八年後。
絶世の美幼女アルビダちゃんは傾国の美少女アルビダさんへ。
十五歳になったアタシはそれはもうとんでもないことになっていたのだ!
透き通るような純白の肌と抜群のボディラインを惜し気もなく露出し人目をこれでもかと集める。
あれだ、スベスベの実を食べた後の格好に酷似しているのだ。と言うかそれを参考にしたのだけれど。
白ビキニにタイトなズボン。丈の短いジャケットを前開きにして袖を通している。帽子は何か違うと思いつけていない。
顔もやや幼さを残しながらも大人の階段を登っているような、危うさが見え隠れしながらも周りを魅了して止まない、正しく神の造形!!(自画自賛)
嗚呼……完璧だ。美しい……。
この世にアタシ以上に美しい存在があるだろうか? いやない!(反語)
と、まあどうしてこうなったのかと言えば……
めっちゃ修行した。
端的に言えばそうなる。
別にアタシの目標のみに焦点を当てれば強くなる必要はない。だってチヤホヤされたいだけだから。
でもその目標へ達する手段として海賊を選んだわけで。どう足掻いても戦闘ってのは避けて通れない道だ。
美幼女から美少女になって美女へ。
原作のアルビダのように肥え太るのは勘弁願いたい。何もしなくてもアタシが美しいのは当然の事だが、原作の太った姿が醜いと感じる美意識はある。
まあつまり強くなるための修行でたくさんエネルギーを消費して、よく食べよく寝て、健康的なプロポーションを維持する。
まさに一石二鳥!! 修行にも気合いが入るってもんだ。
修行の内容としては、取り敢えず原作知識を利用して思い付くものを全部試してみた。
まずは海軍特有の体技である"六式"。"
全部は無理でした。難しすぎるって!
会得出来たのは
次は"覇気"。
コレはかなり重要だ。会得していないと悪魔の実の分類で"
覇気を纏えば
原作で出てきた言葉を借りるなら『覇気とは誰にでも備わっている』、『疑わないこと』。これが重要らしい。
最初の半年近くは全くと言っていいほど形にならなかった。挫けそうになったが『疑わないこと』が肝要で、『誰にでも備わっている』のならアタシも出来ないはずがないと言い聞かせて必死こいて頑張った。
原作でルフィは二年である程度ものにしていたが、その域まで行くのには倍の四年掛かった。
四年でわかったことは"見聞色の覇気"よりも"武装色の覇気"の方が得意であるようだ。
因みに生まれついての才能がものを言う"覇王色の覇気"はアタシには備わっていなかった。まあ当然と言えば当然だと思う。
言っちゃなんだが原作のアルビダは小物であったし、
まあ無いものねだりしていてもしょうがないのでこれまで以上に鍛練に精を出した。
適正のあった武装色は相当なものになったと自負している。"鉄壁のパール(笑)"さんの鎧(?)が濡れティッシュに思えるほどに磨きあげた。
ただ残念なことに見聞色の方は八年掛かって漸くルフィの足元が見えてきたレベルにしかならなかった。
ああそれと。まだ旗揚げしていないが、この八年でアルビダ海賊団(仮)に初めての
同い年のボガードくんだ。当然の如くアタシにホの字だった彼は気付けば一緒に鍛練する仲になった。
三年前、つまり十二歳になってから鍛練を始めたボガードくん。アタシには全く及ばないけれど、可愛らしい見た目だったので最初は女の子かと思っていたが、男の
マジか、と思ったのもつかの間ーー具体的には三ヶ月くらいーーいつの間にか筋骨隆々の偉丈夫へと変貌を遂げていたのだ!!
一言で言えば"金髪のフランケンシュタインの怪物"。威圧感が凄い。
取り敢えず副船長に任命してやった。嬉しそうにしていたがちょっと怖い。
見た目こそ強そうだが修行期間が三年と短い分、覇気も六式も未だ中途半端な出来だ。最弱の海、
とまあ長々と振り返ってみたわけだが、そろそろ海に出ようかと思っている。細かい理由を挙げれば色々と出てくるが、一番の理由はズバリ"スベスベの実"だ。
原作を思い返してみると、アルビダがルフィにやられた後、アルビダは美女に転身して"始まりの街ローグタウン"で再会する。
その間にスベスベの実を食べたことになるのだが、この二つの出来事は両方とも
この期間中、長くても一月程の間に
かと言って
つまりだ、これらを踏まえるとほぼ確実にスベスベの実は
まあこの時期に偶々他の海から持ち込まれたものかもしれないが、元々
それ以外で原作中に所在が明らかにされた悪魔の実は非常に少ない。
ウシウシの実モデルジラフ、アワアワの実、メラメラの実くらいじゃないか?
何にしても、何れも競争相手が悪すぎる。前二つは世界政府の諜報機関でメラメラの実は競争相手もそうだが、"ポートガス・D・エース"が死んだ事で実の状態で手に入ったんだよな。
何れにせよ一番可能性があるのがスベスベの実ってわけだ。
因みに妥協してスベスベの実を求めている訳じゃない。スベスベの実
だって超絶美肌になれるんだぞ!!
スキンケア要らずになるなんて素晴らしすぎるじゃあないか!!
この八年間、粉雪のようにきめ細やかな美肌を維持するのがどれだけ大変だったか……
それに海に出ると言うことはこれまで以上に日差しに晒されると言うこと。ケアもそれに比例して大変さを増していく。
それらから解放される。こんなに嬉しいことはない!!
そしてスキンケアに使っていた時間を他のことに充てられる。結果もっと美しくなってもっとチヤホヤされる正のスパイラル!!
…………勝ったな。
何が勝ったかはわからないが、とにかくアタシの心は期待感に満たされていた。
小さな港にはアタシの美貌をフルに活かして貢がせた小舟。バスキッチン付きで二~三人の船旅に適した中々良い船だ。
アタシの美しさでハートを撃ち抜くよって意味合いを込めてそれにした。ハンコックの技に似たようなのがあるって?
知らんなあ~。
とにかく!
ここからアタシの『世界中の人からチヤホヤされたい計画』の第一歩が切られるわけだ。
「ボガード、準備は良いかい?」
「ヘイ、姐さん!」
「この海で最も尊いのは?」
「姐さんです!」
「じゃあこの海で最も価値があるのは?」
「姐さんです!」
「当然さ! じゃあ最後に、この海で最も美しいのは!?」
「この世の総てと比べても、ぶっちぎりで姐さんです!!」
「アハハハハ!! わかってるじゃあないか! 行くよボガード、世界がアタシの美しさを待っている!!」
「ヘイッ!!」
天気は快晴、波も穏やか。絶好の船出日和に高笑いを上げ旅立った。
しかし気付かない。原作で出てきたアルビダの年齢など気にしたことがなかったから。
今が原作の始まるーーモンキー・D・ルフィが船出を迎えるーーまでどのくらい時間が遡っているのかを。
気が付いていれば間違いなく後一年は船出を遅らせていただろう。
気付かない。
「アハハハハ!! 水面に映るアタシも美しすぎる!! そうは思わないかいボガード?」
「ヘイ! その通りでさぁ!!」
「アハハハハ!! アハハハハ!!」
「ヘッヘッヘッヘッヘッ!!」
因みに原作初出の時点でアルビダの年齢は二十五歳。今が十五歳。
原作開始の十年前ってことになりますね。
いやぁ~いったいイーストブルーに誰がいるんだろ?(棒)