わだつみの抱く光   作:筆折ルマンド

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大変、本当に大変お待たせいたしました。
(待っていた方がどれほど居てくださったのでしょう)

前々から、「生きてる作品を半年放置とかあり得ないしょ〜」
とか上から目線で思っていたのですが、
自分がやらかした今「いや、半年って短いですね」と手の平くるくる。
ちょっと今年はコロナとは別に色々忙しくてですね。
それと筆もあんまり乗ら
393「いいから書いて下さい」

yes.sir‼︎



終結の足音

 波静か。天気は快晴。

 海に吹き込む風は強く、道行く人はその冷たさに身を震わせる。

 夏にはまだ少し早く、集う人影は皆釣竿を持っていた。

 

 そんな浜辺の奥の奥。

 

 巨大な水色の円形タンクが目を引く石油貯蔵施設。

 

 

 ゴゥゴゥと風が吹き抜ける音と共に、アスファルトが燃え焦げて異様な匂いを立てていた。

 

 

 ────

 

《 私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ 》

 

「だあぁぁぁ!!」

 

 低空を滑走するようにフィーネの懐に潜り込んだ響の足が唸りを上げて天を突く。

 

 ゾッ

 と背筋が凍る音を立てて跳ね上がった蹴りをフィーネはのけぞり躱す。

 しかし直後に振り抜かれた足から蹴り出されるようにして伸びていた脚部バンカーが引き戻され、ガチンと音を立てて響の足に下ベクトルのエネルギーを与える。

 

 間髪入れず叩き込まれるカカト落とし

 

 フィーネが両腕で蹴りをガードするが、腕から破砕音が響く。

 

 ネフシュタンの鎧の手甲が砕ける。

 

 しかしフィーネは笑みを絶やさず、響の蹴りを受けきり、力の抜けた響を宙に打ち上げる。

 

 追ってムチが放たれるが、空中の響に刃の切っ先を蹴り飛ばされて推力を失い落ちる。

 

 だが次いで落下する響に向かって放たれたフィーネの拳は、響がブースターを吹かすより早く、響の腹部を捕らえた。

 

「カッ、は」

 

 吹き飛ばされた響が地面に叩きつけられアスファルトにヒビが入る。

 転がる響に追い討ちをかけようとフィーネのムチがくわん とたわむ。

 が、ムチが振るわれるより先にパンとフィーネの顔面で何かが弾け、カランカランと潰れた弾丸が足元に転がる。

 

 次いで鳴り響く乾いた銃声

 

 距離およそ100m先

 

 響たちの乗ってきた車を遮蔽物にして、黒服と賢治がフィーネに向かって発砲していた。

 

 機を流したフィーネが立ち上がる響から車の方に目線を動かす。

 

「──さすがは特機物。この距離を当てるか」

 銃弾で叩かれた目尻をかきながらフィーネが分析する。

 高度に融合したネフシュタンの効果によって硬質化されたフィーネの皮膚は、もはや銃弾程度では傷も付かない。

 

 ましてや拳銃の有効射程は20m

 100m先なら、的に当てるだけでも至難の技だ。

 

 フィーネが賢治たちに気を取られた隙を突き、再び響が飛びかかる。

 

 手甲がぐぅんと伸びてブースターが巨大化

 吹き出す火炎と共にロケットのような勢いで響が迫る。

 

「早いな」

 

 そう評価し、フィーネは冷静に円形のバリアを貼る。

 真っ正面から拳を叩きつけられ、桃色のバリアがギシギシと軋むが、フィーネが つい と腕を振るうとバリアもそれに合わせてくるりと回転し、響の拳は流される。

 

 アスファルトを砕きながら着地した響が振り返る。

 

 響の纏うシンフォギアは鋭角部がアスファルトの擦り続けていたせいか、黒く煤けていた。

 

 対するフィーネも、ネフシュタンの鎧の再生能力によってその輝きに一分の曇りも無いが、鎧の隙間から覗く肌には再生時に起きる侵食によってできた無数のミミズ腫れが身体に浮き出ていた。

 

「せっかくの一丁羅が汚れているぞ? ちょうど良い所に海もあるのだから、一つ洗いに行っては如何かな」

 

「余計なお世話。そっちは良いの? 綺麗なお肌が樹齢千年の木みたいにぼっこぼこになってるよ」

 

「言ってくれる」

 

 フィーネの動きが変わった。

 自分の周囲に光弾を形成し、それを侍らせ響に迫る。

 

 右ムチ、容易く躱される

 左ムチ、的確に先を弾かれ無力化

 

 今までは次は蹴りでも飛んでくるか、攻めに隙が生じるかだったが、その隙を待機させていた光弾が埋めた。

 

 両方のムチを躱されたフィーネがピンと響を指差すとフィーネの周囲を公転していた光弾が響に殺到する。

 

 明滅し絶えずフラッシュを焚く光弾に響が腕で顔を覆う。

 

 そこにフィーネの蹴りが刺さり、響が吹っ飛ばされる。

 

 賢治たちの援護射撃が響の後方から飛んで来るが、そもそも目障りな以外効果のないため、集中したフィーネにとっては何の効力も持っていなかった。

 

 

 響の方を向かって無数の光弾が放たれる。響はそれを丁寧に弾いていくが、明らかに響を狙ったにしては誘導の甘い弾がいくつか響の頭上を通り抜ける。

 

 響は気付かず、後方の2人は気付いた。

 

 光弾の先にあったのは賢治たちが盾にしていた二課の車。

 

 光弾爆発。それに続くように車が炎上。

 

 賢治と黒服が爆発の余波を食らって地面に転がる。

 

 デュランダルを納めたトランクも吹き飛び賢治の手を離れた。

 

「賢治さん!?」

 

「油断したな。私は初めからお前──」

「こんのぉぉぉぉぉ!!」

 

 頭上に影

 

 目に映る響の拳

 

 振り上げられたその拳を

 

 フィーネは避けて蹴り返した。

 

 ドッ

 と響のお腹にフィーネのすねがめり込む。

 

「ははははは! お前たちは所詮私の掌──」

 

「黙れ!」

 

 蹴りを耐えた響が拳を振るう。

 

 ガスッ

 と鈍い音と共にフィーネが首を傾げた

 否、殴り抜けられて頭が振られた。

 

 脳が振られ軽い脳震盪を起こす。

 瞬間フィーネがよたよたと精細を欠いた歩みを見せた。

 

 右腕のブースター吹かされる。

 

 強烈な発勁 ワンインチパンチがフィーネの胸で炸裂し、彼女の身体を蹴り飛ばされた石ころのように10〜20mぶっ飛ばした。

 

「アンタが何を企んでいたって、私がこの()で打ち砕く!!」

 

 響が両手を繋ぐ。

 右腕の手甲が左腕の手甲と合体し、巨大なブースターを形成した。

 

 ギッ

 とブースターを軋ませながら響が拳を構える。

 

 手甲に内蔵された赤いスクリューがゴウンゴウンと音を立てて回転を始める。

 

 台風の如く風を吸い込むその姿。その拳から放たれる一撃は想像を絶する。

 

 フィーネが再度バリアを貼った。

 色濃く、鏡のように響の姿を反射するハニカム構造のバリアは、先ほどのバリアとは比べ物にならない強度を秘めていることがひと目でわかる。

 

相対する響とフィーネの間にチリチリと静電気が走る。

 

張り詰めた空気の中

 

響の後方、投げ出されたトランクの留め具がひとりでに、

 

ピン

 

ピン

 

と弾けていき

 

ドンッ!

と最後の留め具が外れると同時にトランクが爆ぜた。

 

直後

 

ゴォォォォォォォォォ

 

響の背後が光り輝く。

 

激流のごときエネルギー

巨大な光の柱が突如として立ち昇り、天の雲を貫いた。

 

 ──デュランダル! 

 

 フィーネが響の背中に見た光の柱はぐにゃりと曲がり響の後ろに迫る。

 

 光の本流が響を包む

 

【 嵐流双拳 】

 

 閃光に背中を押された響がアスファルトを砕き巻き上げながら、フィーネに向かって直進する。

 

 引き寄せるように渦巻く風がフィーネを否応なく響の正面に縫い止める。

 

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 バリアは障子紙のようにぶち抜かれフィーネを巨大な拳が捉えた。

 

「があああああああああ!!」

 

 

 閃光を纏った響は宙に飛び出し、フィーネをビルの壁面に叩きつける。

 メキメキと巨大なクレーターが出来上がり、フィーネは半ば身体を埋め込まれた。

 

 そしてその背後で、宙に浮き、我こそは太陽と言わんばかりに光り輝くのは、完全な姿を取り戻したデュランダル。

 

「覚醒したか……デュランダル」

 

「──はぁ……はぁ……」

 

 フィーネをビルに叩きつけ、力を使い果たした響に重力が働き、徐々に高度を下げ始める。

 

 しかしだらりと垂れた響の手を掬い上げたものがあった。

 

 フィーネの手か? 

 

 否、デュランダルだ。

 

 響に強引に柄を握らせたデュランダルが一層ギラギラと輝く。

 だがそれに反比例するように響の姿がドス黒く染まっていく。

 

「これは──」

 空になったアタッシュケースを見て、賢治が呆然としながら呟いた。

 

「持ち主を欲するか」

 石油貯蔵庫に隣接した建物の外壁に叩きつけられ、クレーターに埋まったままのフィーネが、愉快そうにニヤニヤと笑う。

 

 デュランダルから吹き出した光が収束し、4〜50mはある長大な光剣へと姿を変える。

 

「ふふっ、お前がデュランダルを目覚めさせてくれたお陰で、面倒な工程が一つはぶ──」ジ.

 

 刹那、光剣が振り抜かれた。

 残像が円盤に見えるほどの速さ。

 

 

 フィーネは言葉を言い切るよりも早く光の奔流に呑まれ、姿を消した。

 

 

 ズッ

 とフィーネのめり込んだビルとその後方にあった工場が、30度ほどのきつい傾斜で両断され、ゆっくりとずり落ちる。

 

 

 賢治のすぐそばを通り抜けた光剣の軌跡は、肌を焼き焦がすほどの強烈な熱気を発していた。その断面は、溶解し沸騰したアスファルトがボコボコと音を立てている。

 

 しかし賢治はそんな事に気付きもせず、ただ豹変してしまった響を見つめる。

 

 響の姿をした影が

 

 吠えて

 

 吠えて

 

 吠えて

 

 すわ暴走か

 

 と思われたが、響が天に掲げていたデュランダルは、徐々に輝きを失っていき次第に明滅し、フッと光は途絶えて消えた。

 

 響の身体を覆っていた闇も同時に霧散し、浮力を失ったデュランダルは響と共にゆっくりと落下を始める。

 

 

「響ちゃん!!」

 

 賢治が墜ちる響の元へ駆け寄る。

 

 

 ゴスン

 と一足早くデュランダルだけが地面に激突し鈍い音を響かせる。

 

 しかし賢治はデュランダルに目もくれず、響に手を伸ばした──。

 

 ──

 

『腰の悲鳴』

 

 

 ◇◇◇

 

 

 瓦礫の下から覗く金の瞳が響を抱いた賢治の目とかち合う。

 

 ──今ならデュランダルは造作もなく取れる。……が、どうせ発信器でも付いている事だろう。ヘリの音も聞こえる。持って帰るのは不可能

 か。

 

「「デュランダルは預けておく。いずれまた──」」

 

 ビルが倒壊し、土煙が全てを包んだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 見慣れたくない見慣れた天井。

 

 身体が怠い重い。

 でも寝起き特有の気怠さは、動かないというまでも晴れてくれない。

 

 のっそり起き上がると、私の目と同じ高さに赤いツインテール。

 

「あ、響。起きてたんだ」

 

「いや今起きた所」

 

「あ、そうなんだ」

 

 弓美が手に持ったビニール袋を掲げてみせる。

 割と小さい袋。ちょっとしたお菓子と見た。

 

「駅前の和菓子屋さんの大福だけど、今食べる?」

 

 想像通り弓美がビニール袋から取り出したのは、玉入れに使われそうな白くて丸っこい玉。

 甘く優しい駅前の大福だ。

 

「……なんで大福?」

 

「なんでって、ほら大福って名前、縁起がいいじゃない? 響が早くよくなりますようにーって願掛けするならピッタリでしょ」

 

「別に私怪我してないし」

 

「怪我してないならなーんでこんな所に居るのよ。嘘ならもちっとマシな嘘をつくのね」

 

「いや嘘じゃ」

 

「まぁまぁ、ここは板場さんに免じて」

 

「そうそう、弓美ってば食べ物で縁起担ぐぐらい心配してたんだし、その意を汲んであげなきゃ友達じゃないよ〜?」

 

「ちょっと! 余計なこと言わない! ……こほん。とにかく、……あんま無茶しないでよね。アニソン同好会には4人必要なんだからね」

 

「……ごめん」

 

「あーもーアンタって奴はー!」

 

「ちょっ、頭そんなかき回さないで」

 

「うるさいうるさーい! もー、こう言う時はテキトーに『そうだね』とか『分かった』って言って笑っておけば丸く収まるって言うのに、アンタって子は本当にもー。変に真面目な顔しても、ストーリーのテンポが悪くなるだけだってのにー」

 

「弓美、ちょっとアニメ混ざってる」

 

「でも立花さんがそう言うってわかってましたよね?」

 

 弓美の私の頭を揺らす手が止まり、私の髪をすく。

 

「まぁね。これでも友達だもん。それぐらい分かるよ」

 

「……ごめん」

 

「謝らない。アンタはしたいようにするだけ。私らも言いたい事を言うだけ。『運命を決めるのは貴方しだい!』ってね」

 

 弓美はビシッと犯人はお前だ な人差し指をビシッと決めたポーズを取り、その手に握っていたビニール袋を私の膝に乗せた。

 

 ポンポンと毛布の上から膝を叩く。

 

「怪我だけには気をつけなさいよ」

 

「うん」

 

「それじゃ、私らは帰るから」

 

 よく見れば日はすでに傾いて、白い病室は薄い紅茶色。

 

「それじゃあね、ビッキー」

 

「また学校で会いましょう」

 

「うん、また学校で」

 

 手を振る。3人が病室を出て、入れ替わるように奏さんが入ってきた。

 

 腕を組んでニシシと笑っている

「いい友達じゃねぇか」

 

「奏さん」

 

「よぅ」

 

「何の用ですか?」

 

「いや何、ただの後輩のお見舞いさ。他意はないよ」

 

 これ、土産な。渡された袋を見るとAPTX4869と書かれた怪しげなカンカンが入っていた。

 

 ……何これ? 

 

「そういや賢治の奴、響のことラピュタキャッチして腰痛めたらしいぞ」

 

「……へ?」

 

「シンフォギア着たまんまならビルの屋上から飛び降りたって怪我しねぇってのに、馬鹿だよなぁアイツ」

 

 そう奏さんはケタケタ笑うけど、私の頬はほんのり熱い。

「ま、覚えてない所でカッコつけられても困るよな」

 

 奏がニヤニヤしながらパンと響の肩を叩いた。

 

 ──────

 

 パァン! 

 男の腰に張り手が一発

 

「痛ぁ!! 指令! もっと丁寧に張って下さいよ!」

 

「仕方ないだろう。湿布を貼るなんて初めてなんだ」

 

「この健康優良児」

 

「否定はしない。しかし、腰をやってしまったんだ、もう数日ぐらい休んでもいいと思うが」

 

「ダメですよ。デュランダルが覚醒した今、櫻井博士の計画は最終段階に移行したと言ってもいい」

 

「だが、了子くんはデュランダルの一撃を喰らったんだろう?」

 

「そうですね。でも、俺は崩れたビルの中から強い視線を感じました。アレは櫻井博士でした」

 

「ネフシュタンの再生能力があると言っても、重傷を負って直ぐにはデュランダルを持ち去る事はできないと踏んだか」

 

「覚醒したデュランダルを、そのまま深淵の竜宮に運ばないとも読んでの行動でしょう。実際、こうして今、デュランダルは二課本部に再収容されてしまっているのですから」

 

「覚醒したデュランダルの機能は未知数だからな。よく分からないものをよく理解しないまま封印した所でどこかに綻びが出る」

 

「そうですけどね。自分としては完全聖遺物の利用価値が上の眼を曇らせたとしか──」

「その話はしない事だ。とにかく、俺たちの任務はデュランダルの研究管理と外敵から防衛だ」

 

「……ですね。あぁ、それなのに再来週にはツヴァイウィングのコンサートが」

 

「それは仕方ないだろう。日本トップアーティスト『ツヴァイウィング』のメモリアルコンサートだ。中止には出来ない」

 

「だから困っているんでしょう? 櫻井博士は本部の護りが手薄になるその日に必ず襲撃してきます。その前に」

 

 弦十郎がコツコツと賢治のパソコンをつつく。

 

「必ず()()()を完成させなければならない。だろう?」

 

「……分かっているなら早く準備してください。それを扱えるのは指令だけなんですから」

 

 よっこらしょ と腰を労わりながら立ち上がった賢治の肩を、弦十郎がドンと叩いた。

 

「分かっているとも。さぁ、やるぞ!」

 




「シンフォギアの本気の一撃喰らってぶっ壊れないビルっていったいどんなビルだよ!?あと、デュランダルぶん回したら石油タンクも逝って大爆発したりしねぇのか!?つーかビルから落ちる響を受け止めるって、腰を痛めるで済む訳無ぇだろうが!!!」

それはホラ、演出の都合で…

「お前ご都合がすぎる設定は嫌いだって公言してただろうが!」

演出は別腹なのでノーカンです

「都合が良いなぁオイ!」

次回
戦姫絶唱シンフォギア わだつみの抱く光
『雪音クリスと体重計』
「アテツケかテメェ!」
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