ワシントンDC・スターバックス
「それで?えっと、」
不二子よ、峰不二子。
イヤにセクシーな女とキャプテンアメリカがスターバックスに居る、当然店内はざわついて居たが、女は、不二子は視線を楽しみ、周囲の人間に手を振ってすら居た。
「人命に関わる話だと聞いて着いてきたんだ、いい加減話してくれないか?」
もしこれが拳銃を突き付け無理矢理何処かに連れていこうとしたのならロジャースは絶対に着いて来なかっただろう、敵を打ちのめし、警察に通報した後にシャワーを浴びて出掛けていた。だが、妖艶な美女が人命に関わると世界規模のチェーン店に連れ出したのだ。
日課のランニングの後にシャワーを浴びる時間を待ちすらした。
「もう、そんなに焦らないで、将来的には命に関わる話、って言ったじゃない」
時間はあるわ、楽しまなきゃ、折角のデートよ?そう言って楽しげにクリームをゆったりと掻き回す彼女に、シワの寄ったロジャースの眉間が緩み、溜め息混じりの笑顔が零れる。
彼女にはそう言うものがある、こと戦いなら話は違うだろうが、現状は全てに於いて彼女の方が上手だった。
「デートか、家を出る時に思って居たものからは随分と違う一日になりそうだ」
諦めたロジャースが過剰にカロリーの高そうなラテを一口飲む
「……フム」
甘いもの、嫌いだった?下から除き込む様に不二子がロジャースを見上げる。全てが計算された角度だった。
「いや、」
悪くない
そう言ってもう一度口をつけるロジャースに、でしょー?と不二子が微笑んだ。
「現代へようこそ、ロジャースさん」
ーーーーー
同・スミソニアン博物館
その後二人は様々な内容でただの男女の様に一日を過ごした、ショッピングモールでジェラートを食べながらウィンドウショッピングをしたり、映画を観たり、ただブラブラと歩きながら色々な話をしたり。
不二子は個人的な話は殆どしなかったがとても話を聞き出すのが上手く、ロジャースは気付けば話すつもりの無いことまで話し込んでしまっていた。眠っていた間に見逃した知るべき事のリストを作っている話や、書類上は90才を越えている彼がそれで得したことはあるのか。今一番したいことは何か?無い?無いなら作らなきゃ
そうして、夕方になろうかと言う時間が近づいて来た時だ、不二子がロジャースに「用件を話すわ、その為にあなたが良く行く場所に連れてって」と言ったのだ。
それがここだった。
「貴方、凄い人だったのねロジャースさん」
甘える様に腕に抱き着き不二子がポツリとそんなことを言う、最初は嫌がって居たロジャースも「将来的に人命に関わる事なのよ?」と言われ諦めてしまっていた。
しかし、凄い人、凄い人か。なんと言えば良いだろうか。そんな事を考えて、ただ思った様にロジャースは喋る
「何も凄い事は無いさ、ただ正しいと思った事をやって来ただけだ」
だが
続きを危うく口に出しそうになりロジャースは心にしまい込む
「それが、最近は自信が無くなってきた?」
驚いた顔のロジャースに、楽しそうに笑いながら不二子はそう言う顔をしてるからと言った、嘘が下手ね、とも
「キャプテン、すぐにその女から離れて」
いつの間にか周囲から人が居なくなっていた、いや、正確に言うならロジャースも不二子も気付いては居たが、そんな事は関係なかったのだ。お互い難しい存在ではあるが、久々のデートだったから。
「どうしたんだ、ロマノフ」
ロジャースが辺りを良く見れば高所には人員が配置され、周囲は馴染みのストライクチームで包囲されている、どう考えても女性一人を相手に正しい状況では無かった。
「いやーん、ロジャースさん怖ーい」
そう言って腕に更に強く抱きつく不二子に、思わず前に出て彼女を庇う。ロマノフの眉間にシワが寄り、器用に片眉が感心しないと言った感でつり上がるが、ロジャースとしては善意に寄っての行いだ。
二度言うが善意に寄ってだ。
「キャプテン、1時間程前にルパン三世から貴方の昔のスーツを盗み出すと予告状が届いた、そしてその女はルパンの一味よ」
無関係な訳がない、そう言ってロマノフが端末を操作し、表示された画像にはフィアットに乗り男達と楽しげに走っていく不二子が写されていた。
怪訝な顔でロジャースが不二子に目を向けると「あーあ」そう言い抱き締めていた腕を離す「だって何も聞かれなかったから」悪びれもせずそう言う、その姿すら美しかった。
「あまり感心しないな」
「でも、貴方も楽しかったでしょ?」
言外に私は楽しかった、と。そう言う、そんな不二子にまた敵わないなとロジャースは溜め息混じりの笑顔をこぼす。
「あぁ、楽しかったよ」
良かった、そう言い不二子が鞄から取り出した端末をタップするとロマノフの端末に電話が掛かる。
「出たら?鳴ってるわよ」
「えぇ、貴女を拘束して護送車の中に叩き込んだらそうするわ」
高まる緊張感の中、今度はロジャースの端末に着信が入る。出れば聞き慣れた声でロマノフに代われと一言告げる電話の向こうの相手に、不二子のものとは違う苦い笑いが漏れた。
「ロマノフ、君にだ」
そう言って電話を手渡すと、不二子に向き合う。
「そういえば言ってなかったわね、将来的に人命に関わる話」
あぁ、聞いてなかった。
「私の知り合いからの伝言よ、数字が告げてる、世界にまた危機が迫っている」
会計士には気を付けろ、だそうよ。
「あぁ、あと、これは私からで、そうねぇ」
ルパンには気を付けろ、ってとこかしら?
ロマノフがストライクチームに撤収を宣言すると、不二子は楽しげに手を振りながら立ち去って行った。
ウィドウ「会計士って、あの会計士?」
アメリカ「さぁ、僕にもさっぱりだ」
アメリカ「それより、ルパン三世って誰なんだ?」
ウィドウ「……基地に戻ったらおしえてあげる」
的な