混乱する彼に、低く濁った声でスーパーミュータントの一体が話しかける。

 

「その様子だと適応は成功したようだね。 いきなりニンゲン、クイタイ、とか言いだしたらどうしようかと思ったよ」

 

「アマンダ、今の言葉でウイルスへの適応が正常に行われたと判断するのは尚早だ。 断定するには知能テストと聞き取り調査を行い、IQスコアを……」

 

「おだまり、クリストフ。 インスティチュートの監視網がそこまで行き届いていない地域だからここを選んだけど、こんな変異体だらけの所に長く居たくないんだ。 まずあんたには謝罪と、こうしなければならなかった事情について説明するわさ」

 

アマンダと呼ばれたスーパーミュータントの話によると、彼女らは元はインスティテュートのバイオサイエンス部門の科学者だったらしい。

 

彼女らはバイオサイエンス部門の中でも医療技術について専門的に研究していたらしく、その過程で、ありとあらゆる病気に掛からなくなり、放射線に対しても完全な耐性を持つスーパーミュータントに着目したらしい。

 

だがFEV研究部門のトップだったバージルが逃走してから、FEV研究は凍結されており、彼らは閉鎖されていたFEV研究所にハッキングし当時の研究データを入手し、それを元にインスティチュートには秘密裏に研究を進めた。

 

あくまでも組織には隠れて研究を行わざるを得なかったという都合上、彼らの研究は大規模な設備を用いての実験よりも、人造人間の一部を勝手に動かして戦前のFEV研究の資料を収集することから始めたらしい。

 

そして最近になり、アメリカ海軍の古い軍事基地から、かつてイカロス島要塞という場所にて極秘でFEVの研究が行われており、そこでは人間にFEVを投与した後の知能の低下や記憶の消失を防ぐFEV抑制剤の試作に成功したという情報を見つけ調査を行おうとした矢先……、実験中の事故により二人はFEVに感染してしまったらしい。

 

「なぜ血清を使わない? 実を言うとかつてインスティチュートを脱走したバージルの頼みで、FEV研究所から試作型の血清を回収し、それによりバージルがスーパーミュータント化を治療した事がある。 ……あんたらがその血清の存在を知らない筈が無いだろう?」

 

その質問にクリストフと呼ばれた男が答える。

 

「それは勿論だ。 だが、なぜ人間に戻る必要がある? スーパーミュータントは我々の理想に近い生物だ。 強く、頑健で人間よりも優れた感覚を持ち、放射線や病の影響を受けない。 唯一の問題は、変異の過程における脳の変化により、過度な攻撃性が発露し、知能の低下、記憶の消失が起きる点のみだ。 無論、全ての人間に理解出来る考えだとは思っていないが、少なくとも僕たちの研究はそのデメリットを解決する為に行われていたと言っていい。 組織を裏切って極秘の研究を進めていたことは既に露見しているだろうし、最早インスティチュートには戻れん。 かと言って研究所しか知らない僕たちが生身でインスティチュートの追跡から逃れるのも難しく、残された選択肢はFEV抑制剤を手に入れ、完全なスーパーミュータントの力を手にする事だけだ」

 

 

「ま、そういうことだわさ。 私ももう六十歳を超えるし、スーパーミュータントとなって決して老いない体を手に出来るなら、人間として生きるよりもいい。 でも私達だけで、戦前の軍の要塞に侵入するのは不可能だと思って連邦中で様々な武勇伝を打ち立てているあんたを巻き込む事にしたんだ。

言っておくけどインスティチュートのFEV研究所から試作型血清を回収して自分に投与しようとしても無駄だよ。 逃げる前に現在ある分の血清は全て回収してある場所に隠したし、製造装置も破壊しておいたからね。 血清はFEV抑制剤を手に入れたら渡そうじゃないか」

 

「……まだ俺にはお前達を脅して、血清の場所を吐かせるという選択肢もある」

 

「私達にも、拷問されても吐かないという選択肢があるね。 一か八かで血清のありかを知る術を失ってしまう賭けをするか、私達に強力して血清を手に入れるか……、どちらが目的を達成する確率が高いかはあんたが判断すればいい」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

そうやって彼はこのイカロス要塞の地下施設にある抑制剤を探す事になった。

この要塞は核爆発時に発動した機密防衛プロトコルにより、研究所があった地下施設は完全にロックされ、職員達は表向きの軍事施設としての役割を果たす地上部分に追いやられるか、地下に残り防衛ロボットに排除されるかの末路を辿ったらしい。

 

彼は並み居るロボット達を打ち砕き、何とか二人と共に抑制剤の保管庫に辿り着いた後、まずは自分達の精神の変異を防ぐ為に自らに抑制剤を注射した。

 

FEVには感染者の精神を変容させる効果があるが、戦前の研究では現在のように投与した直後に凶暴な怪物に変異してしまう程ではなかった。

 

だが連邦で暮らす人間達は二百年もの間、高レベルの放射線にさらされ続けた事と、空気中に漂う微量のFEVに感染する事で遺伝子構造が戦前の人間とは異なっており、FEVの投与により異常な凶暴化が引き起こされる事が多い。

 

インスティチュートで生まれた二人の研究者も外で暮らす人間程ではないが、FEVの精神への影響が主人公よりも早く進行しており、学者らしくもなくFEV抑制剤に直ぐに飛びついてしまった。

 

………だがその結果、警備システムが発動して残りのFEV抑制剤は全て破壊されてしまったのだ。

 

 

 

そしてその後二人はイカロス島要塞に残り、知性を持つスーパーミュータントとして生きていく事にした。

エヴァは研究者として、この島の設備を使って変異生物対策の研究を行っており、彼も時折、キャップと引き換えに研究サンプルとして変異生物の体の一部や卵等の採取を手伝っている。

クリストフはその用心深い性格から島の戦力増強を画策し、彼にレイダー等の無法者の捕獲を依頼ており、研究施設にあったFEV培養装置を使って、島の防衛戦力としてのスーパーミュータントを増やしている。

 

 

 

そして彼は今、クリストフがインスティチュートから盗んだ設計図を使用して作ったベルチバードで、生け捕りにしたレイダーを送り届けたついでに島の見物をしていた。

 

「ストロング、お前、スーパーミュータントになって嬉しい。 下の兄弟達と人間ぶっ殺すか?」

 

スーパーミュータントばかりの島に来るということで連れてきた、スーパーミュータントの仲間ストロングが物騒な提案をするが、彼は首を横に振る。

 

「それは辞めておこう。 そろそろ俺も人間に戻るか……」

 

思ったよりスーパーミュータントでいるのは気分がよく、ついついこのままの状態で三ヶ月程過ごしてしまったが、この姿では人間に怯えられて一部を除いて居住地に入ることが出来ない。

 

明日にでもアマンダに教えられた連邦にある血清の隠し場所に向かうか……、と思考を巡らせると、彼は床が急に揺れるのを感じた。

 

「地震か? 珍しいな……」

 

部屋にある椅子や机が激しくなる程の揺れ。

地震の少ないこの地域では、ここまでの揺れを感じる事など滅多にないと言っていい。

 

だが施設の倒壊を危惧する程の事態でもなく、直ぐに彼は落ち着きを取り戻した。

 

「うん?」

 

Pip Boyから流れていたラジオの音楽が途絶えた。

 

(何かの拍子に周波数のチューニングが狂ったか?)

 

画面を表示させてみるが、そこには一切の電波が入っていない事が記されていた。

 

まさか先ほどの地震で放送局に異常があったのだろうか。

全ての電波がロストしている所を見ると、この島とは違い連邦では想像を絶する大地震になっているのかも知れない。

 

「ストロング、直ぐに連邦に向かうぞ」

 

彼は急いで塔の階段を駆け下り、ベルチバードへと乗り込んだ。

 

連邦までは北西に百五十キロ程度。

動力源のフュージョンコアの残量はまだ十分にあるし、二人の科学者がインスティチュートから持ち出した設計図のおかげでフュージョンコアすらも作成可能になった今では、そこまで消耗に気を使う必要はない。

 

ベルチバードの巡航速度である時速三百五十キロで、彼とストロングは連邦の方角へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品ではfallout4のスーパーミュータント化する架空のDLCが導入されています。
代わりにAutomatronが販売されなかった事になっており、ロボット作成は出来ませんが、一部のハイテク武器の弾薬やフュージョンコア、ベルチバードが製造可能となっています。

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