わだつみの抱く光   作:筆折ルマンド

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別の作品の二次創作を考えてたら1ヶ月経ってました。はい。
申し訳ありません。

 おかげで並行世界の翼クリが出たとか、その直前にグレビッキーのピックアップガチャが有ったとかいう話がもう遥か昔の話になっちゃってました。
 …もしかしてグレビッキー復活ワンチャン!?(話が3週間遅い)



そはいずこなりや

 全長400m。4車線。中央を区切るフェンスの無い中規模の橋

 それ支える柱が突如として崩れた。

 

 ボンボンボンと中腹の柱が次々と爆ぜて砂のようにぐしゃっと潰れる。上にかかっていた橋の道路は自重によって、あっけなく谷折りにぽっきりと折れた。

 折れて落ちた道路が数十mにも届きそうな水柱を立てる。

 

 残ったのはウエハースの端っこだけ。

 

 二課の輸送隊が橋に乗った直前の話だった。

 

 

 デュランダル輸送隊の車は崩落地点まで100m

 

 残った三台のうち左右の車はブレーキを目一杯かけてスリップしかけながらも急停止した。

 

 しかし、何故か翼とクリスを乗せた中央の車はそのまま直進する。

 

「おいおいおいおい⁉︎」

 

「橋を飛び越えようと言うのか⁉︎それは映画の見過ぎッ……」

 

 時間にしてわずか数秒。

 

 

 2人が慌てふためく間に車が断崖絶壁と化した橋から飛び出した。

 

 ◇

 

「ぬ「わぁぁぁぁ⁉︎」」

 

 折れて落ちて傾いた道路の残骸に車が突き刺さる。

 

 車はひしゃげ数瞬ののち、

 

 ボンと音を立てて爆発。炎上。

 

 もくもくと黒煙を昇らせた。

 

「……え? デュランダル……」

 

 川縁から輸送隊の動向を観察していた糖花(タンファ)はその様子を見て呆然として呟いた。

 

 デュランダルは残りの二台のどちらかに積まれていたのか。それとも落ちた車の中か……

 

 もし落ちた車の中なら……

 

 ……不味い。

 

 凄い不味い!! 

 

「確認しなければ!!」

 フィーネ様に怒られる! 

 

 デュランダルの安否を確認するため糖花は双眼鏡を放り投げて現場へ急いだ。

 

 

 ◇

 

 

 吹かされたエンジンの音。騒ぐ装者。落ちる車。破砕音。

 傍受していた回線の中で了子はその声を捉えた。

 

『う゛らぁ!!』

 破砕音に紛れて聞こえた気合の一声。

 

 他の3人に比べて気持ち低めでザラついた声。

 

「……なるほどねぇ」

 グンとアクセルを踏み込まれた車が加速しながら十字路を曲がり、周囲の車を停めさせ、その側面を無惨に削り取りながら走り抜ける。

 

「輸送隊はオトリ。本命は別って訳ね」

 

 ギュルギュルと影のように濃いタイヤ痕を残し、公道を法定速度を無視して走る。

 

「さて、デュランダルはどこかしらね」

 時速100キロを超えて信号を無視して走る危険な車の中で、フィーネが嗤った。

 

 ◇

 

 落ちて炎上した車の上、分断された橋の向こう側。

 

 黒煙が燻る中を槍が切り裂き荷物を抱えた2人が姿を現した。

 

 ポーンと槍の石突きが音をたてる。

 

「ふー、間一髪だったな」

 

「自分でやらせておいて言いますか」

 

「しゃーねーだろ? 向こう岸まで渡るに一番早いのがコレだったんだからさ」

 

「まったく……、お2人への言い訳は貴女が考えてくださいよ。()()()

 

()()()()も共犯だろ?」

 

 奏の肩に乗っていた荷物がもぞりと動く。

 

「うあー、頭痛ぇ、何が起こったんだ」

 

「おー、起きたか。任務ご苦労さん」

 

 緒川が抱えていた。というかお姫様だっこしていた荷物も、バタバタと動き始めた。

 

「お! 緒川さん! 何故ここに⁉︎今貴方はイギリスに居るはずでは!?」

 

「実はメトロミュージックのプロデューサーさんが、来週のツヴァイウィングのライブを観に来るということで、今回の任務のために無理を言ってその方のボディガードとしてこっそり帰ってきていたんですよ」

 

「そ、そうなのですか」

 

「僕がいない間のことも伺っていますよ」

 

 緒川さん迫真の笑顔。翼は俯いて指をいじいじ。

 

「面目ない」

 

 しおしおと萎れる翼。

 なんだか一件落着と言った雰囲気の中、思い出したかのように、というか、思い出したのでクリスが叫んだ。

 

「そういやデュランダルはどうしたんだよ!」

 奏にお米様だっこをされたままクリスがそう言うと、次いで翼も慌て始める。

 

「そうだ! デュランダルだ! 緒川さんも奏もデュランダルを持ってきていないではないか! まさか車の中に置いてきたのか!?」

 

「ま、そうなるな!」

 あーこまったこまった とちっとも困っていない様子で奏が笑う。

 

 その姿を見てくすくすと笑う緒川。何がなんだか分からない2人は困り顔。

 

 ────

 

 その下、車の残骸のぶち抜かれた天井からぬっとアタッシュケースが顔を出す。

 次いで黄金色の髪が舞って、北欧系の小さな顔がひょっこり現れた。

 

「フィーネ様! やりました! アイラがデュランダルを手に入れましたー!」

 

 フィーネの部下の3人娘リーダー格の少女、アイラがアタッシュケースを掲げて喜ぶ。

 

 やったー! と声を上げて喜ぶアイラを見て翼たちは慌てるが、奏と緒川が手で止める。

 

「まぁ、待てって。緒川さん、もう使っていいんじゃないか?」

 

「そうですね」

 

 翼を下ろして手の空いた緒川がスーツのポケットから何やら手の平サイズのスイッチを取り出す。

 

「な、なんだよソレ、まさかソレを押したらアタッシュケースがドカン! ってなる訳じゃねぇだろうな!?」

 

「お、いい線行ってるぜ」

 

 イエーとゲッツな感じでクリスの言葉に答える奏。

 爆弾を使うものの使われるのは嫌いなクリスが嫌な顔をしたところで緒川さんが訂正する。

 

「そんな物騒なものではないですよ。まぁ、見た目はそれなりですけどね」

 

 そう言うやいなや、ポチっとスイッチが押された。

 

 

 ────

 

 

 ド ガッシャァァァン!! 

 

 黒い車が通り抜けた直後、信号が赤く変わったにもかかわらず真っ赤()()()傷だらけのスポーツカーが交差点に突っ込んで、停止していた車両の頭をぶっ飛ばして横転させた。

 

 黒塗りの車を追う赤いスポーツカー。

 その中でフィーネは嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「まさか直にデュランダル輸送中の車にかち合えるとは思わなかったぞ!」

 

 響たちの乗る本命の車は暴走するフィーネの車にたまたますれ違った。

 マジックミラーで中が見れないようになっている車を見て不審に思ったフィーネが、聖遺物の反応を確認すれば、あら不思議、ガングニールの反応があるではありませんか! 

 

 そんな訳で響たちはあっさりと見つかり、現在フィーネとカーチェイスを繰り広げている。

 

 ────

 

 追われる二課の車。

 一見普通ではあるが特殊任務に使用される特別な車両はそれ相応に高性能だったが、頑丈さに重きを置いたせいで速度は今ひとつであった。

 しかもフィーネの赤いスポーツカーは、フィーネが趣味でチューンナップしたゴリッゴリの改造車であり、フィーネの直線速度重視のムラのある……と言うか雑な走りであってもその余りある加速能力によって徐々に間合いを詰められていた。

 

「このままでは追いつかれます! 多少無茶ではありますが、このまま目的地でデュランダルの受け渡しを!」

 

「それはダメだ! デュランダルを積み込んでいる間に船が壊されてしまう!」

 

 運転する黒服の提案を賢治が否定する。

 

 二課が立てた計画は、櫻井了子(フィーネ)の立てた計画を手直しした輸送計画を隠蓑にして、本命のデュランダルを海底にある危険すぎたり、未解析だったりする異端技術を封印する管理特区。通称「深淵の竜宮」に輸送、封印してしまう事であった。

 

 フィーネを波止場に連れてきてしまえば、二課の立てた計画をすでに看破しているフィーネは、デュランダルを奪取する前に、デュランダルを海底に輸送するための海洋研究船及び潜水艦を破壊してしまうだろう。

 

「どこかで櫻井博士を撃退しないといけない! えっと……。そうだ! 目的の港の先に燃料貯蔵施設がある! その周辺なら道路は広いし、遮蔽物は少ない!」

 

「それではノイズを呼び出された場合、こちらも危ないのではないですか!?」

 

「それなら大丈夫! 緒川さんからの報告で、ノイズと櫻井博士配下の装者はオトリに釣られたらしいので、今の櫻井博士は完全に丸腰です!」

 

「そう……つまり、私がタイマンで、あの人をぶっ飛ばせば解決ってこと?」

 

「そうなるね、今の響ちゃんなら勝てる」

 

「……当然でしょ」

 

 車内が話を纏めている間に、二課の車とフィーネの車の間は縮みに縮み、その距離はバックミラーにフィーネの顔が映り込むほど僅か。

 

「その前に! もう追いつかれてしまいます!」

 

「時間は稼ぐ!」

 白衣の内側からオーソドックスな拳銃を取り出した賢治が振り返る。

 

 ────

 

「そのままぶつけるか──、それとも最後まで付かず離れず行って最後に海に突き落とすか──」

 悪巧みをしながらフィーネが自分の前方を走る二課の車を睨んでいると

 

 パン パン

 

 と2つの銃声。

 

 蜘蛛の巣状にヒビ割れたガラスの向こうに何重もの像となって拳銃を構えた賢治の姿が見えた。

 

「ほぅ」

 

 咄嗟にフィーネがヒビ割れたガラスを完全に割ってしまおうとガラスに手を伸ばす。

 

 ゴイン

 

 衝撃

 

 腕がガラスを突き抜けた。

 

 鈍い音と共にフィーネの車が中央に引き寄せられるように曲がり、そのままギシギシと車が軋んで動かない。タイヤがグゥゥングゥゥンとカラ回る。

 

 フィーネのスポーツカーは車線を分断するためのガードレールに激突していたのだ。

 

 ガラスを残るように割られたことでガラス越しの像が狂ったせいだった。

 

 プーっと膨らんだエアバックがフィーネが腕だけ纏ったネフシュタンのトゲによって裂かれ、パンと弾ける。

 

「やるじゃない」

 

 そのまま突き出した腕でかき混ぜるようにして車の正面のガラスを丁寧に砕いた後、フィーネは冷静に車のギアをバックに入れた。

 

 

 ────

 

 

 ポンと音を立てながらガバっとアタッシュケースが開き、重心が動いてアイラの手から転がり落ちる。

「あわ、わわわ」

 

 アタッシュケースを落としてしまったアイラが慌ててアタッシュケースを拾おうとする。しかし口が空いたアタッシュケースの中はもぬけのかカラ。

 

 小首を傾げるアイラ。するとそこにスッと影が刺す。

 

 上を見上げると太陽が小さな物体に遮られていた。

 キョトンとしている間にその小さな物体がブワァっと広がり網を形成する。

 

 そのまま網はアイラの上に覆いかぶさる。

 次の瞬間、ビリッと電流が流れ、コイルの仕込まれた網の端がひとりでに集まり、ガチーンと挟んだら痛そうな音を立てて口を閉じてしまった。

 

 

「とまぁ、あのように偽のアタッシュケースは、取ろうとすると逆に捕まるようになっていたんですよ」

 

「「な、なるほど」」

 

 足を網に取られ、崩れた橋の斜面でアイラがよたつく。

「お、お? お! おちっ、落ちるぅ」

 網の中で身動きが取れない中アイラがうごめく。

 

「危ない!」

 

「翼!」

 

 網の中で無闇に動きすぎたアイラが落ちた橋の斜面で転がり始めたのを見て、翼が橋から飛び降りる。

 

 身体の自由を奪われた状態で海に沈めばいかに装者といえど溺れてしまう。

 

 敵と言えど相手を溺れさせるのは忍びないと翼が斜面を滑るように下り、アイラの入った網に手を伸ばす。

 

 ゴロゴロと転がるアイラ入りの網。

 

 水没寸前。

 

 すんでの所で翼の手が届くと思われた瞬間。

 

 翼に悪寒が走り、手を引っ込めた。

 

 ザァっと翼の手があった場所に一本の傷が刻まれた。

 

 アイラを助けに来た糖花が翼の邪魔をした。いや、翼の魔の手(悪意無し)からアイラを救ったのだ。

 

「糖花ちゃん!」

 

「何捕まってるのよ」

 

「あーん! 糖花ちゃん辛辣ですよぅ! わたし悪くないですよぅ」

 わんわん泣くアイラの言葉に無視を決め込んだ糖花は、アイラの入った網をむんずと掴み、スタコラサッサと逃げ始める。

 

 

「逃しません!」

 緒川の拳銃が火を吹く。

 

 狙いは糖花の影。忍術・影縫いで動きを封じるつもりだったが、生憎糖花の影は水の上。

 緒川の銃弾を水面の糖花の影を確かに捉えたが、銃弾が貫通してしまったのか効果は一瞬で糖花の逃走の妨害にはほとんどならない。

 

 

「待ちな!」

 翼に続いて奏が橋の上から飛び降り糖花に迫る。

 

「待ちません」

 糖花が槍を放り投げ、落ちてくる間に腰につけていたソロモンの杖をかざす。緑の光線がほとばしりノイズが湧き出す。

 

「しゃらくせぇ!!」

 現れたノイズをクリスの銃撃が即座に細切れにしていき、そのまま糖花を襲おうと狙いを定める。

 しかし、地面からぬぅっと三角錐が出現し、クリスの銃弾を弾いた。

 

「撤退する」

 

「それでは皆さん! さようなら!」

 

「はぁ!? 待てコラァ!」

 

 三角錐の正体は爪型ノイズで、爪型ノイズはロケットのように空高く打ち上がる。

 そのノイズの足のような部位に糖花とアイラは引っかかっており、2人はあっという間に装者たちの攻撃圏内を離脱してしまった。

 

 ……

 

「やっぱソロモンの杖ズルいわ」

 

「うむ」

 

「ですが、十分に時間は稼げました。任務は成功と考えて良いでしょう」

 

「そういやよ。なんでアタシと、あー、翼さん? には本当のこと教えてくれなかったんだよ、そしたらもう少し手加減というか、時間を稼ぐのもできただろうに」

 

「くっははははは! そりゃクリスと翼に本当の事言ったら絶対一瞬でバレるからだ」

 

「はい、お2人は嘘が苦手ですからね」

 

 2人が顔を真っ赤にして怒るまで後3秒。

 

 ────

 

 その裏で、フィーネと響の戦闘が始まっていた。

 




393
「伏線雑に回収してません?」

ギチギチギチギチ

いや、その、1ヶ月別の作品のこと考えてたらあらすじゴニョゴニョ

「自分の作品なんですかちゃんと読み返してください」

 ゴモットモ

 ゴキィ

次回 戦姫絶唱シンフォギア わだつみの抱く光
「覚醒 デュランダル」

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