やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか?(リメイク版)   作:ステルス兄貴

16 / 20
16話

 

 

おもちゃの町を後にして、山間部に入った八幡たち。

すると、天候は悪化して、雪が降り始めた。

真夏の服装で、雪の中に居ては凍死してしまう。

そんな中、山間部で沸いている温泉を見つけた。

しかし、源泉は沸騰しており、入れない。

だが、熱気のおかげで寒さだけは凌げる。

あとは食料なのだが、こんな雪山に食料がある筈もない‥‥

と、思ったら、彼らの目の前に冷蔵庫がポツンとあった。

 

「そんな馬鹿な!?」

 

冷蔵庫を見て丈のメガネが思わずズレる。

山間部の源泉地帯に冷蔵庫なんてあまりにも不釣り合いなのだが、空腹状態の一行にはそんなの関係ない。

 

「……ひ、非常識だ! 何でこんなところに冷蔵庫が!?」

 

しかし、丈は冷蔵庫の存在に対してツッコミをいれる。

 

「城戸先輩、この世界で人の世界の常識を求めてはやっていけないぞ。今までにもこういうのがあったじゃないか」

 

八幡が丈の肩をポンポンと叩き、彼に諭す。

 

「何が入っているのかな?」

 

「そういう問題じゃないだろう!?」

 

「とりあえず開けてみたら?」

 

「だから!」

 

丈の言葉を無視して冷蔵庫を開けようとする太一たち。

 

(先輩なのに哀れだ~‥‥)

 

丈は哀れむ八幡。

 

「ミミ、ゼリーがいいなー!」

 

「ゼリーってなに?」

 

「よーし、開けちゃえー!」

 

冷蔵庫を開けてみると、そこには‥‥

 

「たまごだ!!」

 

冷蔵庫の中には沢山の卵があった。

それもデジタマではなく、人間界におけるニワトリの卵が‥‥

 

「今日の夕食はこれで決まりだな!」

 

「ちょっ、ちょっと待てよ!」

 

今日の夕食のメニューを想像してウキウキな様子の太一に丈が食いかかった。

 

「食べられるかどうか分からないじゃないか!」

 

「確かに、腐っているかもしれないし‥‥」

 

八幡もその卵が食べられるのかやや懐疑的だ。

 

「大丈夫だよ、毒味だったら俺がやるからさ」

 

「殻を割ってみたら、卵の中身じゃありませんでしたってことも考えられるからな、この世界じゃあ‥‥」

 

デジタルワールドなので、その卵を割ってみても中身が卵の黄身なのかも不明であり、怪しむ要因となる。

 

「それは、割ってみればいいことさ」

 

「まっ、確かに‥‥」

 

「何言ってんだよ! 食べられるにしても、人の物を勝手に食べるなんて泥棒と変わりないじゃないか!」

 

「いや、人の物じゃないと思うが‥‥」

 

カマクラが丈にツッコミを入れる。

 

「仕方ないだろ、腹減っているんだから」

 

「事情を話せば分かってくれるわよ」

 

「何しろ、非常事態ですからね」

 

「夕食はこれで決まりや!」

 

ヤマトと空、それに光子郎とテントモンも卵を食べることには賛成のようで、丈の意見は結局聞き入れてもらえなかった。

 

「城戸先輩‥‥」

 

八幡は再び丈の肩に手をポンと置く。

 

「ひ、比企谷君‥‥」

 

「諦めましょう。こうなったら止められませんよ。もし持ち主が現れたら俺も一緒に謝りますから‥‥それに、人間だった場合、結果オーライじゃないですか」

 

(持ち主が仮にいたとしてもソイツは多分、人じゃないだろうけどな‥‥)

 

「そ、そうだね‥‥」

 

丈はそう返事をしながら、ため息をついていた。

確かに丈自身、お腹も減っているし、それに八幡の言う通り、人が来てくれるなら、結果オーライだった。

しかし、八幡はたとえ卵の持ち主は現れたとしてもそれはきっと人間じゃなくて、デジモンだろうと思っていた。

こうして、みんなは夕食の準備をする。

空は蒸された石の上に卵を落として目玉焼きをつくり、デジモンたちは周辺の木を倒して、それを削り、食器を作る。

八幡はタケルと一緒にゆで卵を作っていた。

なお、かごに関してはデジモンたちが食器と共に制作したものを使用した。

 

「できた!」

 

「いい茹でぐあいだな」

 

「うん!」

 

それぞれの準備が終わり、八幡たちは食事の席についた。

テーブルには目玉焼きにゆで卵、卵焼き――色々な卵料理が並んでいる。

 

「いただきます!」

 

「……いただきます」

 

丈はワンテンポ遅れていたが、とにかく八幡たちは卵料理を食べ始めた。

 

「うん、うまい。こんなまともなメシって久しぶりだよ」

 

「これで白いご飯でもあれば言うことなしだな」

 

「ほかほかご飯にゆで卵!」

 

「確かにいいな‥‥TKG‥‥」

 

温かいご飯なんてしばらく食べていない。

今日は卵を食べることができてラッキーだった。

卵の元の持ち主には悪いけど――。

 

「なんだ?丈、食べないのか?」

 

ゴマモンが丈に話しかける。

目線を自分のお皿から移すと、丈は卵料理に手をつけていなかった。

 

「ああ……うちに帰れば、こんな苦労しなくていいんだなと思ってさ」

 

丈のその一言で、一気に場の空気が重くなった。

 

「……あたし、お家に帰りたい」

 

「みんな、どうしているかな」

 

「あれからもう、三日も経っているんですよね」

 

ミミが呟くと、タケルと光子郎も続けて言った。

 

「……ねぇ、みんな、目玉焼きには何かけて食べる?」

 

沈黙が続く中、空はみんなにそう訊ねた。

おそらくこの重い空気を拭おうとする彼女なりの気遣いなのだろう。

 

「目玉焼きには塩コショウって決まっているじゃないか」

 

「俺、醤油」

 

「何もかけない。そのまま‥‥」

 

「マヨネーズ」

 

「あたしはソース」

 

丈に続いて太一と八幡、ヤマト、そして空がテンポ良く回答する。

 

「僕はポン酢を少々」

 

光子郎がそう答えたとき、流れがピタッと止まった。

 

「へへへへへ……」

 

「ポン酢ね……」

 

「気持ち悪ーい……」

 

太一とヤマト、タケルがドン引きする。

 

「ええー!? みんな変よ! やっぱり目玉焼きって言えばお砂糖よね、あたしその上に納豆のっけたのも大好き!」

 

ミミの発言に、さすがに今回ばかりはフォロー出来ないほどみんなドン引き、八幡もカマクラもドン引きであった。

 

(太刀川ってゲテモノ好きか?)

 

(腹壊さないのか?)

 

「納豆!?」

 

「それ変過ぎだよー!!」

 

空とタケルが叫んだ後、太一とヤマトは変な笑い声をあげていた

 

「ええ!? みんな目玉焼きにそんな変なものをかけるのか……ショックだ……日本文化の崩壊だぁぁぁぁー!!」

 

「落ち着つけって」

 

「何を訳わかんないこと言ってんだよ」

 

八幡と丈を宥めていると、ゴマモンが呆れたように言った。

 

「おい、丈?」

 

ヤマトも心配した様子で話し掛ける。

 

「そこまで悩むか、普通? まっ、納豆は悩むかもしれないけどな」

 

「だって、目玉焼きには塩コショウだもの。ソースでもマヨネーズでもなく、塩とコショウ!」

 

太一の言葉に丈は頑固に言い張っていた。

 

「何をかけてもいいじゃないか‥‥先輩、それはエゴというモノだぞ」

 

「やれやれ、丈は融通が利かないなぁ」

 

「なんだと!?」

 

「だってそうだろう? どうでもいいことで悩むし」

 

「僕のどこが、融通が利かないんだよ!」

 

「ほら、すぐムキになる」

 

徐々にゴマモンとの言い争いがヒートアップしてくる。

 

「あーあ、始まった」

 

ピヨモンが頭を抑えた。

 

「おい丈、落ち着けよ!」

 

ゴマモンに拳を握っていた丈をヤマトが抑えた。

 

「うるさい!」

 

なだめようとしたヤマトの手を丈が振り払う。

 

「僕は落ち着いているよ! いつだってね……!」

 

「今日はどうかしているぞ。疲れているんじゃないのか……?」

 

ヤマトは困惑の表情を浮かべたが、そのまま丈を宥めた。

 

「疲れてなんかないよ! どうかしているのは、みんなの方だ!!」

 

そう言って丈はどこかへ行ってしまった。

そして、彼はこちらを一切、振り返らなかった。

 

 

食事が終わった後、太一とヤマトがまた口論を始めた。

 

「何度も同じこと言わせるなよな!」

 

「ダメだ、危険過ぎる!」

 

「八神も石田も、そんなに声を荒立てるなよ」

 

八幡は二人を宥めた。

 

「考えていたってしょうがないだろう!?」

 

「俺は、『少しは考えろ』って言ってんだよ!」

 

「じゃ、何か? 俺は何も、何も考えてないってか?」

 

「その通りだけど」

 

「ああん!?」

 

徐々にヒートアップしていく太一とヤマト。

 

「はぁ~ダメだ、こりゃ‥‥こいつら、完全に頭に血が上っているよ‥‥」

 

「どうしたんだ?」

 

思わずため息をつくと、いつの間にか丈が戻ってきていた。

 

「ん?ああ、先輩」

 

八幡は太一とヤマトを放置して丈の傍に移動する。

 

「比企谷君、何を揉めてんだ? あの二人は‥‥?」

 

「ムゲンマウンテンに行くか行かないかで揉めているんです」

 

光子郎はそう言うと、ファイル島のなかでも一番高い山を指差した。

 

「ムゲンマウンテン?」

 

「あの大きな山のことや」

 

「太一は、あそこに行けば全体が見渡せるって」

 

「確かに、あのくらい高い山なら全体を見渡せる」

 

空の言葉に丈が頷いた。

 

「でもヤマトは危険だからって反対しているのよ」

 

「あの山には凶暴なデジモンがたくさんいるのよ」

 

「うーん、なるほど。それは危険だ」

 

空とピヨモンがそう続けると、丈も納得する。

 

「なんだよ! そんな逃げ腰じゃ埒があかないだろう!」

 

「お前の無鉄砲に付き合わせて、みんなを危険に晒すつもりかよ?」

 

「なんだと!?」

 

「待ってくれよ、二人とも! まずは落ち着いて話し合おう、喧嘩しないでさ」

 

そして未だ言い合いを続けているニ人に丈が仲裁に入った。

 

「で、丈はどう思う?」

 

「え?」

 

「どっちに賛成なんだよ?」

 

「うーん……太一の言っている事は正しいよ、あれに登ればこれからの指針にはなると思うよ」

 

「ほら見ろ」

 

太一はヤマトに向けてドヤ顔を見せた。

 

「だけど、ヤマトの言う事ももっともだ。みんなを危険に晒してまであの山に登る意味があるのか、って言うと……」

 

丈は首を傾げて悩んでいた。

その様子を見た太一とヤマトが肩を落とす。

 

「ともかく、行ける所まで行こうぜ!」

 

「だから、違うって言っているだろう!」

 

「待てよ! 今考えているんだから、ちょっと待てって! 落ち着けよ!」

 

「熱くなっているのは丈の方だろ!?」

 

「な、なんだよ!? 僕は君たちを‥‥」

 

「だーから、行けばいいんだよ!」

 

「なんでそうなるんだ!?」

 

「……聞けよ! 俺の話も!!」

 

そして丈までもが二人と言い争いになってしまった。

 

「ストップ! 三人とも、いい加減にしてよ!」

 

「上級生3人が大声で言い争っていたら怖いでしょう!?」

 

「今日の所はもう遅いし……」

 

「そうそう、寝る時間だよ」

 

「続きは明日にしようよ。明るくなればもう少し周囲の状況も見やすくなる」

 

空と八幡で三人を止めると、デジモンたちもそれに賛同するように言った。

 

「他のみんなも心配そうだし、ほら行きましょう!」

 

「はいおやすみ」

 

そう言いながら空とデジモンたちは太一とヤマトの背中を押し、強引に寝床へと連れてゆく。

タケルたちも後に続いた。

そこに残されたのは丈、一人のみだった。

 

みんなが寝静まった中、丈は一人起きていた。

そして「僕が……」と呟くと、洞窟の外へ出る。

 

「やれやれ、思った通りだ‥‥ゴマモン、お前も起きているんだろう?」

 

八幡は横になっているゴマモンにも声をかける。

 

「バレてたか」

 

「真面目な優等生、ましてやこの中で最年長となると、やりそうな事もだいたいわかる。行くんだろう?」

 

「勿論さ、丈は俺が居ないと危なっかしいからな」

 

八幡とゴマモン、そしてカマクラは丈を追いかけた。

そして、山に登ろうとしている丈にゴマモンが声をかける。

 

「あーあ、カッコつけちゃって。1人であの山に行くつもりかい?」

 

「ゴマモン! それに比企谷君にカマクラまで!?」

 

丈は驚いた表情でこちらを見る。

 

「止めても無駄だぞ」

 

「だろうね」

 

「さっ、どうぞ」

 

「とっとと行っちまえー!」

 

八幡、ゴマモン、カマクラは止める様子もなく、丈を見送ると、彼は山を登り始める。

そして、八幡たちはその後ろを歩く。

 

「ついてくるな、僕は一人でいく!」

 

「別にぃ? オイラもあの山に用があるんだ」

 

「俺は‥‥天体観測をするために山を登っているんだ」

 

「苦しい言い訳だぞ、八幡」

 

「うるせぇよ」

 

「……勝手にしろ」

 

「「勝手にしまーす」」

 

そして結局、八幡たちは仲良く並んでいくことになった。

 

「まったく、素直じゃないなあ丈は」

 

「何が」

 

「一人で心細かったんだろ?」

 

「馬鹿言うな!」

 

「いいって、いいって、気にすんな」

 

(これが俗にいうツンデレなのか?)

 

ゴマモンと丈のやり取りを見てそう思うカマクラであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。