アルビダ姐さんはチヤホヤされたい!   作:うきちか越人

13 / 26
あぁぁ~、ジョジョ五部最終回見逃したぁ…………


オレンジ髪と破天荒な海兵

 ココヤシ村。

 約一年前からアーロンの支配下にあったこの村は、今現在とても大きな活気で賑わっている。

 アタシたちが来たからだね。

 

 ココヤシ村を目前にしたところで、アーロンパークに残っていた一味の残党がアタシたちに襲い掛かってきた。

 まあそれをボガードくんとリィリィの二人で追い払い、ココヤシ村に上陸。

 それを見ていた村の駐在のゲンゾウさんーー通称ゲンさんに色々ことのあらましを聴かれて、あの無人島で幹部含めたアーロンたちを倒したことなどを話した。

 それはすぐさまココヤシ村だけではなく近隣の村にも広がり、この村を中心として祭りのような賑わいが訪れたのだ。

 

「本当にありがとう……っ!」

「ことのついでだよ。と言うかアンタたち、アタシを見てなにか思わないのかい? こう……美しすぎるだとか」

「あんたはとんでもない別嬪なのはわかるが、皆アーロンの支配から解き放たれたことが嬉しいのだよ。私だってそうだ」

 

 帽子に風車を刺したゲンさんは目端に涙を溜め、生ハムメロンを口にしながらそう言った。

 チヤホヤされるためにココヤシ村に来たのに、住人たちはあまりアタシを構ってくれない。

 感謝の言葉は貰うんだけれど、アタシの進化した美貌について触れてくれる人が少ないのだ。

 まことに遺憾だぞ、これは。

 

 ちなみにアタシがスベスベの実を口にしてからまだ一日も経っていない。

 けれど能力のオンオフは出来るようにはなった。

 流石アタシ! とんでもない才能だ!

 と思っていたけれど、良く良く考えたら当然のことなのかもしれないね。

 

 原作のアルビダがローグタウンで再登場するまでに一月も掛かっていないように思える。

 それだけの短期間で"スベスベシュプール"という技を使いこなせていたのだ。

 ならアタシだって能力のオンオフくらいは一日も経たずに出来るようになってもおかしくない。

 なのでココヤシ村への滞在は、ある程度スベスベの能力を意識せずとも使えるようになるまで。

 ……大体一週間くらいかな?

 それくらいを想定している。

 

 滞在中の期間はゲンさんに村を案内してもらった。

 サングラスをかけたドクターさんのところへ期間限定でリィリィが弟子入りしたり、村の特産物であるミカンを使った料理を振る舞われたりしてボガードくんの料理人魂に火が点いたり。

 

 

 日も沈みかけ、一旦リィリィの様子を見にドクターさんのところへ寄ったのだが、そこで未来の麦わら一味の航海士"ナミ"に出会った。

 まあこの世界の未来がどうなるかわからないから、ナミがルフィの仲間になるのかはわからないけれど。

 どうやらナミはドクターさんにアーロン一味の刺青を消してもらおうとしていたみたいだ。

 傍らには青髪で褐色肌の少女、ナミの義姉の"ノジコ"もいた。

 

「っ!? 海賊…………っ!」

「ナミッ! この人たちがアーロンたちを倒してくれたのっ! ダメじゃない、そんな目しちゃ!」

 

 ああ、そう言えば"ベルメールさん"のこともあって、ナミは海賊が嫌いだったんだっけ。

 ルフィとナミがオレンジの街で初めて会った時も、ルフィが海賊だと知って睨み付けていたしね。

 その後、手を組むということでルフィたちの船に乗ったけれど、旅を続けていく内に彼らに対して情が芽生えて海賊への偏見も薄れていったんだったっけねえ。

 

 その点、アタシたちはアタシの目的のためにアーロンたちを倒して、それが偶々ココヤシ村を含めたコノミ諸島を救う結果になっただけ。

 直接住人たちに何かしたわけじゃあないし、ナミの心を射つことをしたわけでもない。

 彼らからしてみれば、支配が解かれたという結果が突然降ってきただけにすぎない。

 感謝はされているとは思うけれど、アタシたちも海賊であるという事実は変わらないわけで。

 

 アーロン一味に身を置いていた経験と警戒心の強さで、アタシたちが略奪をしないとも限らないとでも思っているんだろうね。

 まあまだナミは多分十歳くらいだし、ただ海賊ってだけで感情的になっている可能性もあるけれどね。

 

「良いんだよ。そこのオレンジ髪のお嬢ちゃんの言う通りさ。アタシたちは紛れもない海賊だしね」

「ほら! ノジコもドクターもゲンさんも! 何で海賊なんかに良い顔してるの!? 嘘吐いて襲われるかもしれないんだよっ!?」

「もしそうなら私たちは最初からやられているさ。アーロンたちを倒すほどの海賊だ。今、私たちが無事なのが良い証拠だ」

「で、でも……」

「それになナミ、お前が村を買うためにアーロン一味に入ったことはノジコから聞いて皆知っている。だから私たちは"耐える戦い"をしていたんだ……だが、それももう終わった。ナミももう一人で戦わなくて良いんだ」

「し、知ってたの!? うぅ…………」

 

 ゲンさんたちとアタシへ交互に視線を移動させるナミ。

 なにか葛藤があるのだろうか。

 しばらく視線を行き来させた後、伏し目がちにアタシの方を見た。

 

「あの……嫌な態度をとってごめんなさい…………それと、ありがとう」

「気にしなくて良いよ。アタシたちが勝手にやったことだからね」

 

 最後の『ありがとう』は聞こえるか聞こえないかくらいのか細い声だった。

 まあナミの中ではまだ納得いってない部分もあったんだろうねえ。

 

「それに、これでめでたしめでたしって話じゃあないしね」

「どういうこと?」

「アーロンは倒したけれど、死んじまったわけでもないしね。またここにやって来る可能性だってある」

「えっ!? ……だったらこの辺りの海軍に連絡すればーー」

「魚人たちにはまだ無事な奴もいる。そいつら相手にこの辺りの海軍が出動しても……結果はアンタたちが良くわかってるんじゃあないかい?」

 

 そこへ思い付いたのか、ゲンさんやドクターは頻りに話し合っている。

 まあこれ以上余計に不安を煽らないためにも、アタシたちが海軍の船を一隻沈めたことは黙っているけれどね。

 一応危機意識を持ってもらうためにもアーロンについて忠告だけはしておいた。

 アタシたちがココヤシ村への滞在中にアーロンたちが襲ってくるなら迎撃に出るつもりでいるけれど、アタシたちが去った後の出来事に関しては別の話さ。

 仕方がないと割り切るしかないね。

 

 と言うか、アーロン一味はまた必ずコノミ諸島の支配に乗り出すと思う。

 一番大きな理由はナミの測量技術や、気象観測などを含めた航海術だ。

 アタシが記憶している原作キャラクターの中でも、その分野では一、二を争うほどの腕を持っている。

 出鱈目な気候や潮の流れの偉大なる航路(グランドライン)に於いても、僅かな風の変化で事前にサイクロンを予測してしまったりだとかね。

 超が付くほどの一流の航海士だ。

 だからアーロンはナミを狙ってまた来るだろうねえ。

 

 ……こう考えてみると、一つ思うことがある。

 うん、ナミ欲しいな。スカウトしてみるか。

 

 船員(クルー)に関してはリィリィの時のように、アタシが欲しいと思っても無理矢理は連れて行かないことにしている。

 相手が意思ある生き物である以上、勝手に連れて行ってしまっては裏切りだったり、それに準ずることを起こされる可能性があるからね。

 あくまでもアタシが欲して相手が了承した時だけだ。

 逆に相手から乗せてくれと頼まれた時は、命を賭ける覚悟があるか問うことにしている。

 返答が嘘かどうかは……まあリィリィがいればすぐにわかることなので、アタシ自身はそこまで気を配ってはいない。

 

 と言うか、やっぱりナミ欲しいなぁ。

 ボガードくんの負担も減らせるし、超一流の航海士も手に入る。

 実はサンジもスカウトはしてみたんだ。

 ただあの時のサンジはゼフへの恩返しが最優先だったので断られたがね。

 まあ今回も望み薄だろうけれど聞いてみるだけ聞いてみるか。

 

「オレンジ髪のお嬢ちゃん」

「なに?」

「アンタ、アタシと海賊やる気はないかい?」

「ば、バカにしないでよっ! 絶対海賊なんかになりたくないっ!!」

「……何故ナミを誘う?」

 

 まあそうなるだろうねえ。

 ナミは威嚇する猫のようにこちらを睨んでいる。

 ゲンさんは何故ナミに声を掛けたのか疑問に思っているようだ。

 うーん……そう言えば第三者視点で見れば、アタシがナミを仲間に誘う理由がない。

 

 …………良し! アーロンに擦り付けよう!

 

「アーロンが優秀な測量士の人間がいるって口走っていたのさ。人間でアーロン一味の刺青があるのはお嬢ちゃんだけだったからねえ。違うかい?」

 

 そう言ったら更に睨まれた。

 うん、相当アーロン一味の刺青に不快な想いを抱いているみたいだね。

 まあダメ元だったしナミは諦めよう。

 

 その後、若干悪くなった空気を戻すため色々話し合った。

 殆どが今後のココヤシ村についてのことだったけれど。

 取り敢えずアタシたちの滞在中に海軍を呼ばれても面倒なことにしかならないので、アタシたちが出航してから海軍に警備を任せるよう伝えておく。

 それくらいしか出来ないだろうしね。

 

 

 

 

 

 ココヤシ村での滞在は約二週間に延びてしまった。

 能力の制御はそこそこ順調ではあったのだけれど、戦闘に転用出来るまで磨こうと思い滞在が延びた。

 まあ攻撃的な使用法までは完成しなかったけれど。

 

 この二週間で何が一番大きな変化だったかと言えば、ナミのアタシへの態度がかなり軟化したことだろう。

 ベルメールのミカン畑に生っているミカンを誉めたことが切っ掛けだと思うね。

 勿論お世辞抜きで誉めたつもりだ。

 くどすぎない甘さ、程よい酸味に瑞々しい果肉。

 色も形も良くて、口にしたときに溢れる果汁は絶品だった。

 それをそのままナミやノジコに伝えたてみたところ、厳しい視線はそのままだったけれど口元に浮かんだ笑みまでは隠せていなかった。

 当然だけれど、"こう言えば喜ぶだろう"という打算はないよ。

 

 で、そのミカンを使ってボガードくんが鴨肉のソテーオレンジソース仕立てをナミたちに振る舞ったところ、その味に大喜びしていた。

 確かにあれは美味かったねえ。

 それからリィリィと海の上での健康管理なんかを話し合っていたりもしていた。

 昔の船乗りたちが良く患っていた壊血病には何が有効か、など色々だ。

 

 一週間も過ぎればナミのアタシへの呼び方が"海賊"から"アルビダさん"に変化した。

 ちょくちょくナミやノジコの実家に寄って料理を振る舞っていたのが効いたのだろう。

 良く語らい合うリィリィとは早い段階で打ち解けていたしねえ。

 アタシは……うん、なにもしてなかったな。

 もしかして"ただそこにいるだけの超絶美女"にしか思われてないのかもしれない。

 まあでも多少は懐かれてはいるけれどね。

 あ、まだ二人には早かったかもしれないけれど、美容のあれこれは色々伝授した。

 早速試して二人が全身ベトベトになり、アタシに助けを求めたのは面白かったねえ。

 

 それ以外では、ゲンさんにアタシが一千百万ベリーの賞金首だと伝えて大層驚かれたことくらいだろうね。

 アーロンが島内部から、ネズミが島の外から固めていたせいで情報があまり入ってこなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして出航の日。

 船乗り場にはナミやノジコ、ゲンさんを始め大勢の人々が集まっていた。

 

 東の海(イーストブルー)限定かもしれないけれど、この世界の一般人は善い人の確率がものすごく高い。

 善人という意味でも、アタシを最大限かまってくれるという意味でもね。

 プードルさんを始めとしたオレンジの街の人々もそうだし、このココヤシ村もそうだ。

 その他の島や街も善人が多かった。

 

 それなのに、いつかまたアーロンたちが襲来するであろうことがわかっているのに、アタシはココヤシ村だけではなくコノミ諸島に住む人たちを見捨てようとしている。

 他の島の人々にもチヤホヤされたいという、とても自分勝手な理由でだ。

 他人から見ればその行為は間違いなく悪だろうね。

 でもそれで良い。アタシは海賊だ。

 鬼畜、外道にまで堕ちるつもりはないけれど、悪党であるという自覚は持ち続ける。

 それで良いんだ。

 

「まあ最後に改めて聞いておこうかねえ。ナミ、アンタが欲しい。アタシの船に乗るつもりはないかい?」

「ううん。アルビダさんがそんなに悪い人じゃないのはわかったけど、私はこの村が好きだから。だからアルビダさんの仲間にはならない」

「そうかい、そりゃあしょうがないね。ならこれでお別れさ。いつか会えることを願っているよ」

「うん! 私たちもまた会いたい! ね、ノジコ」

「うん! またね、アルビダさんたち!」

 

 

 

 

 ヒラヒラと手を振って別れを告げる。

 目下最大の目標だったスベスベの実は手に入れた。

 あとは偉大なる航路(グランドライン)を渡り歩くために能力を磨くこと。

 最低でもキャラヴェル船に乗り変え、それの航行に必要な人数の船員(クルー)を集めること。

 

 そしてなにより!

 アタシがもっとチヤホヤされること!!

 

 まだまだやるべきことは沢山あるけれど、まずはこれを言わなきゃアルビダ海賊団の船出は始まらない。

 

 

「行くよボガード!」

「ヘイ、姐さん!」

「行くよリィリィ!」

「は、はい船長!」

 

 

 さあ、次はどんなチヤホヤが待っているんだろうねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年後。

 

「何でこうなるのかねえっ!!」

「ぶわっはっはっは!! もう十発も防がれたぞい! ボガード、新しい弾を寄越せぃっ!!」

「中将、張り切り過ぎですよ……」

 

 東の海(イーストブルー)辺境の海域。

 そこでアタシたちはとんでもない大物海兵とかち合ってしまった。

 

 海軍支部のレベルじゃあない本物の軍艦。

 その船首には骨をくわえた犬の顔。

 アタシたちの船に飛来してくる砲弾は撃たれたのではなく、その大物海兵によって投げられたものだ。

 迎撃していたボガードくんの拳はボロボロの血だらけ。

 指も変な方向に曲がってしまっている。

 

「わ、私でもあの人は知ってますぅ! せ、船長どうしましょう!?」

「狼狽えるんじゃあないよ! ボガード! まだ行けそうかい?」

「ヘイ、姐さんっ!!」

 

 ボガードくんはやせ我慢しているだけだろう。

 実際あんな砲撃(・・)を殴って迎撃していたんじゃあ、拳がもたないのは目に見えている。

 むしろボガードくんの頑丈さを褒めるべきだろうね。

 

 ……そうか、これが伝説か。

 まだその片鱗すら見せていないのだろうけれど、かなりヤバい相手だということは良く理解した。

 

 

 

 これが伝説の海兵。

 

 これが海軍の英雄。

 

 彼の"海賊王"の宿敵。

 

 

「モンキー・D・ガープッ!!」

「ぶわっはっはっは!! もう一度防いでみぃ! 拳・骨・隕石(ゲン・コツ・メテオ)!!」

 




ガープ「よう!」

アルビダ「アタシの側に近寄るなぁっ!!」



ボガード「よう!」

ボガードくん「ヘイ!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。