少女たちの日常はもちっとだけ続くんじゃよ
ギュピ
393「貴方は毎回毎回前回言った事を反故にしないと死ぬ呪いにでもかかってるんですか?」
ごめんなさい。
シンフォギア のあらすじ見てたらふとアイデアが舞い降りてきまして。
前半は弓美視点。後半は三人称となっております。
「君の力を利用させてもらった。……ごめん」
目を伏せた青年に壮年の男は微笑みを返した。
「……いや。おかげで俺は、俺だけを蘇らせた世界を壊すことができた」
知恵と絆で自身を打倒した3人に向けて、男はグッと拳を突き出し、親指を立てて見せる。
「これで……、仲間の元に行ける」
その言葉を残し、男は風に溶けるように消えた。
◇
「ひゃあ──! カッコイイ──!」
客演の永遠さんのカッコよさもさる事ながら、物語の展開も困難を友情パワーで乗り越えて、王道って感じがして最高だった〜。
……こほん
撮り溜めていた特撮を見直していた私。
1話が終わって区切りもいいので時間を確認してみると、そこには針が斜めに横断した時計の姿。
「もう8時かー」
外はとっくに暗くなっていて、夜遅くと呼ばれる時間帯に差し掛かっている。
まぁ、まだ金曜ロードショーも始まってないんだし、人によっちゃまだ遅くないって言う人もいるかもしれないけど、私からすればこんな時間に出歩くなんてとんでもないって感じ。
……なんだけどねぇ。
ウチの同居人はこんな時間になっても部屋に帰ってきていない。ま、あの子は毎日そんな調子なんだけどね。
と、ちょうど響の事を考えていると、ガチャっと玄関のドアが開く音が聞こえた。
「帰ったよ」
そう言って玄関から顔を出したのは、当然だけど響だった。練習後で汗をかいたのか、行きは制服だったのが今はジャージに変わっている。
遅くても6時には部屋に帰ってぬくぬくしていたい私とは考えが全く異なるこの友達は、連日連夜教員棟に通い詰め、こんな時間になるまで何かの練習に励んでいるそうな。
精が出るわねー。私には無理だわ。
「はいはーい。ご飯は?」
響が手に持った膨らんだレジ袋を見せる。
「売店で買ってきた」
「こんな時間までやってるもんだっけ?」
「教員棟の所はね」
「へー、知らなかったわ」
「寮には門限もあるし」
「あんたはその門限、堂々と破ってる訳なんだけど」
「私は練習があるから特例」
「あらそー」
適当にお喋りを続けながら響がレジ袋から取り出したお弁当を重ねたまま電子レンジに放り込む。
いや、別々に入れなさいよ。危ないでしょ
「そういえば今日、放課後にお兄さんに会ったんだけど──」
「へー」
そう話し始める響の声はすこーし高くなっている。この事、響は気付いているのかね?…気付いてる訳ないか。
例のお兄さんが退院したとの事で、ここ最近の響は楽しそうにしている。
男性の話なんで、そういう経験の薄い私は色々と響の話に期待してたんだけど、その辺の事に関しては、「色目の一つもない」とか、「全然話せてない」とか、響が嬉しそうにブーたれるぐらいにはプラトニックな関係らしい。
ちなみに、響が真夜中に誰か(十中八九例の人)にこっそり電話をかけている事は私らの中では響以外みんな知っている公然の秘密である。
個人的にはもっと何かあってくれた方が嬉しいんだけど。ま、危なくなければ良しとしますか。
心配しすぎるのも悪いし、取り敢えず連絡だけは欠かさないようだけ釘を刺しておいた。
◇
響が2つのお弁当をペロリと平らげて、見ていた私のお腹までくちくなった頃。
「服なんて引っ張り出してどうしたのよ」
「こっちに来てから一度も使ってないから、確認」
服を箪笥の段ごと持ってきた響がそう答え、ああでもないこーでもないと言いながら、服を掴んでは畳み、掴んでは畳み。
ははーん
「明日、出掛けるのね?」
「何? ……そうだけど」
「へぇ〜。もしかしてデートだったり?」
「別にそんなんじゃないよ」
いやいや、どう見たってそうでしょ。
たたむ振りしたって、わざわざ手持ちの洋服を全部ひっぱり出してアレコレ組み合わせを試してる時点で……ねぇ?
そーんなおでこにしわ寄せて、デートでもないのにわざわざそんな事しますかね。
そういや響、教員棟に行ってるだけなのにお兄さんと会ったって言ってたわね。と言うことは、くだんの響の思い人ってもしかしてウチの教師? ……いや無いわね。ウチの教師って基本的に女の人だし。なら用務員とか清掃員? その人年上らしいし。うーん。
「……何?」
「別に〜、なんでもないわよ〜」
「……そう」
とりあえず2人に連絡しとこっと。あ、ハンチング帽と双眼鏡は必須よね。
◇
特異災害対策機動部二課本部。
その司令部にて、つい先ほど解析が終わり発覚した事実について簡易的な会議が行われていた。
時間が時間のため、正面の大型モニターの電源は落とされており、司令部の中段で立ち上げられた藤尭のノートパソコンにその結果が表示されていて、それを風鳴司令、藤尭、友里の3人が覗く形となっている。
その結果を目にして、予想通りである事に唸る弦十郎。
「パーツをぶつ切りにしてカモフラージュしてありましたが、司令が言っていた通り二課本部には全体を稼働させる機構が仕込まれていました」
パソコンには迫り上がる二課本部の巨大エレベーター。否、カ・ディンギルの砲身の稼働予想が断面図で表示されていた。
「……ねぇ、藤尭くん。これに書かれている本部変形用の電力って桁間違ってない? 二桁ぐらい」
予想図の二課本部が可動するたび、右下に表示された消費電力量が天文学的数字で上下する。
「いえ、それで合ってるんですよ。それに、こんな日本中の電気を集めてやっと動くか動かないかみたいな桁違いの機構なんて、気付いた人がいたとしても何かの偶然だと思って捨て置くんじゃないですか? この基地は世界最強のビーム砲に変形するんだ! なんて素面で言える人間はそうそう居ませんよ」
そんなことを素面で言える人間を1人、3人は知っていた。故に3人はこの絵を描いたのが誰なのかが容易に想像できていた。
「あぁ。それに俺たちは地下に伸びる巨大建造物と言うことで本部の建造において順次拡張という手段を取ってきたが、これも施工業者を定期的に変えることによって二課本部の全体構造を知られないよう、了子くんが細工した結果なのだろうな」
「二課本部の建造当初からなんて……。あの人は10年近く前からずっとこの計画を温め続けてきたって訳ですか」
「もっとずっと昔から。だそうだ、クリスくんの話によればな」
今度は藤尭が唸った。
「しかし司令、実際問題こんな代物を動かす動力なんて、日本の何処にも無いでしょう」
友里の疑問に、弦十郎が一層渋い顔で答えた。
「……ある。しかも、この二課に」
「二課に……って、もしかしてデュランダルのことですか! 確かにアレは完全聖遺物ですがあくまで剣ですよ!」
「響くんも、槍のシンフォギアで素手で戦っている。と言うよりも重要なのは聖遺物と歌だ。形状は問題じゃない。問題なのは」
「不滅の刃と言う二つ名。ですね」
「……まさか! 不滅って言うのは折れず曲がらずよく切れるって言う意味で、無尽蔵にエネルギーを作り続けるなんて意味」
深刻な顔をする司令を見た藤尭が魂の抜けた声を出す。
「あるんですか? デュランダルには」
「あぁ、昔、了子くんが語っていた。デュランダルは不滅。ゆえに尽きることの無い無限のエネルギー源になる、と。だから深淵の竜宮に仕舞わず、こうして二課で研究していた」
3人に沈黙が重くのしかかる。
「例の移送計画。前倒しにできないか上に掛け合ってみよう。輸送ルートも見直さなければな」
「今からですか!?」
「藤尭くん!」
「いや、明後日からでいい。今日はご苦労だったな。明日は休んでくれ」
その言葉に露骨にホッとした顔をした藤尭が友里の肘打ちを食らってウッとうめく。
「「了解」しました」
それでも2人の返事はしっかりとしていた。
◇
土曜の朝方。
天気は快晴。絶好のデート日和と言ったところ。
三人官女は響の後をつけていた。
「そういや、電車に乗られたら一貫の終わりだけどどうする?」
「行ける所までついて行きたいとは思ってるんだけどねぇ」
「そういう事になるとお金がかかりますが、お二人は用意してきました?」
「私は万全よ!」
「いや、昨日の夜に言われたばっかなんだから財布の中身なんてそのままに決まってるでしょ」
「私は用意していましたよ?」
「なんで!?」
そんな風におしゃべりしてばかりで尾行する気が本当にあるのか怪しい3人。
今日の響が大きな白黒模様のパンダ柄のパーカーのような目につきやすい服装でなければとっくの昔に見失っていただろう。
3人がゆるーい尾行を始めてわずか10分あまり。響が立ち止まったのは意外にもいつもの商店街。
──好きな人と会うのならもっと別の所に行くんじゃないかな?
創世は訝しんだが、残る2人はノリノリで男の人が来ると信じて疑わない様子。
「というわけで」
電柱の後ろに隠れた弓美。ニコニコ笑う詩織。創世は呆れ顔。
「いや、というわけでじゃないでしょ。尾行は辞めようって話じゃなかったっけ?」
「ナイーブな話題でないから良し!」
「いや良しじゃないでしょ」
「いいのよ。友達として響の彼氏に相応しいのか私らで見極めてやろうってだけなんだから」
「アンタ響の何様よ」
「当然、友達様よ!」
「友達如きがおこがましい」
「なんじゃとぉ!」
「何さ」
「河川敷で喧嘩すれば、男は親より固い絆で結ばれたマブダチになれるのよ!」
「喧嘩したことないじゃん」
「しないに越したことはない!」
「私ら女じゃん」
「女でも大丈夫!」
「ここらへん河川敷無いじゃん」
「公園でも可!」
ああいえばこう言う弓美に創世が頭を抱える。
「何よソレー」
話が長くなりそうな2人を置いて詩織が柱の影から指を指す。
「あ、待ち合わせのお相手が来たようですよ!」
バッ! と創世も電柱に隠れ、3人は団子のように段になって顔だけをのぞかせた。
当然ながら3人の不可解な行動は周囲の注目を集め、奇異な目線を集めた。が、3人は気にせず各々自前の双眼鏡やスマホで響の周りを観察し始めた。
流石は装者の友達、図太さは相応と言ったところか。
覗く3人の視線の先に写ったのは響に駆け寄る白髪と赤いフリフリのワンピースが特徴の小さな背中。
2人は、待ったー? 今来たとこー、と待ち合わせの定型文を発してる模様。
「アレが響の好きな人?」
「いや、どっからどう見ても女の子でしょ」
「女装趣味かもしれませんよ?」
「いやいや、この前、フラワーのおばちゃんがお兄さんって言ってたんだから、女装もないでしょ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ!」
「そうですか〜」
残念です、と言いつつも興味津々で観察を続ける詩織と弓美。2人とは対照的に疲れた顔をした創世が今日何度目かとも知れないため息をついた。
──響の待ち合わせの相手が確認できたから私はもう帰ってもいいんだけどなー
そもそも野次馬に消極的だった創世は早々に尾行の意欲を失っていた。創世とて別にこういう催しが嫌いではないのだが、計画的に事を運びたいタイプのため、今日は気分が乗らない様子。
「にしても綺麗な人ね〜。外人さん?」
「ハーフと言う奴では?」
「なるほど」
「ねえ2人共、ビッキーの相手も見たし、もう帰ってもいいんじゃない?」
「もう少し。2人がどういう関係かもうちょっとだけ知りたいだけだから。ね?」
「えぇ……」
「お二人はどういう関係なのでしょうね? ツヴァイウィングの姉妹バンドのメンバーなのでしょうか?」
「その設定まだ生きてたんだ!?」
「ならこのまま待っていればツヴァイウィングの2人が現れる可能性も?」
「無いから!」
創世が思わず声を荒げてしまい、周囲の人が振り返る。
赤くなる創世に弓美がシーっとサインを出すが、その行動は創世に頰を強ーくつねられる結果に終わった。
◇
「なぁ、アレなんだよ?」
クリスが意図的に振り返らず親指でクイっと目標を指差す。響がクリスの指の指すままに視線を向けると、そこには視線と言う名の集中線に彩られた電柱があった。そして響が視線を向けた直後、ツインテールと灰色の髪が電柱に隠れるが、最後の薄い金髪の少女はそのままにこにこと響たちに手を振っている。
言うまでもなく、電柱の裏の3人は弓美、創世、詩織である。
「あー……、私の友達。まぁ、待ち合わせの相手が気になって付いてきたって所。まぁ、黒服の人たちと同じように考えればいいよ」
「いや、アレを黒服と同じよう扱ったら黒服の奴らに失礼だろ」
もはや隠れてねーだろ。むしろ目立ってるぞ、とクリスが苦言を呈す。
響は肩をすくめて
「別に恥ずかしい事でもないし、気にしないでいいよ」
「え、えぇ……。そんなこと言われてもよ」
「ほら」
響がスッと手を差し出す。
クリスが顔を赤くする。
「ばっか、手なんて繋がなくたって歩けるっての」
手を突っ張ってイヤイヤと拒否するクリスを見て響は大人しく手を下げた。
「そう。それじゃとりあえず服屋さんに行こうか」
「あ、おう」
響が指差した方向へ向かって2人が歩き出した。
◇
歩き出す2人に合わせて、電柱の後ろから3人が顔を出した。
「で、どうすんの」
「乗り気になった?」
「茶化さない。あんたを見張るだけだよ」
「別に見てるだけなのに」
「限度ってもんもあるでしょ」
「お二人とも、そろそろ動かないと見失っちゃいますよ」
「あ、ごめん」
「行きますか」
電柱の後ろから出た3人が今度は堂々と歩き出す。そちらの方が逆に目立たないという考えだったが、前科のせいかしばらくの間、3人は人の視線が雨のように降り注いでいた。
393「そこは!私の場所だって言ってるでしょうガァァァァ!!」
〈天光〉
ぽわぽわぽわ
ドクロ雲
「たーまやー…、って!そんなこと言ってる場合じゃないデス!調!なんで未来さんはあんなにマジギレしてるデスか!?」
「響さんとのデートイベントを他の子に奪われたから。らしいよ」
「デース…。未来さん、響さんが大好きデスからね…」
「それと、G編で大役を貰えるって言う話で今まで我慢してたのに、無印編で一回完結するってことになったらしくて」
「本編に出る予定がなくなっちゃったんデスね。分かるデスよ。セレナもいっつも寂しいって言ってたデス」
「うん。さらに実はもう一つ、残念なお知らせがあります」
「な、なんデスか」
「G編が未定となったので、私たちも本編に出れるか分からなくなりました」
「デデデデース!?」
戦姫絶唱シンフォギア わだつみの抱く光
次回「393の殺意がヤバい」