これからも忙しくなりますが、最低でも週一ペースで更新したいと思います。
「Balwisyall nescell gungnir tron」
崩れた街中。
その歌が少女の口から始めて紡がれて、既に幾ばくかの時が過ぎていた。
「このっ!」
緑色の大型ヒューマノイドノイズに飛んできた少女の拳が叩き込まれる。しかし、全力で放った一撃でありながら、その一撃は大型ノイズの表皮を炭化させるだけに留まった。推進力を失い、空中に身体を漂よわせた少女にノイズの反撃が入り、吹き飛ばされた少女はビルの中へ叩き込まれる。
少女はすぐに立ち直るとビルの天井をぶち抜いて屋上へ上がり、足に備えられたパワージャッキを稼働させビルの屋上に2つ目の穴を開けながら飛び立った。
次いで大型ノイズの顔面へ蹴りが叩き込まれるが、その蹴りも決定打とはならない。
少女はそのことを確認するとノイズの身体を踏み台にしてノイズの頭上へ飛んだ。宙を返りながら両腕のハンマーパーツを展開させつつノイズの頭頂部へ着地する。
「これなら」
左腕を振り上げてハンマーパーツを解放し、超近距離から勢いのついた拳がノイズの体表に突き刺さる。その一撃もノイズを崩壊させるには至らなかったが、ノイズの体表はぐずぐすと炭化してぽっかりと穴が開く。
「どう!?」
左腕と入れ違いに右腕がノイズの炭化した体表から体内へ突っ込まれる。そして左腕よりもエネルギーを溜め込まれた右腕がノイズの内部で弾けた。
解放されたガングニールのエネルギーが渦を描いてノイズの体内をえぐり返す。大型ノイズの身体は中心から真っ二つに裂けて炭へと変わった。
大型ノイズを倒した響だったが、その後の動きは鈍く、退避はおろか受け身も取れないまま落下し、地面へ倒れ伏してしまった。
「ふっ……くぅ」
すぐさま立ち上がろうとするが、手足に力が入らず思うように立ち上がることができない。
響のシンフォギアをよくよく見てみればその輝きは鈍くなっており、身体も煤にまみれている。出力を保つために欠かせない歌を歌えないほど呼吸が荒くなっていることからも響が相当に消耗していることが分かった。
黒化時のような無尽蔵に力が湧いてくる感覚は無く、使えば使うだけはっきりと感じて取れる体力の残量。響の体力はとっくの昔に底をついていた。
身体が重い……。ノイズと戦うのってこんなに疲れるんだ……。
這いつくばった状態からようやく片膝をついて膝立ちになる響だったが、その息も絶え絶えと言った様子は、はたから見てとても戦えるとは思えない状態だった。事実、響のヘッドギアからは弦十郎の退避命令の声が響いている。
……身体重い。呼吸するので精一杯で歌が歌えない。
響の前にワラワラとノイズが現れる。
「……だから……何だって言うのさ」
呟いた言葉は冷たく、その冷気に呼応するかのように黄色を基調としたガングニールのシンフォギアに黒が差し込む。
弦十郎の言葉など一欠片も届いていない様子で、目だけをギラギラと輝かせた響は身体を引きずるようにして立つと、自身の手足と腰に付いている推進器をでたらめに使用して、無理やり宙に舞い上がった。
放り投げられた人形のようにぐたぐたと手足をぶらつかせながら空を舞う響はノイズの姿を捉えるやいなや、すぐさま腰のブースターをふかしてx軸を合わせると、腕のハンマーパーツを展開させて重力に乗って落下した。
『我流・黒装烈風』
ノイズの群れの中心に着地すると同時に両腕のハンマーパーツが同時に撃ち放たれ、黒い竜巻が発生し周囲のノイズを一掃した。
竜巻はノイズを消した後も持続し、その風は響自身を空へと高く舞い上げた。
威力は減退しているものの、人1人をビルよりも高く打ち上げるような大きな衝撃は、相応の痛みを伴い、響の口からは自然とうめき声が漏れる。
しかし、そのことを全く気にしていない様子の響は、打ち上げられた後にジャッキとブースターを利用して空中を浮遊することに集中していた。
そして次の獲物を見つけるや否やノイズの元へと飛んで行く。
それは人形をボールに見立てた壁当てゲーム。
ガチンガチンと空撃ちによる反動で身体を空中に固定させている響はさながら姿勢制御をするスペースシャトルのようにも、もっと単純に風に巻かれて吹き飛んだ人形にも見える。
街を徘徊するノイズの群れは空から飛来するスクリューボールによって瞬く間にその数を減らしていった。
しかし、満身創痍の身体を体とは関係のない腕のハンマーパーツと脚のジャッキを利用して無理やり操ってノイズに突貫させるという、無茶苦茶な戦法は確かに強力だが、そのような負荷も燃費も劣悪な戦い方が長く続くはずも無く、幾ばくとしないうちに反動を制御しきれなくなった響は墜落し、ぐったりと地面に倒れ動けなくなってしまった。
マフラーに口元は隠されているがその息遣いはもはや言葉を話せないほど荒く、身体には拳を握る力すら残されてはいなかった。
そして響の周りにノイズが集まりだす。多くを駆逐したとは言えノイズは未だ何十体か残っていた。それらは動けなくなった響を狙って距離を詰めはじめている。
弦十郎が退避命令を叫ぶが、もはや指一本動かない響はその命令を聞いているがなすすべがない。
それでも未だ死んでいない目をした響は、心のうちから闇を汲み出そうとして目を閉じる。
響の周りに黒い霧が漂い始める。迫るノイズたちの音の無い威圧感と相まって不気味な静寂が周囲を支配する。
〈絶刀・天羽々斬〉
静寂を破ったのはノイズでも響でもなく巨大な剣だった。
「せいやァァァ!!」
人の背丈を遥かに超える巨大な刃がアスファルトを豆腐のように両断しながら滑り込み、ノイズと響の間に壁を築いた。
『天ノ逆鱗』
風鳴翼が響の窮地に馳せ参じたのだ。
翼の叫び声を聞いて、驚いた響から漏れ出ていた黒い霧が霧散する。
「翼! 残ったノイズの総数はそう多くない! 速やかに排除して響くんを連れて帰ってくれ!」
翼の耳にヘッドギアを通じて弦十郎の指令が届く。
アームドギアを巨大化させながら翼はノイズの前に立った。
「承知!」
響を狙って集まりつつあった最後のノイズの群れは翼の手によって瞬く間に切り伏せられ、戦闘はあっけなく終わりを迎えた。
追加のノイズもなく、その後の処理は迅速に行われ、戦闘終了時には気絶していた響も翼の手によってすぐさま最寄りの病院へと搬送された。
こうして立花響の二課の装者として初の戦闘は、幕を下ろしたのだった。
◇
「
司令部へ慌てた様子で踏み込んできたのは天羽奏。先の戦闘の映像を見て、居ても立っても居られなかったようで響の安否を確かめるため弦十郎の元を訪れていた。
「落ち着け、奏。響くんなら大丈夫だ」
「大丈夫!? あれの何処が大丈夫なんだよ! あんな無茶な戦い方をして! あんなボロボロになって! 旦那たちはああなるって分からなかったのか!?」
弦十郎は口惜しそうにする。
「……そうだ。俺たちは黒化状態を元に響くんの戦闘能力を算出していた。そのせいで通常形態の響くんの戦闘能力を見誤ってしまっていた。……本来ならもっと安全な戦場で実戦を経験させるべきだったと言うのに」
「過去の話なんざどうでもいい! 響の容体はどうなんだ!? あんなハデにぶっ倒れちまって! 後遺症とか大丈夫なのか!?」
「その点については大丈夫だ。響くんの身体に大事はない」
「大事無いならなんで響は倒れたんだ! やっぱどっか悪いんじゃ」
弦十郎は取り乱す奏の肩をがっしりと掴んでゆっくりと言葉を紡いだ。
「奏。落ち着いて聞くんだ」
弦十郎の真剣な眼差しに奏がごくりとつばを飲み込む。
「……。響くんは、疲れた、だけだ。いいな? 響くんは初めての戦闘で体力を使い果たしただけなんだ」
「……は?」
その言葉にキョトンとした奏は確認するようにゆっくりと弦十郎の言葉を繰り返した。
「……疲れただけ?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ、身体に異常は見られない。今は病院で眠っている所だ」
◇
立花響 15歳
中学校3年間の体育の成績 オール3
部活動の経験 無し
身体能力における特筆すべき点 無し
趣味 家事手伝いと歌を歌うこと。
体力量 ごく一般的な女子中学生相応
◇
初めての組織的な戦闘の次の日。私は全身を激しい筋肉痛に苛まれベッドから起き上がることすらままならなくなっていた。
病室は簡素でつまらないけど、暇を潰そうにも身体全体が痛くて動けない。というか動きたくない。そんなジレンマを抱えたままぼーっとしていると、私の病室の扉が開いた。
「息災か? 立花」
「よぅ! 調子は……。って良い訳ないか」
入ってきたのは奏さんと翼さんだった。
「えぇ、まぁ。二人の方こそ、お仕事あるんじゃないんですか?」
「私たちは仕事柄、出演を突然断らなければならないことが多い。それが公務だとしても、そうなれば先立に迷惑をかけてしまうのは必定。故に私たちは他のアーティストのようにテレビ番組やラジオに出ることは極力控えているのだ」
「その分、曲は結構早いスパンで用意しているが、それでも自由時間は多い方なんだぜ」
「うむ。私も今日は検査入院ということになっている。もっとも立花とは違い、こうして万全の状態なのだがな」
「サボりとも言う」
「奏。貴女の方こそ、昨日は出撃していないのだから一人でも待機」
「アタシらは、二人で一人のツヴァイウィング。だろ?」
「うっ……。それは……。そうだけど」
私と話していたはずなのに急に惚気だすあたり、随分と距離感が近いというか、オブラートに包んで仲が良いんだなぁと思う。
「にしても、こうして知り合いを見舞うなんて久しぶりなんじゃないか」
「うむ。深海さんが二課に居た頃は、奏の付き添いでよく訪れていたものだが、最近はめっきり減ったな」
翼さんが気になることを言うと目に見えて奏さんが取り乱す。
「ばっ……! 響の前でそんなこと言うんじゃねぇよ!」
「うん? どうしてだ? 知り合いを見舞うのは良いことだろう」
「いや……。まぁ、それはそうだけどよ」
「今も思い出せるぞ。任務が終わるたびに検査入院しなければならない深海さんに向かって「ちったぁ養生しろ」と怒鳴った奏の」
「お前もう黙れって!」
奏さんが翼さんの肩をグーで叩いて翼さんを黙らせる。
「……奏さんは賢治さんとどう言う関係だったんですか」
「どう言う関係……。そうだな、私たちは互いに一番の親友であることは当然だが、その次に来るのは恩師である叔父さま、マネージャーである緒川さんであるとして、深海さんは一番親しい男友達に」
「ア、アタシと賢治は同期なんだよ! 二人とも病院送りが日常だったからな。だから色々と互いのことを知ってんのさ」
明らかにはぐらかされてるけど
「病院送りが日常茶飯事って……。奏さんの事情は知ってるけど、賢治さんも病院送りって言うのは。……ちょっと想像つかない」
「深海さんは表面を取り繕うのは上手いからな。しかし、その実、その身に科せられた宿命はまるで沖田総司のごとく……」
「賢治の奴は二課に入るまでずっと病院暮らしだったんだ」
それは知ってる。本当に軽くだけどその話は聞いたことがある。
「で、病院で色々とやらかして風鳴の爺様に目をつけられて風鳴機関の電子工作員として……」
「えっ!?」
「うん、どうしたんだ?」
「風鳴機関ってたしか政府直属の諜報機関だよね。奏さんと同期なら5年ぐらい前の話でしょ? まだ16歳ぐらいの賢治さんがどうやって」
「同期になったのは二課配属で、風鳴機関に入ったのは14歳の頃だ」
奏が翼の肩を叩きながら首を振る。
「翼ぁ。響はそういうことを聞きたいんじゃねぇの」
「賢治はその昔、異端技術専門のハッカーだった。病院生活の憂さ晴らしに、世界中の異端技術研究所に不正アクセスしまくって情報を収集していたんだ。世界各国の最重要機密を盗み見るあたり腕は相当なもんだったらしいが、最終的に本気を出した風鳴機関に捕まった。そんで、今まで集めた情報を纏めたノートは没収されちまったんだけど、そのノートの中身が風鳴機関も手に入れられていなかった各国の保有する聖遺物の目録だったもんで、その腕に風鳴の爺様が目を付けたって訳だ」
「うむ。腕を買われた深海さんは齢14歳にして日本最高の諜報機関である風鳴機関に取り込まれ、のちに弦十郎叔父さまが発足した特異災害対策機動部二課に転属することとなったのだ」
「へぇ……」
なんとも作り話みたいな話だ。月9の一本ぐらい作れそうな盛り具合。
「……そういえば、病院暮らしって言ってたけど、賢治さんってどこか悪かったの?」
「どこかと言うよりは全体だな。深海さんは叔父さまが太極拳を教えるまでは、まともに外を出歩けないほど身体が弱かったのだ」
「え?」
そう言えばそんな事も言っていた。
「らしいな。アタシは二課に入った頃の、四六時中研究をしている姿しか見たことなかったけど、事あるごとにぶっ倒れて救護班に運ばれるのは何度も見たことがある」
「その度に発破と称して、見舞いに゛」
「いい加減、口を滑らせすぎだぞ翼」
「奏さん顔真っ赤」
「んな!?」
ボソッと呟いた言葉は聞こえていたらしく、ほんのり赤かった顔が耳まで赤くそまる。
「奏の片翼を自負する者としては癪な話ではあるが、深海さんと奏は事あるごとに衝突しその度に仲を深めあっていた」
「……その話詳しく」
「待て、待てっておい! 恥ずかしいだろうが!」
「ふむ、ならばやはりあの話が一番華があるな。ある時、奏が絶体絶命の危機に陥った際にヘリに乗った深海さんが奏に新作の対ノイズ兵装を投げ寄越してこう叫んだのだ「奏の歌を聴かせてくれ!」とな」
「……へー。へぇ……」
「その話、ほんと止めろ!」
「うん? ならば、初めて奏が実戦に出た時の話を」
「それは気になる」
「……っ! いい加減黙らないと翼でもただじゃおかねぇぞ!」
奏「昔口説かれてました」
響「マ?」ゴゴゴゴゴ
うちのグレビッキーは原作ビッキーと比べてINTが高い分、STRが低いです。しかも一番の心の支えが不在でメンタルが紙状態かつ、INTが高いが故に映画訓練の効果が薄まるため、単純な能力値は伸び率を含め原作ビッキーを下回ります。
それでも原作ビッキーより強そうに見えるのは単に殺意の違いです。
我流・黒装烈風
XDにそんな技はありません。オリジナルです。映像化するならグレビッキーの地滅噴砕が竜巻に変わる感じ。
攻撃後に残ってジャンプ台になるのはキンハー3のエアロからの発想。
戦姫絶唱シンフォギア わだつみの抱く光
次回 「ナイスなボードを用意して眠れ」