【短編】悪魔な白猫は純真過ぎる少女を守りたい   作:ウルハーツ

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純真過ぎる少女は喧嘩して、聖剣使いと一夜を過ごす

「小猫の馬鹿! 大っ嫌い!」

 

「!?」

 

 ある日、ミッテルトが居候をしている奏の家に帰宅した時。突然聞こえて来る奏の怒鳴り声がその耳へ届いた。表情豊かな奏だが、ミッテルトは未だに彼女が怒った姿を見た事が無い。故にその怒りの声に驚き戸惑う中、リビングから走る足音が聞こえ始める。そして姿を見せたのは、先程怒鳴ったであろう奏。彼女はミッテルトに気付かず玄関で靴を履くと、ドアノブへ手を掛ける。薄っすらと、その目に涙を浮かべて。

 

「ちょ、奏! 何処に行くッスか!?」

 

 外は既に夕暮れを迎えており、今から外出は余り良いとは思えない。だがミッテルトの声も届かないのか、そのまま奏は家を飛び出してしまった。今すぐ追い掛けるべきか迷うも、原因がサッパリ分からないミッテルト。怒鳴り声に小猫の名前が含まれていた事から、彼女に何か関係があると察したミッテルトはまず小猫を問い質す為にリビングへ。

 

「小猫! 一体奏に何を……したッス……か?」

 

「……嫌い……奏さんが、私を嫌い……」

 

『にゃ~』

 

『にゃ~?』

 

「お帰り」

 

『にゃぁ』

 

 勢いよく入ったものの、目に映った光景にミッテルトの勢いには急ブレーキが掛かる。床に両手をついて四つん這いの体勢になったまま、小さな声でブツブツと呟く小猫の目に光は無い。明らかに奏から言われた言葉にショックを受けており、そんな彼女の周りをエリザベスとスフィンクスが回り続ける。そしてそんな光景を眺めながら平然とお菓子を食べるオーフィスと、彼女と同じソファで丸まっていたシロがミッテルトを出迎えた。

 

「えっと……何があったっスか? オーフィス」

 

「ん……小猫が奏の楽しみにしていたお菓子を知らずに食べた。奏、怒った。家出した」

 

「家出って……奏、ここ自分の家っスよ」

 

 奏から嫌われたと絶望する小猫の姿を尻目に、オーフィスから話を聞いたミッテルトは奏の行動に思わず頭を抱えた。理由も分かった事で、奏を探して説得しに行く為にリビングを出ようとするミッテルト。だが玄関へ行く前に、その足を止めて振り返らずに小猫へ彼女は告げた。

 

「落ち込むのは良いッスけど、それより奏を見つけて謝る方が良いっス」

 

「……そう、ですね」

 

 ミッテルトの言葉に何とか我に返った小猫は立ち上がり、彼女と共に奏を探す為に家を後にする。……一方、2人が探しに行くのを見ていたオーフィスは目を閉じて奏の傍に忍ばせた自分の眷属越しに彼女の様子を伺い始める。現在奏が居るのは自分と出会った公園のベンチ。既に泣き止んでいる様で、小猫へ言い過ぎたかもしれないと後悔し始めている様子だった。

 

『でも、小猫が悪いんだもん。ずっと楽しみにしてたのに……! でもでも、あんな言い方しなくても良かったかな……』

 

 だが再び思い出して頬を膨らませながら怒りを露わにし、また小猫への言葉に後悔を始める。同じ様な事が何度も繰り返される中、彼女の元へ1人の人影が近づき始めた。オーフィスは眷属越しに、その正体にすぐに気が付く事が出来る。

 

「……悪魔。でも、聖なる力も感じる」

 

『?』

 

 目を閉じて呟いたオーフィスの姿にシロが気付いて見つめる中、彼女の目に人影の姿がはっきりと映り始める。見えた最初の特徴は青い髪。性別は女性の様で、その服装は奏と小猫が普段着ている学校の制服と同じものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しいな、こんな時間に。何かあったのか?」

 

「ぁ……ゼノヴィア先輩!」

 

 奏が公園で出会ったのは、ゼノヴィアであった。偶然なのか故意なのか、その事実はゼノヴィアにしか分からない事。彼女の存在に気付いた奏がその名前を呼べば、ゼノヴィアは嬉しそうに微笑みながら同じベンチへ腰掛ける。

 

「泣いた後の様だな。何があった?」

 

「……友達がね。私の楽しみにしてた物を取っちゃったの」

 

「それは、辛いな」

 

「でもね! 業とじゃ無いんだよ。知らなかったって、言ってた。でも私、怒っちゃった。大っ嫌いって、言っちゃった……」

 

「なるほど。それで顔を会わせ辛いのか」

 

 ゼノヴィアは現在、小猫と同じリアスを主としている。当然部活も同じオカルト研究部であり、今までの生活の中で小猫と奏が近い関係性にある事も把握済み。故に、名前を出されずとも奏の言う友達が小猫である事は簡単に理解出来た。大事な物と言うのがどんな物かまでは分からないが、2人が喧嘩する程奏にとって重要な物だったのだと察する。

 

「だがこのままここに居続ける訳にもいかないだろう。帰った方が良いのではないか?」

 

「そう、だけど……」

 

 小猫が奏の家に入り浸っている事も知っている為、渋る奏の姿を見てゼノヴィアは納得した様に頷いた。

 

「仕方ない。奏、今日は私と一緒に過ごそう」

 

「? ゼノヴィア先輩と?」

 

「あぁ。家……は駄目だな。何処かで過ごして、明日謝れば良い。今はお互いに反省する時だ」

 

「……うん。ゼノヴィア先輩が良いなら、そうしよっかな」

 

「決まりだな」

 

 ゼノヴィアの提案を受け入れてベンチから立ち上がった奏の姿を見て、満足そうに頷きながらゼノヴィアも立ち上がる。彼女は今、自宅で鞄の中に入っている2冊の本……『友達を家に呼ぶ100の方法』と『子供の優しい慰め方』に感謝しながら、奏の手を自然と引いて公園を後にする。

 

 その後、ミッテルトと小猫が奏を探しに公園へやって来る。小猫の鼻が奏の匂いを嗅ぎつけたからだ。しかし彼女の匂いはベンチに濃く残っているものの、公園から外に出た形跡は無かった。まるでベンチで消えてしまったかの様に。その代わり、感じる謎の匂い。まるで匂いを妨害する様なその匂いのせいで、小猫は鼻による奏の捜索が出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 家では無い場所で寝泊りするとなれば、その場所にも様々の種類がある。旅館やホテル。ホテルと言っても、ビジネスやカプセル等々。

 

「2人で明日の朝までで良いな」

 

「ホテル、初めて泊まる! ゼノヴィア先輩は?」

 

「私もそう多くは無い。特にこの種類のホテルは初めてだな」

 

「そうなの?」

 

「あぁ」

 

 受付の居ないロビーにて、端末を操作するゼノヴィアの傍で周囲を見回す奏。すると傍にあったエレベーターが到着し、その扉が開かれる。出て来たのは2人の男女。少し頬を赤らめた2人は足早に建物を後にする。少し女性の歩き方は不安定で、奏は怪我をしているのかと首を傾げた。

 

「支払いも済んだ。行くとしよう」

 

「あ、うん。あ! お金、どうしよう」

 

「ふっ、気にするな」

 

「……ありがとう、ゼノヴィア先輩」

 

 操作を終えて部屋を借りる事が出来たゼノヴィアが呼ぶ声に返事をして、奏は彼女と共にエレベーターへ乗り込む。そしてその中で自分が家を飛び出した故にお金を持っていない事を思い出した奏。だがゼノヴィアは笑みを浮かべて答え、原因を思い出して少し肩を落としながらも奏は彼女へお礼を告げた。

 

 到着した階で先行するゼノヴィアについて行けば、やがて入室した部屋は壁や明かりがピンクの派手な空間だった。部屋の半分以上を占める大きなベッドが置かれており、テーブルは隅に。ガラス越しの冷蔵庫も置かれていた。

 

「なるほど。飲みたい時は自販機の様に買えば良いのか」

 

「うぅ……」

 

「さっきも言っただろう? 気にするな。何か飲みたくなったら、遠慮なく言ってくれ」

 

「うん。今度、絶対に返すからね!」

 

 何でも奢られてばかりではいられない。必ず返す事を約束して、奏は部屋の中を眺め始める。すると、隣に部屋がある事に気付いた奏。しかしそこは鍵が掛かっているのか開けられず、首を傾げてしまう。

 

「ゼノヴィア先輩、ここには何があるの?」

 

「……さぁ、何だろうな。取り敢えずもう夜だ。まずは風呂に入るとしよう」

 

「あ、うん。ゼノヴィア先輩、先に入って良いよ!」

 

「いや、せっかくだ。一緒に入ろう」

 

「一緒に? あ、ホテルだとお風呂も広いの? 分かった! 背中、洗ってあげるね!」

 

 ゼノヴィアの提案を受け入れて、奏はお風呂場へ向かう。代えの服は用意していないが、バスローブが2人分用意されている為、お風呂上がりの服も問題は無かった。……何方も大人用の為、唯一の欠点は奏に大き過ぎる事である。

 

 同じ女性同士。しかも知らない間柄では無い為、奏はゼノヴィアを信頼していた。故に躊躇もせずに着ていた服を脱ぎ始める。そしてそんな様子をゼノヴィアは自分の服も脱ぎながら、ジッと目に焼き付けるが如く眺め続けていた。余りにも強い視線に気付いた奏が「どうしたの?」と質問すれば、ゼノヴィアは「綺麗な肌だな」とそれらしい理由を述べる。当然、奏は最後まで警戒する事は無かった。

 

「うわぁ! 広い! でも、思ったよりは広く無いかも」

 

「ホテルと言っても個室だからな。そこまで大きくは出来ないだろう」

 

「でも、私の家よりは十分に広いよ! あ、入浴剤も色々ある! 見た事無いのばっかり!」

 

「確かに色々あるな。…………よし、これを使って見るとしよう」

 

 裸にタオルを持った2人の声がお風呂場に反響する。ゼノヴィアは奏に言われて入浴剤を眺めた後、その効能やお湯の変化を見て使う物を決定する。普段はお目に掛かれない泡風呂等になる入浴剤もある中、ゼノヴィアが手に取ったのはこれまた一般の家庭では早々手にする事の無い効果のある入浴剤。予め張られていた湯の上で封を切り、粉を中へ落とす。楽しそうに入って行く粉を眺めた奏が両手でお湯を掻き回せば、すぐに効果が現れ始めた。

 

「あれ? 何か、水の感触が……ヌルヌルする!」

 

「面白そうだろう?」

 

「うん! あ、でも入ったら滑っちゃいそうだね! 気を付けないと」

 

 お湯の変化を楽しんだ後、軽くシャワーで身体を流してから一緒に湯船へ。浴槽は入浴剤を使われる事を見越して滑らない仕様になっているが、それでも不安だった奏はゼノヴィアと両手を繋いで浴槽へ入った。後に2人は同時に湯船へ身体を沈め始める。

 

「ふぅ~。えへへ、気持ち良いね!」

 

「あぁ、そうだな。……奏、こっちに」

 

「?」

 

 お互いに暖かい滑りのある湯に浸かり、心地良さを堪能。するとゼノヴィアが近づく様に手招きをした事で、奏は言われた通りに彼女へ近づいた。そして奏の身体にゼノヴィアの手が届く様になった途端、彼女は奏の身体を抱いて身体を反転させた後に自分の膝の上に座らせる。お湯の滑りが手助けをして、その手際はとても綺麗だった。

 

「わわっ! ゼノヴィア先輩?」

 

「この方がもっと気持ち良さそうだったからな。どうだ?」

 

「う、うん。ちょっと恥ずかしいけど……悪く無いかも」

 

 背中から抱きしめられる感覚。お腹に両手が回され、ゼノヴィアを肌で感じる状況に奏は少し照れながらも答える。だがやがてゼノヴィアへ身体を預ける様に背中をくっ付け、首元までお湯に浸かり始めた。

 

「……もしお姉ちゃんが居たら、こんな感じなのかな?」

 

「ふっ。お姉ちゃん、か……悪く無いな」

 

「えへへ。……ゼノヴィアお姉ちゃん!」

 

「!?」

 

 奏が顔を真上に上げて逆さのままゼノヴィアへ告げた途端、ゼノヴィアは驚いてすぐに顔を反らした。そして奏を抱いていた片手を外して自分の顔を押さえ始める。何かを堪える様な仕草に奏が驚く中、ゼノヴィアは小さく深呼吸をした。

 

「嫌、だった?」

 

「大丈夫だ。寧ろもっと呼んでくれて構わない。……いや、やっぱり今は止めてくれ」

 

 不安そうに聞く奏の言葉に顔を押さえたまま、強い目で答えたゼノヴィア。だが今ここでもう1度呼ばれれば、間違い無く抑えきれなくなった愛が噴き出すと確信して彼女は一時控える様に告げた。何でそうなったか分からない奏は首を傾げ、だが理解出来ないまま了承する。

 

「さて、身体を洗おうか」

 

「うん。さっきも言ったけど、背中洗ってあげるね!」

 

 浴槽から出て滑る水を一度シャワーで流した2人。まず初めに自分でも出来る頭を洗った後、身体を洗う時が来てゼノヴィアは思い付いた様に口を開いた。

 

「そうだ、奏。人の身体を洗った事はあるか?」

 

「え? う~ん、無いかも」

 

「なら、洗い方も知らないな。……良いか、まずは」

 

 人の身体の洗い方について、ゼノヴィアが説明を始める。……それは彼女が作り上げた彼女が得するための内容だが、当然知らない奏がそれに気付く訳も無かった。ゼノヴィアの説明を聞き終えた奏は、まず最初にゼノヴィア自身で身体の前面にボディーソープが広げ終わるのを待つ。そして

 

「よし、説明した通りに」

 

「うん! よいしょっと!」

 

 ゼノヴィアの合図を受けて、まず奏は自分の身体に。胸やお腹周りにボディーソープを広げる。そして全体に広がったのを確認してから、ゼノヴィアの身体に背中から抱き着き始めた。浴槽内に居た時とは逆になり、奏は「うんしょ、よいしょ」と声を出しながら自分の身体を使ってゼノヴィアの背中にボディーソープを広げ始めた。

 

「ん、これ、で、んんっ、良いの?」

 

「あぁ……良いぞ。凄く良い」

 

「んっ……ゼノヴィア先輩。本当にこれが、人の洗い方なの? 手でやった方が、早いと思う!」

 

「日本には裸の付き合い(突き合い)、と言う言葉があるだろう? これがその語源らしい」

 

「そうなんだ! それじゃあ、えい! えい!」

 

「うっ! ふぅ……あぁ、最高だ」

 

 何ともそれらしい説明をして、上手くゼノヴィアは奏を納得させる。説明を聞いて納得した奏は、自分の胸を使ってゼノヴィアの身体を突く様にパンパンと音を立てて更に広げ始める。想像していたよりも存在した奏の胸の感触を背中で感じて、恍惚とした表情を浮かべるゼノヴィア。だがその至福の時間も長くは続かず、到頭奏自身が十分にボディーソープが行き渡ったと思った事で終わりを迎える。

 

 ゼノヴィアの背中をシャワーで流し、次は奏の番。先程広げる為に使った前面をそのままに、今度はゼノヴィアが自らの身体で。胸で奏の背中に広げ始める。奏と違ってしっかりと実ったそれは、奏の背中を本当に突く様に触れる。するとゼノヴィアの胸が勢いよく滑り、奏の首元。その顔を後ろから挟んでしまった。

 

「んにゅ! ゼノヴィア先輩?」

 

「あぁ、すまない。つい胸が滑った」

 

「そっか。ビックリした!」

 

 そんなアクシデントもありながら、無事に身体を流し終えた2人。もう1度滑る浴槽に浸かって暖まった後、2人はお風呂から上がる事とした。

 

「はふぅ~、楽しいお風呂だったね!」

 

「そうだな。何か飲もう。やはり風呂上がりと言えば、コーヒー牛乳か?」

 

「コーヒー牛乳! 飲みたい!」

 

 手を上げて笑顔で答える奏を見て、ゼノヴィアは瓶に入ったコーヒー牛乳を2本購入。奏に1本渡し、2人は同時に封を開けて飲み始める。ちゃんと腰に手を当てて、お約束の様に2人は一気に1度で中身を全て飲み切った。

 

「ふぅ。一度やって見たかったんだ。なるほど、美味しいな」

 

「お風呂上がりだから特に美味しいんだよ!」

 

「祭りの屋台で買って食べるのと似た様なものか」

 

 奏の言葉に1人納得して、空き瓶を捨てたゼノヴィアはベッドの上に腰掛ける。奏も空き瓶を捨てた後に少し辺りを見回してから、同じベッドの上へ。

 

「この部屋、大きなベッドが1つしか無いんだね」

 

「その様だな。だがこの大きさなら、2人で寝ても問題無いだろう」

 

「そうだね! ……ふぁ~」

 

「ふっ、もう眠いか?」

 

「んっ……えへへ。お風呂場ではしゃぎ過ぎちゃったかも」

 

 欠伸をした奏は眼元の涙を拭って答える。既に外も真っ暗で、まだ少々寝るには早いが決して寝ても可笑しな時間帯では無い。だがゼノヴィアと初めてのお泊り故に、奏はまだ眠りたく無かった。だがそんな思いを遮る様に、ゼノヴィアは奏の肩に手を置いてゆっくり自分ごと倒れ始める。

 

「はぶっ。ゼノヴィア先輩?」

 

「眠いなら、寝れば良い。何なら私が子守歌でも歌おうか?」

 

「ううん、大丈夫。……お休み、ゼノヴィア……お姉ちゃん」

 

「……あぁ、お休み」

 

 眠る事を勧められて頑張って起きる気も無くなった奏は、そのまま静かに寝息を立て始める。そんな彼女の頭を撫でて少しの間静かに寝顔を堪能したゼノヴィアはやがてその額へ口付けを落とすと、奏の身体に布団を掛けてベッドから立ち上がる。そして奏が気になっていた部屋の扉の前に立ち、開けられなかったその扉を彼女は容易く開いた。

 

「……なるほど。色々あるな」

 

 彼女の視界に映るのは、様々な道具。普通に生活しているとお目に掛からない様な手錠や鞭。他にも色々あり、ゼノヴィアは適当に手で持って見てはそれを元の位置に戻した。

 

「使用は追加料金か。……私が彼女を墜とした暁には、こういうのも面白そうだ。……ふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。朝を迎えた奏は特に何事も無くゼノヴィアと一緒にホテルを出た。晴天に恵まれ、眩しい陽の光を感じながら途中まで一緒に歩く事になった2人。やがて到着したのは、昨日出会った公園であった。

 

「もう、大丈夫そうだな」

 

「うん。友達に酷い事言っちゃったから、ちゃんと謝って仲直りする!」

 

「その意気だ。もしまた何かあったら、遠慮なく私を頼れ。何も無くても、また一緒に過ごそう」

 

「うん! ありがとう、ゼノヴィア先輩!」

 

 小猫と仲直りをする覚悟を決めて、ゼノヴィアにお礼を言ってから大きく手を振って奏は彼女と別れる。1人公園に残ったゼノヴィアがベンチに座って空を仰げば、そこへ入れ替わる様に血相を変えた小猫が現れた。

 

「はぁ、はぁ……ゼノヴィア先輩」

 

「小猫か。どうかしたか?」

 

「奏さんを見ませんでしたか? 昨日から、何処を探しても居ないんです」

 

「彼女なら、さっき家へ帰るのを見た。友達と仲直りする! と言ってな」

 

「っ! そうですか……すいません、ありがとうございます」

 

 ゼノヴィアの答えを聞いて目を見開いた後、お辞儀をして人間には見えない程の速さで小猫は公園を後にする。ふっ、と笑みを浮かべてそれを見送ったゼノヴィアは少しの間その場に居座った後、立ち上がって同じ様に公園を後にした。

 

 小猫はやっと奏が近くに居ると分かり、急いで帰路を進む。すると見慣れた後ろ姿が視界に映り、思わず一気に近づいた小猫は後ろからその身体を抱きしめてしまった。

 

「わぁ! な、なに? あ……小猫……?」

 

「奏さん。心配した。昨日からずっと探してた」

 

「昨日から!? あの、ごめんね」

 

「……ううん。無事でよかった。……奏さん。勝手に食べちゃって、ごめん」

 

「小猫……私も、大っ嫌いなんて言ってごめんね」

 

「っ! 嫌いじゃ、ない?」

 

「うん。大好きだよ」

 

 嫌いと言う言葉に反応するかの様に抱き締める腕を強くした小猫に、奏は笑顔で告げる。小猫はそれを聞いて隠した尻尾が強く揺れ動く様な感覚を感じながら、胸に巣食っていた不安が消えて行く様な気がした。そして2人は互いに手を繋いで、奏の家へ向かう帰路を歩き始める。……そんな光景を、少し離れた家の屋根の上でミッテルトは眺めていた。

 

「全く。堕天使騒がせな2人っスね。……仲直り出来て、良かったッス」

 

『お疲れ』

 

「うわぁ! オーフィスッスか。って、そんな事出来たら奏の居場所はすぐに掴めたんじゃ……」

 

『我、ずっと見てた。危ない目には、あってない』

 

「はぁ……。まぁ、取り敢えず一件落着ッスね」

 

 眷属と思われる蛇と話をしながら、2人を家で迎える為に空を飛んで先に帰宅したミッテルト。

 

 後日。奏は小猫から彼女が知らずに食べてしまったお菓子を渡され、無事に食べる事が出来るのであった。




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