やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか?(リメイク版) 作:ステルス兄貴
ファイル島はその名前の通り、周囲を海に囲まれた絶海の孤島だった。
ムゲンマウンテンからファイル島を見下ろした丈が呆然としながら言った。
「なんてことだ……」
足音がしたので振り返ると、そこにはヤマトたちがいた。
「ここは本当に、島だったんだ……。これからどうすればいいんだ、僕たちは……!」
丈はそれに気づくことなく嘆いている。
「どうすればいいんだー!?」
そしてついに丈は叫んでしまった。
「八幡はあまり取り乱していないね」
ゴマモンが自分のパートナーと八幡との違いを冷静に比較して訊ねてくる。
「ここは島って聞いていたからね。ある程度覚悟はしていたしな」
「太一ぃ! 何しているの?」
そんな中、太一は何かをしているみたいで、アグモンは太一に訊ねた。
「地図を作っているんだ。これから何かの役に立つかもしれないからな」
「なるほど、それはいい考えですね」
光子郎はそう言うと、太一の後ろから地図を覗き込んだ。
「………」
光子郎の表情が固まる。
なんだなんだと、他の人も釣られて覗きこむと――。
「とても役に立つとは思えん」
「太一って、図工苦手だったよね……」
「こいつはひでぇ‥‥八幡でさえ、もう少しまともな絵をかけるぞ」
ヤマトと空、そしてカマクラはその地図らしきものを酷評した。
「描いた本人がわかっているからいいんだよ!」
「地図なんて書いても無駄だよ……もう、どうしようもないんだ……」
「……どうして、こんな事になっちゃったのかしら」
「ミミ……」
丈とミミは八幡たちの後方で絶望していた。
そんなミミを心配するようにパルモンが声を掛ける。
すると突然、何かが崩れるような音が聞こえた。
「なんだ!?」
音のした方へ向かうと、今さっき通った道が割れていた。
「通れなくなっている……」
ムゲンマウンテンを下りるなら、往路と異なるルートを通らなければならなくなった。
別の登山道で、ムゲンマウンテンを下りていると、道の先に二足歩行のライオンが現れた。
「あっ、レオモンだ!」
「レオモンって?」
「レオモンはいいデジモン!」
「とっても強い、正義のデジモン!」
タケルの問いにパタモンとガブモンが答えた。
(なんか、これフラグじゃねぇか?)
これまでのパートナーデジモンのデジモン情報がことごとく外れていることから、今回もなんだか外れるような気がした八幡。
レオモン
レベル:成熟期 タイプ:獣人型デジモン 属性:ワクチン
百獣の王、気高き勇者とも呼ばれる獣人型デジモン。
狂暴なデジモン達が多い中、強い意思と正義の心を持っており、数多くの凶悪なデジモンを倒してきた。
また、破壊の限りを尽くす“デジモンハンター”のオーガモンとはライバルである。
日々の鍛錬で鍛え上げられた強靭な肉体はあらゆる攻撃に耐え、必殺技の究極奥義『獣王拳』で敵の息の根を止めてしまう。
「獅子王丸」という意思を持った妖刀を腰に携えている。
「子どもたち……倒す!」
レオモンはそう呟いて腰に帯びている剣を抜き出した。
「やっぱり当たった!!コイツも暴走してんじゃねぇか!!」
レオモンの言動から、今回もパートナーデジモンたちのデジモン情報が外れたことに思わず声を上げる八幡。
「そんなー!」
八幡がそう叫ぶと、パタモンは戸惑いの声をあげた。
「逃げろっ!」
ヤマトの号令で私たちは一斉に逃げ出した。
「あっ!」
逃げている途中で太一の地図が飛んでいった。
「太一!」
「太一さん、レオモンが!」
太一は逆戻りして地図を追いかけたが、すぐ後ろにレオモンが迫っていた。
「ああ!」
「ベビーフレイム!!」
アグモンの必殺技でレオモンが怯む。
そのうちに太一は逃げ出した。
しかしベビーフレイムに巻き込まれ、折角太一が描いた地図まで燃えてしまった。
「太一ごめん、地図まで燃えちゃったー」
「しょうがないよ!」
そのまま八幡たちが進んでいくと、曲がり角から緑の鬼のようなデジモンが現れた。
「はーはっはっはっ、いらっしゃーい!」
「ああ!」
「待っていたぜ、覚悟しな!」
「オーガモンだ!」
パタモンが驚きの声をあげた。
オーガモン
レベル:成熟期 タイプ:鬼人型デジモン 属性:ウィルス
東洋の伝説に登場する「オニ」のような姿をしたデジモン。
恐ろしく発達した筋肉から繰り出される攻撃はすさまじい破壊力を持つ。
知性は高いが気性が荒く、「怒り」を原動力としている彼らは破壊の限りを尽くす。
非常に好戦的で、自分より遙かに戦闘力の高い相手にも果敢に戦いを挑むところから“デジモンハンター”と呼ばれている。
右腕に持つ骨棍棒はスカルグレイモンを倒した時の戦利品なのだ。
必殺技は巨大な両腕から繰り出される『覇王拳』。
「あれも本当はいいデジモンなの?」
「正真正銘の悪い奴だよ!」
「見かけから見ても分かるだろう!?」
カマクラが冷静にツッコミをいれる。
レオモンはこれまで見てきたデジモンの様に暴走しているみたいだが、オーガモンは暴走している様には見えない。
(オーガモンにはあの黒い歯車が入っていないのか?)
(それともウィルス種のデジモンにはあの黒い歯車は効果がないのか?)
オーガモンを見つつ、これまで見てきた暴走デジモンとオーガモンの違いを分析している八幡。
すると、
「うわっ!」
ミミの声に振り返ると、先ほどのレオモンが剣を構えてすぐ後ろに迫っていた。
「選ばれし子どもたち、倒す!」
「しまった、挟まれた!」
「最初から僕たちをここに追い込む作戦だったんですよ!」
ヤマトと光子郎がそう叫んだ。
「そんな、レオモンとオーガモンは敵同士なのに!」
ピヨモンも困惑気味にそう言った。
「レオモンもこれまでのデジモンと同じ様に暴走しているみたいだ」
「じゃあ、コイツの体の中にもあの黒い歯車が?」
「多分な‥‥」
「骨こん棒!」
「獅子王丸!」
「うわあああ!」
ついにレオモンとオーガモンが八幡たちに襲いかかる。
すると、太一たちのデジヴァイスが光り始めた。
アグモン進化――――グレイモン!
ガブモン進化―――――ガルルモン!
パルモン進化――――トゲモン!
グレイモンがレオモンに頭突きをかます。
その間に他のデジモンも進化し始めた。
ピヨモン進化―――バードラモン!
テントモン進化――――カブテリモン!
ゴマモン進化――――イッカクモン!
今度はイッカクモンの角で、オーガモンを押しやる。
「武石、こっちだ!」
八幡に引っ張られ、タケルは岩陰に隠れた。
タケルのパートナーデジモンのパタモンはまだ成熟期のデジモンに進化できない。
自分がもし、敵ならば弱い奴から仕留める。
だからこそ、八幡はカマクラをパタモンとタケルの護衛にまわした。
それに、カマクラはさっきのユニモンとの戦いで進化をして戦ったので。体力を消耗している。
無理に進化をしての連続でのバトルはキツイだろう。
「行けっ、グレイモン!」
太一の声援を受け、グレイモンはレオモンに火の塊を吐いた。
「ハープーンバルカン!」
「チクチクバンバン!」
イッカクモンはオーガモンに、トゲモンはレオモンに必殺技を放つ。
「いけるぞ、一気にやっつけろ!」
太一は勝利を確信してそう言った。
それぞれに三対一、優勢だ。
このまま押し切れば――!
「トドメだ!」
「メガフレイ……」
グレイモンが必殺技を放とうとしたそのとき、突然崖から岩が崩れ落ちた。
「崖崩れだ!」
その際、八幡がタケルを庇った。
「フォックスファイヤー!」
「メテオウィング!」
「メガブラスター!」
「メガフレイム!」
デジモンたちの攻撃で、岩が粉々になる。なんとか助かったようだ。
「みんな、大丈夫か!?」
「こっちはなんとかな」
「もういや、こんなの!」
ふとデジモンたちを見ると、全員が地面に伏せていた。
「アグモン!」
みんなはそれぞれのパートナーの元へ駆け寄った。
「大丈夫、ちょっと疲れただけ……」
「今日、2回目の進化だからな……」
「あいつらは!?」
空が顔をバッと上げた。
「そうだ、オーガモンが!」
「いてまへんな……」
「レオモンも……」
見渡すと、確かにレオモンもオーガモンも見当たらない。
八幡たちを仕留める絶好の機会だったのに‥‥
「今のがけ崩れに巻き込まれたのかも‥‥」
「うわぁ~……ここから落ちたら助からないよ!」
丈が崖の下を覗きながら言った。
「レオモンもオーガモンも飛べそうもないわよね」
「ええ」
空の言葉にピヨモンが頷く。
レオモンもオーガモンも翼を持ったデジモンではないので、飛行属性があるとは思えない。
本当にここから崖下に真っ逆さまの状態で落ちたのであれば、もしかしてとあるが、どちらのデジモンも成熟期デジモンとはいえ、武術に秀でているデジモン‥‥
受け身や何らかの方法で生きている可能性は十分にある。
「じゃ、じゃあ助かったんだ僕たちは! なーんてついてるんだ、あはは!」
丈が変なテンションではしゃいでいる。
それを見たみんなもほっとした表情になったが、八幡とカマクラは腑に落ちていない様子だった。
「どうした?太一」
「珍しく真面目な表情していますね」
そんな中、八幡とカマクラ同様、太一は深刻な顔をしていた。
「珍しくは余計だ! ……なんで急に崖が崩れたのかと思ってさ」
「向こう側の道が崩されたときに、ヒビでも入っていたのかもしれませんよ」
「そうか……」
太一は光子郎の推測に納得したようで、そのまま歩き始める。
(確かに八神の言う通り、あの崖崩れ‥‥本当に偶然か?タイミングが良すぎたようにも見えた)
色々と腑に落ちない点が多々あったが、ここからでは今更確認はできないので、八幡とカマクラは、みんなと一緒にムゲンマウンテンを下りた。
時刻は夕暮れ、八幡たちは森の中を歩いていた。
「どう考えても変ですよ、一日に二回も進化なんて‥‥」
光子郎は不安そうに言った。
「いいじゃねぇか、お陰で助かったんだから」
光子郎は別の点で腑に落ちないところがあったが、太一はあくまでもお気楽‥と言うか、結果オーライだと言う。
まぁ、太一の言うことももっともなのだが‥‥
「でも……」
「太一さん、ちょっと楽観的すぎですよ」
「失礼だな!」
光子郎は太一に頭をグリグリとやられる。
「いててて! ぎぶ、ぎぶ!」
「……ねえ、デジモンたちがパワーアップしているとは考えられないかしら」
空が思いついたように言った。
「そうか、その可能性もありますね」
「だがそうだとしても、流石に今日はハードすぎるな」
ヤマトの言葉にデジモンたちを見る。
たしかにみんな疲れきっていた。
「大丈夫? パルモン」
「全然大丈夫じゃない……」
「もう歩けないよ……」
パルモンとピヨモンも弱音をあげている。
「駄目だ……どこかゆっくり休める場所を探した方がいいな」
ヤマトの一声で私たちは歩みを止めた。
「そうね、あたしたちもかなり……」
「あーっ!」
そのとき、丈がいきなり大声をあげた。
「あ、あれ!」
丈の指をさす方向を見ると、そこには大きな洋館があった。
そこで、みんなはそこを目指す。
目の前に辿り着くと、丈が騒ぎ出した。
「やった、普通の建物だ! 今度こそ人間が住んでいるに違いない!」
「待て、いきなり入ったら危険だぞ!」
丈は喜んで洋館に向かった。
ヤマトが止めていたが、あれでは聞く耳も持たないだろう。
太一も続けて走ろうとしたが、急に動きを止めた。
「どうした?太一」
「この建物、上から見た時、あったかな?」
ムゲンマウンテンから見下ろした時、こんなにも大きな洋館の姿を見た覚えがない。
「確かに‥‥いや、あったら多分気づいている」
「だよな……」
「地図に何か書いてないの?」
「それは……」
「無くしちゃったの?」
とぼけたこと言うアグモンを太一がジト目で見る。
「お前が燃やしちゃったんだろ!」
「あ、そっか」
そうこうしているうちに、丈が玄関の戸を開ける。
太一たちは急いで追いかけた。
「ごめん下さーい、誰かいませんかー?」
丈が呼びかけてみたものの、中から返事はない。
「どんな様子だ?」
「特におかしいところはないようだが……」
「それだけに、かえって不気味ですよ」
「そうね」
「何か罠があるかも……」
何かあるのではないかと、疑う者もいた。
「君たち、まさか引き返そうって言うんじゃないだろうね!? こんな立派な建物があるってのに!?」
反対に丈は、全く警戒していない。
「うわあ、綺麗な絵!」
タケルとミミが丈の背後にあった絵の元へ駆け寄った。
「あは、本当に綺麗! 天使の絵?」
「タケル、天使って?」
「うーん、それはねぇ」
「こんな綺麗な天使の絵が飾ってある所に、悪いデジモンがいるはずないじゃないか!」
「まぁ、確かに今更野宿っていうのも厳しいわね……」
「仕方ないか……」
丈の言い分には1ミリたりとも納得出来ないが、デジモンたちはもちろんテイマーたちも疲れている。
体力を回復しなければ、デジモンたちは進化もできなければ満足に戦うこともできない。
「おい、みんないくぞ!」
「え? うん……」
そして太一が扉を閉めた。
妙にその音が響いたのは気のせいだろうか?
こうして、八幡たちはこの怪しい館に一泊することになった。