また懲りずに二作目です。馬鹿だな。
今作は東方×ソードアート・オンラインのクロスオーバーですが、SAO要素はスキルだけです。ご注意を。
では、どうぞ!
第一話 退屈と幻想郷
「暇だ……」
そう言って俺、
ここで俺について記そう。身長は180センチにギリギリ届かないくらい。痩せ型、自分で言うのは憚れるが整った顔をしているとは思う。そしてライトノベル『ソードアート・オンライン』の愛読者───ちなみに二刀流のソードスキルは素で出来る。当たり前に遅いが。剣道はやってないが、じいさんに『霧夜流剣術』を教えてもらい、再現した。じいさんはかなりの長生きで、何歳かもう数えてないとのこと。マジでどうなってるんだ。歳忘れるとか、妖怪か何かかよ。静かになった家に帰ると、じいさんが俺を呼ぶ置き手紙があった。なんだろうかと思いつつも放って置けないのでじいさんの所に行く。
和室にじいさんはいた。何時もの笑みはなく、ただ、しっかりと俺を見据えている。正面に座るなりじいさんが口を開く。
「零、最近、退屈を感じていないか?」
「それは勿論、退屈さ。学校の授業も面白くないからね。」
「ならば、退屈でない世界に会いたくないか?」
「会えるなら。」
「なら、話そうか、『幻想郷』についてな。」
そこからは文字通り驚きの連続だった。『忘れられた者の楽園 幻想郷』。そこは通常は視認できないが、
それで話した理由だが、最近俺が元気がなく、退屈そうにしているので、これを機に幻想郷へ行ったらどうか。という誘いだった。俺としては歓迎したいが、俺が幻想郷へ行ったらこの世界では行方不明にならないか心配だ。それを言うと
「気にするな。
「どんだけヤバイやつなの?会ってみたいもんだよ。」
「呼んだろうか。紫、来てくれ。」
じいさんがそう言うと、いきなり目の前の空間が割れた。
「うわっ!」
思わず飛び退き、そこを注視する。割れた空間から出て来たのは、十人に聞けば十人ともが胡散臭いと答えそうな、金髪の女性だった。
◆side 紫
私は妖理に呼ばれて外界に出た。普通なら私を呼び出すなんて出来ないけど、他ならぬ彼のことだ。
「うわっ!」
出た瞬間に私に気づき飛び退く子がいた。妖理め、謀ったな。しかしこの子、一目で分かった。普通ではない。でなければ
「どうしたの?妖理。」
「この子を幻想郷へやってくれ。」
「いいの?」
「ああ、本人も『行けるなら行きたい』と言ってたしな。」
そう言われ、今度は少し警戒した姿を見せる子──妖理の孫の零───に目を向けた。
◆side 零
俺は突如現れた女性、紫さん?に目を向け、警戒する。じいさんの話からしてこの人も十中八九人外だろう。しかも俺についても知ってる。じいさんが話したのだろうけれど、どこまで知ってるかわからない。すると紫さんは微笑を浮かべ
「貴方が零?」
そう問ってきた。じいさん、やっぱり話したな。絶対知られたくないこともじいさんなら話しかねない。口が軽いからな。考えてから、返事する。
「そうです、紫さん?」
「そう、私は八雲 紫、よろしくね、零。」
「どこまで俺のこと知ってる?」
「うーん、かなりの所まで、具体的にはフラれた話くらい───」
「じいさぁぁん!!何してくれとんじゃあ!」
「いやな、面白い話題だったから───」
決めた。後で〆る。でも今は紫さんと話そう。
「幻想郷に、連れて行って下さい。」
「良いわよ。」
「ありがとうございます!」
「でも、住む所は自分で見つけて」
「そのくらい、覚悟してます。」
「ならいいけど、妖怪は数が多いから、気を引き締めてね。」
なんか危ない雰囲気がする。まぁ居ないので確かめようもないから、気にしないでおこう。最後に、紫さんから俺の能力を教えて貰ったのと俺の所持金を幻想郷で使えるようにしてもらう約束をして、紫さんは帰って行った。
部屋に俺とじいさんだけが残った。残り時間はあと少し。別れの時だ。
「じいさん、ありがとう。」
「良いんだ。お前が幸せならな。」
「そう………」
「向こうは美しい女性が多いぞ。引っかからないようにな。」
「うるせぇ、余計なお世話だ。」
「最後にひとつ、零、
守りたいものは、守り通せ。」
「当たり前だ、じいさんが俺に最初に教えたことじゃないか。」
「そうだな。
零、お前の本当の名字、知りたいか?」
「ああ、どうせなら俺はそれを名乗りたい。」
「………この家は人を心から信じることを正義とした。だからお前の名は
─────
「心義 零。それが俺の名前。
ありがとう、じいさん。心義零、行ってきます。」
「行ってらっしゃい、零。疲れたら休むことも覚えろよ。」
俺はじいさんから新しい名前をもらい、幻想郷へ旅立つ。じいさん直伝の、霧夜───いや、心義流剣術を引っ提げて───。
side 妖理
「行ったか…………」
俺は零を見送って、一人佇んでいた。『心義』の名前を伝えた後、一人で旅立つ姿は、零の好きなライトノベルの主人公に、よく似ていた。紫が送る場所は大概想像がつく。危険極まりないが、零ならやっていける、そう思った。そして想像する。零が、二振りの剣を背負い、家族を失った少女を守る姿を。それは正に─────
「『黒の剣士』」
悪の代名詞として使われる黒、しかし零の黒は、何処か温かみのある黒が想像出来た。
side 零
俺は幻想郷に着いて、先ずやることがあった。紫さんとコンタクトをとることだ。俺の私物を受けとらないといけない。と懐を見ると紙があった。そこには
『零へ、貴方を転移させました。私物は後で住む所が決まってから送ります。あと、心は読まれないのでご安心を。紫より
追伸、そこは荒っぽい妖怪が多いのでお気をつけて。』
ふーん、そっか、荒っぽい妖怪がおお───ハァ?!ざけんなゴラァ!本当に何考えてるんだ、スペランカーかよ!と言うか心読まれないって何さ。ぶつくさ言いながらも目の前の建物の門を叩く。するとゆっくりと扉が開き───
「だ……誰……です……か………?」
とても弱々しそうな、桃髪と深紅の瞳を持つ。幼い少女がいた。
◆side??
ドンドン
扉の叩かれる音がする。
黒髪に黒色のコートを羽織った、白群色の瞳を持つ青年が立っていた。
目を覚ますと私は自室にいた。周りを見ると水や鈴が置いてあった。あの人が用意してくれたのか。鈴を鳴らすと私のペットの一人、火焔猫燐が入ってきた。
「大丈夫ですか!さとり様!」
「大丈夫よ、お燐、あの人は?」
「ああ、彼なら隣の部屋に。全く驚きましたよ。いきなり知らない人が来たと思ったらさとり様を抱えているんですから。」
「そう、心配かけてごめんなさいね。あの人を呼んで来て。」
「はい。」
私が頼むとお燐はすぐに彼を連れてきた。入ってきた彼の心は────
───読めなかった。
「な……んで……読めないの?」
「読めない?ああ、妖怪としての力か。」
「そう、です。………気持ち………悪い…ですよね。」
「そんなことない。」
私の発言をばっさり切り捨てた彼に、驚いた。
◆side 零
「そんなことない。」
気持ち悪い、そう言う少女の言葉をばっさり切り捨てる。寧ろそんな力があったらすごいと思う。けれどその言葉を少女は信用してくれなさそうだ。
「本当……ですか?」
「ああ、嘘つけるほど立派に出来てない。」
「嬉しいです。そんなこと言ってくれる人と会えて。」
「そうか、で、自己紹介したいんだけど、良いかな?」
「はい、私は古明地さとり、ここ地霊殿の主です。」
「初めましてさとりさん。僕は心義零、貴女達の言葉で、外来人です。」
「なんで、それを?」
「簡潔に言うなら、退屈だったのを俺のじいさんが紫さんに頼んでここに送った。今後はここで過ごす。
それだけ。」
「それだけと言うには、少々無理がある気がします。」
「そうかな?それで今絶賛住む所探し中ってわけ。」
「なら地霊殿に来ませんか?」
いきなりのお誘い、幻想郷の基礎知識あるから言わせて貰いますけど、女性だけの中に男一人って、どんな仕打ちですか。新手の拷問かな?
「いいの?」
「何がですか?」
「女性の中に男が入ること。」
「気にしないでください。新しい人が来るのは嬉しいので。」
「そう、じゃあ、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、後、敬語は外して良いですよ。」
「さっきから既に外してたけどな。」
「そうでしたね。」
そんなわけで、俺は地霊殿に住むことになった。
のちに、俺は思ったことがある。地霊殿に向かわなければどうなった?と。その答えはいつも同じ、『絶対に死んだ』。その『絶対』が何なのか、この時の俺はまだ知らない。
どうでしたかね?色々おかしいところあると思いますが、生暖かい目で見て下さい。
次回の『東方黑剣士』は?
零の程度の能力とは?そして最後の『絶対』とは?
襲い来る襲撃者!零、どうする?
次回!第二話『ユニークスキル、解放』
お楽しみに、また前書きにてお会いしましょう!