お気に入りが二十に近づき、UAは千五百近い、とんでもなくもったいないです、感謝しています!
さてと、では、どうぞ!
◆Side 零
月面戦争の開始を紫さんが宣言するや否や、俺は天狗の里を飛び出して地霊殿に向かった。最早地底すら安全ではない、もしかしたら既に襲撃の魔手が─────っ、間に合え!AGI一極のビルドで全力を出して走り、地底の街中を駆け抜けて地霊殿に─────着いた!
すると案の定誰かがさとりと話していた。
「だから、その要求は飲めません!」
「ですがね、これは月の都の決定なんですよ。」
「貴女方に指図される筋合いはないです!」
ここも同じか、しかも護衛もいる、厄介だ。なんならまとめて無力化してもいいんだが、面倒はいやだし、ここは普通に
「さとり、帰ったよ。ん?その方は?」
「月の都の使者です。」
「どうも、初めまして」
…………どうやら普通に接するのは無理らしい、白々しいにも程がある。こっちを蛮族と舐めてかかっているのか知らんが、一辺仕置きがいるな、
「ああ、あんたらのお仲間で妖怪の山に来たやつ、あいつ月に帰ったぜ?ついでに一言、
─────舐めた真似をするな。」
びくりと肩を震わせるが、護衛はすぐに立ち直り、
「貴様、我らを愚弄するか!」
そう吠えた。しかし俺は
「うるせぇよ、下らない戦争ごっこは止めな。なんならまとめて殺してやろうか?」
冷たく、平坦に、まるで日常会話のように『殺す』と宣言する。これには流石に引いたようで、一歩後ずさる。それに乗じて俺は二歩間合いを詰め、
「八雲紫が宣言した、第三次月面戦争、開戦だ、とな。そして帰ったら伝えろ、『さとり達に手を出してみろ、この心義零が消す』と。」
「何?!あの心義か?!」
「その通り、だが俺は家系にはこだわらない性質でね。」
軽口を叩いて、エリュシデータを抜剣して突き付ける。相手の目は切先を見て、体は震えている。
もう一押し、と思った俺は、はっきりと相手を見据え
「もう一度言う、戦争だ。容赦はしない。」
「貴様ぁ!」
いきなり銃剣で刺突してきたが、馬鹿としか言い様がない。
「見え透いてる。ソードスキル『バーチカル・アーク』」
赤いライトエフェクトと共に剣を振り下ろすと、銃剣は簡単に真っ二つになった。
「さぁ、次は剣じゃなく体を斬る。」
脅してみるとすごすごと帰って行った。多分次会ったら殺し合いだろうが、躊躇はしない。何故なら─────
アイツらが嫌いだから。
ただそれだけだ。俺はラノベの主人公じゃない、戦い、殺す理由はただ一つ、『相手が嫌い』という、自分勝手の極致。俺はそれだけで彼らを殺す。躊躇わない、決して、だって
死んで欲しくないから、彼女達を殺そうとする者は俺が嫌うから、彼女達の笑顔を曇らせる者は俺の敵だから。彼女達の笑える幻想郷であるために、俺は敵を砕く鎚となり、矢を防ぐ盾となる。
たとえその果てが
さらなる地獄へと自らを誘うとしても。
この時を後で振り替えると、あれ以外の選択肢があったのではないか、なんて思うこともある。けれどそれはどれだけ考えても存在しなかった。
「─────さん、零さん!」
意識がさとりの声で浮上した。
「どうした?」
「びっくりしましたよ、何を話し掛けても生返事でしたから。」
「そうか、ごめん。風呂入ってくるよ。」
そうとだけ伝えて、風呂へ向かう。足取りは重い、だって明日には戦争かもしれないから。明日にはこの世界が消えるかもしれないから。
そして風呂に入り、誰もいないのを確認して
「それにしても─────
よく出てきたな、『イレ』」
そう、虚空言い放った。
「おう、バレてた?」
「当たり前だ。」
こいつはイレ、言うなれば俺の二つ目の人格だ。過去のことを心に留めているのは同じだが、零が忘れ、新しい世界を望むのに対して、イレは
けれど時たまこうして表で話すことがあって、基本俺らは対立しない。
「どうする?零。」
「どうするも糞も、イレ、お前だって分かってるだろ?」
するとイレはククク、と笑い、「まぁな」とだけ答えた。
「なら言うまでもないだろ。敵対するなら─────」
「殺すだけ、だろう?」
「正解。」
元々はイレとは仲が最悪だった。けれどイレの復讐心のおかげでなんとかなったことも多く、イレを俺が助けたこともある。だからこうして仲良く過ごしている。
「にしてもあの、さとり、だったか?好きなのか?」
「はぁ?!」
思わずすっとんきょうな声を上げ、慌てて誰もいないのを再確認して言い返す。
「んな訳あるか。仮にそうだとしてもだ、俺が気付くまでそうじゃない。」
「ならいいや。思いつきだし。」
なんだよ、という言葉は飲み込んで、戦争の話へ移る。
「イレ、お前の主観でこの戦争、どうなる?」
「そうだな、力自体は幻想郷が上だが、あの技術力だ。核持ってても可笑しくない。なんとか出血を強いらないと負ける。」
「だよなぁ…………」
「けど、」
「?」
「お前と俺の『二人の剣士』の姿なら分からん。五分だ。」
『二人の剣士』か、危険にも程がある。ただでさえイレは破壊衝動の塊なのに、それの捌け口なんて見つけた日には綠な事にならない。
「…………なんか失礼な事考えてないか?」
「すまん。」
しまった、イレとは本質的に同じだから少々なら心が見えるんだった。
「いいよ、気にしねぇし。」
「どーも、あと、不味くなったら来てくれ。」
「了解だ。『二心一人』の真骨頂ってのを、あの大馬鹿共に見せてやろうぜ。」
「そうだな」
そこで会話を切って風呂を出ると、お燐がさとりが呼んでいた、と伝えてくれた。
「入っていいか?」
「どうぞ。」
さとりの部屋に入り、向かいに座る。
「なんだ?」
「戦争は、確実ですか?」
なんだ、そんなことかと言いかけて、意識する。今ここにいるのは軍人ではなく、ただの女の子だ。気にしない訳がない。
「私は、怖いんです。この現実が、明日にはないかもと思うと─────」
「俺も怖いさ、けどね、往くしかないんだ。」
俺だって、イレだって怖い。けれどそれを言ってる暇はない。だから、諦めてしょうがないと割りきる。
「なんでそうなんですか?何時もは優しいのに、こういう時だけ、そうやって冷たくなるのは」
「うーん」
正直言って、分からない。自分が何故ここまであっさりと切り捨てられるのか。薄情な訳じゃない、それとは違う何かがあるんだろうけれど、知らないし、知りたくもない。
「─────分からない。」
「え?」
「俺さ、自分でも分からない何かがあるんだ。けどそれを知ろうとは思わない。だって、今の世界が大切だから。」
それだけが、今俺が戦う理由、『黑の剣士』足らんとする俺の剣。
ただただ軽い剣だろう。命の重みなんぞどこ吹く風だ。そんなものでは強者に届かない。それを分かりきっていてもなお俺がそれを選ぶのは、さとりの命を奪わんとし、俺の嫌う者がやってくるから。だから一切の迷いを捨てる。
俺は戦争で生きて帰って、日常が欲しい。誰とも別れずに済む、
『あの世界の剣は、もっと重かった、もっと痛かった』
キリトがオベイロンに言ったこの言葉は、俺に向けているのかと、今は思ってしまう。軽い剣には負けないという、意思の力を体現した者の言葉。
この世で『黑』と名乗るなら、如何に重くとも、痛くとも、意思の力で乗り越えてみせよう。決して叶わぬ
「ただ、さとりを、この地霊殿を守りたいから、それを乱す奴らが嫌いで、戦うだけ。」
「そう、ですか。」
「そう、それだけ。もう寝るよ、遅いからね。」
そう言って部屋を去って、ベッドにダイブする。そして
「往くぞイレ。」
「任せろ、零。」
「この世界のために」
「家族のために」
息ぴったりに俺とイレは言葉を繋ぐ─────
「「俺の嫌う者に、鉄槌を」」
「「it's show time デスゲームの時間だ。」」
どうでしたか?今回は裏人格のイレに出てきて貰いました!
王道系の対立人格ではなく、共存を選んでいます。零がボケでイレがツッコミです。多分3話くらいで戦争突入、最終回は三十話くらいを想定しています。まだ十話ですが、完走までお付き合い下さい。あと感想、評価、お気に入り、よかったらお願いします。感想は非ログインでも書けますよ。
さて、次回の「東方黑剣士」は~?
戦争前の最後の1日!零はどう動くか?
次回第十一話「戦争準備」お楽しみに!
また次回の前書きにてお会いしましょう!