わだつみの抱く光   作:筆折ルマンド

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いっぱい感想貰えて、たいへん捗ったので連日投稿です。

感想もらうと本当にモチベ上がるんですねぇ。


激突と悲しみと

 暗く狭い通路を銃を構えながら歩く男が一人。一歩一歩踏み出すごとにゴチャンゴチャンと出来の悪いロボットのような金属同士がぶつかり合う音が響く。

 男の白衣はボロボロで所々穴も空いていた。しかし男はそんなこと気にもしていない様子で黙々と明かりを頼りに暗い通路を歩いている。

 

 シタタ

 何かが走る音が通路に響いた。

 バァン

 直後に男が音のした場所に正確に発砲すると小さな何かが転がる音が響き、静寂が再び訪れる。

「ネズミか」

 そう言って賢治はフルオートにもかかわらず1発しか弾が出なかった銃の状態をチェックした。

 

「これも弾切れか」

 

 ガシャガシャッ! 

 そう言って投げ捨てられた小銃は通路の中を一瞬だけ雑音で支配するとそれきり闇の中に消えた。

 

 賢治は捨てた小銃の出した音など気にも止めず、背中にいくつも吊ってある小銃のうちの1つを手に取ると白衣の袖で銃についた血を拭った。

「弾、いっぱい入ってるといいな」

 そうのんきに剣呑なことを言いながら銃を構えると賢治はまた静寂の支配する脱出口を歩き出した。

 

 ◇

 

 〈君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ〉

 

 黒衣の少女が宙を舞う。

 乱雑に振るわれた腕はそれだけで衝撃波を伴いノイズを蹴散らしていく。

 

「まぼろし、夢、優しい手に包まれ眠りつくような優しい日々も今は」

 なんて威力してやがる。

 少女の一撃に奏は驚いた。

 奏がガングニールの一振りで2〜3体を倒すのがせいぜいなのに対して、響の拳は1発1発が衝撃波を伴い、周囲の物体もろともノイズを吹き飛ばし、数えるのも億劫なほどの数のノイズを一瞬で蹴散らしていた。その一撃一撃は奏がガングニールで放つ技に匹敵していた。

 

「儚く消え、まるで魔法が解かれ」

 新たに街側から湧いてきたノイズに対してガングニールを構える奏だが、間も置かず突貫した響がノイズの群れに入り込んでしまい、響を巻き込むことを嫌った奏は技を繰り出す事が出来ない。

 

 時間切れの前に片付けておきてぇのに。

 リンカー頼りの装者ゆえの時間制限を気にして、そう思っている間に響はまた別の群れへと向かって跳躍した。

 響はノイズが多くいる所へ突撃して雑に蹴散らすとまたすぐに別の群れへと飛んでいってしまう。そのため撃ち漏らしたノイズが残っていることが多く、奏はその処理に追われていた。

 

「すべての日常が、奇跡だと知った」

 残像すら見えかねないほどの速度でノイズを狩っていく黒衣の少女に僅かな憧憬を持ちながらも、そのあまりにも苛烈で粗雑な戦い方に昔の自分を観た奏は、仕方ねぇなぁとどこか親心のようなものを持って、撃ち漏らされたノイズを処理していく。

 

「曇りなき青い空を、見上げて嘆くより」

 奏の歌が朗々と響き渡る中、黙々とノイズを砕いていた響の動きが鈍る。

 その目がギロリと奏を睨むが奏はノイズの相手をしていて響に目が行っていない。

 

 響の中で奏の歌が反芻される。

 響が幽鬼のようにゆらりと奏に対して正対する。

 黒く塗りつぶされた顔からは表情が分からないが、その目はノイズ以外への怒りを湛えていた。

 

「風に、逆らって。輝いた未来へ帰ろう」

 奏の歌がサビへと入ろうとしたその時。

 

 未来なんテどコに有ルッて言ウのサ。

「黙レェェェェェェェ!!!」

 

 響の蹴りが無防備な奏の背に刺さった。

 

「ぎぃ!? がっハ」

 響の全力の蹴りはノイズを消しとばしながら奏を蹴り飛ばし。向かいの家に叩き込んだ。

 家の塀は弾け、家の半分が消し飛んで地面までえぐれて大穴が出来上がる。

 

 訳の分かラない歌で認めたクなイコノ思いを、死ンで終イたクなルコの想いヲ掘り起コソうとスるオマエハ。コンナ想イまでしテ、生キろト言ったアンタさエモ今ハ私ノ邪魔ヲスるのカ。

 

「アンタも……敵なノカァァァァ!!」

 

 ひと蹴りで寄ってきたノイズを吹き飛ばし、響は穴の中心に横たわる奏に飛びかかった。

 

 激突。

 

 その衝撃で家はバラバラに倒壊し、辺り一面が土煙に覆い尽くされた。

 

 ◇

 

 賢治の家からほど近い公園の裏の林の中、そこに隠された脱出口の先で、炭と銃火器が転がる中、賢治がノイズと相対していた。

 

 ダダン、ダダン、ダダン

 ゆったりとした曲調の歌が流れる中、それに見合わない激しい銃声が林にこだまする。

 両手に持たれた銃が火を吹きノイズが炭へと変わる。

「Remember you came in unknown taking the phone,alone from the outer zone」

 

 銃声は断続的に林の中に響きわたり、賢治の背負った黄金の円盤が賢治の口にする歌詞に合わせて発光し、周囲に光の波を放つ。

 

「Seeing you,I realized」

 光の波がほんの一瞬だけノイズの存在を調律し、その存在を通常空間に縫い止めたその瞬間を狙って銃弾が撃ち放たれる。放たれた弾丸は1発も外れることなくノイズを引き裂いていく。

 

 無数のノイズを前に賢治が持ってきた銃は一瞬で撃ち尽くされてしまったが、地面に転がる炭の中に転がっていた銃と弾倉のお陰で賢治は自身の周囲にいるノイズをあらかた片付けることに成功していた。

 

 ◇

 

 賢治のその様子を見て何者かが現れる。

「シンフォギア以外でノイズに対抗する手段が本当にあるなんてなぁ」

 即座に賢治の向けた銃口の先に居たのは肩に紫色のサメの歯のよう突起のついた銀の鎧を纏った少女。その顔は鎧と同じ材質のものと思しきバイザーのついた兜によって隠されている。

 彼女の纏う鎧は2年前のライブ会場の惨劇で行方不明となったネフシュタンの鎧。

 そしてその手に握られているのはY字の中心に紫の発光体を持つ銀色の謎の杖。

 

 賢治が構える銃を見て少女はせせら笑う。

「んなオモチャじゃ傷も付かねぇよぉ」

 

 そう嗜虐的な笑みを浮かべながら言い放ち、少女が賢治に向けて杖を向けた。

 

 刹那

 

 ギャギャギャギャ

 

 放たれた銃弾は全て鎧に阻まれたが少女の顔に動揺が走った。

 

 賢治が反射的に撃った銃弾は少女の無防備な顎部目掛けて走ったが、危険を察知した少女が咄嗟に顔を腕で庇ったことによって銃弾は全て弾かれた。

 

「……テメェ。アタシはフィーネからアンタをとっ捕まえて来いとは言われてるけどよぉ。抵抗すんなら殺してもいいって言われてんだぜ!」

 身体を半身にして鎧で覆われていない部分が見えるのを最小限にしながら少女が銀の杖を構えると、杖の発光部から緑の光線が放たれノイズが賢治を円状に囲うように現れる。

 

 圧倒的な優勢を前に少女の広角が上がる。

「大人しく投降しな。でなけりゃ」

 

 ドォン。ガァン。

 

 手榴弾でも爆発したかのような爆音と共に少女の顔が上に跳ね上がる。少女の額に激痛が走り、彼女は思わず頭を抱えた。

 

 賢治の返事は1発の弾丸だった。

 

「流石にコイツは効くか」

 そう言った賢治が両手で構えているのはSTURM RUGER社製のSUPER RED HAWK。大型のマグナム弾に耐えられるように設計された堅牢な作りの拳銃。

 使用された弾は .454カスール弾を元に賢治が回路形成に失敗したレリックパーツを弾頭に使って生産した 特製.454カスールホットロード弾。

 最強クラスのマグナム弾に更に追加された火薬に加え、弾頭のレリックパーツは通常の徹甲弾を遥かに凌ぐ弾性と強度を保有している。

 その威力は映画やゲーム等で時たま目にする戦車の装甲を貫通して撃破する芸当を容易く可能としていた。

 

 その射程50m圏内なら対物ライフルに勝るとも劣らない威力を持つ半異端技術を利用した兵器はネフシュタンの鎧に傷を付けることに成功していた。

 

 痛みに悶える少女の様子から冷徹に肌の見える部分を撃ち抜けば、倒せると確信した賢治。装甲の無い胸の下を狙おうとするが、少女の杖を握る手に力が入るのを見て危険と判断し、趣味で靴の裏に仕込んでおいていたスプリングを起動させて跳躍。ノイズの包囲を抜け出した。

 

 賢治のいた位置にノイズが殺到し、対象がいないことを確認したノイズがまた停止する。

 あの杖はノイズを召喚できて、しかも操れもするのかと驚く賢治だったが、放たれる少女の怒気に若干たじろいだ。

 

「くそっ! 人が下手に出りゃいい気になりやがって! テメェは殺す! ぶっ殺す!」

 激昂した少女が杖を使ってノイズを次々と召喚し二人の間には無数のノイズが並んだ。

 

「もう謝ったって許してやんねぇからな」

 

 少女の言葉を耳にしながらも自身の意見を賢治は告げる。

「……その杖は凄いな。凄く……怖い」

 

「だったらどうするってんだ!! アタシを殺して奪うとでも言うのかよ!?」

 

 少女がそう憤ると賢治はこっくりと頷いた。

「……そうなるね」

 

 少女はいっそ呆れた様子で賢治の顔を見るとまたもや鼻で笑った。

「ハッ! んなら、やれるもんならやってみなよ!」

 少女が杖をかざすと同時に無数のノイズが賢治に迫る。

 

 その様子を眺めながら賢治はふぅーっと長い息を吐く。

「……この手は使いたくなかったんだけど」

 賢治は胸元からブルーのスティックペンダントを取り出すとそれを握りこむ。

 

『RN式変換回路 起動』

 電子音声が流れ、ペンダントから4枚の羽が展開されると同時に背中の白衣を破って黄金の円盤が現れる。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

「……はぁ? 絶唱だってぇ? バッカじゃねぇの! それはシンフォギアでなきゃ……ッ!?」

 

 周囲の空気が一変し、歌詞が進むごとに円盤に虹色の光が灯る。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」

 

 絶唱が歌い終わる頃には賢治の背面の円盤は林の木々を超えるほどに巨大化していた。

 

「お前」

 

「仕上げを御覧じろってね」

 

 その一言を合図に、円盤から賢治もろとも巻き込んで極大の光線が放たれ、林ごとノイズを焼き払った。

 

 

 ◇

 

「ガァァァ! 死ネ! 死ね! 死ネ! オ前ら全部死ネェェェェ!!」

 もはや敵も味方も関係なく、完全な暴走に入った響が手当たりしだいにモノを破壊していった。

 

 街路樹が殺された。

 

 巻き上げられた瓦礫が殺された。

 

 家に灯る炎が殺された。

 

 当然ノイズなど1秒足りとも生かしては返さなかった。

 

 彼女の怒りの中で殺されなかったのは奏ただ一人。

 

 奏に一撃を加えた後、2発目を叩き込もうとした響は突然苦しみ始めると無差別にモノを破壊し始めた。

 

 いや、無差別じゃねぇ。アイツは自分の邪魔をする奴をぶっ飛ばしてんだ。

 街路樹は自分に影を落としたから、瓦礫は前を塞いだから、炎は自分の前で踊っていたから。そうやって小さい怒りにいちいち当たり散らしているんだ。

 そうでもしなきゃどうしようもないもんへの怒りでどうにかなってしまいそうだから。

 

「死ね! 死ネェェェェ!」

 

 奏には響の声は泣き声にしか聞こえなかった。

 

 

 バダダダダダ

 奏の頭上にヘリが止まる。奏に遅れようやく翼が到着したのだ。

 

「遅れてすまない! 状況は?」

 

「おう、翼。いい所で来てくれた!」

 そう言って奏がシンフォギアを纏ったばかりの翼の肩をバシバシ叩く。

 

「ほぇ、何? 何なの?」

 

 困惑する翼に奏が手を立ててウインクする。

「ちょっと頼まれてくれない?」

 

「え? それは奏の頼みだし、私は断ったりしないけど……」

 

 その言葉を聞くと奏は顔を輝かせる。

「恩にきる! それじゃあアタシはあっちのじゃじゃ馬を泣かしに行くから、翼はノイズの残党をよろしくな!」

 そう言って奏は足早に響の方へ向かっていってしまう。

 

「え、あ、ちょっと! もう奏ってば好き勝手してばかり」

 翼の目が奏の背中を見つめる。

 

「でも、何か考えてのことなんだよね。奏」

 奏を見送り翼はノイズの殲滅に向かった。

 

 ◇

 

 翼に見えない位置で二本めのリンカーを注入し、容器を握りつぶす奏。

「翼はこれ見たら怒るだろうからなぁ」

 奏はたははっと笑うと両手でパシッと自身の頰を叩いて気合を入れた。

 

「やるぞ」

 

 ガングニールを握る腕に力を張り、何もかもに当たる響へガングニールを突き立てる。

 

 突き立てたガングニールの穂先は易々と握られ、奏ごと振り回すと瓦礫の山へと投げ捨てられた。

 

「アんタ」

 

「はー、やっぱそう簡単には行かねぇ、な!」

 ガングニールを構え再度響へと躍りかかる。

 

 ガングニールの攻撃を拳で弾きながら響が叫ぶ。

「オ前ハ敵ナのカ!!」

 

「そうだ! アタシはアンタの敵だ!」

 

「ア゛ア゛ア゛ァァァァァァ」

 

 その言葉を皮切りに2つのガングニールは今度こそ激突した。

 

 

 ◇

 

 

 極光が止むと、そこには焼け焦げた林と僅かに傷を負った少女。そしてボロボロの賢治の姿があった。

 木々を焼き払うほどの熱量の中にありながら賢治が生き残ったのは(ひとえ)に賢治の纏っていた鎧に秘密があった。白衣が焼け落ちた今、賢治の全身を覆う黄金の鎖帷子が露わになっている。

 賢治がラボで米国の傭兵部隊に襲撃される前にストックしていたレリックパーツをロボットアームを利用して急ピッチで編み上げた半異端技術の鎧。単純な硬度だけでなく、物理法則を弛緩させ、ダメージの半分をノイズと同じ要領で無効化する異端技術が賢治を守ったのだ。

 

 しかしそれも役目を果たしたとばかりに光の粒子となって消えてしまった。

 

「かっ、ハ」

 吐血。

 そしてレリックパーツの鎧で身を守っていたと言えど身体へのダメージは甚大だった。精神力をフォニックゲインへと変換するRN式変換回路を使用したこともあって、賢治はもはや精も根も尽き果てる直前だった。

 

 そして彼の前に立つ煤だらけになりながらも健在の鎧の少女。

「は、ハッハー。ちっとは驚いたけどよ。結局、絶唱もどきはもどきでしかねぇ訳だ」

 少女は身体をならして痛む部分がないか確認する。

 

「少しあちこちがヒリつくけどその程度。なんてこたぁねぇなぁ」

 そう意気揚々と話す彼女だったが、そのニヤケ顔は一瞬で驚きへと変わった。

 

 ガァン

 

 胸の中央を鈍器で叩かれたような衝撃が走り、少女の息がつまる。

 

「……目が霞んで見えない。胸の隙間が狙えないか」

 

 賢治はスーパーレッドホークを構えながらのそのそと少女に向かって歩く。

 

 バァン

 

 2発目、賢治の放ったレリックパーツ弾頭弾が少女の額で炸裂した。

 

「ぐっ、この往生際ガッ!?」

 

 バリィン

 

 3発目がバイザーの根元に命中し、バイザーが砕け少女の目が露わになる。

 その目には恐怖がはっきりと見て取れる。

 

「なっ、テメェ本気で」

 

 ガシャァァァン

 

 4発目が炸裂し、遂に兜が砕け散った。それと同時に衝撃で少女が尻餅をつく。

 

「待ッ」

 恐怖から少女が咄嗟に杖を持っていない方の手を伸ばした。

 

 バァン

 伸ばした左手が弾丸に撃たれて捻じ曲がる。

 

「ぐぅぅぅ」

 少女は痛みに杖を落として右手で左腕を抑える。

 

 歩いて来た賢治は遂に少女の目の前に立っていた。じっとりと狙いすまされた照準は少女の額を正確に捉えている。

 

「あ…………」

 少女の口と目が恐怖で限界まで見開かれる。

 

 そして、賢治の指が銃に掛かり……。

「……クリスちゃん?」

 惚けたように賢治が少女の名を口にした。

 

「!?」

 賢治の声に驚いたのか、はたまた好機と見たのか、少女は痛まない右手をふるって賢治の足を殴りつけた。

 油断した賢治はその一撃でふらつき、その反動でスーパーレッドホークは最後の1発を吐き出した。マグナム弾の反動を殺せなかった賢治は強かに頭を地面に打ち付け、地面に大の字になった。

 

「……油断したねぇ」

 空を見上げて一言そう言い残すと賢治はあっけなく力尽きた。

 

 ◇

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 生死の境目から生還したせいか息の荒くなったクリスは怒りのままに倒れる賢治へソロモンの杖を向ける。

 

「ぐっ……。ぬぅ……」

 しかし、そのままノイズを放たず、ソロモンの杖をゆっくりと下ろすと、左手にソロモンの杖を持たせて、動く右腕で力の抜けた賢治の身体を担ぎ上げた。

 

「テメェは楽に殺してやんねぇ」

 そう言うとクリスは賢治を担いだまま姿を消した。

 

 

 ◇

 

 

「ふっ、ダラァ!」

 奏が飛びかかる響をガングニールで受け止めて、投げ技の要領で投げ飛ばす。

 奏のガングニールからは輝きが失われ、限界が近いことが見てとれる。対する響の様子は未だ外に溢れ出るエネルギーは一欠片も衰えず、彼女の周りからは軽いものが次々と吹き飛ばされている。

 

 ……見てくれは確かに変わんねぇ。けど中身はどうだ。

 限界が近く弱っている奏が力を維持している響に対して優勢に立ち回れているのは何故か。

 

「あ、アァァぁぁ」

 響が走り飛びかかる。しかしその攻撃は一手ごとに衰え、もはやその走る姿は長距離走で疲れ果てた子供のようだった。

 

「よっ、こいせ!」

 もはや突進にすらならない体当たりをヒョイと担ぎ上げて投げる。

 転がった響はなんとか立ち上がるが、みなぎるシンフォギアのエネルギーとは裏腹にその精神は疲弊しきっていた。

 

「奏!」

 翼がノイズの残党を片付けて二人の戦場に入る。

 

「ノイズの掃討。ご苦労様」

 

「粗方片付いていたからなんて事はなかった。しかしあの娘はまだ奏に挑むつもりなのか。……奏も疲れているだろう。後は私が」

 

「バッカ」

 奏が翼の額をデコピンで弾く。

 

「あうぅ」

 

「アタシはあの子に生きろって言った。言っちまった。それなのにアフターサービスも無しにほったらかしにしちまった。そんで前と同じように後のことを賢治に任しちまってた。……だから、あの子はアタシが受け止めてやらなきゃならねぇ」

 

「奏」

 

 天羽奏がふらふらと近づく響を抱き止める。

 奏に抱きしめられた響は抵抗して奏の背を引っ掻く。力だけは十全のため引っ掻かれた奏の肩は赤い線と共に血が滲む。

 まるででっかい猫みたいだ

 そんなことを思いながら響を強く抱きしめる。

 

「ごめんな。アタシ、凄い無責任なこと言っちまった。大切なものを無くして生きるってことがとんでもなく辛いってことは、私が一番理解してたはずなのに。本当にごめん」

 

「ア、ァァ」

 暴れていた響は次第に大人しくなり奏にしがみつく。奏は肩に熱い何か流れ落ちるのを感じた。

 

 響の頭を撫でる。

「生きてりゃ、とか死人が、とか言うつもりはねぇよ。そんな言葉、言ってる側の独りよがりでしかねぇからな。……けどな。生きてなきゃその人のことは思い出せねぇんだ。生きてなきゃ幸せを感じることも出来ねぇんだ。だから……生きてくれ。大切なものを少しでも長くその手に握るために、生きてくれ」

 

「ア、アァァァァァ。あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ! うぁぁぁぁぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 響の流す涙は熱く。泣き疲れるまでいつまでもいつまでも流れ続けた。

 そして奏も響の涙が止まるまで、いつまでもいつまでも抱きしめ続けた。




RN式変換回路
XDで司令が使っていた奴の改造品。
精神力をフォニックゲインに変換する。常人だと数秒でぶっ倒れるぞ!

絶唱もどき
一台で国が買える値段のフォルツァート増幅回路と人間を消耗品にして放つ絶唱に近しい威力のエネルギー波。
逆に言えばそれだけしても及ばないという事からシンフォギアがいかに破格の技術であるかが分かる。

次回予告
戦場で出会ったかつての少年、少女。
二人の出会いが世界を救う…かも?
戦姫絶唱シンフォギア 白夜の海に響く歌
第1話「そんな話を書くのなら、私はアンタをぶっ殺す」
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