東方黑剣士   作:鋏人

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ヤッホー(どうした)、鋏人です!

お気に入りが二十に近づき、UAは千五百近い、とんでもなくもったいないです、感謝しています!

さてと、では、どうぞ!


第十話 決意を固め

◆Side 零

 

月面戦争の開始を紫さんが宣言するや否や、俺は天狗の里を飛び出して地霊殿に向かった。最早地底すら安全ではない、もしかしたら既に襲撃の魔手が─────っ、間に合え!AGI一極のビルドで全力を出して走り、地底の街中を駆け抜けて地霊殿に─────着いた!

すると案の定誰かがさとりと話していた。

 

「だから、その要求は飲めません!」

「ですがね、これは月の都の決定なんですよ。」

「貴女方に指図される筋合いはないです!」

 

ここも同じか、しかも護衛もいる、厄介だ。なんならまとめて無力化してもいいんだが、面倒はいやだし、ここは普通に

 

「さとり、帰ったよ。ん?その方は?」

「月の都の使者です。」

「どうも、初めまして」

 

…………どうやら普通に接するのは無理らしい、白々しいにも程がある。こっちを蛮族と舐めてかかっているのか知らんが、一辺仕置きがいるな、

 

「ああ、あんたらのお仲間で妖怪の山に来たやつ、あいつ月に帰ったぜ?ついでに一言、

 

 

 

 

 

 

 

─────舐めた真似をするな。」

 

びくりと肩を震わせるが、護衛はすぐに立ち直り、

 

「貴様、我らを愚弄するか!」

 

そう吠えた。しかし俺は

 

「うるせぇよ、下らない戦争ごっこは止めな。なんならまとめて殺してやろうか?」

 

冷たく、平坦に、まるで日常会話のように『殺す』と宣言する。これには流石に引いたようで、一歩後ずさる。それに乗じて俺は二歩間合いを詰め、

 

「八雲紫が宣言した、第三次月面戦争、開戦だ、とな。そして帰ったら伝えろ、『さとり達に手を出してみろ、この心義零が消す』と。」

「何?!あの心義か?!」

「その通り、だが俺は家系にはこだわらない性質でね。」

 

軽口を叩いて、エリュシデータを抜剣して突き付ける。相手の目は切先を見て、体は震えている。

もう一押し、と思った俺は、はっきりと相手を見据え

 

「もう一度言う、戦争だ。容赦はしない。」

「貴様ぁ!」

 

いきなり銃剣で刺突してきたが、馬鹿としか言い様がない。

 

「見え透いてる。ソードスキル『バーチカル・アーク』」

 

赤いライトエフェクトと共に剣を振り下ろすと、銃剣は簡単に真っ二つになった。

 

「さぁ、次は剣じゃなく体を斬る。」

 

脅してみるとすごすごと帰って行った。多分次会ったら殺し合いだろうが、躊躇はしない。何故なら─────

 

 

 

 

アイツらが嫌いだから。

ただそれだけだ。俺はラノベの主人公じゃない、戦い、殺す理由はただ一つ、『相手が嫌い』という、自分勝手の極致。俺はそれだけで彼らを殺す。躊躇わない、決して、だって

 

死んで欲しくないから、彼女達を殺そうとする者は俺が嫌うから、彼女達の笑顔を曇らせる者は俺の敵だから。彼女達の笑える幻想郷であるために、俺は敵を砕く鎚となり、矢を防ぐ盾となる。

 

たとえその果てが

 

 

 

 

さらなる地獄へと自らを誘うとしても。

 

この時を後で振り替えると、あれ以外の選択肢があったのではないか、なんて思うこともある。けれどそれはどれだけ考えても存在しなかった。

 

 

「─────さん、零さん!」

 

意識がさとりの声で浮上した。

 

「どうした?」

「びっくりしましたよ、何を話し掛けても生返事でしたから。」

「そうか、ごめん。風呂入ってくるよ。」

 

そうとだけ伝えて、風呂へ向かう。足取りは重い、だって明日には戦争かもしれないから。明日にはこの世界が消えるかもしれないから。

そして風呂に入り、誰もいないのを確認して

 

「それにしても─────

 

 

 

 

 

 

 

よく出てきたな、『イレ』」

 

そう、虚空言い放った。

 

「おう、バレてた?」

「当たり前だ。」

 

こいつはイレ、言うなれば俺の二つ目の人格だ。過去のことを心に留めているのは同じだが、零が忘れ、新しい世界を望むのに対して、イレは()()()()()。とても質が悪い。

けれど時たまこうして表で話すことがあって、基本俺らは対立しない。

 

「どうする?零。」

「どうするも糞も、イレ、お前だって分かってるだろ?」

 

するとイレはククク、と笑い、「まぁな」とだけ答えた。

 

「なら言うまでもないだろ。敵対するなら─────」

「殺すだけ、だろう?」

「正解。」

 

元々はイレとは仲が最悪だった。けれどイレの復讐心のおかげでなんとかなったことも多く、イレを俺が助けたこともある。だからこうして仲良く過ごしている。

 

「にしてもあの、さとり、だったか?好きなのか?」

「はぁ?!」

 

思わずすっとんきょうな声を上げ、慌てて誰もいないのを再確認して言い返す。

 

「んな訳あるか。仮にそうだとしてもだ、俺が気付くまでそうじゃない。」

「ならいいや。思いつきだし。」

 

なんだよ、という言葉は飲み込んで、戦争の話へ移る。

 

「イレ、お前の主観でこの戦争、どうなる?」

「そうだな、力自体は幻想郷が上だが、あの技術力だ。核持ってても可笑しくない。なんとか出血を強いらないと負ける。」

「だよなぁ…………」

「けど、」

「?」

「お前と俺の『二人の剣士』の姿なら分からん。五分だ。」

 

『二人の剣士』か、危険にも程がある。ただでさえイレは破壊衝動の塊なのに、それの捌け口なんて見つけた日には綠な事にならない。

 

「…………なんか失礼な事考えてないか?」

「すまん。」

 

しまった、イレとは本質的に同じだから少々なら心が見えるんだった。

 

「いいよ、気にしねぇし。」

「どーも、あと、不味くなったら来てくれ。」

「了解だ。『二心一人』の真骨頂ってのを、あの大馬鹿共に見せてやろうぜ。」

「そうだな」

 

そこで会話を切って風呂を出ると、お燐がさとりが呼んでいた、と伝えてくれた。

 

「入っていいか?」

「どうぞ。」

 

さとりの部屋に入り、向かいに座る。

 

「なんだ?」

「戦争は、確実ですか?」

 

なんだ、そんなことかと言いかけて、意識する。今ここにいるのは軍人ではなく、ただの女の子だ。気にしない訳がない。

 

「私は、怖いんです。この現実が、明日にはないかもと思うと─────」

「俺も怖いさ、けどね、往くしかないんだ。」

 

俺だって、イレだって怖い。けれどそれを言ってる暇はない。だから、諦めてしょうがないと割りきる。

 

「なんでそうなんですか?何時もは優しいのに、こういう時だけ、そうやって冷たくなるのは」

「うーん」

 

正直言って、分からない。自分が何故ここまであっさりと切り捨てられるのか。薄情な訳じゃない、それとは違う何かがあるんだろうけれど、知らないし、知りたくもない。

 

「─────分からない。」

「え?」

「俺さ、自分でも分からない何かがあるんだ。けどそれを知ろうとは思わない。だって、今の世界が大切だから。」

 

それだけが、今俺が戦う理由、『黑の剣士』足らんとする俺の剣。

ただただ軽い剣だろう。命の重みなんぞどこ吹く風だ。そんなものでは強者に届かない。それを分かりきっていてもなお俺がそれを選ぶのは、さとりの命を奪わんとし、俺の嫌う者がやってくるから。だから一切の迷いを捨てる。

俺は戦争で生きて帰って、日常が欲しい。誰とも別れずに済む、()()()()()を。普通を知らぬ俺達の望む世界は、きっと、いや確実に重く、苦しく、長くなる。そして

 

 

『あの世界の剣は、もっと重かった、もっと痛かった』

 

 

キリトがオベイロンに言ったこの言葉は、俺に向けているのかと、今は思ってしまう。軽い剣には負けないという、意思の力を体現した者の言葉。

この世で『黑』と名乗るなら、如何に重くとも、痛くとも、意思の力で乗り越えてみせよう。決して叶わぬ存在(原作主人公)であっても、近づくことの出来る者でありたい。

 

「ただ、さとりを、この地霊殿を守りたいから、それを乱す奴らが嫌いで、戦うだけ。」

「そう、ですか。」

「そう、それだけ。もう寝るよ、遅いからね。」

 

そう言って部屋を去って、ベッドにダイブする。そして

 

「往くぞイレ。」

「任せろ、零。」

「この世界のために」

「家族のために」

 

息ぴったりに俺とイレは言葉を繋ぐ─────

 

 

 

 

「「俺の嫌う者に、鉄槌を」」

 

「「it's show time デスゲームの時間だ。」」

 




どうでしたか?今回は裏人格のイレに出てきて貰いました!
王道系の対立人格ではなく、共存を選んでいます。零がボケでイレがツッコミです。多分3話くらいで戦争突入、最終回は三十話くらいを想定しています。まだ十話ですが、完走までお付き合い下さい。あと感想、評価、お気に入り、よかったらお願いします。感想は非ログインでも書けますよ。

さて、次回の「東方黑剣士」は~?
戦争前の最後の1日!零はどう動くか?
次回第十一話「戦争準備」お楽しみに!
また次回の前書きにてお会いしましょう!
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