雲の上をクインジェットが進む
座標入力の後自動操縦で流れていく機体の後部では皆が疲れた顔をして座っている。普段はそんな様子など微塵も見せないロジャースもあんな事があったばかりで流石に疲れて居たのだろう、硬い椅子に深くもたれ込みどうやら眠っている様であった。
ソニアに銭形、次元も眠りこける中。起きているのは三人だけ
「どうゆうつもりなの、ルパン三世」
私は本当なら貴方が指定した怪しげな座標になんか向かわずシールドの本部に戻るべきだった、その事は分かってるわよね?と苛立たし気に眉間に皺を寄せルパンを睨みつけるロマノフ
「そう怖い顔で睨むなって、わーってるからよ。シールド秘蔵のキャプテンアメリカ様の一大事だ、本当なら本部に帰りたいところだろうがそっちも分かってるんだろ?」
ルパンの言葉を引き継ぐように不二子が続ける
「今回の襲撃は情報が洩れすぎている、それに私が全体図においてどういう立ち位置でアナタに情報を流したのか把握しきれていない」
そんな所かしら?そう言って艶やかな表情でルパンの顎を指先で撫でると計器のチェックをしてくるわ、悪い話合いは二人でやってねぇと不二子は操縦席へと歩いて行く。
私は私の為に今回動いてるの、気にしなくてもいいわよ?
去り際にそう言った声は恐らく残る二人ともに聞こえていたのだろうが、ナターシャはなにもリアクションを取らず、ルパンはひらひらと見送る様に手を振るだけであった。
「どうしたいよ?」
楽し気に、悪党染みた笑みを口元に浮かべながらニヤリとルパンが問う
「状況は未確定、安心できる筈のホームも状況から推測するに絶対に安全だとは言い切れねぇ、このまま付いて行く事の損と得、計算し切れたらまた教えてくれるかい?」
それまでは仲良くしようぜ、そう言って僅かに手を出すルパンに僅かにナターシャの眉がピクリと動いた所で
「勘違いするな、ルパン三世」
キャプテンアメリカの、スティーブ・ロジャースの声が全てを遮った。
ーーーーーー
「確かに今回の襲撃は事前にルパンとシールド、両方の情報が無ければ計画しえないものだっただろう」
寝ていなかったのか?いや、表情にはまだまだ疲れが残っている、それでも彼はルパンが僅かに発した悪の波動、波長?悪意であろうか、そう言うものに反応して目を覚ましたのだ。
立ち上がり、ルパン三世とナターシャの間にロジャースが立ちふさがる。
「シールドの中には内通者になる様な人間など居ない、仮に居たとしてもそれ以上に多くの平和の為に働く人達が悪の野望など画策するよりも早く打ち砕く、ナターシャ、僕が本部に行くのではなく彼の指定した座標に行くように言ったのは僕自身の直感を信じたのもあるがそれ以上に今何かが起きていると感じたからだ」
顔に張り付いた疲れの影が消えた訳ではない、だがそれを感じさせない程の意思の輝きが、覚悟がロジャースの瞳に灯っていく。
「何か重大な計画が進行しているのかもしれない、あるいは全てがルパンの掌の上で行われているのかもしれない、だがどちらにせよ僕は誰かが苦しむ前にそれを叩き潰すだけだ。状況は僕を中心に起こっているんだ、守りに入って誰かを巻き込むぐらいなら必要最低限の人員で攻めていった方が良い筈だ」
そう言って、ロジャースは見下ろす様にルパンの方を向く
「ルパン三世、まだ君を信用した訳ではない、何か不審な動きがあればすぐにでも君を叩き潰す、そのことは覚えておいてくれ」
「ヌフフフ、出来るつもりか?天下の大泥棒様相手によぉ」
「出来る出来ないではないさ、僕は正しいと思った事を行ってきた、そしてこれからも正しいと思った事を行うだけだ」
シンプル故に強靭、今だけは迷いを忘れ正義の使者となったロジャースにルパンは早々と剣呑な雰囲気を撤回し両手を上げひらひらと降参の意を示す
「わーったよ、とりあえずは休戦だ、それでいいだろ?」
そう言って椅子に深く腰掛け直したルパンに、僅かな身動ぎだけでマグナムをすぐにでも抜けるようにしていた次元はまた深く帽子をかぶり直し眠りにつくのだった。
「みんなぁ、着いたみたいよ?」
コックピットからの不二子の声で各々疲れを感じさせながらも眠りから目覚める。うめき声や体調を心配する声に紛れるように、洋上の巨大タンカーの上に振動を感じさせずクインジェットは着地した。
アメ「どうやってこんな」
三世「ヌフフフ、コツがあんのよ、何事にも」
的な?