三人揃えばいいってもんじゃない   作:ネコ削ぎ

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「織斑くん、本気で言ってるの?」

「男が強かったのは昔の話でしょ。今は男が女に勝つことなんて絶対に無理だよ」

「身の程を知らなすぎるよ」

「ふん。今ならまだ間に合いますわ。泣いて土下座するのならハンデの一つも差し上げましてよ」

「ソレダケシテモハンデ一ツシカ貰エナイノ?」

「男に二言はないぜ。そっちこそ謝るなら今の内だぞ」

「さすが織斑先生の弟さん。そこに痺れる憧れる」

「良い台詞だね、感動的だね、だが無意味だね」

「独りで熱くなってやがる」

「その後、彼の姿を見た者は誰もいなかった」

 

 

 

 クラス代表がその時間の内に決まることはなかった。

 その場で決まらなかったことにホッとした真人。

 クラス委員は時間ばかり取られ面倒ごとばかり与えられる厄介な立場だ。内申点の欲しい生徒やリーダーシップを発揮する生徒、奉仕の精神逞しい生徒くらいしか求めない。真人などその三つのどれにも当てはまらないので嫌でしかなかった。

 しかし、候補の一人に挙げられてしまった。

 幸いなことに一夏と彼を囃し立てるクラスメイト達と納得いかないと騒ぎ立てるオルコットのおかげで、真人が注目されることはなかった。

 なかったが、やはり完全に意識の外へと置かれることはなく、来週行われるクラス代表決定戦から名前が消えるなどなかった。

 残念過ぎる。授業中ということもあり静かにゆっくりと机に突っ伏す。もちろん織斑千冬が背を向けた時に。さすがに正面切って受講態度を崩す真似はできない。彼だって友達は惜しくなくとも命は惜しい。

 全ての原因でもある神野に対しても心の中で文句を言うのが精いっぱいだ。とても顔合わせて文句を言いに行く度胸はない。目立つし、袋叩きにあいそうだし。

 仕方なく、当日ギリギリまで試合がなくなることを願って生きていくしかない。こういう時に限ってキャンセルが起きることなんてないが。

 淡い希望を抱きながら一日の授業を乗り切る。

 一夏は参考書を捨てたことで予習してきていなかった。真人が見るに授業中は常に頭を抱えていた。

 対して、真人は特に問題なく授業を乗り切って見せた。ISに関する知識はかなり専門的な部分が多いので学ぶことに時間がかかったが、それでも覚えきれないものでもなかった。

 小さい頃から頭は良かった。両親から天才だともてはやされるくらいには。

 真人自身学ぶことには抵抗ない。だから学べるだけ。

 ISの知識も学んでも無駄にはならないと思ったから覚えきっただけ。

 それにIS学園に入学することになってしまった以上は、ISについて知る必要もある。

 授業から解放されたので寮に戻って復習。

 特別やるべきこともないし、なにより周囲は異性ばかりで真人の精神はガリガリと削られていくばかりだ。

 寮ならば異性の目はなくなる。自室に籠っていればいい。食事の時は仕方がないが、そこは妥協点とするしかない。

 さっそく自室へと入る。

 

「ア、オ帰リナサイ」

 

 部屋の中には怪しいの一言で表せる神野奇跡がベッドにちょこんと座っていた。

 寮の部屋割りについて、一夏と同室か一人部屋になると思っていた真人。現実は非情である。

 謎を孕んだ女子であり、真人をクラス代表戦へと引き摺り込んだ元凶。何をするでもなくベッドに大人しく座っているだけだった。

 暫く見つめ合い。

 犬だか狐だか分からない生物のお面のせいで表情は読めない。

 かくいう真人も気だるげな顔を崩さずにいるので表情が読めない。

 しかし表情はともかくとして内心は冷や汗ものである。

 何故に男子の部屋に女子がいるのか。

 何故にその女子は最も素性の知れない神野なのか。

 何故に待ち伏せするかのように部屋で待っているのか。

 考えろ真人。考えればきっとわかる。

 戦いというものは相手の裏を読むのが大事だ。男子は男子で相部屋になると思わせておいて裏をかいたに違いない。

 真人と一夏を別々にするのは兵力分散させて各子撃破するためだろう。よほどできる軍師がついているのだろうか。

 とにかく結論、やられる前にやれ。

 そもそもお面なんてあからさまに怪しい物をつけているのが真人的に最も気になる。

 古来より顔を隠しているキャラは大きな決意を秘めているか復讐者かのどちらかだ。そして大体敵であることが多い。

 仮面キャラの在り方を察した。

 真人のドロップキック。

 しかし神野には当たらなかった。

 めげずに二度目のドロップキック。

 しかし神野には当たらなかった。

 

「当タラナケレバドウトイウコトハナイデス」

 

 ひらりひらりと躱す神野。

 何度もドロップキックを放つ真人は着地失敗で腰を強打。攻撃を断念。

 

「なんで同じ部屋なんだよ」

 

 無理矢理入学させられた学園には女子ばかりで興味の視線が監視のように真人を動きを見ていた。息のつまる状況も部屋に帰れば開放されるかと思えば、経部屋の中にも女子。異性ばかりの空間は羨ましいことではなく地獄以外の何物でもない。

 

「ソレハ男女ガ一ツ屋根ノ下デ寝ルコトデ起キル一夜ノ過チヲ期待シテイルカラデハナイデショウカ」

「最悪なシチュエーションを御望みだな。マジで期待しているとか言わないよね」

「今ハシテマセンヨ。コレカラ一年間ハ一緒ノ部屋デ過ゴスノデスカラ」

「いずれあるみたいな言い方止めろ」

「ツレナイデス。貴方モ選バレタノデスカラ自信ヲ持ッテイイト思イマス」

「選ばれたって言ったって偶々だぞ。織斑が見つかった流れで行われた検査で反応あっただけさ」

「ソレヲ選バレルト言イマス」

 

 神野が胸を張る。何故かは不明。真人には理解できない理由がありそうだ。

 

「本当ニ選バレレバ何モカモ良イ方向ニ進ンデイキマスヨ」

「目立つことはいいことないさ。選ばれるって目立つことに繋がるだろ。注目浴びて喜ぶなんて気が知れないさ」

「選バレルコトハ目立ツト違イマスヨ。選バレルコトハ世界ガ変ワルトイウコトデス」

 

 世界が変わる。

 分からない話でもないと真人は思った。

 この世界に落ちて今までの世界が変わったし、IS適性検査に受かってしまったが故にまたもや世界が変わった。

 そして神野が言う選ばれるということでまた世界が変わる。

 世界とはころころと変わるものなのか、と真人は首を傾げるしかなかった。

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