わだつみの抱く光   作:筆折ルマンド

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気がつけば一ヶ月近く経っておりました。

毎週投稿とはいったい(ウゴゴゴゴ

…これからは不定期でお願いします。

序盤 三人称。後半 響視点となっております。


模擬戦

 〈月煌ノ剣〉

 

 拳と銃、剣と槍が交錯する二課本部トレーニングルーム。

 少女たちの戦闘は佳境を迎えていた。

 

「セイヤッ!」

 

「おっ! とぉ」

 翼が水平に振るった剣が奏の突撃槍と正面からぶつかり、槍の側面に沿って上に弾かれる。

 翼の上体が浮いた隙に距離を詰めた奏が槍をブンとバットのように豪快に振り上げるが、大振りなソレは翼が飛び上がることで躱された。

 

 翼が空中で千ノ落涙を放つ。トレーニングルームのため、本数は実戦に劣るものの、奏一人に向けられる剣の数は、実戦でノイズ一体に向けられる数より遥かに多い。一斉に投射された10数本の剣。それを奏は槍を回転させ、盾にしてやり過ごす。

 

「ならば!」

 

「貰ったァ!」

 

 翼が着地した瞬間を狙って奏が再度距離を詰め、横薙ぎの一閃。槍の射程に入れられた翼はのけぞってその一撃を躱すと、そのまま逆立ちながら槍を蹴り飛ばし、逆羅刹の体制に入る。

 

「いいね!」

 

 逆羅刹の回転を始めた翼が奏へ迫る。奏は真正面から受けると見せかけて、ぶつかる寸前に半歩引きながら翼を横へ弾き出した。

 

「避けろ! 立花!」

 弾かれた翼が行き先を見て叫んだ。

 

 弾かれた先には交戦中のクリスと響。

間合いを詰め切られ一方的に響の攻勢に曝されていたクリス。押し切るまであと一歩の所となっていた響だったが、翼の声に反応して振り返ると、そこには真横から突っ込んでくる翼の姿。その瞬間、弾かれるようにクリスと響が左右に分かれ、その間を翼が通過する。

 

「ちょっ、アンタ!」

 

「翼さん!?」

 

 クリスが奏の方を、響が翼の方を向く。

 

「ハハッ、タッグマッチだって、ダンナが言ってただろっ!!」

 

 動揺するクリスと響。響の思考がルーズになった瞬間を見逃さず奏が飛びかかった。反応が一瞬遅れたものの飛び込みながらの唐竹割りを響は両手の装甲で防いだが、重い一撃に腰が沈み足が止まってしまう。

 

「くぅっ!」

 

「足元がお留守だぜ!」

 着地と同時に蹴り上げるような足払い。見事に大きく足をすくわれた響が宙を一回転して地面に倒れる。

 

「一丁上がり!」

 再度、大上段に構えた槍が振り下ろされる。

 

 響が咄嗟に腕で頭をガードする。しかし槍の一撃を耐えるには心もとない。槍が響に当たる直前、奏と響の間に青い軌跡が走った。

 

「まだだ!」

 

 ギィンと重く鈍い音が響く。

 

 逆羅刹を解いた翼が奏と響の間に剣を差し込み叩きつけを防いでいた。

 だが一撃を受けたアメノハバキリは、剣先が地面に食い込んでしまってた。そのせいで翼はすぐに次の行動へ移れない。翼の剣が頭上にあるせいで響の方も起き上がれない。

 

 そしてそのまま

 

「いいや、チェックメイトだ」

 2人にクリスの拳銃の銃口が向けられ、奏、クリスチームの勝利で模擬戦は終了した。

 

 

 ◇

 

 

「くっ、逆羅刹で反撃したのは間違いだったかッ」

 

「選択としては悪くなかったけどな。ま、あたしの方が一枚上手だったってことだ」

 

「おのれ! 次は勝つ!」

 

 

「クリスくん自身も分かっていると思うが、君は近接戦に持ち込まれると脆い部分がある。実戦においては仲間がフォローするし、現状シンフォギア装者ほど近距離戦の強いノイズは存在しない。だが、それは欠点を直さなくて良い理由にはならない」

 

「ンなこた分かってんだよ、おっさん!」

 

 

 模擬戦後、ブリーフィングルームでの反省会。私はクリスにそれなりに優勢に立ち回ってたせいか、反省は後回し。

 喋るみんなを眺めながらくぴっと缶の飲み物を飲む。

 

「……苦い」

 司令が持ってきた飲み物。特に銘柄を見ないで選んだ結果、手元にあったのはブラックコーヒー。少しずつ飲んでるけど、やっぱり苦いのは苦手。でも捨てるのもなぁ。

 

 ぼんやりとみんなを眺めていると、カシューっと空気の抜けるような音がして、音の方を向くと扉が開いた。

 

 ブリーフィングルームに入ってきたのは、白衣に身を包んだ賢治さん。櫻井博士の後任として、二課に復帰することになったらしい。

 司令は最初、櫻井博士の後釜にそのまま賢治さんを据えようとしていたらしいけど、今までサボっていた若僧が突然部門のトップに立つのは流石に問題だろうという事で、現在は技術顧問と言う形で技術開発に携わっているそうだ。

 

「や、響ちゃん」

 

「どうも」

 

 賢治さんは私の前を通り抜けて司令に携えたクリップボードを渡しながら、何かの相談を始める。新型リンカーがどうとか、適合係数がどうのとか。

 

 私としては、病み上がりなのにこうして働いている賢治さんの姿を見ると少し不安になるんだけど、本人は私の心配なんてどこ吹く風、随分と生き生きとした様子。試したかった実験や、人手の問題で出来なかった事など、やりたかった事が出来てかなり充実した毎日を過ごしているらしい。

 

 ……。

 

「なんだぁ、その顔。そんなムスっとしてどうしたんだよ」

 奏さんが私の隣にドッと座った。賢治さんが司令を取ったために、席替えが起きたようで、反対側では翼さんとクリスが何やら話し込んでいる。

 

「別に……。ムスっとなんかしてないです」

 

「してるだろ、ホラ頬っぺたがぷくーって」

 

 頬を突くようにさされた指を払いのける。

「なってないです」

 

「……さようで」

 

 ぐーっと奏さんが両手を繋げて上に伸ばしてパッと離す。そのまま私は身構えていたけど、奏さんはそのまま黙って前を向いている。

 釣られて私も前を向く。

 

 あ、クリスが怒ってる。翼さんに何か言われたのかな。

 

 

「にしても賢治の奴、随分と変わったなぁ」

 

 唐突に奏さんがそう言いだして、えっ、と思いながら賢治さんの方を見る。

 司令と話しこむメガネ付きの賢治さん。仕事中のせいか、初めてあった時よりも身だしなみも整っていて、知的な科学者って感じがする。

 

「変わったってどこら辺がですか」

 

「うん? そりゃ、何もかもさ。あたしは退院した翌日以外でアイツの顔にクマが無いのなんて今まで見たことなかったぜ? 髪の手入れもしてるし猫背も直ってるし、きこりの泉で取っ替えたって言われても信じられるレベルだ」

 

 というか、研究部門じゃ別人扱いされたらしいしな。と言って奏さんがかっかっかと大きく笑った。

 

 えぇ……、賢治さん。職場でもあのままだったんだ。ズボラがすぎる。

 

「男子三日会わざればって、言うけどよ。アイツは変わりすぎだな。……あー、アイツの変化はいったい誰のお陰なんだろうな?」

 

「なんですか」

 

 奏さんがニヤニヤしながらこっちを見てくる。

 賢治さんが生活習慣を正したのは私に原因があると言いたいんだろうか。

 

「別に……。私は何もしてない……です。夜は寝てって言っただけで」

 

「マジでか!! ソレ聞いたのか!?」

 

「……え? はい」

 

 そんな驚かなくても。どうせ賢治さんだって、毎日寝てるって言っても仮眠しかしてないだろうし。

 

「はー、あの睡眠時間を減らすためだけに、ダンナの発勁を習得したと言って憚らない賢治がなぁ。信じらんねぇ」

 

 まるでダチョウが空を飛んだと言われたかのように、真剣にそう言ってしまっている奏さんに、少しムッとしてしまう。

 

「賢治さんだって人間ですよ」

 

「週180時間労働するような奴は人間とは呼ばねぇ。こっちの界隈じゃOBAKEと呼ぶ」

 

「えぇ……」

 唖然とした私を尻目に奏さんは一人勝手に激しく頷いている。

 

「そうかー、響の言う事は聞くのかー。なるほどなー」

 

「な、なん。だから何だって言うんですか」

 

「いや別に何がどうしたって言う訳じゃねぇけどな」

 奏さんが私の肩をポンと叩いてグッと親指を立ててくる。

 

「お前、上手くやったな。あたしは応援するぜ」

 あたしは全部分かってんだぜ? と言外に言っているのが分かる。

 

「だから、私は別に……賢治さんが

「え〜、どう見たって」

 

 

 私たちの前に影がさす。

 

「ちょっといいかな」

 

 うつむきかけていた顔をバッと上げると目の前に賢治さんが立っていた。

 

「おう、賢治」

 

「やぁ、奏ちゃん。すまないけど、ちょっと響ちゃんに用事があるんだ」

 

「そうか。だってさ」

 

 賢治さんが私に用事? な、なんだろう。

 狼狽える私に賢治さんの手がスッと伸びてくる。

 

「ちょっと失礼するよ」

 

「ひゅわっ」

 賢治さんの手の甲が私の額に触る。賢治さんの手はいつも通りひゃっこくて心地いい。

 

「うーん」

 

 そのまま賢治さんがポンポンと頰と顎あたりを手のひらで撫でていく。触られた場所にはスーッと冷たさが残っている。

 

「おいおい、乙女の柔肌に気安く触んじゃねぇって」

 

「ああ、ごめん。響ちゃんの顔がちょっと赤かったのが気になってね」

 

「もっと赤くさせてどうすんだよ」

 ニヤニヤを深めながら奏さんがつぶやくが、賢治さんは聞こえていないようだった。

 

 別に赤くなんか、そう言いたいけど声が出ない。

 

 賢治さんは私の顔から手を引くと少し考えた後にポケットに手を伸ばした。

 

「まぁ、とりあえずは、はい」

 賢治さんが私の手に百円玉を2枚のせて握らせる。賢治さんの手が冷たいせいか背筋がゾクっとする。

 

「そのお金で帰りに飲み物買ってね」

 ポカリとかね、と言い含める賢治さん。

 

「うん」

 

「それと、飲み物2本持つのは大変だから、こっちのコーヒーは貰ってくね」

 

「うん」

 

 そう言って私がもう片方の手に握っていた缶コーヒーを持っていく。

 

「風邪には気をつけてね。そろそろ梅雨だし、体調崩しやすいからね」

 

「うん」

 

「それじゃ、またね」

 

「……うん」

 賢治さんはにっこりと笑ってブリーフィングルームを後にした。

 

 手のひらに残った200円を見つめる

 

 私が苦いの苦手なの覚えててくれたのかな? 

 

 うぁ、ちょっと頬っぺたが痛い。今絶対酷い顔してる。にへーってしてる。あぅ、奏さんに見られる前にどうにかしないと、あぁ、でも、止まらない。

 

 

「ひぃっひぃっひぃっ、うんしか言えてねぇ」

 

 

 ◇

 

 

「なあなあ」

 

「……何ですか奏さん」

 

「あのコーヒーどうすんだろうな」

 

「どうするって……。飲むんじゃないんですか」

 

「へー、響はそういうの気にならねぇタイプなのか」

 

「気にならないって」

 

「そらお前、飲み物の回し飲みっつったらアレとアレよ」

 

「……っ」

 

「おいおい顔真っ赤だぞ。本当に風邪ひいたんじゃないか? ほらあたしのポカリ飲みな。半分くらい飲んじまってるけどな!」

 

「この人は……。もぉー!」

 

「うおっと、そんなへなちょこパンチ、当たらねぇよ」

 

「──っ! この! この!」

 

 

「何やってるんだ二人とも!」

 

「落ち着け響! 何やったんだよアンタ!?」

 

「はははは!」

 

「このっ! 待て!」

 

「ほらほら、あたしの口を塞いでみなー」

 

 

「おお、元気だな! どうだ! もう一戦」

 

「却下します」「ダメに決まってんだろ!」

 

「……そうか」

 




前回から数週間が経過している設定です
(主にあの続きを思い付けなかったのが原因)

ほのぼの系とかイチャイチャ系の話が好きなのに自分では書けない悲しみ。仕方がないのでそろそろ完結に向けて話を動かします(断腸の想い)

ところでゴジラコラボに393の姿が全く見当たらないんですけど。
ああ、あの人は元からレズモンス

ギュワーー
ト-リド-リノイロ-タ-チガ-

戦姫絶唱シンフォギア わだつみの抱く光
次回 「詫びチケ来たる」
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