恭子さんと咲とライバルと   作:ウメ、

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咲さんは原作よりも負けず嫌いを意識してます。


再会

 

「ツモ……500、300です。」

 

 万感の想いを込めて宣言する。これが私達の集大成、最後の和了。

 

 少しの静寂の後、試合の終わりを告げる甲高い音が鳴り響く。

 

 対戦相手が涙を流し立ち去って行くなか、一人椅子に深く腰掛けたまま。動きたくない。

 

 これで3年間が終わる。

 成し遂げた事の達成感よりも勝利を勝ち取った嬉しさよりも、そんな寂しさが込み上げる。

 

「「「「咲(さん)!!」」」」

 

 チームメイトが迎えに来てくれた。

やっと立ち上がり、笑顔でその手を取り輪の中に加わる。

 

 それからは笑って泣いて。

五人で身を寄せあって優勝を分かち合った。

最後だって分かってるから、みんなでめいいっぱい喜びあった。

 

 

 

「インターミドル前人未到の三連覇。そして宣言通りの完全優勝達成です!!!」

 

 

 

 アナウンサーの興奮した声がどこかから漏れ聞こえていた。

 

 

 

*****

 

 

 

「全く……あなたは私に恨みでもあるんですか?末原先輩」

「そんなわけないやろ。ほら大丈夫か?」

 

 咲はそう言って差し出された手を取り立ち上がろうとする。しかし倒れた時か足を軽く捻っていたようで再び倒れそうになる。

 

「つっ!?」

「危なっ!?……いやんか。肩貸すからベンチまで行くで」

「ありがとうございます」

 

 しっかりと受け止め、そのまま中庭のベンチまで移動する。初めて会った場所で今度は2人で隣り合って座る。

 

 

 

 

「この通りや、本当にすまん」

「少し休めば大丈夫ですから、あまり気にしないでくださいね」

「しかしやな……」

「私が言ってるからいいんですよ」

「そう言ってもらえると助かるわ」

「まあ全く気にされないのも癪ですが」

 

 咲はそう言って微笑む。恭子の表情は僅かに固まるが、気を取り直して先ほどから気になっていたことを質問してみる。

 

「知ってたんやなうちの事」

「えっ?どうしてですか」

「さっき名前で呼んでたやんか」

「ああ。クラスメイトに聞いたんですよ。末原先輩って意外と人気者なんですね」

「意外ってどういうことや」

 

 恭子は自分に人気があると思っているわけではないが、それでも意外と言われるのは心外だったのか抗議する。

 

「初対面で名前を叫びながら近寄るスパッツ女子を人気者だと思うのは無理です」

「うぐっ、事実でも言わんでくれ……」

「それでも憧れる人はいるんですね」

 

 恭子は改めて先日の自分の行動を思い返し、咲の言葉が真実であることが突き刺さる。

しかし麻雀部を率いる者がこんな事でメゲてはいられない。と強引に本題に話を変える。

 

 

 

「宮永は麻雀部には入らないんか」

 

 入部試験に来なかったのだから入る意思は無い。そう思いながらも恭子は確認の意味もかねて聞いてみる。

 

「あなたも勧誘ですか」

(うちも?)

「……麻雀部には入りません」

 

 露骨に落胆を態度に示す。答えは明確な否定。

 

「勧誘が目的ならお話は終わりですね」

「そう急くなや。折角会えたんやし、まだまだ話したいことあんねん」

 

 変わらずイヤそうな態度をくずさない咲だが恭子もようやく訪れた機会をそう簡単には逃せない。まだ咲に聞きたい事も聞けていない。

 

「私には特に無いですね」

「きっついなあ。……実はな私と

 

 

(って話始まるんだ……これが大阪人?)

 

 

 話半分に聞きながら、少々失礼な事を考える咲。だが唐突に耳に飛び込んで来た言葉に思わず吹き出してしまう。

 

 

「前から好きやってん。やから一度会って話して見たかったんや」

「ぶっ!?!?」

「?急にどないしたん」

「こっちの台詞ですよ!」

「?」

「い、いきなりすっ……」

「す?」

「す……好きとか……言わせないでください!!」

 

 赤面しながら絞り出した言葉も恭子には真意が伝わらなかったようだ。

 

「何でや?うちは好きやで……宮永の麻雀」

「……麻雀?」

「他に何かあるんか?」

「……」

 

 咲が一気に無表情になる。自身の勘違いに乾いた笑いが漏れるのか微かに笑ってるようにも見える。そんな表情だ。

 

 

「せやから宮永が麻雀を止めてまうのは本当に残念なんや」

「……」

 

 今度は間違いなく無表情だった。

 

「その反応だとあの噂は本当みたいやな」

「噂?」

「″宮永咲は麻雀を止めた。二度と打つことはない″そう聞いたで」

 

 恭子が最も確かめたかった事だ。本人に直接聞くことに躊躇いもあったが、″麻雀部には入らない″という咲の宣言が迷いを捨てさせていた。

 

「そんな噂まであるんですか。笑えますね」

 

 咲の顔に表情が戻る。笑っているようにも思えるがその心内はわからない。

 

「確かにそれに近い事を言った覚えはありますね。確か″もう大会では打たない″だったと思います」

「……という事は麻雀自体は止めてないんか?」

「ええ、頼まれれば打つ程度ですが、今でもたまに打ちますよ」

「頼む!!うちと打ってくれ!半荘、いや東風でもええ」

「は、はい」

 

 ここぞとばかりに対局を申し込む恭子の勢いについ頷いてしまう咲だったが、その純粋な姿勢は咲にとっても好ましい物だった。

 

 

 

*****

 

 

 

 恭子はあの後足は大丈夫だと主張し一人で帰ろうとする咲を強引に保健室へ連れていき、先生に咲を任せ帰路に着いていた。

 

(たまには早退するもんやな。話すのほぼ初めてやのに、なんだか不思議な時間やったな)

 

 麻雀の約束を取り付けた後も二人はしばらくベンチで会話を楽しんだ。それは麻雀の関係ないただの一年生と三年生の他愛のない会話だ。しかし麻雀漬けだった恭子と入学したばかりの咲にとっては新鮮な会話だった。 

 

(それにしても気が向いたらか……)

 

 

 

~保健室前~

 

 

「麻雀の約束やけど、何時でもええから麻雀部の部室に来てくれへんか」

「気が向いたら行きますね」

「宮永なら来てくれると信じてるで」

「あなたは一体私の何を知ってるんですか」

 

 

~帰路~

 

 

 

(いつ来てもええように準備だけはしとかんとな。宮永の相手となると最近休みがちのエース様にも出張ってもらわな)

 

 恭子はとんとん拍子で決まった咲との対局。以前咲の対局を映像で見たときから感じていた自分との共通点、大会で打たない理由、と気になることは沢山ある。しかしそれよりも何よりも楽しみだった。

 

(宮永対策どないしよ……あー速く帰ろ)

 

 恭子は早退を命じられた人とは思えない充実した精気溢れる表情で家をめざした。

 

 




末原さんは主人公
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