アラバスタ"夢の町レインベース"
そのオアシスの中心に建つこの町最大のカジノ"レインディナーズ"の一室。
とある作戦の最終通達を終え、五人の曲者が立ち去り、その部屋には二人が残った。
Mr.0こと、"王下七武海"の一角"サー・クロコダイル"と、Ms.オールサンデーこと"ニコ・ロビン"。
妙齢の美女とも言うべき、ハットを被った黒髪の女、ニコ・ロビンは顔面に真一文字に縫い痕が入った葉巻を吸う男、サー・クロコダイルに問いかける。
「作戦の最終段階で多少の変更を加えるなんて、あなたらしくないわね」
「全くもって忌々しいぜ。おれだって出来ればそうしたくなかったさ…………これを見ろ」
「これは?」
「政府からの通達書だ」
クロコダイルから渡された書類を読むロビン。
それはクロコダイルが七武海としての立場から受け取ったもの。
その内容はとある海賊がアラバスタの方へ向かった可能性が高い、というものだった。
「中将を破った"疵無し"という海賊。そしてそれに追手を出した海軍……もしアラバスタに上陸したなら拿捕に協力しろと書かれているけど?」
「後で消すさ。構ってる暇はねェし、今は計画が最優先だ」
「なるほど。この"疵無し"って海賊はともかく、追手の海軍が厄介ってわけね?」
「あァ、"エルマル"が枯れてるとなりゃ海軍共が船を停めるのは"ナノハナ"だろうからな。そのまま作戦を進めちまったら、海軍は民衆共の鎮圧に乗り出しちまう」
「折角の"演技"も"物資"も無駄になってしまうわね」
「その通りだ。最悪、Mr.1のペアとMr.2が海軍に捕まる可能性も出てくる。"ビビ"が生きているとわかった以上、つまらねェことでオフィサーエージェントを失うわけにゃいかねェ」
勿論必ずしも件の海賊がアラバスタに立ち寄るとは限らないが、書かれていた日付やアラバスタとの位置関係、航路を逆算していくと作戦の決行日と丁度被ってしまう。
作戦名"
その最終目標である国の乗っ取りを目前に控えておきながら、こんなことで支障をきたすことは避けたい。
想定していた本来の作戦よりも若干確実性は欠けてしまうが、打てる最善の一手を打つ。
「海軍がそのまま反乱の鎮圧まで手を伸ばしてきたらどうするつもりかしら?」
「んなもん、おれがどうにかするからお前らは"疵無し"を追え、とでも言っときゃどうとでもなる。バカな民衆共にとっちゃ、おれァ英雄らしいからな。海軍もそのことは知ってんだろ」
「その英雄の求心力で反乱を止められると海軍に思わせる。そして海軍を国王軍、反乱軍から遠ざける……フフッ、悪魔みたいな英雄ね」
「てめェは"悪魔の子"だろ、ニコ・ロビン」
「あら、その名は呼ばない約束よ?」
計画が表に出る時は近い。
━━━━━━━
「まだやれるだろう? 気張りな!」
「み、見てくださいアルビダの姐さん! ほら、足がガクガクでもう動けないっす!」
「でも、そんなスパルタなアルビダの姐さんも素敵でやす……」
アラバスタへの航路。
波が穏やかな内はヨサクとジョニーの鍛練の時間に充てている。
二人とも膝が笑って――大爆笑しているね。
まあ今回はなんとかなったけれど、いつまでも海軍から逃げ続けられるとは思えない。
そうなった時には戦闘をするしかないのだが、守りながら闘うのもいずれ限界が来るだろう。
ヨサクとジョニーには早急に、せめて相手が将校クラスでもなんとか自分の身を守れるようにはなってほしい。
リィリィは戦闘技術がからっきしだけれど、とにかく長所である見聞色を鍛えて接敵を避ける方針で頑張らせている。
さて、原作でも大きな山場となるアラバスタ編。
それに首を突っ込もうとしているのには一応理由がある。
打算まみれなのだけれど、まず一つ目はヨサクとジョニーに戦闘の経験を積ませるため。
とは言え、新聞にも載っていた内乱に参加するのではなく、それを扇動している"
"5"より若い数字を持ったオフィサーエージェントとはヤバくなったら手を貸そうと思っているし、それ以外のエージェントや"ビリオンズ"や"ミリオンズ"だったらヨサクとジョニーでもなんとかなるだろうね。
甘っちょろい鍛え方はしていないし、元より数百万ベリーの賞金首くらいなら倒せる実力はあったのだ。
まあ原作通りに進んでいるのならルフィたちの手助けみたいな形になるけれど、ヨサクとジョニーのモチベーションが上がってくれるのならそれに越したことはない。
もう一つの理由。
これはあまり褒められたものではない、アタシの完全なる打算的理由だ。
感情論でどうとかではなく、今後のとある"計画"のための布石になるだろうから、出来ることならルフィたちに加担してこの内乱の被害を少しでも抑えたい。
まあ勿論、被害が大きくなればアタシをチヤホヤしてくれる人が少なくなるからなんとかしたいってのもあるけれどね。
"計画"の方はまだ動き出してすらいないし、そもそも始める段階で頓挫する可能性だってあるけれど、アタシの最終目標である"世界中からチヤホヤされる"というのに非常に重要な要素になると思うんだ。
まあこの"計画"は
「姐さん、
「見えてる港はナノハナだね。良し、少し離れた場所に船を停めて上陸するよ」
気を取り直して、アラバスタ入り。
ナノハナの港に停めても良かったのだけれど、時系列がわからないのが痛い。
確かBWの
それに巻き込まれて船を壊されちゃあ堪んないからね。
遠目から見てもナノハナの港は無事みたいだし、まだ作戦は始まっていないのだろう。
「わあっ、町中香水の良い匂いが漂っています!」
「香水で有名なところだからね。アタシに振りかけたら、溢れ出る魅力が止まることを知らなくなってしまう!」
「そうですねー」
ナノハナに着くと、ギョッとした顔で周りから見られた。
良い意味での驚愕半分、悪い意味での驚愕半分。
最初は変装することも考えていたのだけれど、ローグタウンでの手配書の撮影会が裏目に出てしまった。
色々な衣装を着たからね。
踊り子の衣装や盗賊紛いのワイルドなものまで、それはもう色々と。
一応それらの衣装はレア物扱いなので出回ってる数が少ないが、アタシのファンクラブなんてものまであるんだから、会員内で共有されていてもおかしくない。
端的に言えば変装は意味がないことに気付いてしまったのだ。
そうだ変装と言えば。
「ヨサク、ジョニー、それから一応リィリィも」
「なんすか?」
「これ」
渡したのは一枚の紙。
BWの社員は大概この紙に描かれたマークを彫ったり身に付けている。
「んんー? なんかのマークでやすか? アッシにゃてんで見当も付かねェ」
「見てるだけで不安になってきます。呪い殺されそうですぅ」
「リィリィ!」
「え、えぇっ!? なんで私怒られたのーっ!?」
絵が下手くそで悪いかっ!!
自分でも思ったよ。
落書き以下の、なんか黒魔術とかで使いそうな良くわからないものに仕上がってしまったってことはね!
「くそっ! しょうがない……リィリィ見聞色で怪しい奴探しな」
「は、はいっ! ……むむっ、いました! あの三人ですっ!!」
早速、有無を言わさず一般人に変装していたのだろう三人の男を捕らえる。
やはり、腕や首筋などにBWのマークが入った入れ墨を彫っていた。
「この入れ墨が入ってる奴らが今回のターゲットさ」
「なるほどっす」
「このマークが入った奴らをぶっ倒せば良いんでやすね?」
「そうさ」
「船長が描いた絵と似ても似つかないですねー。どうしてああなったのか」
「リィリィ!」
「ひぃっ! ご、ごめんなさいぃ!」
おっと、大分目立ってしまったみたいだ。
丁度良いや。聞き込み調査をしてみよう。
今回は原作知識が大いに役立つと思ってる。
聞き込み調査ではほんの一日ちょっと前に麦わら帽子を被った海賊と海軍の追い駆けっこがあったらしい。
えーっと……となると、明日か! 多分。
ちょっと細かい時系列には自信ないけれど、
クロコダイルが一番嫌がっていたのは反乱が止まること。
反乱さえ止まってしまえば後はどうとでもなるだろう。
国王の"ネフェルタリ・コブラ"にはビビからBWへの潜入調査の手紙が届いているはず。
そしてクロコダイル討伐に動いていた。
途中誘拐されるけれど、反乱軍さえ首都"アルバーナ"に向かわなければ国王軍も動かず、アルバーナに向かった麦わら一味がなんとかするだろう。
あの一行には王女のビビもいるはずだし、発言力に関しては大いに期待できる。
アルバーナにはMr.4ペアしかいないから、戦闘面でも心配することはない。
アタシたちは"カトレア"にいる反乱軍を止めることを最優先に考えよう。
どうやって止めるかだけれど、アタシが直接出向いてもあまり効果はない。
言ってみりゃアタシは完全な部外者だからね。
黒幕はクロコダイルだ、と言っても求心力の面で聞く耳を持たれないだろう。
なのでナノハナにやって来るコブラに化けたMr.2を捕らえる。
それを差し出せば少なくとも迷いは生まれるはず。
後は作戦が狂ってあぶり出されたBWの社員や、ナノハナにやって来るMr.1ペアを倒せば
反乱軍のリーダー"コーザ"も多少はアタシの話に耳を傾けるだろうし、そうなったらアルバーナにいるビビになんとかして会わせれば完全に反乱は止まるはずだ。
「と言うことで」
「なにがと言うことで、なんですかー?」
「まあ聞きな。明日、武器を大量に積んだ武器商船がナノハナにやって来る。そして国王に化けた奴が反乱を扇動すると思うんだよ」
「なんでそう思うんっすか?」
「アタシならそうするって言うのと、後は新聞からの情報だね」
嘘だけれど。
「ノコノコやって来たBWの社員を倒すよ。そうなりゃあ王下七武海、サー・クロコダイルと完全に敵対するけれどね」
「し、七武海でやすかあっ!?」
「しっ! 声が大きいよ。それに聞き込みで住人が言ってただろう? "麦わら"もアラバスタにいるって」
「はいっす! ルフィの兄貴たちに会いたいっす!」
「なら、アンタたちの知ってる"麦わら"は、仲間のために七武海に喧嘩売るか売らないか、アンタたちなら良くわかってるんじゃあないか?」
「絶対に闘おうとしやす!」
「……ってことはおれたちもルフィの兄貴やゾロの兄貴の手助けに……」
「そういうことさ。まあ本当ならそういう動機はアタシのためだけにしてほしいんだけれどね」
「うっ……すいやせん……」
「つい……」
まあ実際あまり気にしていない。
それがヨサクとジョニーの美点だしね。
日も暮れ始め、主に水などの砂漠越えに必要な物資を買い揃えた。
香水なんかも何種類か気に入ったフレーバーのものを買った。
町中をブラブラしながら目に付いたBWの社員を物影でヨサクとジョニーに闘わせたりしながら時間が過ぎるのを待つ。
そして明朝。
予想外のことが幾つも起こった。
まず一つ目。
「ぎゃーっはっはっは! ごきげんよう、アラバスタの諸君!」
…………何故だ。
思わず口をあんぐりと開きっ放しにして、言葉を発するのを忘れていた。
船は見当たらないからどこか町の外れに停めたのだろうけれど、なんでお前がいるんだ。
"道化のバギー"とその一味。
ピエロのようなメイクを施した赤いデカっ鼻の男がバギー。
スカした態度の黒髪の男が参謀の"カバジ"で、ライオンの"リッチー"に乗った白髪の男が副船長"モージ"。
いやいや、なんでアラバスタにいるの?
こんなの全く予想できなかった。
「不確定要素は即排除ぉぉっ!!」
「ぎゃぁぁっ!?」
「バギー船長っ!!」
「何者だ、きさ――うわあっ!? き、"疵無し"ィッ!?」
同じ
アタシのことは良く知っている。
取り敢えずノリでバギーをぶっ飛ばしたけれど、いや本当になんでいるの?
「アンタたち、なにしに来た?」
「ちくしょう、テメェ"疵無し"! いきなりなにしやがる!」
「うるさいよ。質問してるのはアタシだ」
「バギー船長、相手が悪すぎますって!」
「チッ……しょうがねェ」
話しを聞くに、どうやら海軍の軍艦に追われていたらしい。
それでなんとか辛々逃げきってアラバスタまで来てしまった、と。
「少将が乗っていたが、もう一人。海兵じゃねェが、ヤベェのがいた。特製バギー玉も通用しねェ」
「へぇ、そんなヤバいのからよく逃げきれたねえ」
「他の海賊に襲われてる商船があったんだよ。そっちを優先してくれたお陰で逃げきれた」
「なんで狙われてたんだい? まあ海賊だし理由なんざ腐るほどあるだろうけれど」
「あァ、"疵無し"を追う任務に就いているって言ってたなァ………………お前じゃねェかァッ!!」
「アタシ?」
「とんだとばっちりだぜオイ!! テメェがヤバいの呼び寄せたせいでおれたちァ大変な目に逢ったんだぞ!?」
そんなこと言われてもねえ。
まあバギーがアラバスタに来たのは不可抗力と言うことがわかっただけでも良しとしよう。
それより、アタシを追って来た海軍ってのが厄介だね。
思うように動けないかもしれない。
……あっ!
「丁度良いや。バギー、アンタ確か"バラバラの実"の能力者だったよね」
「んあ? その通りだが」
「ちょっと見せておくれよ。さぞかし格好良いんだろうねえ」
「おいおいおい! 麗しのレディー・アルビダよ、お前にそんなこと言われたら見せてやるぜ! バラバラフェスティバル!」
おお。
実際見ると凄いな。まあ良いや。
取り敢えず浮いていた心臓の辺りを捕まえて箱に封印する。
「ん?」
「なんだい?」
ニヤケ顔のまま固まるバギー。
取り敢えずバギーの一部が入った箱は、ジャケットのポケットに入れておく。
「返してほしければ海軍の足止めよろしくね」
「テメェッ!! 騙したな!!」
「騙し討ちは海賊の作法だってシャンクスが言ってたよ」
「なァんであいつの名前が出てくるんだァッ!!」
良しっ、人手ゲット。
"これ"をちらつかせればバギーは頑張ってくれるだろう。
腐っても
バギーとの口論と言うかじゃれあいと言うか、そこそこ時間が経っていた。
時間を確認してみたけれど、七時はとっくに回って既に一時間近く経とうとしている。
あれ?
そんなことを考えているとナノハナに誰かの大声が響き渡る。
『カトレアに国王と国王軍が現れ、蛮行を行っている』、『カトレアの南の海岸に武器商船が突っ込んだ』などなど。
あれぇ?
アタシの予想、と言うか原作の展開と違うぞ?
と言うか、これはとてもマズイ事態になった。
ナノハナにBWのオフィサーエージェントが現れないと、アタシの作戦が根底から崩される。
もう大分時間が経ってしまっている。
反乱軍は動き出しているだろう。
「バギー一味! アンタたちアタシたちの船曳いてサンドラ川の上流に向かいな!」
「な、なんでお前の言うことを――」
「これ」
「んなっ!? 野郎共! "疵無し"にハデに従えェ!」
「あっ、バギーはこっちに来な」
さて、今から出て追い付けるだろうか。
とにかく、アルバーナに向かわなくては。
━━━━━━━
アラバスタ北東の海岸。
海軍の軍艦と海兵がズラリと立ち並ぶ。
「メイナード少将、ナノハナに向かわずともよろしかったので?」
「ああ、あの人がそう言うのなら"疵無し"はアルバーナに向かうんだろうよ」
「で、でも賽の目で決めるなんて……それにあの人は海軍所属ではないじゃないですか」
「流浪人ではあるが、何度も我々は助けられた。それに誰よりも市民の安全を考える素晴らしい人だ」
海軍本部のメイナード少将を筆頭とする海兵たち。
ミイハア王国にてダルメシアン中将を打ち破ったという海賊"疵無しのアルビダ"追跡の任に就いていた。
「では、行こうか。すみませんお手数を掛けますが……」
「いえいえ、あっしは海兵じゃあございやせんが、罪なき人々を守りてェという想いで同行させてもらっているだけ。どれ、一丁"疵無し"とやらを捕まえてご覧にいれやしょう」
「本来、我々だけでやらなくてはいけないところなのですが……貴方がいてくれるなら百人力ですよ」
「海兵さん、立場貫くのも大変でございやすねェ」
アルビダ「ナノハナにBW来るやろ」
↓
来ない。
クロコダイル「ナノハナに海軍来るやろ」
↓
来ない。
圧倒的 ポ ン コ ツ 二人!