無色の人形   作:trois

1 / 1
最近、折れた筆を直す為にリハビリ投稿。

好評の場合、続く可能性があります。




僕と言う存在

コツコツと足音をたてながら、私は少し騒がしい鉄血の工場内の廊下を歩く。

白衣を着た研究者達が色々と言い合いしている。

 

 

 

ハイエンドモデルのデストロイヤーは最初、この場所の騒がしさに驚いていたようだが、私は何も思わない。

 

無色の人形(カラーレス)』それが私の開発コードだ。

もともと、最低限の学習を済ませ、必要な事は現地で学習させる。方向性はその学習環境によって異なる。

そのプロトタイプが私である。

 

研究者達からは「現地適応自己学習型」と言われている。

 

最低限の学習を済ませた状態で放置され、私は戦闘も出来ない。電子戦も出来ない。いわば『能無し』だった。

 

だが彼女のおかげで全てが変わった。

 

彼女は私を多くのハイエンドの下に配属させてくれた。彼女達、ハイエンドモデルは文字通り十人十色だ。

 

命令に忠実な兵士としての人形(スケアクロウ)

 

白兵戦に特化した、大型刀を扱う人形(エクスキューショナー)

「狩りを好み二丁拳銃を好む人形(ハンター)

 

電子戦特化のオーケストラの指揮者のような(イントゥルーダー)人形」

子供っぽくも破壊力が高く火力支援に特化(デストロイヤー)した人形」

サディストで、拷問が趣味のサイコパスな(アルケミスト)人形」

 

航空兵器の扱いに長け、話術が巧みな人形(ドリーマー)

 

プライドが高く、蠱毒の壺を生き抜いた人形(ウロボロス)

 

上司に振り回される、苦労人で頭の切れる(ゲーガー)人形」

一番自由で笑顔を絶やさず、私に(アーキテクト)生き方を教えてくれた人形」

 

どう見てもメイドな、私達にとっての(エージェント)総司令」

 

 

彼女達は、一時的な部下の私に多くの知恵を与えてくれた。

 

彼女以外は、誰もが無理だと言った。

 

これは使えない、出来損ないだと言われた

学習させたところで、使える筈ない。無理だと言われた

 

だが違った。彼女は僕を信じた。僕はその期待に答えた。ただ、それだけだ。

 

彼女のおかげで、戦場でハイエンドモデルに代わり現場で指揮がとれる位には、学習できた・・・と思いたい。

 

 

最近は代理人でさえ、私に仕事を丸投げしてくるようになった。せめて自分の仕事はやってもらいたい。

 

「はぁ」

 

「どうかした?カラーレス。」

ため息をつくと、通路の奥から声が響いた。

 

彼女の声だとわかった瞬間、電脳がハッキングを受けていることがわかった。が、あえて何もしない、する必要がないためだ。

 

「申し訳ありません、エルダーブ「≪エリザと呼びなさい。それに私に敬語を使わなくて良いとも言っているでしょう?忘れたのかしら?≫」・・・すみません。しかし、他のハイエンドモデルにこんな所を見られては、あなたが私を贔屓にしていると思われそうだったので。」

 

謝罪を口にし、名を呼ぼうとするとハッキングが終わった。そうして、贔屓に見られそうだと言うと、とたんに不機嫌になる。

 

彼女は『エルダーブレイン』通称エリザ

 

私達鉄血を管理するために産み出された上位AI、実質の最上位命令権を持っている人形である。

 

そして、私を拾い、ここまで学習させてくれた存在でもある。

 

「また、代理人に仕事を押し付けられたの?まったく、一度頼れる人が出来るととことん頼るからな・・・」

 

ハッキングして記憶領域を覗き見たのだろう。

彼女に嘘をつくのは不可能に近い。

 

どうせ嘘をついても、読み取られてバレるのだから。

 

「代理人を攻めないでください。彼女は彼女で苦労しているでしょうから。」

代理人自体、色々忙しい身だ。そこは仕方ない。

 

 

そう言うと彼女はお人好しなのね。と言い一つ、真剣な眼差しで質問してきた。

 

 

「ねぇ、一つ聞いて良い?カラーレス。」

 

「あなたは私も他のハイエンドモデルのように、助けてくれる?」

 

その問に対して僕は・・・

 

「僕は自由に生きるよ。これはアーキテクトに教えてもらった生き方だ。他にもスケアクロウとエクスキューショナーにハンター、ウロボロスからは生きる術を、デストロイヤーからは子供らしさを、アルケミストとドリーマー、イントゥルーダーからは情報の集め方を。」

 

「そして、エリザは僕に手を差し出してくれたから。何があっても助けるよ。」

 

そう言うと彼女は笑顔でなにかを言った。

何を言ったのかはわからない。

 

そして僕は・・・・・・

 

死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、アドバイスは筆者の励みになるので是非お願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。